デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の5つの課題と解決策

デジタルトランスフォーメーションの推進が求められる中、企業が陥りがちな5つの課題と解決策をご紹介します。うまく推進できている企業の5つのポイントも確認しながら、自社がつまづきそうな点を把握しておきましょう。

「2025年の崖」という言葉を耳にしたことがある方もいるでしょう。これは経済産業省が発表した問題で、2025年から年間で現在の約3倍、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。その原因は「IT人材の不足」と「基幹システムの老朽化」。これらを乗り越え、企業が競争に生き残るためにも、デジタルトランスフォーメーションが求められています。

ただし、デジタルトランスフォーメーションを実現するには、それを阻むいくつかの課題を解決する必要があります。そこで今回は、5つの課題とそれぞれの解決策、そしてDX推進を成功させるための5つのポイントを見ていきます。

 

何が難しいのか?DXを阻む5つの課題・解決策

では、デジタルトランスフォーメーションの推進を阻む課題を見ていきます。それぞれに対する解決策もご紹介します。

課題1.経営戦略・経営トップのビジョンがない

経営トップのDX推進に対するビジョンがないことが、大きな課題となることがあります。

DXに失敗してしまう要因に多いのが、経営陣から担当者に丸投げしてしまうケースです。社内の一部のみでDX化が進み、全社的には広まらないことがあります。

解決策1.DX推進で実現したい目標を定め、ガイドラインを策定する

経営戦略からDX化に対するビジョン・目標を定め、ガイドラインを策定することが解決への一歩です。経営トップが描けない場合は、デジタル戦略を提案できる経営層もしくはコンサル会社に依頼し、ガイドラインを策定しましょう。

経済産業省の「DX推進ガイドライン」にも、「デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠である」とあります。

課題2.既存システムのレガシー化が進み、更新・移行できない

既存システムが老朽化していて、かつ、簡単に移行ができない状態になっていることが課題の一つとして挙げられます。

現時点でも、IT関連費用の約8割が、現行システムの維持管理に使われているというデータがあるほど、日本企業は「攻めのIT投資」を行わず現行システムを使い続けているのです。これにより、DX化で移行しようとしてもできない、もしくはかなりの負担がかかる可能性があります。

解決策2.順次レガシーシステムを刷新していく

解決策としては、段階的にレガシーシステムを刷新し、クラウドの積極活用を行っていくことが求められます。

システム維持管理のうち、頻繁に変更やメンテナンスが必要な機能については、クラウド上に速やかに移行したいところです。そうすれば、保守にかかっていた負担が一気に軽減するはずです。

また、肥大化したシステムのうち、不要な機能はなくし、重要な部分のみ情報整理しながら移行を進めていきましょう。

課題3.社内外でデジタル人材が不足している

デジタル人材・IT人材が不足していることが3つ目の課題です。仮に優秀なデジタル人材を確保できていたとしても、先ほど触れたとおり、IT関連費用の約8割が現行システムの維持管理に当てられていることから、老朽化したシステムのメンテナンスに追われていることもあります。

社外に目を向けたとしても、日本においてIT人材の7割以上がツールベンダー企業におり、ユーザー企業におけるIT人材の確保と教育が課題となっているのです。2030年には45万人以上のIT人材が不足する、と経済産業省の「IT人材需給に関する調査」で推計されています。

解決策3.IT人材の育成・獲得に向けた採用・教育を行う

IT人材の育成・獲得に向けた採用や教育を行っていきましょう。

DXを推進するには、構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織を牽引し、実行できるような人材が必要です。外部ベンダー企業に任せることなく企業自らが確保できるような行動をしていきましょう。

また、常に新しい技術に敏感になり学び続ける人材のため、専門性を評価する仕組みや学習の仕組みを導入するのもポイントです。

課題4.IT関連予算の戦略的な活用ができていない

短期的な観点からシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守・運用費が高騰してしまい「技術的負債」となっているケースもあります。この場合、技術的負債を返済することができず、戦略的なIT投資に資金・人材を振り向けることができません。

日本はアメリカと比べても、「攻めのIT投資」が進んでいないことも指摘されています。

解決策4.ITツール導入・システム開発などの検討体制を整える

技術的負債を解消して、デジタルトランスフォーメーションにつなげるためには、ITツール導入やシステム開発などを検討する体制をつくる必要があります。

既存システムや情報資産の現状を分析・評価し、仕分けることが大切です。例えば、レガシーシステムのうち、頻繁に変更が発生する機能はクラウド上で再構築したほうがよいでしょう。肥大化したシステムの中に不要な機能があれば廃棄し、あまり更新が発生しない機能は現状維持を選びます。

こうした棚卸し作業を始めることで、一歩DX化へと近づくことができます。

課題5.部門間の軋轢が生じて推進できない

デジタルトランスフォーメーションを推進しようとすると発生するのが、部門間の軋轢です。これは、企業内で事業部ごとに個別最適化したツールやシステムを既に活用している企業で起こりやすいでしょう。

