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2023.06.21 掲載 2024.04.01 更新

【連載】クールアンサンブル ~人事×財務×経理が奏でる!煌めく音達♪~ 第六回「Z地方の普通で刺激的な風景」

経理代行によって業務の効率化、コスト削減を実現する

FOC経理アウトソーシング

~これまでのあらすじ~
TOARU株式会社で働く、人事部主任の館林、財務部課長の内藤、経理部部長の関口といった三人らが主人公。彼ら・彼女は、テレワーク期間中、社内のチャットシステム上での交流がきっかけとなり、意気投合する仲になった。三人が集う場所は、遊休資産が眠る、“視聴覚室”。
 その一方で、主人公の一人である財務部課長 内藤アヤカは、シニア層の男性部下ミズノ氏と共に、自社所有資産の一つである、Z地方にある倉庫へと赴いた。そこには、以前、工場として活気づいていた頃の機材や機械、部品類が眠り、二人は、これらに再び、息吹を取り戻してもらうため、動き出そうとしている。方向性としては、Z地方との融合性を取り入れた、真の意味での“資産有効活用”。
経理部部長の関口の部下であるA課長も加わり、Z地方の市章である“錨”(アンカー)をヒントにした、プロジェクトの展開を図ろうとしている。

“Z地方”を探求する、内藤課長&A課長

 季節の移ろいを感じさせる波の音。そして、ややハイトーンの海鳥の声が背中に響く。もちろん、強さはそれほどではない。やさしさが背をさする。
財務部課長の内藤アヤカと経理部のA課長は、Z地方の街を再び訪れていた。Z地方の市章である“錨”。アンカリングがどのようなものなのか、探求するため、人々との交流を図ろうとしていたのだった。
「A課長、次はZ市役所の文化課にアポを入れてはどうかしら?Z地方が港町として、どのような機能を果たしていて、人々の暮らし模様のこととか、取材してみましょうか・・・」
 内藤がA課長に提案する。A課長は、内藤の言葉に対し、『そうですね・・・』と笑顔で応答すると、
辺りを見回していた。しばらくすると、急にA課長の足取りが速くなった。内藤がそれに気づくと、彼女も駆け足になった。二人が向かう先に、Z市役所があるのか?
「あれは何!?」
二人の声がユニゾンに響いた。互いに顔を見合わせながら、同じ方向に指をさす。
その先には、何やら簡易な造りの建物の存在があった。恐らく、築10年ほどは立っているだろう。強く存在を主張しているわけではなく、自然に馴染んでいるような外観だ。外塗の壁は白く、温かみが感じられる。又、二人は声を揃える。
「海の家?」
とっさに感じたまでを言葉に発した両課長。その建物の正体とは・・・?二人は、ゆっくりとそこに向かって近づいて行った。

人事部内での“アンカリング”が発生。

「係長、人事考課のシステムを改訂するのなら、あの機能を浸透させましょうよ。上司と部下のインタラクティブな関係性を構築するための・・・人事部内では、機能しているような気がしますし・・・」
【詳しくは、第二回をご参照ください。】
 一人の人事部員の声が響き渡った。発信先にいるのは館林係長だ。彼はその部員の問いに対し、応えようと体を向けた。他の部員も同調したのか、二人の方に注目する。
「もちろん、懸念するところもあるでしょう。どちらかと言えば、古い考えの役員の人たちが理解するのか否かとか、あと、自身のマネジメントぶりが透明化されるわけで、それを危惧するマネージャーの方もいるかもしれないし」。
他の人事部員が的を射た意見を発言する。すると、館林係長は、自席を立ち、“ポンポン”と手拍子をした。互いの顔を見つめあう人事部員。ああ、そうか、『集まってください』。といった意味なのか。皆はすぐに理解し、館林の席を囲んだ。一人が笑顔を含ませながら発言した。
「私たち、係長が飼っている海鳥ではないですよ。ちゃんと、言葉を使って指示してください」。
まったくの正論だ。でも、館林係長を囲む円はなごやかな雰囲気を包んだ。次の場面では、自然なミーティングへと移り変わる。
「この度の人事考課システム改訂の場は、我われ人事部だからこその、拘りですよ。人材の潜在能力を引き出す機能なのですから、重みもあります。新しく、杭を打ち込む感覚でしょうか?10年以上も変革のないシステムの改訂については、我われの役目としても、やり遂げる必要があると思います」。
「本質的で機能的な仕組み。決して、上司からの一方的な評価に留まらない透明感のあるシステムが必要ですよね」。
口々に意見が交わされる。人事部員それぞれの思いが徐々に積み重ねられていく。
(新しく、杭を打つ・・・)館林係長は、心の中で部員の言葉を思い返していた。そして、応答する。
「私も改良点を加えて、上層部に提言しましょう。皆さんも、今週中までに意見をチャット機能で発信してください。トントンと杭を打っていきましょう」。
 館林の声がクリアに人事部室に響いた。“トントン”といった言葉が杭を打つリズムに感じたのは、一人二人ではないだろう。

