【2020年最新版】経済産業省が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と今後の展開

2018年、経済産業省が『DXレポート』を公開し、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムが、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する際の大きな障壁となっていることに対して警鐘を鳴らし、2025年の完了を目指して計画的にDXを進めるよう促し始めました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、経済産業省の『DX推進ガイドライン』で定義されています。

デジタル化による社会や生活者の行動の急激な変化によって、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められていますが、発表から2年ほどが経った今、日本企業においてDX推進はどのくらい進んでいるのでしょうか。

本記事では、2020年12月28日に公開された経済産業省の『DX中間レポート 中間取りまとめ』の最新情報を参考に、DX推進の現状と課題、企業が目指すべき方向性、コロナ禍でのアクション、中長期的な対応について解説します。

 

2021年日本では50%以上の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手している

まずは、日本企業全体におけるDX推進の状況について見ていきましょう。2025年の完了を目指し、経済産業省は企業内面への働きかけ(※1)と、市場環境整備による企業外面からの働きかけ(※2)を行い、政策を展開してきました。

(※1)企業内面への働きかけ:DX推進指標による自己診断の促進やベンチマークの提示
(※2)企業外面への働きかけ:デジタルガバナンス・コードやDX認定、DX銘柄によるステークホルダーとの対話の促進、市場からの評価等

一般社団法人日本能率協会の2020年度調査では大手では8割以上、全体では5割以上の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手しているという報告があがっています。
引用:https://www.atpress.ne.jp/news/227512

数字上は順調に推移しており、中小企業でもDX推進を進めているということで非常に良い傾向と言えます。しかし、経済産業省が行った調査を見ると実態としては順調ではないようです。

しかし、9割を超える企業でDX推進がまだ不十分なレベルにある

経済産業省が2020年10月に発表した調査では全体の9割以上の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)にまったく取り組めていないレベルか、散発的な実施に留まっている状況でと記載されています。

画像引用:経済産業省『DX中間レポート2 中間取りまとめ』

これは自己診断を行って提出した企業約500社のデータでありながら意識が高くないということが伺えます。やはり、まだDX推進は始まったばかりの状態と言えそうです。経済産業省はこの状況を、「デジタルトランスフォーメーション(DX)への取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない」としています。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、テレワークが浸透するも対応差は拡大

一方で、2020年に大きく世の中を動かすことになった新型コロナウイルス感染症の対策として、企業がテレワークをはじめとした労働環境の改革や、ITインフラの整備を行ったことは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の後押しにもなりました。

画像引用:経済産業省『DX中間レポート2 中間取りまとめ』

企業によっては、感染拡大防止のために早急にテレワーク制度を導入し対応した企業もありましたが、一部企業では対応できずに苦戦したところもあります。こうした状況に至ったことで、デジタル化が遅れていることを現実的な課題として認識したのではないか、と経済産業省は見ています。

 

ITシステム「2025年の崖」問題を克服すべき理由

ここで改めて、デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められている理由を考えてみます。

まずは市場の変化です。スマートフォンによって消費行動が変化していることは大きな理由の一つでしょう。あらゆる行動がインターネット上で行うことができるため、スマホ中心のユーザー行動にあわせたビジネスが強くなります。

そして実際に、AmazonやUberなどに代表されるデジタルの代表企業が、既存の配送業界やタクシー業界に影響をもたらしていることは明白です。その中で生き残るには抜本的なデジタル化が求められるのです。

「2025年の崖」という言葉を耳にしたことはありますか?これは経済産業省が発表した問題で、「IT人材の不足」と「基幹システムの老朽化」により2025年から年間で現在の約3倍、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。これが「2025年の崖」です。

既存システムのままではさらなる成長につなげることが難しく、複雑化した既存システムを使い続けるだけでも高い維持費がかかります。実際に、IT関連費用の8割が現行システムの維持管理に当てられていることから、老朽化したシステムのメンテナンスに追われていることも分かります。

もし仮に2025年までにIT人材を確保できずシステム刷新も行えなかった場合、急激な市場の変化に柔軟かつ迅速にビジネスモデルを変更できず、デジタル競争の敗者になってしまうのです。

それだけでなく、老朽化した基盤システムの維持管理費用が高額になり技術的負債を抱え、維持継承が困難になったり、サイバーセキュリティなどのリスクが高まります。

こうした経済損失やリスクを生まないためにも、企業が市場競争において生き残るためにも、デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められているのです。

 

企業がDX推進にあたり目指すべき方向性は「素早く変革し続ける」

では、これから企業はどのような方向性で対策、取り組みを進めていけばよいのでしょうか。

まずは変化に迅速に適応していくことと、企業文化も含めた抜本的な変革が必要だとされています。

特に社会の変化として、人と人との接触を極力減らし、遠隔・非対面での社会活動が推奨されています。それは人々の暮らしの変化だけでなく、企業・提供サービスにも大きく変化が求められていると言えます。デジタル技術を活用してこなかった年齢層までも、ECサイトやクレジットカード決済を利用するようになり、サービス自体がそれらに対応できていないと利用すら難しい状況です。