DX化として全体最適化を試みると、反対意見が出てくるなどなかなか進まないケースがあるのです。

解決策5.DX専門プロジェクトを立ち上げ、推進計画・方法を全社に共有する

対処法としては、DX推進の専門部署やプロジェクトを立ち上げ、協力体制を仰ぐようにすることが一つ挙げられます。DX専門プロジェクトチームが、各部署のヒアリングを行ったうえで、DX推進計画や方法を全社に共有し取りまとめを行います。

それでもうまくいかない場合は、設計として全社で保有しているデータプラットフォームを構築し、全体最適化しても問題が発生しないような仕組みをつくる必要があります。

 

DX推進を成功させるための5つのポイント

ここまで課題と解決策を見てきましたが、DX推進を成功させるためのポイントは何でしょうか。5つに絞っておさらいします。

ポイント1.経営層がビジョンを明示し、社内全体を巻き込み推進する

経営層が経営戦略・ビジョンを提示し、しっかりとコミットして社内全体を巻き込んで改革を行っていくことが重要です。経営層に求められていることは、デジタル技術を実際に利用することではなく、デジタル技術によってどんな価値を生み出していくのかを明確にすることです。

DXを推進していくためには、経営層がしっかりとデジタルトランスフォーメーションの重要性を理解し、明確なビジョンのもとに意思決定を行って予算や人材を割り当てることが求められます。

ポイント2.全社として一貫性のあるシステムを構築する

次に、DXを実現するうえで、社内のデータやデジタル技術を戦略的に活用できるような、一貫性のあるITシステムを構築することが大切です。

レガシーシステムを一新するために、事業部単位でDXに取り組んでしまうと、個別でツールを選定・導入し、その後連携させることができなくなる可能性があります。

現状のシステムを分析し評価したのち、システム同士を連携してスムーズに活用することができるような状態を作り上げることが求められます。そのためには、全体を俯瞰してシステム構築できる人材が必要です。

ポイント3.DXを推進できるIT人材の確保・育成を行う

一貫性のあるシステム構築には、設計や企画ができるIT人材の確保と育成が大切です。

人材確保のために、採用活動を行ったり、教育制度を整えたり、評価制度を見直したりする必要が出てくる企業もあるでしょう。作業が増えて負担になりますが、優秀な人材を確保するためには必要です。

DXをうまく推進できている企業では、経営層、事業部門、情報システム部門から少人数のDX推進チームを組成し、トップダウンでDXを行っているところもあります。

ポイント4.エンジニアに依存しないITシステムを導入する

DX推進にあたり導入するシステムは、クラウドベースの汎用的なシステムか、ノーコードで開発されたITシステムをおすすめします。こうすることで、非エンジニアでも適切なIT運用を継続できます。

これまでのレガシーシステムは、エンジニアをはじめとしたIT人材が保守運用まで行っていたところを一新し、全社として使いやすいシステムに切り替えることが重要です。

ポイント5.システムありきではなく、現場のプロセスを元に考える

最後に、デジタルトランスフォーメーションの推進にあたって、業務改善をシステムにあわせて行っていたところを、現場の業務にあわせる形で行っていきましょう。

DX推進においては、ITシステムを活用して業務プロセス自体を変革していくことが求められるため、現場にもとづいたシステムを構築していくことが求められます。

 

欧米・欧州では進んでいるのに、なぜ日本ではDXが進まないのか

DXをはじめとしたIT化が、日本で遅れていると言われていますが、アメリカや欧州でDX化やIT化が進んでいる理由を考えてみましょう。

アメリカでDX化が浸透しやすい理由には、国土が広く人力では対応できず、IT技術に頼るしかなかったり、人口が多くアナログで情報を管理しきれなかったりすることが挙げられます。

また、人口が多いとアナログで情報を管理することも難しく、文化・言語の違いで従来から統一フォーマットが必要とされており、DX化しやすかったとも考えられます。

欧州では、雇用規制が厳しく労働工数管理が厳密な国が多いこともあり、労働時間を守ったうえで仕事を終わらせるためにも、DXが推進されやすいのでしょう。

一方で、日本は通信環境においては世界でもトップクラスです。日本全国で4Gが繋がるというハード面は整っていますが、ソフト面では改善しにくい文化なのかもしれません。

 

まとめ|経営から現場まで巻き込んだDX推進がポイント

デジタルトランスフォーメーションが求められる昨今、経営層がよくDXを理解していなかったり、途中で現場任せになったりすることで、途中で止まってしまうことがあります。

ガイドラインの策定やロードマップ、具体目標の設計ができていても、経営層が現場まで巻き込んでDX推進していくことがポイントなのです。特にビジョンやゴールが不明確な場合、DX導入が失敗に終わってしまう可能性が高まります。

今回ご紹介した課題・解決策をもとに、自社がどこでつまづく可能性があるのかを押さえ、先立って対策をしていきましょう。

 

 

ライタープロフィール

パプリカ

パプリカ

外資系総合商社と総合マーケティング支援会社にて法人向け営業職を経験。 世の中にあふれる情報をかんたんにわかりやすく、一人ひとりに合ったかたちで伝えることをミッションに活動中。