Z地方の“白い家”の正体とは・・・?

「あの~すみません・・・ちょっと、よろしいでしょうか?」
こちらは、またもやZ地方の様子だ。内藤とA課長が恐る恐る、白い“海の家”らしき建物のドアをノックした。どうやら、人の気配が感じられる。小声で内藤が挨拶をするも、中からは、何やら機械音が聴こえてきて、人の声による応答はない。今度は、A課長が声を出そうとした、その時だった。
 ドアがいきなり、ギィーと軋む音と共に開かれたのだった。そこには、70歳代に近いと思われる初老の男性が猫背ぎみに立っていた。顎髭の処理はなされていないが、不思議と清潔感が漂っている。それは、この男性とは、あまりに不似合いな香りのせいか・・・?
「いい香りですね~潮の薫りとは、違うみたいですが・・・すみません。失礼しました。私たち、こういう者です」。
 思わず、素直に感じた事柄を初老の男性に伝えると、自身らの非礼に今さらながら気づく二人。慌てて、名刺を差し出す。
 初老の男性は、老眼が影響しているのか、眉間に皺を寄せて、二枚の名刺を上空に掲げて、確認するような仕草を見せた。すると、男性は驚いたように声を出した。
「TOARU株式会社?あーミズノさんのところの、社員さん?いや、きっとあなた方は、あのおじいさんの上司さんでしょう?まあ、どうぞ。ここを見学して行ってくださいよ。皆がここで、好き勝手に作業をしているだけですがね」。
 男性が発したセリフから、意外な人物名が聴こえた。
(“ミズノさん”なぜ?おそらく、偵察のために、一人でZ地方に訪れ、ここの場所を知ったのか?それなら、なぜ、ミズノ氏は我々にそれを教えてくれないのだ?)
 少し憤りを感ずる内藤。そんな彼女をよそに、A課長は、初老の男性の厚意を素直に受け入れ、“白い家”の奥へと足を運んでいる。男性は、内藤の心の声に気づいたようだ。
「あー悪く思わないでくださいね。内藤課長さん。ミズノさんは、OFFでこの場に訪れたのですよ。まあ、じっくりと見学して行ってください」。
 男性は、清々しい笑みを浮かべながら、内藤を“白い家”の奥へと案内しようとする。辺りは、相変わらず、いい香りを漂わせている。“トントン”“シャカシャカ”といった擬音語がしっかりと聞こえる作業音が心地よい。そして、何となく躍動的。でも、どこかほのぼのとしている感じがする。
 周囲は、年代や性別の垣根を越えた人たちが、活き活きとした表情で、木材や数々の色調の布、そして、形が様々ある貝殻を使いながら、黙々と創作活動に打ち込んでいる。とても、興味深い気持ちで見入ってしまう内藤。そんな気持ちと同調したかのように、A課長の歓喜な声が家中にこだました。
「内藤課長!ちょっと!来てください!“いい香り”の正体見つけました!」
A課長の声の方向に進む内藤。ところが、進むも彼女の姿が見えない。すると、今度は足元から、彼女の声が響いた。
「穴を掘っている方がいます!すごいです!見たこともない、美しいダイヤモンドのような欠片が砂の中で、輝きを放っています!」
 A課長の声の方向に歩き出す内藤。そこには、十分に海水を含んだ重みのある砂の中が、確かに美しく煌めいている、無数のダイヤモンドの欠片のような存在があった。そして、この白い家に招かれた際に、漂ってきた、素敵な香りも感じられる。自然発生したものなのか?
一体、この建物の用途は何か?Z地方の街おこしの一環なのか?ミズノ氏は、ここで私たちと同じ衝撃を受けたのか?
 そんな平凡すぎる、内藤の心中での質問は、既に初老の男性の胸に届いているかのようだった。
「なーに。皆、色々な気持ちを持って、ここで作業しているだけですよ。不可思議で、いい香りのするダイヤモンドの欠片のような物を掘ろうとする者。生活のために、小物を作って売る者。理由なんて人それぞれ。まあ、こうして、縁あって、TOARU様のミズノさんやお二人が来訪してくれた。どうです?楽しいでしょう?」
 洞穴から漂う、謎めく良い香り。上部からは、波の音。海鳥たちの鳴き声も融合していた。

