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2017.11.29 掲載 2023.11.21 更新

ドラッカー『マネジメント』とアウトソーシングvol.1 アウトソーシングするべき仕事と内製化すべき仕事

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務サービス

■ドラッカーの名言と経営学の発展

ピーター・F・ドラッカーは、1909年11月19日から2005年11月11日に活躍し、マネジメントの父と呼ばれ、大学教授、経営コンサルタント、そして執筆のすべての分野で成果をおさめてきた経済学者です。
「自社の強みを使って顧客価値を生み出すコア事業を自社で行ない、ノンコアである周辺事業をアウトソースする」といった切り分けをする発想の原点は、ドラッカーから生まれました。
 

■トップマネジメントの仕事はアウトソーシングできない

ドラッカーは、トップマネジメントの仕事は、アウトソーシングできないと指摘しています。なぜなら、企業の業績や事業方針などは、状況によって大きく変化するため、継続的に見直しが必要だからです。企業の根幹である、「事業の進め方」「企業の使命」などは、企業のトップが決めるべきものです。
また、トップマネジメントの仕事とは、成果や組織が社会に与えるインパクトに対しても責任を持つ必要があります。この責任は、会社という法人が持つのではなく、マネジメントチームに属する一人ひとりの経営者が背負うべきものです。
 

■人事などのアウトソーシングは危険

ドラッカーは、「トップマネジメントの仕事以外、すべてアウトソーシングの対象となり得る」と述べていますが、「安易なアウトソーシングは危険」と指摘した発言もあります。
 

多くの企業が、雇用と人事の業務をアウトソーシング(外部委託)し、正社員のマネジメントさえしなくなった。(略)この組織と働き手との関係の希薄化は極めて危険である。(略)人の育成こそもっとも重要な課題であることを忘れてよいはずがない。それは知識経済下において競争に勝つための必須の条件である。雇用と人事を手放すことによって、人を育てる能力すら失うならば、小利に目がくらんだとしかいいようがない。

ドラッカー『ネクスト・ソサエティ』(ダイヤモンド社,2002年5月)pp.167-168[初出ハーバード・ビジネス・レビュー,2002年]
 
近年人材業界は、大手企業からも需要があり、人材業界の成長率は年30%とも言われています。しかし、派遣社員の増加や雇用・人事業務のアウトソーシングにより、企業は人を育てる能力を失いつつあると言われています。
世界の大企業・有力企業が掲載されている「Fortune Global 500社のランキング」というものがあります。その中に掲載されている企業では、給料・採用・人事・教育・異動データ管理・解雇などの対応を、アウトソーシングしていると言われています。
アメリカに本社がある、コンサルタント企業マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、人事業務をアウトソーシングした企業は、30%のコスト削減に成功しているということです。
しかし、直接働きぶりを確認していない業務委託企業が、昇進・解雇・採用の決定を行うことで、組織内で不公平感や仕事の進め方でトラブルは発生しないのでしょうか?
ドラッカーは、企業内研究所の主任研究員の人事管理までアウトソーシングしている、ある企業の担当役員に、直接話を聞きに行っています。
その役員は、人事のアウトソースについて「確かに役員の異動や解雇まで代行させているが、あくまでも私(担当役員)の指示によっている。あるいは私と相談してからである」と回答しています。
ドラッカーは、総論として、「ミッションやビジョンを定めるトップマネジメント以外のすべての業務はアウトソーシングできる」と言っています。
一方、雇用と人事のアウトソーシングには、「チームマネジメントや人材育成の機会を失う危険がある」と指摘しています。

 

■マネジメント能力を上げることで企業を成長させる

アウトソースすべきか、すべきでないか、ドラッカーならどう考えるかを知るために、ドラッカーの集大成である『マネジメント・課題・責任・実践』の内容を例題にマネジメントに関する説明します。
 

マネジメントは方向付けを行う。ミッションを決める。目標を定める。資源を動員する。それはJ=B・セイのいう企業家であり、ビジョンと資源を成果と貢献に向けて動員する存在である。マネジメントは、これらの機能を果たすべく行動する。仕事を組織し、働く人たちに成果をあげさせる。社会に与えるインパクトに責任を持つ。そしてなによりも、経済的な業績、学生の教育、患者の治癒など、自らの組織が目的とする成果をもたらすことに責任を負う。

ドラッカー『マネジメント』(名著集13,上,ダイヤモンド社)p.14
 
ドラッカーによると、マネジメントは次のことをします。
[1] ミッションを決め、目標を定める
[2] ビジョンと資源を成果と貢献に向けて動員する。
[3] 仕事を組織し、働く人たちに成果を上げさせる。
 