だからこそ、今後のビジネスにおける価値創出は、すでにデジタル領域に移行しつつあり、この流れはコロナ禍が収束したあとも元には戻らないと考えられています。企業はこの流れに対応し、迅速にプロダクトやサービスを変化させることが重要です。

画像引用:経済産業省『DX中間レポート2 中間取りまとめ』

経済産業省は、「企業が競争上の優位性を確立するには、常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、「素早く」変革「し続ける」能力を身につけること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することが重要」と発表しています。

ベンダー企業の目指すべき方向性は「現状維持から価値創造型ビジネスへ」

一方、ベンダー企業はどのような方向性で取り組めばよいのでしょうか。

デジタル技術を活用して迅速に対応することが求められる今、ITシステムを担うベンダー企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で重要な役割となることは明らかです。これまで多くのベンダー企業は、ユーザー企業が導入するITシステムを個別開発する受託開発型ビジネスを展開してきました。

しかしこれからは、ベンダー企業とユーザー企業がともに、高収益な領域で利益率の高いビジネスへと、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく必要があります。現在のビジネスの維持から脱却し、価値創造型のビジネスを行うという方向性が求められているのです。

ユーザー企業のビジネスモデルの変革をともに推進するパートナー企業として、知見や技術を共有してデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた変革を支援するといった役割もよいでしょう。または、ベンダー企業自らが、デジタル技術を活用して新たなサービスを提供してもよいでしょう。

画像引用:経済産業省『DX中間レポート2 中間取りまとめ』

経済産業省は、これからのベンダー企業の役割として「ユーザー企業とデジタルトランスフォーメーション(DX)を一体的に推進する共創的パートナーとなる」「デジタル技術を活用して社会における新たな価値を提案する新ビジネス・サービスの提供主体となる」ことを期待しています。

 

コロナ禍でただちに取り組むべきアクションとは?

コロナ禍で企業が感染拡大防止を図り、従業員・顧客の安全を守りながら事業継続を行っていく上では、製品・サービス・ツールを活用して迅速に対応することが最も重要です。

具体的にどのような場面で、ツールを活用していくのか、ここでも経済産業省がまとめた内容を以下にわかりやすくご紹介していきます。

出典:DX レポート 2 中間取りまとめ (概要)

◆業務環境のオンライン化

まずは業務環境をオンライン化させることが必要です。ITインフラの導入によって、テレワークでも事業を行うことができる状況を作りましょう。

テレワークシステムによる執務環境のリモートワーク対応として、社内での情報共有を円滑にする「コラボレーションツール」「社内イントラネット」の整備が求められます。

また、社内外でのコミュニケーションをオンライン化する方法として、「Web会議」「コミュニケーションツール」を活用していきましょう。もちろんセキュリティ環境などもしっかり鑑みてツール選定やネットワーク基盤を構築することが重要です。

◆業務プロセスのデジタル化

次に、各個別業務をデジタル化していき、テレワーク環境でも働けるような仕組みを整える必要があります。

・OCR製品を用いた紙書類の電子化
・クラウドストレージを用いたペーパーレス化
・SFAやWeb会議を用いた営業活動のデジタル化
・RPAを用いた定型業務の自動化

など、自社の業務に合わせて最適なツールを活用しましょう。今はクラウドサービスが多いため、すぐに開始することも可能です。

◆従業員の安全・健康管理のデジタル化

テレワークということは、目の前で社員の健康や心の状態を確認することができません。従業員の安全・健康管理を遠隔でも実施できるように、準備しましょう。

・活動量計等を用いた現場作業員の安全・健康管理
・人流の可視化による安心・安全かつ効率的な労働環境の整備
・パルス調査ツールを用いた従業員の不調・異常の早期発見

また、現場作業が必要であったり、エッセンシャルワーカーのようにテレワークを行えない業態の方々もいます。どのような場合でも、自社に即した従業員の安全・健康管理や、労働環境の整備を行っていきましょう。

◆顧客接点のデジタル化

最後に、顧客との接点をデジタル化することも急務です。消費者の行動がインターネットを起点となっていることから、サービスの入り口をデジタル上に設置しておくのです。これにより、実店舗等での対面対応の代わりとなるだけでなく、顧客フィードバックをデータをもとにサービスに反映させる等、変革の起点となります。

電子商取引プラットフォームの利用でECサイトを開設したり、チャットボット等によって電話応対業務の一部を自動化、オンライン化を検討してみましょう。

 

DX推進に向けた中長期的対応は?

