「RPA+BPO」は、RPA普及の鍵となるのか?

「RPA+BPO」と聞いて、皆さんはどう思うであろうか?

「いや…、RPAって、そもそも内制(ユーザー企業が、自らRPAをオペレーションしロボットを制作すること)が、基本じゃないの?」

そのように思っている方からすれば、さらにRPAとBPOを組み合わせることなど、想像のはるか上を行っているかもしれない。

 

筆者は、RPAに関するさまざまな取材を続けてきた。
そして、現在のRPAがおかれている状況については、どこか手詰まり感を感じているが、「RPA+BPO」には、RPAに関する手詰まり感を打開する可能性を感じている。

 

 

RPA+BPOとは?

コールセンターを「RPA+BPO」化するイメージ(試算)

 

BPOとは、Business Process Outsourcingの略であり、企業における業務の一部を、専門的なスキルを持った企業に外部委託することを指す。
ポイントは、「専門的なスキルを持った」人材を抱え、ノウハウを持った企業にアウトソーシングすることにある。

経理、総務、ヘルプデスクなど、高いスキルを備えたプロフェッショナルにアウトソーシングすることで、社内で業務を抱えるよりも、高い品質を求めることが可能だ。
「RPA+BPO」では、全体業務における自動化可能な業務領域をRPAに委ねる。

先のイメージ図は、NOCアウトソーシング&コンサルティングが、あるコールセンターのBPOと、RPAおよびAIの活用を前提としたものだが、このケースでは、もともと30名の人員体制を18名まで減らした上で、さらに時間外受付の実現という、サービスの拡充まで想定している。

もちろん、人員体制をスリム化することで、アウトソーシングコストの削減も見込めるであろう。

 

RPAとBPOを組み合わせることで、BPO、そしてRPAの活用に、よりエッジの効いた効果を期待することができる可能性がある。
その理由を紐解いていこう。

 

 

「RPA適正」の持ち主は、4割しかいない!?

NOCアウトソーシング&コンサルティングが考える、「RPA適正」の4大要素

 

RPAは、ユーザー企業内で内制すべきものと思っている人も少なくないのではないだろうか。

「RPAをオペレーションし、企業内できちんと稼働するロボットを制作できる適正を持った人は、4割しかいない」

こう言われてしまうと、皆さまは、どう感じるだろうか。
RPAを導入、運用している企業担当者の中には、うなずく人もいるかも知れない。

 

NOCアウトソーシング&コンサルティングでは、キャリアチェンジプロジェクトと銘打ち、外部から希望者を募り、RPAを手掛けるSEの教育研修を手掛けていた時期があると言う。
4割という数字は、毎月20名ほどの研修を1年以上にわたって行ってきた中で得られた結果である。

キャリアチェンジプロジェクトでは、RPAの制作はもちろんだが、ITリテラシーや業務改善の手法も教えていた。きちんと業務の中で稼働するRPAロボットを作り上げるためには、RPAをオペレーションできるプログラマー素養に加え、ITリテラシーや業務改善の視点を備えていることが、とても大切である。

NOCアウトソーシング&コンサルティングでは、キャリアチェンジプロジェクトで育成した人材を、IT人材派遣として世に送り出していた。
その結果を踏まえ、RPA適正の持ち主は4割しかいない、と言っているのだ。

 

 

華々しいRPA導入事例に惑わされるなかれ

「RPAねぇ…、結局、使える人が使っているだけなんですよ」

私は、いくつかRPAの導入事例を取材してきた。
そのほとんどは、世の中でもよく知られる大企業である。

この言葉は、その大企業の社員が発した言葉である。

「先日、御社のRPA導入事例を取材しましたよ。すごいですね!」、そう話した私に対し、返された言葉である。

 

勘違いしないで欲しいのだが、これは当然のことなのだ。
「使える人が使っているだけ」というのは、RPAの評価を損なう価値観では決してない。
私は以前、「『カンタンだけどカンタンじゃない!?』、RPAの誤解を解く」という記事で、この問題(誤解と言っても良い)を論じた。

「誤解を恐れずに言えば、RPAを始めること、入門することは、比較的カンタンである。しかし、よいロボットを生み出すことを『カンタン』と言い切るのは誤解を生じかねず、それなりに苦労を伴う。切磋琢磨することも必要だ」

同記事中で、私はこう述べた。

 

RPAにより、業務改善の結果を出している大企業では、RPAロボットを内制する人材を選抜している。恣意的か、偶然かは別としてである。

RPAの事例として紹介されるのは、ほとんどが大企業だ。
宣伝効果を求めたがる、私のようなライターの都合は別として(多くの読者は、自分が知る企業の事例を歓迎する)、RPAに対する適正を持った人材を、社内から発掘するためには、それなりの大企業でないと難しい。

逆に言うと、中小企業におけるRPA活用事例を取材することは、難しい。私もこれまでいくつかのRPAベンダーに、中小企業におけるRPA導入事例取材を打診してきたが、適当な取材先がないのだ。
私の経験を元に、「中小企業におけるRPAが進んでいない」と断じるのは早計ではあるが。しかし、人材が豊富な大企業ほど、RPAに取り組みやすいことは、事実ではないだろうか。