アウトソーシングの業務を受託するアウトソーサー(業務委託企業)は、特定の仕事については、知識を蓄積しています。バックオフィス・営業・研究開発・システム管理などをアウトソーシングすることで、飛躍的に企業の生産性は上がるでしょう。
ただし、人事や採用をアウトソースすることで、企業は人を育てる能力を失う危険性があります。
確かに、人材のマネジメントは時間がかかり、ときには生産性の悪さを感じる場合もあります。しかし、部下の「進捗確認」「目標設定」「問題解決のアドバイス」など、チームマネジメントを行うことは、個人・企業の成長に繋がります。
結果的に、長い目で見れば人材のマネジメントに成功した企業は、生産性と産出量の両方を飛躍的に向上させることができるのです。
このように、ドラッカーを少し読むだけで、どのようにアウトソーシングを採用するかを予見することができます。
ドラッカー『マネジメント』をアウトソーシングの視点で読むことは、選択と集中・自社の強み・イノベーション・マーケティング・生産性向上など、経営に重要な知恵を読み取ることや、経営学への理解を深める思考を促します。
次回は、ドラッカー『マネジメント(上)』を参照して、マネジメントの歴史を読み取りながら、ドラッカーに特有な知識社会というモデルを知り、知識社会におけるアウトソーシングの意味を考えます。
 
 
<<参考文献>>
ドラッカーとマネジメントに関する書籍を紹介します。
【入門】
(1)ピーター・F. ドラッカー著,牧野 洋 訳『ドラッカー20世紀を生きて―私の履歴書』(日本経済新聞社、2005年)
日本経済新聞の「私の履歴書」を編集したドラッカーの自伝です。
(2)上田 惇生=井坂 康志 著『ドラッカー入門 新版—未来を見通す力を手にするために』(ダイヤモンド社、2014年)
マネジメントから文明論まで、ドラッカーが信頼した経営学者で翻訳を手掛けた上田氏と、ドラッカー学会の井坂氏による解説です。
(3)中野 明 著『「超ドラッカー級」の巨人たち – カリスマ経営思想家入門』(中央公論新社、2011年)
ドラッカーを原点に、プラハラード、ミンツバーグ、コッター、ポーター、コトラー、クリステンセンの経営思想を短文で深く解説しています。
 
【中級】
(4)ドラッカー他『経営者に贈る5つの質問』(ダイヤモンド社,2009年)
ビジョンを探り、経営計画を立案するために役立つ5つの質問と、それぞれの専門家からの特別寄稿がおさめられています。経営計画、事業計画を検討する際に、もれの無い思考をするためのお勧めの書籍です。
(5)スチュアート クレイナー 著,嶋口 充輝 訳『マネジメントの世紀1901~2000』(東洋経済新報社、2000年)
20世紀のマネジメントの歴史を、時代と人物で区分けして、ドラッカーの言葉を引用しながら解説しています。マネジメントやコンサルティングへのニーズがどう変化し、新しい方法がどのように企業を変革していったかを把握できる書籍です。
(6)井原 久光 著『テキスト経営学―基礎から最新の理論まで[第3版]』(ミネルヴァ書房、2008年)
経営学の歴史と現在を体系付けた教科書です。ドラッカーについても、たとえば、「ドラッカーは、事業の目的は「最大利潤の追求」ではなく「顧客の創造」であるとし、市場創造の重要性を強調している。そして、そのために、2つの基本的機能、すなわち、マーケティングと革新(イノベーション)の重要性を説いている(p.24)」と位置づけています。また、章ごとの参考文献情報が標準的で有用です。
 
【上級】
ダイヤモンド社からドラッカー名著集が出版されており、15巻まであります。
・マネジメント関係 『現代の経営』(上,下)、『マネジメント』(上,中,下)
・イノベーションの方法 『イノベーションと企業家精神』
・事業戦略 『創造する経営者』
・NPOのマネジメント 『非営利組織の経営』
・社会・文明論、知識社会 『断絶の時代』、『ポスト資本主義社会』
名著集に含まれない文献としては、『ネクスト・ソサエティー』、『見えざる革命』などがあります。
 

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務は、オフィスにおけるあらゆる業務が該当し、備品の管理、郵送物の受け取り、受付対応など、その仕事内容は多岐にわたっています。それゆえに属人的になりやすく効率化する事が難しい業務とも言えます。FOCがそういった煩雑な業務を整理し、一括でサービスをご提供します。

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ライタープロフィール

鈴木 健治

弁理士・経営コンサルタント
特許事務所ケイバリュエーション 所長 ・経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員、日本弁理士会中央知財研究所 知財信託部会の研究員などを歴任。 ・平成18年信託法改正時に法制審議会信託法部会を傍聴し、日本弁理士会での信託法改正に関するバックアップとなる委員会の委員長を務める。 ・著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。 ・お取引先の要望に応じて、市場調査、ブランディング、従業員意識調査の統計分析などのコンサルティング業務も手掛けている。中小企業診断士が主体の「知的資産経営(IAbM)経営研究会」会員。 公式サイト:http://kval.jp/

鈴木 健治

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