最後に、企業はDX推進に向けて、中長期的にはどのような対応をすべきか、見ていきましょう。

短期的には、DX推進に向けて経営層が全社を巻き込み、意図や目標を明確に提示し、業務プロセスを再設計してデジタル技術を使って変革できるところから着手していく必要があります。

その先、企業が取るべき行動は何があるのでしょうか。

◆デジタルプラットフォームの形成

レポートによると、これから企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めながらもIT投資の効果を高めるために、業界内の他社と協調領域を形成して、共通プラットフォーム化することも検討に入れるべき、とされています。

協調領域については、自前主義を排除し、業務プロセスの標準化を進めることで得られる効果を狙います。SaaSやパッケージソフトウェアを活用して、貴重なIT投資の予算や人材の投入を抑えるのです。

また、ベンダー企業が仮説検証を俊敏に実施できるアジャイル開発で取り組むことで、エンジニア需要が平準化し、多重下請け構造の解消にも期待できます。

これらの動きが進むことで、次なる課題のDX人材の確保にも繋がります。

◆DX人材の確保

DX推進にあたって、優秀なIT人材を確保することが求められます。ここでの「DX人材」とは、構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織を牽引し、実行することができるような人材です。

常に新しい技術に敏感になり、企業が市場にもたらす価値をITシステムへと落とし込むことができる技術者は、DX推進において極めて重要です。

自社内でDX人材を確保するには、ジョブ型人事制度がポイントです。仕事の範囲・役割・責任を明確にした上で人材募集・採用活動を行い、社外を含めた多様な人材が参画してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できるような環境を整えましょう。

出典:DX レポート 2 中間取りまとめ (概要)

 

DX推進に向けた経済産業省の取組

経済産業省のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた取組の一つに、東京証券取引所と共同で行っている「DX銘柄」の選定があります。「DX銘柄」では、デジタルトランスフォーメーション調査2021を実施しており、調査に回答した企業にはフィードバックし、さらなる推進に役立つ情報を提供しています。

デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)とは?

経済産業省が東京証券取引所と共同で行っているデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けたと取組の一つです。東京証券取引所に上場している企業の中から、「デジタル技術を前提として、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業(引用:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/keiei_meigara.html)」を、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定しています。

2015年から行われてきたこの取組は、2019年までは「中長期的な企業価値の向上や競争力の強化のために、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業(引用:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/keiei_meigara.html)」を「攻めのIT経営銘柄」として選定してきました。

DX銘柄を選定することで、デジタル活用の実績が表れている企業モデルを広く浸透させ、経営者の意識改革を促すことを目的としています。

DX銘柄以外に、注目されるべき取組を実施している企業を「DX注目企業」、業種の枠を超えて、デジタル時代を先導する企業を「DXグランプリ」として選定しています。

DX銘柄/攻めのIT経営銘柄(METI)

調査2021から見えてきたDX銘柄企業の特徴

「DX銘柄」、「DX注目企業」、「DXグランプリ」の選定に向けて実施したデジタルトランスフォーメーション調査2021の結果からはデジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄に選定される企業の特徴が見えてきました。

DX銘柄、DX注目企業に選定される企業は、企業価値を向上させるために経営者に求められる経営ビジョンの策定や公表などの対応を経済産業省が取りまとめたデジタルガバナンス・コードに沿った活動がなされていることがわかりました。

デジタルガバナンス・コード(METI)

また、調査に回答した全てのDX銘柄企業・注目企業はDX推進について経営者がメッセージ発信を行い、経営者とデジタルトランスフォーメーション(DX)推進責任者と定期的にデジタルトランスフォーメーション(DX)についてコミュニケーションをとっていることなどがわかっています。

その他、ビジネスモデルや戦略、予算、挑戦の仕組みなどにおいてDX銘柄企業とDX認定未申請企業との差がつくポイントとして挙げられています。

DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)(METI)

出典:デジタルトランスフォーメーション調査2021 の分析

 

まとめ|政府の指標や診断なども利用し、自社のDX推進に役立てよう

2020年の調査レポートをについて詳細をご紹介しました。デジタルトランスフォーメーション(DX)について基本的な取り組み方がわかりやすくまとまっています。デジタル初心者でも理解しやすい内容になっているのではないでしょうか。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する理論や現状はわかっても、やはり気になるのはコストではないでしょうか。「2025年の崖」問題としてもあげられたレガシーシステムの入れ替えやDX推進のための人件費、その他様々なコストが見込まれます。しかし、生き残れないとなれば、意味がありません。まずは自社の課題を洗い出し、どのようなデジタルトランスフォーメーション(DX)が実現できるのかを検討し、短期的な投資と長期的なリターンをしっかり考えてみる機会にしてはいかがでしょうか。

 

 

ライタープロフィール

パプリカ

パプリカ

外資系総合商社と総合マーケティング支援会社にて法人向け営業職を経験。 世の中にあふれる情報をかんたんにわかりやすく、一人ひとりに合ったかたちで伝えることをミッションに活動中。