ポケモンGOだけではない拡張現実(AR)の衝撃。産業・世の中はどう変わるか?

AR

 

 ■スマホとポケモンGOが開いた拡張現実(AR)の一般化

最近外に出るとたくさんの人がポケモンGOをやっています。それこそ毎日お祭りのように人が集まり、夜店も連日出ている状況です。盛り上がる一方で一部の人たちのマナーが悪く、東京上野の弁天堂境内でのポケモンGOは禁止にしたというニュースが流れてきました。

ポケモンGOで一般化した拡張現実(AR:Augmented Reality、以下AR)ですが、簡単にいうと現実の感覚をシステム的に補強・拡張してくれる仕組みのことです。

現実の風景の中にポケモンが出現して、モンスターボールを投げるとゲットできます。現実世界の視覚を拡張し、ポケモンが出現することでゲームを成り立たせているわけです。

ARに関しては、アニメが身近な日本では気が付かないうちにそのモデル化した道具類が登場していることがあるのですが、あらためてARというコンセプトを知ると、いろいろと可能性があると思えてきます。たとえば某アニメで出てくる戦闘力を計測する機械もARの一種でしょう。

実は筆者はアニメやマンガ好きです。当時はARという言葉を知らなかったのですが、2007年にNHKで放送されていた「電脳コイル」には衝撃を覚えていました。世界中の空間がフォーマットされていて、子どもたちが「めがね」をかけることで現実の世界に張り巡らされたフォーマットされた拡張空間上でゲームをしたり、いたずらをしたり、事件に巻き込まれたりするのです。「めがね」を外すと拡張された世界は見えなくなりますが、「めがね」をかけなおすと再び拡張された世界が見えるのです。

そして、いつしか、拡張された現実とリアルな世界が連結してしまうという物語です。ARの世界、拡張現実が逆にリアルな世界よりも優越し、影響し始めるということに衝撃を覚えたわけです。突っ込んでいくと、認識論的な世界に入っていってしまい、「作者は天才か!」という思いまで持ったのは筆者だけかもしれませんが。

こうしたアニメやマンガ、映画の世界ではそもそもメジャーであったAR技術が、スマホとポケモンGOのおかげで身近な存在になり、かつ、デバイスとしてスマホが普及したことで、相当に身近で現実感のある革新的なテクノロジーになってきました。

 

■産業で活用されるARと今後の進展

ARの定義は、「人間の感覚を補強・支援して、現実を拡張する」という大雑把な意味でいいと思います。そして最近ではこのARを使って産業に進展をもたらすことも現実になってきています。

そもそもARは軍事技術としても発展してきました。たとえば、戦闘機の照準、ライフルのナイトスコープなども一種のARといえます。以前、自動車のフロントグラスに情報を提示し、運転をサポートする技術がありました。夜間に人を認識してフロントグラス上で目立たせるといった技術です。結果的には注意が散漫になるなどの理由で使われなくなりましたが、こうした視覚を補強・拡張するARは今後もたくさん出てくるでしょう。

定義を広げれば、観光地で貸し出されるトランシーバーのような古めかしいデバイスを使っている観光案内ガイドもARの一種であると思います。視覚的な情報提供ではなく、音声という聴覚からの情報提供を行うわけです。

この話を拡張してしまうと補聴器もARのデバイスといっても良くなってしまいますが、もしかしたらそうなるかもしれません。補聴器はすでにかなり小さくて聴覚支援デバイスとしては優れていますから。

さて、聴覚での産業でAR利用は、たとえばヴォコレクトの音声物流指示があります。
(ヴォコレクト ジャパン株式会社:Webサイト

この技術は、倉庫で荷物のピッキングを行う際に、棚に行ってピックするピッカー(荷物を棚から取り出して集荷する人)に「XX番の棚の品目ZZZZZをY個ピッキングせよ」と指示を出します。紙の指示を目視で読むのではなく、音声に従ってピッキング指示します。荷物をカートに入れたら荷物はセンサーで読み取ってピックされた品目、数量がチェックされ、棚からの在庫の引き落としと出荷中在庫へのステータス変更が行われます。ARとIoTが融合していく初期のモデルのひとつと言えると私は考えています。

今後は工場での作業のガイド、運転のガイド、手術のガイドといった支援サービスがARによって実現されていくでしょう。

工場では作業ミスをしないように、目の前に置かれた部品の組立順序が視覚支援と音声ガイドで支援され、ミスがあれば、聴覚と資格でアラームを出し、やり直しをさせるといったことが実現するでしょう。作業指示書をいちいち紙で確認しなくともARで指示・ガイドしてくれれば生産性が飛躍的に上がることもあるでしょう。

運転という分野においても上げればきりがないくらいARの導入が考えられます。そしてARによって安全性や効率性、経済性が上がると想定されます。もちろん自動運転の進展と複合していくことでしょう。

医療の世界でも同様です。すでに手術のガイド、遠隔医療での活用が視野に入ってきています。

ポケモンGOにより、ゲーム的な面にフォーカスが行きがちですが、ARは現実の世界に対して、感覚を補強・拡張することで人間の活動を支援することにさらなる可能性があるといえます。前回のコラムで書いたIoTとの融合も確実に起きる分野です。その進展の可能性、展開の地平は限りなく広がっています。まったく面白い時代になったものです。筆者もARやIoTで起業したくなっています。

ライタープロフィール

石川 和幸

石川 和幸

経営コンサルタント

早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

関連シリーズを見る

関連サービス詳細を見る

関連サービスはありません