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2016.05.02 掲載 2023.07.12 更新

社員の長時間労働に要注意。企業に求められる安全配慮義務とは

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過重労働
企業の経営資源として「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つがよくいわれます。このうち「ヒト」は、他の経営資源を生み出すことから、企業にとっての「最も重要な経営資源」といえます。
優秀な人材の確保・育成・活用を図ることは、企業にとって重要な経営課題です。しかし、それがうまくいかない理由として挙げられるのが過重労働です。
 

■過重労働対策は経営課題

長時間の残業などの長時間労働が行なわれると、職場に対する満足感が低下するだけでなく心身の健康を害することにも繋がりかねません。結果、業務効率の低下や休職や退職という事態を引き起こし、最も重要な経営資源である「ヒト」に悪影響を及ぼすことになります。
週労働時間と満足度
2013年に行なわれた「従業員の労働時間と休暇に関する調査(労働者調査)」においても、週の労働時間が50時間以上になると過半数の労働者が労働時間に対する不満を感じるようになることが明らかになっています(図表1参照 ※出典:厚生労働省「働き方・休み方改善指標」パンフレット)。
 

■過重労働は労災認定の危険性があり、企業にとってもリスク

一般に、企業が負う労災リスクとしては、業務中の事故を原因とした業務災害リスク、そして前回の『労務管理担当者なのに過重労働?過重労働の定義とは?』でみたように、労働時間が過重であることによって引き起こされる脳・心臓疾患リスク、また精神的負荷を原因とした精神障害リスクがあります。
このうちの脳・心臓疾患リスクと精神障害リスクについて少し詳しくみていきます。
 

■依然として高い労災補償数

脳・心臓疾患の労災補償状況
(出典:厚生労働省 平成 26 年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」)
平成26年度の脳・心臓疾患に関する労災補償の請求とその支給決定件数を見ると、それぞれ763件と277件となっています。平成25 年度と比べて減少しているものの、 依然高い数値にとどまっています。
(ちなみに、業種としては、「運輸業・郵便業」、「卸売業・小売業」、「建設業」、「製造業」の順に支給決定件数が多くなっています。)
 

■精神障害の労災請求件数は過去最多

精神障害の労災補償状況
(出典:厚生労働省 平成 26 年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」)
平成26年度における精神障害の労災請求件数は 1,456 件と過去最多となっています。また、支給決定件数は 497 件です。前年度の 平成25年度(436件)においては4 年ぶりに減少したものの、平成26年度は残念ながら上昇に転じてしまっています。
(ちなみに、業種別に見ると、「製造業」、「医療・福祉」、「卸売業・小売業」、「運輸業・郵便業」の順に支給決定件数が多くなっています。)
 

■労災認定によってこうむる企業リスクとは

全ての脳・心臓疾患、精神障害が、長時間労働が原因で引き起こされるわけではありませんが原因のひとつと考えられます。
労災認定を受けるリスクは、発覚することによって労働安全衛生法100条や労働安全衛生規則97条によって50万円以下の罰金に処せられることや書類送検されたことによる企業としての信用毀損リスクにあります。
一度、失った信用を取り戻すことは特に昨今のネット社会においては企業にとって非常に大きな負担を伴うことになるでしょう。
また、労災事故が発生したときに、誠意ある対応を全ての企業が取れてきたとは限りません。あってはならないことですが、一部には労災が発生すると、事案によっては管轄労働基準監督署による現場検証などがなされ、その際に改善指導をされることを避けるために、労災保険を使用することそのものを禁じる経営者も現実に存在するようです。
 

■日頃から安全配慮義務を講じておくことが必要

企業が安全配慮義務を講じておくべきことで「労災を隠さない」ことは当然として、月当たりの時間外労働時間が45時間を超えてくるあたりから、長時間労働を抑制するための何らかの措置を講じている仕組みを作っておく必要があります。
たとえば、労務管理の担当者が確認して、仕事の進め方に問題があるのか、それとも人員体制に問題があるのか(マンパワーが足りていないのか)を見極める必要があります。さらに昨今は、チーム内でパワハラ(過大な要求を行う)やセクハラ(性的な要求を断ったためにチーム内で不利益を与える)といったハラスメントに原因がある長時間労働も珍しいことではなくなってきました。
また、月当たりの時間外・休日労働が80時間を超えた場合には努力義務、100時間を超えた場合には企業の義務として、対象となる労働者が申し出を行った場合には医師による面接指導を受けさせる必要があります。

【医師による面接指導の対象となる労働者は?】
時間外・休日労働時間(※1)が1月あたり100時間を超え(※2)、かつ、疲労の蓄積が認められる者(申出による)(※2)
※1 「時間外・休日労働時間」とは、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間のことです。
※2 80時間を超えた場合に労働者からの申し出があった場合には努力義務となっています。
※3  ただし、期日前1月以内に面接指導を受けた労働者等、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた者を除きます。

企業が仮にこうした安全配慮義務を怠ると、労災認定による企業側の責任を問われる可能性が大きく高まります。
有名な判例に、日本を代表する大手広告代理店の事例があります。
新入社員のAさん(男性・24歳)が、慢性的な長時間労働に従事していたところ、うつ病に罹患し、自殺するに至ったことから、遺族である両親が会社に対して損害賠償を請求した事案です。
本件は最終的には会社が1億6,800万円払うことによる和解となりました。もし事前に過重労働を察知して改善していれば、男性が亡くなることも、会社が賠償金を払うこともなかったでしょう。長時間労働の習慣を放置して安全配慮の義務を怠った企業の責任です。
企業の安全配慮義務違反は社会的責任が重いです。さらにそれが招く経営リスクは会社の存立をも脅かす非常に悩ましく、そして厳正な対処がもとめられるべき事項です。自社はしっかりと対策ができているか、いま一度確認してください。

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ライタープロフィール

横井 祐

特定社会保険労務士兼DCプランナー
特定社会保険労務士、DC(Defined Contribution Plan 確定拠出型年金)プランナー。自動車メーカー系総合商社、ベネッセスタイルケアを経て2010年ヨコイ・マネジメントパートナーズ設立。 2015年度厚生労働省過重労働対策セミナー&労働条件相談ホットライン検討委員会メンバー。 介護保険、人事マネジメントに関する書籍等の執筆、社会保険労務士業、経営コンサルティングサービスなどで全国各地の顧問先のお客様と日々奮闘中。

横井 祐

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