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2016.09.13 掲載 2023.10.24 更新

労務管理とは?企業における重要性と仕事内容、気を付けなければいけないことは?

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FOC人事アウトソーシング

労務管理とは、従業員の労働時間や賃金、福利厚生など、労働に関することを管理する仕事です。具体的な業務内容や労務管理の必要性、今後求められている変化、気を付けておくべきことを解説します。

労務管理の仕事は社員に心地よく働いてもらうこと」では、人材の“メンテナンス”と称して労務管理の仕事を紹介しました。具体的に5つの業務(「労働時間管理」「給与計算業務」「安全衛生管理」「社員のライフイベントに沿って生じる必要な諸手続きの管理」「労使関係管理」)にわけて解説しました。 「ヒト」は会社にとって最も重要な資産です。いかにして社員のモチベーションを保つか、最大限に能力を発揮してもらうかを考え、施策するのが労務管理であり、人事部(会社によっては総務部)の重要な仕事の一つなのです。

今回は、そもそも労務管理とはなにか、具体的にどのような業務なのか、何に気を付けるべきかを解説します。

■労務管理の仕事

労務管理とは、従業員の労働時間や賃金、福利厚生など、労働に関することを管理する仕事です。労働時間管理や給与計算などが業務内容です。従業員の雇用管理、人事考課、採用、人材配置などは人事管理に含まれますが、会社によっては労務担当者が一緒に行うこともあります。

具体的には、労務の業務として以下があります。 ・労働時間管理 ・給与・福利厚生計算業 ・安全衛生管理 ・社員のライフイベントに沿って生じる必要な諸手続きの管理 ・労使関係管理(労働組合との折衝も含む) 会社によっては、さらに以下の項目も仕事の一部です。 ・労働者の募集から採用 ・人事異動 ・社員研修の企画と実施 ・人事制度企画~実行 労務の仕事だけあって、「ヒト」に関わる仕事が大半を占めます。

「会社内の人材は適材適所になっているか?」

「人手不足や所属社員が多すぎている部署はないか?」

「社員は定着しているか?」

「社員が提供している労働に見合った報酬(給与)になっているか?」

「労働時間が管理されているか?」

などをしっかり検討していく必要があります。

また、「労務管理」というと社員の労働を細かく確認して管理するイメージを持つかもしれませんが、法的には労働基準法15条に則り、労働条件の明示として、雇用契約書に労働期間・労働時間、労働の対価、業務内容を明記し、労働契約を結ぶことから始まります。そして、実際に労働時間を管理し、給与計算などを行い、適材適所に社員を配置しながら、社員が働きやすい環境を作っていくのです。

つまり、企業が活動していくうえで大きな割合を占める「人件費」を抑え、かつ社員のモチベーションを保つ土台を作り、利益を伸ばすために、労務管理は必要不可欠な仕事なのです。会社を存続させ、大きくしていくためには、労務は長期的かつ経営者的な視点が求められます。

■労務管理の具体的な仕事内容

先ほどご紹介した以下の労務の仕事内容を、より具体的に見ていきましょう。

・就業規則管理 ・労働期間、労働時間管理 ・給与・福利厚生計算業 ・安全衛生管理 ・社員のライフイベントに沿って生じる必要な諸手続きの管理 ・労使関係管理(労働組合との折衝も含む)

 

・就業規則管理

常時10人以上の従業員を抱える企業の場合、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長への届出義務が発生します。これは、労働基準法の規定により定められています。就業規則を変更する際にも届出が必要です。

 

・労働時間管理

従業員の労働時間が守られているか、労働時間が正しく記録されているかなどを確認します。いわゆる勤怠管理です。労働基準法では、法定労働時間が1日8時間、週40時間までと定められています。残業などの時間外労働や休日出勤には、別途手当の支給が必要です。また、36協定を締結していなければ、手当を払っていたとしても違法となります。

 

・給与・福利厚生の計算業務

給与を支給する際、労働保険料徴収法、健康保険法、厚生年金保険法、所得税法などの各法にて、明細を発行すべきことが求められています。給与明細には会社によって、所定勤務日数と出勤日数、所定労働時間と出勤時間、普通残業時間、深夜労働時間、休日労働時間、有給取得日数と有給残などの明記がなされることもあります。

 

・安全衛生管理

安全衛生管理は、労働安全衛生法に基づく各種の健康診断の実施などを指します。一般的には1年以内に1回実施される定期健康診断(労働安全衛生規則第44条)があります。この定期健康診断は「常時使用する労働者」が実施の対象となりますが、必ずしもフルタイムの正社員だけとは限らない点に注意が必要です。

 

・社員のライフイベントに沿って生じる必要な諸手続きの管理

社員が引っ越ししたら通勤手当の変更届や通勤経路についての申告をしてもらったり、結婚や出産をきっかけとした氏名の変更手続きを行ったりします。出産手当金、育児休業給付金、保険料免除の申請なども含まれます。

 

・労使関係管理(労働組合との折衝も含む)