視聴覚室内で響く音色は・・・?

「館林さん、浮かない顔しているね~どうしたの?」
いつもどおりのメンバーが集うはずの、視聴覚室での昼休み。しかしながら、本日は館林係長と関口部長の二人しかいない。関口部長が真っ先に気づいたのは、館林の混とんとした表情だった。心配する気持ちを素直に表す関口。人事考課システムの進捗度が芳しくないのだろうか・・・?
「人事考課システムの改訂は、きっと順調ですよ。ただ、我われの意図とは全く異なる構成になりそうです。関口部長も、経理部長なのだから、解かるはずです」。
 やはり、そうなのか・・・館林の返答に頷いてしまう関口。どうやら人事考課システムの改訂にあたり、
何らかの外圧がかかり、高額な設備投資の方に向いているとの情報が下りてきたのだった。まるで、本質的なことを無視しているのか?それとも、上層部がより良いものを採用するといった意図なのか?これから、経理部長として、精査するところであった。
 そんなモヤモヤが二人の間に漂っていたその時、視聴覚室の扉が潔く開かれた。そこには、勿論、内藤の姿があった。笑顔ではあるものの、どこかしら、凛とした雰囲気がある。彼女の開口一番に耳を澄ます、関口と館林。
「これ見て!Z市に住む一部の方が、掘り当てたダイヤモンドダスト!いい香りも放っているでしょう。
もちろん、“一部”よ。でも、これが、その人にとっての“アンカリング”。大切な錨の位置で、これからも掘り当てるそうよ。町おこしとか、そんな平易な理由ばかりではないのよ。その人なりがそれぞれ、大切だと思うことに没頭しているのよ」。
内藤の声音は、視聴覚室中に混じりけもなく、クリアに響いたようだ。もちろん、関口と館林も、内藤のプレゼンに対し、前のめり姿勢で傾聴している。白い家での出来事には、とても興味がある。特に“ダイヤモンドダスト”とは、何だろう?
 三人は、自身らが身を置くTOARUとZ地方を非対称に俯瞰していた。当初は、遊休資産の有効利用を目的にZ地方との融合を模索していたが、逆にZ地方から学ぶべきところが多そうだ。
 人材を活性化させて、自社の企業価値を向上させる、といった基本どころついて、TOARUの組織模様の中にブレはないのか?人事考課システムの改訂の行く末も、懸念するばかりだ。
 そんな思案の中、関口部長はポツリとつぶやく。
 「実は、A課長が本日、辞表を提出してきました。Z地方に移り住むのだそうです」。
 館林と内藤は、関口のセリフに対し、驚きながら互いに顔を見合わせていた。

次回へ続く

Z地方に住む人たちが、個々の思いで、繰り広げていた創作活動は、やがてTOARUにも、
影響を及ぼすのでしょうか?少なくとも、人材を活性化する機能である、人事制度のどこかしらに反映できると良いかもしれません。
さて、あなたが身を置く企業の組織模様はいかがなものでしょうか?
続きは次回。どうぞ、お楽しみに!

田村夕美子

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田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。(HP:https://giftwind.jp/)経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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