IoTとインダストリー4.0は生活と産業を変える。大事なことはIoTで取得するデータを見極めること

未来を想像する

進化するIoTによって変わるオフィスでの働き方。何がより便利になる?」ではオフィスの働き方にフォーカスして、IoTの影響を考察しました。

今回はオフィスだけではなく、産業そして私たちの生活がどのように変わるかを考えていきます。

 

■IoTとは何か

まず、IoTの概要をおさらいしておきます。

IoTとはInternet of Thingsの略で、日本語では「モノのインターネット(化)」と呼ばれます。これだけでは何のことかわかりづらいですが、この場合の「モノ」とは単なる「物理的なモノ」を指すのではなく、「ありとあらゆるモノ・コト」です。「ありとあらゆるモノ・コト」がインターネット上に情報化されて蓄積され、活用されるということです。

IoTのサイクルは、大雑把に言って①センシング(センサーを使用した計測)によるデータの取得、②インターネットで(クラウドへの)データの蓄積、③データの分析や対応への判断、④インターネットを介した対応の実施となります。

実は、一部の業界ではIoTは少し前から実現されています。
コピー機の故障連絡や消耗品の補充連絡、トラックや重機の運行情報、設備の稼働状況などのデータが機器に搭載しているセンサーから吸い上げられデータベースに送信されているのです。

そのため、真新しいことではないのですが、こうした個別産業で起きていたインターネット接続によるデータ取集と分析・対応が「ありとあらゆるもの・こと」に広がり、コンセプト上IoTとして再整理され、注目を浴びているのです。

 

■なぜIoTが急速に普及しているのか

“「ありとあらゆるもの・こと」がインターネットに接続される”と考えられるようになった背景は、テクノロジーの進歩も大きな要因であり、主に以下の2点が挙げられます。

1. センサー、インターネットの回線スピード、クラウドなどデータ記憶容量の拡大といった情報インフラが揃い始めている
2. 難易度が増している分析などの高度な作業がビッグデータやAI(人工知能)で可能になり始めている

ニュースなどでIoTの典型事例としてよく出てくるのは、スマート家電や家の鍵をインターネットで監視・管理するスマートロックといった矮小な例です。

しかし本質はとんでもない世界が登場しかねないほどのコンセプトです。

「ありとあらゆるモノ・コト」がデジタルデータ化され、対応が可能になるということのインパクトは生活や産業を一変させる可能性があります。

経済学者のジェレミー・リフキンは「限界費用ゼロ社会」で、IoTは効率性や生産性を極限まで高めるとし、現在の資本主義経済が一変すると予測しています。

交通機関、人体、自動車、住宅、家電、ありとあらゆるものにセンサーが接続され、逐一全ての状況が収集、把握され、人またはAIなどのシステムを介して、そこから得たデータに応じた対応策が指示され、実行に移されることになります。これらの流れが瞬時にできたとしたらどうでしょうか?

IoTとは、世界中の人間と外部の世界(モノ)、あらゆるものが、センサー、インターネット、データベースといったテクノロジーで神経組織のように網目状に繋がり、統合される可能性を秘めているのです。

 

■インダストリー4.0とは何か

同様のコンセプトをとくに製造業で構築したモデルがインダストリー4.0です。インダストリー4.0はドイツ政府が提唱し始めたコンセプトで、第4次産業革命にたとえられています。

インダストリー4.0では設備にセンサーが取り付けられ、設備稼働状況がシステムに収集・フィードバックされ、指示が自動発行されたり改善指示や計画変更が行われたりする仕組みです。

やや専門的で抽象的になりますが、インダストリー4.0は情報レイヤーがコンセプト化され、最下層のセンサーで情報を取得するセンシング領域、そのひとつ上位のPOP(Point of Production:作業指示と製造実績収集を行う)領域、さらに上のMES( Manufacturing Execution System:製造実行システム。製造指示と製造実績を取集する)領域、さらに上位のERP(Enterprise Resource Planning: 計画指示と実績収集、受注生産・出荷といった販売機能の統合)領域の適正な結合が謳われています。

つまり、センサーから得た情報を作業指示、製造指示、計画指示といった複数のレイヤーを統合することに用いられるのです。

これによって製造現場がよりフレキシブルになり、大きな計画変更に耐えられるような仕組みで統合されれば、効率的な最適生産ができ、コストと納期を最適化できるとの考え方です。

インダストリー4.0は、まさにIoTの産業への特化版ともいえる概念です。

 

■IoT、インダストリー4.0で大事なこと

IoTやインダスリー4.0はコンセプト主導で動いているため、いまだ実態が見えにくく、バズワードで終わるものと危惧されているかもしれません。

たしかにまだコンセプトにテクノロジーが十分に追いついているとはいえません。しかし、今後世界を大きく変える可能性のあるコンセプトですから、十分理解して逆に活用していく姿勢が必要です。

 

■IoTは目的があってこそ役立つ

大きな可能性を持つIoTですが、日本での理解や取り組みは小さく、センサー技術やクラウドや通信などのITによる部分的な適応レベルでの議論が多く、より大きな枠組みで考えることが重要になります。

IoT、インダストリー4.0の2つのコンセプトで重要なことは、ビジネスモデルコンセプトを描くことと、データの統合と利用方法から逆算した収集と蓄積をすることです。さまざまなデータ取得ができるIoTですが、あくまでも手段であって目的ではありません。そしてその利用目的と合致したデータが「どれだけ希少か」が重要になります。

想像してみましょう。医療に置いて、患者や検査を受けた健康な人を含め、膨大な人体データを握った人が、何ができるでしょうか。きっと、今後の病気の発症を予測して先回りして治療の示唆をしたり、保険料率を決める示唆ができたり、今後の医療費の予測ができるでしょう。

製造業ではどうでしょう。自社商品の需要の情報を握ったものが需要予測から商品ラインアップを変えて、生産や調達、物流をコントロールできるのです。また、設備稼働の情報を握ったものが、保守や点検、部品交換や設備買い替えの示唆ができ、顧客を囲い込むことができるのです。だれでもできる作業の付加価値がますます減り、分析し、判断し、指示を出す仕事にますます価値が集中していきます。

重要なことは、IoTやインダストリー4.0がどのような生活や産業の将来像をもたらし、ビジネスモデルがどう変わり、どのポイントを押さえれば全体を統合して制御できるかを把握し、いち早くそのために必要なデータと仕事の指示の流れの中枢を握ることです。

IoTに付随する個別技術は重要ではありますが、あくまでも要素でしかありません。技術議論にはまり込む前に、どこに「関所」があって、それを押さえるために知恵を絞らなければならないのです。ビジネスモデルを描き、「関所」を握ることを考えることが、テクノロジー化した社会では最重要事項です。

ライタープロフィール

石川 和幸

石川 和幸

経営コンサルタント

早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。