労務管理の担当者には、労働組合の長などの代表者との団体交渉に応じたり、妥結結果を労働協約に取りまとめて、労働条件について各種の合意を交わしたりするなど、労使協調体制を目指す役割が求められることもあります。

 

・その他、労務が行う仕事内容

コンプライアンスや組織内に生じる各種のハラスメントなどの違法行為対策として苦情処理制度を設けることも労務業務の一環です。2020年4月から「パワーハラスメント対策」が法制化され、必要な措置を講じる必要があります。

また、従業員の退職により、社会保険・雇用保険の脱退手続き、労働者名簿の更新、退職手当の支給などを行う必要があります。また、休職手続きには、育児休業、傷病休職、介護休職など種類があり、それぞれに対する対処や給付金の申請などが必要です。
社会保険・雇用保険の加入手続きも、労務が行います。従業員の雇用にあたり、社会保険(厚生年金保険・健康保険)は雇用から5日以内、雇用保険は雇用開始日の翌月10日までに加入手続きが必要です。

■労務管理の必要性を逆の視点で考える

労務管理がなぜ企業にとって重要なのか、「労務管理(の担当者)がない場合」を想定するともっと分かりやすいでしょう。

例えば、各部署で勤怠管理をすることはできますが、労務担当者がいなければ、企業全体で働く社員一人ひとりがどのような労働を提供しているかを把握できなくなります。そのため、労働力提供の対価である「給料」の適切な把握と支払いが困難になります。

 

また、安全衛生管理(健康診断、ストレスチェックなど)、有給管理、産休や育児休暇、介護休暇なども管理できず、社員のワークライフバランスに大きな影響を与えることになります。

さらに、採用業務や退職社員の対応・管理する部署がなくなることで、全社視点でのヒトの管理が不透明になります。

このように「労務管理がない場合」、社員は労働環境に信頼がおけず転職やモチベーションの低下に直結することになり、この悪循環が続けば、最終的には「人材不足」に陥り、企業活動が継続できなくなってしまいます。

 

「ヒト」を“管理”“メンテナンス”するという表現で労務管理を見てしまうと、「束縛されている」「監視されている」というイメージが生まれがちですが、労務管理をしっかり行うことは、企業活動を大きく左右するだけではなく、社員一人ひとりにとっても働きやすい環境をつくることができるのです。

■日本の労務管理の特徴と迎えた転換期

このように重要な役割を果たす労務管理ですが、日本特有の事柄はあるのでしょうか。

日本の労務管理の特徴は、以前は「年功序列の賃金制度」「終身雇用」「労働組合」でした。戦後日本を立て直した「団塊の世代」がまさに、この日本独特の労務管理で行われてきました。

日本の丁寧かつ細やかな対応をする労務管理は、入社から退職まで安心して仕事ができる環境を提供しました。組合で社員が団結し、勤続年数と相乗して給料が上がることもありました。

しかし現在、日本の労務は大きな転換期を迎えています。

テクノロジーの進化によりIT・ベンチャー企業やフリーランスで働く人が増え、若手でも活躍するシーンが増えています。

実際に日本から世界へと進出する企業では、海外の企業と対等に渡り合うために、労務の考え方を変え、経験が浅くても実力があればチャンスを与えたり、固定観念にとらわれない新しい考え方で仕事を進める若い社員を評価しサポートしたりするようになってきています。

つまり、社会の変化のスピードについていくために、これまでの年功序列制ではなく、社員に最大限に能力を発揮してもらえるような労務制度に変革し、成果に対してきちんと評価する企業も多くなってきているのです。

さらに、少子高齢化が著しく進む日本において、「労働力の確保」は重大な課題であり、その問題に直面しているからこそ、労務管理は変わることを求められているのです。

もちろん、従来の労務管理のままの企業もまだまだ多く存在しています。しかし、企業活動が「日本」から「世界」へと変わっている中、ダイバーシティの対応、海外現地での労働力確保の問題など、今後はさらに現在の労務管理では対応できずに企業活動の継続が困難になっていくことは大いに考えられます。

■電子化による業務改善も求められている

ここで労務管理の現場業務まで想像してみると、電子化による業務改善も必要とされていることが分かります。

労務管理業務は、日頃から膨大な従業員の個人情報を取り扱います。法令に取り決められて保存期間が指定されている資料も多く、手間や時間、管理コストがかかってしまいます。必要な情報がすぐに取り出せなかったり、情報漏えいのリスクが高まったりもするので、労務業務の負担・リスクは大きいといえます。

具体的には、「法定三帳簿」と呼ばれる「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」は、労務管理において非常に重要で、労働基準法によって企業に対して整備・管理・保管が義務付けられています。法定三帳簿は、3年間の保存義務があります。違反をすると処罰の対象となります。

