年末調整時期の風物詩?103万円と130万円の壁

扶養控除の条件

筆者はかつて社員&パート合わせて80名くらいの会社で経営管理部門に所属していたことがあります。仕事内容は経理やら総務やら人事やら庶務やらいろいろでした。当然、この12月くらいの時期からは年末調整の準備を始めることになるのですが、その準備作業の中でタイトルでも書いた「103万円の壁」が話題となります。

 

主婦Aパートさん(A)「本山さ~ん、私の11月までの給料っていくらくらいになってますか?」

筆者(本山)「Aさんの今年の給与額はいまのところ90万円ちょっとかな」

「じゃあ12月のシフトを減らしてもらわないと103万円超えちゃいますねぇ」

本山「でもみんな一杯一杯なんじゃないのかな?Bさんも同じようなこと言ってたし。バイトリーダーによく確認してみて」

 

とまぁ、こんなやり取りが毎年毎年繰り返されるわけです。

実際にシフトをやり繰りしたり、出勤日を減らしたりと人事管理者の側からするとかなり面倒な話ですが、パートさん達やそのご主人からしてみたら切実な問題だということなのでしょう。

「103万円の壁」とは別に「130万円の壁」と呼ばれるものもあります。いずれもその“壁”を体感するのは主にご主人の扶養親族になっている主婦のパートさんやアルバイトさんが多いようです。

まず「103万円の壁」から解説していきましょう。

 

■ 所得控除と所得税額の算出の流れ

その年の所得税の計算、年末調整や確定申告には様々な所得控除と呼ばれるものが用意されています。

社会保険料や生命保険料、損害保険料の支払額に応じて控除が受けられる「保険料等控除」や1年間に支払った医療費の額に応じて控除が受けられる「医療費控除」、そしてそういった所得控除の中で金額的に大きな控除といえば扶養控除や配偶者控除などのような「人的控除」だといえるでしょう。

サラリーマンの所得税は大まかに次のような流れで計算します。

1. 給与の支給額から給与所得控除を差し引きます。
この給与所得控除は給与所得者には原則として必要経費が認められていないことから“サラリーマンの必要経費”とも言われたりしますが、支払いを受けた給与の額に応じて控除額が定められています。

2. 次に給与から差し引かれている社会保険料や生命保険料控除額、そして給与所得者本人の基礎控除38万円を控除しさらに他の人的控除額を差し引き、残った金額に対して税率をかけ所得税を算出します。

 

■ 103万円の壁とは何か?

その人が控除対象の扶養親族となるかどうかは所得が0円であることが条件です。先ほども述べましたが本人の基礎控除額は38万円と定められています。また、給与所得控除の金額はその年の給与支給額が651,000円以上1,619,000円未満の場合には65万円と定められています。

基礎控除額38万円+給与所得控除額65万円=103万円

つまり、103万円が所得0円となるボーダーラインの金額となります。
これを「103万円の壁」と呼ぶようになったのです。

 

■ 103万円の壁を越えると何が起きる?

年間の給与額が103万円を超えてしまうと、先ほどご紹介した所得税額算出方法の流れ通りに所得税が課税されることになります。(他の控除項目がある場合は別です。)
では、それ以外に何が起きるのでしょうか?

まず、それまでご主人の扶養控除(配偶者控除)の対象となっていた場合、ご主人の扶養控除額が少なくなりますから、ご主人の税額が増加することとなります。

参考までに所得税の税額表をあげておきます。

所得税税額票

一般に扶養控除の額は38万円です。38万円×税率分の税額が増えることになります。
仮にご主人の税率が10%であれば年間38,000円、月額約3,000円程度の税負担が増すということになるわけです。

また、最近では給与体系の見直しなども進んでいるため少なくなったかもしれませんが、会社や組織によっては家族手当などの支給があると思います。そういった手当の支給要件から外れてしまうとなると、これは先程の税額の負担より大きな影響があるかもしれません。

 

■ 配偶者控除と配偶者特別控除

俗にいう「配偶者控除」は配偶者控除と配偶者特別控除の総称とも言えます。
控除対象配偶者の説明を国税庁のタックスアンサーから引用してみます。

・控除対象配偶者とは?

“控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。”
(引用元:国税庁Webサイト 配偶者控除

この要件に該当すると、12月31日現在で70歳未満であれば38万円、70歳以上であれば48万円の控除を受けることができます。

・配偶者特別控除とは?

“配偶者に38万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合があります。これを配偶者特別控除といいます。”

配偶者特別控除の要件
“(1) 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であること。
(2) 配偶者が、次の五つの全てに当てはまること。
イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ ほかの人の扶養親族となっていないこと。
ホ 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。”
(引用元:国税庁Webサイト 配偶者控除

配偶者控除の適用と配偶者特別控除の適用に違いがあること、またご主人の所得額によってはそもそも配偶者控除の適用が受けられないということがわかります。

 

■ 130万円の壁

ここまでご説明してきた「103万円の壁」は主に所得税の”壁”(家族手当などは別ですが)、一方の「130万円の壁」は社会保険における扶養家族となるか否かのボーダーラインを指します。

社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金等)の被保険者の扶養親族の条件が所得130万円と定められているためです。被保険者の扶養親族であれば、自身が社会保険料を負担することなく被保険者(ご主人など)の家族用保険証などを使用できます。

したがって、130万円の壁を突破してしまうと、自分自身が被保険者となる=給与から社会保険料が天引きされることになります。

したがって、こちらも給与の手取り額が減るという意味で影響は大きいかもしれません。

 

■ 103万円の壁と130万円の壁をどう考える?
控除の壁の計算

源泉徴収所得税や住民税、社会保険料といった租税や公課は、マイナンバーの導入に伴い、企業や個人のレベルでも監督官庁は可能な限り漏れ無く徴収することを目指しています。

その一方では「下流老人」という言葉が流行語大賞にノミネートされたり格差や貧困という言葉を目にする機会が増えてきた経済状況の中、少しでも「稼ぎを増やしたい」とか「節約したい」という気持ちはよく理解できます。また、「余計な税金などは払いたくない」という方も少なくありません。

会社の側から見ると、シフトや勤怠の管理をパートさんたちの都合に合わせるのも限界があります。しかし、あらたに人を雇用するためのコスト負担もバカになりません。だからといって不正行為は問題外だと筆者は考えます。「給与を商品券で支給する」などという話も耳にしたことがありますが、完全な脱税行為です。

どうしても103万円の壁を突破したくない事情があるならば、あらかじめ計画的に勤務計画を作成する、そしてその事情を踏まえたうえで会社は雇用するとか、会社として103万円の壁は考慮しないということであれば、その周知や明示は徹底すべきでしょう。

ライタープロフィール

本山 シーエン

本山 シーエン

現場支援型コンサルタント

税理士事務所時代の経験をもとに、インターネット関連の会社で財務会計ソフトの開発と販売を通じて中小企業のバックオフィス業務をサポート。現在も「インターネット活用が中小企業の成功のカギ」を信念に現場支援型コンサルタントとして活動中。