さらに言えば、4割しかいないと考えられるRPA人材を、社内のRPA活用人材として活用できるかどうか、という課題もある。
そういった人材は、きっと他の業務でも優秀な方だと思う。
その人材を、RPAに優先的に投入できる企業というのは、どれほどあるのだろうか。

 

 

RPAと業務改善の正しい関係とは

ところで、RPAを導入した(もしくは「導入したい」)理由はなんだろうか。
おそらく、ほとんどの企業が業務改善と答えることと思う。

RPAというのは、ある意味、罪なツールである。
というのも、人が行ってきた業務をRPAによって自動化することで、ある程度の業務改善は実現してしまうからである。
例えば、それまで毎月100時間の工数がかかっていた業務を、RPAによって1/10の工数に圧縮できたとしたら?
これはこれで、立派な業務改善かもしれない。

だが考えて欲しい。
人の手がかからなくなれば、業務改善としては成功なのだろうか?

工数削減(労働時間削減)は、確かに業務改善のひとつであろう。
しかし、改善とは、「改めて善くする」と書く。
品質の向上が伴わない改善は、本当の意味での改善ではないのだ。

 

例えば、請求書の発行業務を考えよう。
請求書発行にかかる工数が、仮に1/10に減れば、確かにハッピーなことだ。
しかし、請求書の記載ミス、発行漏れの削減が残っているとしたら、それは本当の業務改善ではない。これまであったミスや不手際を撲滅したうえで、事業部や会社全体の売り上げ管理など、プラスオンのアウトプットを実現して、初めて本当の改善と言える。

ここまで「改善」を実現しようとすると、必ずコンサルティングが必要となる。
属人化を廃し、重複や非効率の集合体であった業務プロセスに見直しをかけ、最適化された業務プロセスにおいて、本来RPAは活用されるべきであろう。

繰り返しになるが、属人化と重複、非効率の寄せ集めのような業務プロセスをRPA化しても、その効果は限定的である。いや、品質の低い業務プロセスが、RPAによって固定されてしまうことで、改善活動総体を診れば、悪影響すら懸念される。

 

だが、業務コンサルティング、改善コンサルティングまでを、それでなくとも貴重なRPA人材に期待するのは酷だ。少なくとも、ユーザー企業内で、そこまでのスキルを求めるのは難しいであろう。

RPA導入の目的は、業務改善であって、RPAを導入することではない。
それは、手段が目的にすり替わってしまっている。だが、そんな現場も、もしかしたら少なくないのではないか。

RPAは、業務改善における、ツールのひとつに過ぎない。
だからこそ、コンサルティング、専門人材、そしてRPAといった複数の、「業務改善のための武器」を活用しようという意欲を持つ、「RPA+BPO」に可能性を感じるのだ。

 

 

「RPA+BPO」は、RPA普及の鍵となるのか?

私の知る、ある中小企業は、RPAの導入を検討し始めてから、1年半ほど経つ。
最初の頃は興味津々で、RPAベンダーを呼んでは、デモンストレーションなどを受けていたが、具体的に社内導入を検討し始めてから、徐々にトーンダウンしていった。

まず直面したのは、「誰がRPAを内制するのか?」。
次に直面したのは、「RPAで何をするのか?」である。

確かに、現在では、RPAツールごとに、専門教育カリキュラムも充実してきた。

しかし…

1. RPA担当者を専任
2. 教育を受けさせる
3. 社内業務をRPAによって自動化していく

こういったプロセスを、現実に想定し始めた時、「本当に、RPAって役に立つの?」と、疑問を感じ始めてしまったのだ。

同社が間違ってるのは、まずこのプロセスであろう。順番が逆なのだ。まず、改善したい業務をピックアップし、RPA導入によって見込まれる改善効果をひとつづつ洗っていかないと、RPAの投資対効果は算出できない。

このプロセスこそが、コンサルティングである。
コンサルティングのプロセスをスキップして、目先の導入を先に考えてしまうから、こういうことになるのだ。

これは、RPAが世間で広く注目を集めているがゆえに、RPAというツールの導入を目的にしてしまった、残念なケースであろう。しかし、世間では、こういうケースも多いのではないかと想像する。

 

マーケティング用語のひとつ、イノベーター理論では、ある製品やサービスに対する購入の姿勢を、5つに分類している。
現在、RPAが置かれている状況は、新しもの好きな「イノベーター」、流行に敏感で、大衆化・一般化の尖兵となる「アーリーアダプター」が、すでにRPA導入を果たし、新しいものが好きでありながら、導入となると慎重な判断を行う「アーリーマジョリティ」が導入を検討している段階と考えられる。

私が、RPAに手詰まり感を感じている理由のひとつが、これである。
「イノベーター」、「アーリーアダプター」に対しては、「RPAって、こんなにスゴイですよ!」と、RPAの魅力を伝えれば良かった。
しかし、「アーリーマジョリティ」や、新しいものに懐疑的な「レイトマジョリティ」に訴えるためには、より丁寧な説明が必要である。

丁寧であり、かつ現実的で、説得力もある説明のひとつが、「RPA+BPO」ではないだろうか。

 

RPAの導入に迷っている企業は、一度立ち止まって、「なんのためにRPAを導入するのか」を再考して欲しい。
その時、「RPA+BPO」は、新しい可能性として、あなたの進むべき道を、明るく照らしてくれる可能性があるだろう。

 

 

ライタープロフィール

坂田 良平

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。