【労働者名簿】 従業員の氏名や性別、生年月日など、個人情報を記録する帳簿です。一般的な個人情報だけでなく、雇用年月日、業務内容、異動などの履歴、退職日と理由なども記載します。名簿の作成、保存は事業所ごとに義務付けられています。
【賃金台帳】 従業員ごとの賃金の支払状況をまとめます。賃金の計算期間、就業日数、就業時間、残業時間、休日の労働時間などといった労働時間の他、基本給、手当などの項目と金額、税金の控除項目などの金額についても必須です。
【出勤簿】 従業員の出退勤に関する記録をまとめた帳簿です。タイムカードなどで記録したものを出勤簿として扱い保管します。

これらを確実に保管し、いつでもすぐに取り出せる状態にする上で、すべて紙の状態で保管しておくことは難しいでしょう。そこで、労務管理システムを導入し、従業員の管理コストを下げる取り組みが広がっています。

労務管理システムとは、従業員の情報を一元管理し、社会保険、年末調整といった労務手続きを効率化できるシステムです。労務管理システムを導入すれば、具体的な業務の効率化が図れるだけではなく、法改正に合わせて変化させることが簡単にできることも特徴です。

具体的にどのようなメリットやシステムがあるのか、こちらの記事をご覧ください。

■人事管理と労務管理の違いは?

ここで改めて、人事管理と労務管理の違いをおさらいしましょう。

違いを見つけるために、それぞれの業務のポイントをひと言で表現すると、労務管理は「従業員の労働環境のベースを整える」仕事で、人事管理は適切な人数の従業員を揃えたり、より活躍できるようにサポートしたりして、「事業が円滑に進むように人材管理をする」仕事といえます。

人事管理とは、従業員の配置や育成に関する業務です。社員の新規採用や退職・解雇・転職に関する手続きなどが含まれます。イメージしやすいのは、採用面接や退職に関する部分ではないでしょうか。会社全体、部署ごとの人材配置などを考えながら、求人の募集や面接などの一連の流れを行います。

評価・人材育成も人事管理の一環です。従業員ごとにスキルやレベルに応じた適切な評価を行い、適材適所の人材配置を行います。その上で、研修の場を設けるなどして、少しでも早く戦力となって仕事ができるように成長させることも重要な仕事です。

一方、労務管理とは、労働条件や給与、保険に関する業務です。勤怠や給与の管理を行うのが分かりやすいと思います。労務管理によっては従業員のモチベーションを左右するため、重要な業務ともいえます。

給与だけでなく、社会保険や健康保険などの法定福利・福利厚生が義務付けられているため、法定福利を支払う準備も労務の役割です。その他、安全衛生面の管理を行い、従業員が快適な環境で仕事に取り組めるように改善していきます。また、ハラスメント対策も労務の役割とされています。

会社によっては、上記でご紹介した「人事管理」と「労務管理」をひとまとめにして、労務担当が業務を遂行していくところもあります。特に中小企業やベンチャー企業で人材が不足している企業では兼務であることが多いです。

■労務管理で気を付けておくべきこと

最後に、労務管理でとくに気を付けておくべきことを紹介します。 ・社員を縛り過ぎないこと ・コンプライアンス(法令順守)を果たすこと ・社員に対して優越な立場であると主張しないこと 上に挙げているのはあくまでも一例にすぎませんが、労務の仕事はあくまでも企業活動の一部にしかすぎません。同じ会社で働く者同士、どちらが上でどちらが下でという考えは間違いです(職位による上下関係はあります)。

もちろん、労務担当者として、社員に労働基準法などの法令に従うコンプライアンスを説明する、遵守することを周知徹底する必要はありますが、一方で厳しくかつ極端な接し方をしてしまうと、社員のモチベーションにも関わりますし、それが企業活動の損失へと繋がってしまいます。

人事労務に関わると、なんとなく人事権を掌握しているような気持ちになりますが、だからこそ社員に対して優越な立場を取らないように心掛ける必要があります。

重要なのは、いまの会社において何が適切な対応なのかを考え、また、社会で活動していく上で倫理面や一般的な考えから外れていないかなどを客観的にとらえ、そこから独断に頼らず会社にとって「最善」を追求していくことを大義として、労務の職務に励むことです。

■まとめ|労務は社員の働きやすい環境を整備する仕事

今回は、具体的な労務管理の業務内容の説明とあわせて、人事管理との違いや労務管理の必要性についても見てきました。

最後にも触れたように、労務は社員が働きやすい環境を整備し、企業の業績を高めていくことが求められる業務です。労働基準法を守って雇用し、コンプライアンスを遵守することも求められており、ルールに縛られている感覚がありますが、企業活動を推進するためには必要な業務ばかりです。

必要な専門知識も幅広くありますが、一つひとつ習得して、企業を成長させていきましょう。

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ライタープロフィール

くもと編集

マーケター兼編集者
FOC 当コンテンツの編集者。 宝飾業界と広告会社を経て2008年 FOC入社。営業や制作ディレクターを経験し、現在はWebマーケティング担当兼当コンテンツの編集を担当。 「FOCのサービスに直接関係のない記事であっても、読んでくれた方の役に立つ情報をお伝えしていきます。」

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