コロナやインフルエンザなど、不測の事態に対する会社の対応

新型コロナウイルス感染症は日本にも大きな影響を及ぼしましたが、日本では感染症のほかにも、震災や大雨などの災害が年々深刻さを増しています。

疫病や災害などの緊急時には、会社のオフィスが倒壊したり、社員の出社が困難になったりするケースが全国的に見られます。今回は、緊急事態にどのようなことが起こり得るのか、被害を最小限にするために会社としてどのようなことを考えておけばいいのかについて考察します。

 

緊急事態の要因として考えられること

緊急事態の要因として考えられることとしては、自然災害や疫病、サイバーテロなどの人災が挙げられます。

◆自然災害

地球上の土地の面積のうち、日本が占める割合はわずか0.28%です。しかし、国土技術研究センターによれば、マグニチュード6以上の地震の20%以上が日本で起こっているとされています。阪神大震災や東日本大震災をはじめ、大きな被害を出す地震はこれまでも高い頻度で起こってきました。

また、最近では大雨による土砂災害や洪水などの被害も深刻化しています。

◆疫病

今回の新型コロナウイルス感染症に代表される疫病も、緊急事態の大きな要因となります。毎年猛威を振るうインフルエンザに加え、狂牛病や鳥インフルエンザなども脅威となっています。

◆サイバーテロ

内閣府が2019年に発表した「サイバーセキュリティ政策の最新動向」によれば、2017年に起きたサイバーテロによる個人情報の漏洩人数は519万人を超え、想定損害賠償総額は1,914億円を超えると見られています。特にIoTが狙われており、サイバーテロに対するセキュリティの構築は急務です。

 

緊急事態時に会社が受けうる損害とは

緊急事態の程度にもよりますが、災害やサイバーテロなどが起きたとき、付随して以下のようなことが起きる可能性があります。

◆社員が被災して人手不足になる

もっとも起こりうるのが、社員が被災して出社できない事態です。今回の新型コロナウイルスでは、社内で罹患者が出た場合全員が出社できなくなる、県をまたいで通勤できなくなるという事態になりました。

震災や豪雨などの災害では、社屋が倒壊して出社する場所そのものがなくなってしまう可能性もあります。また、インフラが使えなくなり、社員の安否確認が取れないことも想定されます。

◆ビジネスが止まり、連鎖倒産が生じるおそれも

経営者や役職者などが被災した場合は、指揮を執れる人がいないため、ビジネスが止まってしまう可能性があります。役員や幹部は無事だったとしても、社員が被災すれば実働部隊が稼働しなくなるため、同じくビジネスは止まってしまうでしょう。

自社から離れた場所で緊急事態が起きたときには、自社が無事だったとしても取引先企業が被災してしまうことがあります。そうすると、仕入れが止まったり売掛金の回収ができなくなったりする可能性があります。単にビジネスが止まるだけでなく、連鎖倒産の恐れも生じます。

◆機密情報や必要なデータ・紙の書類が消滅する

地震や土砂災害などに巻き込まれて社屋が倒壊・破損することにより、社屋に保管されていた紙の資料やデータなどの機密情報が毀損することが考えられます。勤怠データが破損すれば給与計算に影響しますし、顧客データが毀損すれば営業や顧客対応などに影響します。

◆売上が激減し、経営の維持が困難に

緊急事態の影響は広範囲に及びますが、売上の激減は経営に直結します。例えば、狂牛病が流行したときは牛を扱う飲食店が打撃を受けたほか、鳥インフルエンザが流行したときには養鶏場が大きなダメージを受けました。

 

管理部門が壊滅したときに起こりうること

緊急事態時には会社のあらゆる部署、あらゆる業務に影響が出ますが、管理部門が壊滅したときには、次のような被害が想定されます。

◆給与計算や振込など、労務全体が止まる

タイムカードや勤怠管理表などが消失してしまうと、勤怠管理ができません。勤怠管理ソフトなどを使ってデジタルで管理している場合も同じです。勤怠データは給与計算に必須のデータですから、情報自体が消失する、社内の端末が破損してソフトを使える状況ではないなどの状況になると、給与計算や給与の支給にも支障が出てしまいます。

◆経費精算、備品の管理など、日常業務における事務が滞る

経費精算や交通費の支給、備品の購入など、社内で何らかの事務手続きをするときには、申告書や報告書などを作成して管理部門に提出するのが一般的な流れですが、管理部門が壊滅すると日常業務が滞ってしまいます。

 

労務上で問題になりやすいこと

緊急時には、労災や休業時の賃金負担などが課題になりやすいようです。特に起こりやすいと考えられるものをピックアップしました。

◆被災した社員にはどこまで労災が適用されるのか

業務が原因で被災した場合は原則として労災の対象となり、通勤中も労災の対象となると考えられています。しかし、例えば出張先で大雨が降って土砂崩れに巻き込まれた場合、労災は降りるのでしょうか?また、地震が来たために避難中に被災した場合はどうでしょうか。

このようなイレギュラーなケースでも、基本的に「業務が原因かどうか」が判断のポイントです。例えば、出張中であったとしても、プライベートな時間を除いては仕事中(業務遂行性がある)とされているため、出張先で業務中や移動中などに被災した場合には労災がおりると考えられます。

また、避難中に被災した場合も同じく、業務中であれば労災の対象となります。災害時の労災については、厚生労働省が東北地方太平洋沖地震の際に出したQ&Aが参考になります。

・東北地方太平洋沖地震と労災保険Q&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000169r3.html

◆やむを得ず休業した場合、会社が賃金を負担しなければならないのか

休業したときの賃金の支払については、労働基準法に規定があります。

・使用者に帰責性が認められる:会社に最低でも6/10以上の賃金の支払義務がある
・使用者に帰責性がない:会社には休業中の賃金の支払義務はない

このように、使用者に帰責性が認められなければ、会社には休業中の賃金の支払義務がありません。緊急事態のためにやむを得ず休業せざるを得ないケースでは、帰責性は認められにくいと考えられます。

◆会社が経費を負担する範囲についても課題に

コロナ禍で多くの企業が、準備もそこそこにテレワークの導入を余儀なくされました。自宅で仕事をするとなると、通信費や光熱費、資料を印刷するコストやWeb会議のための備品など、会社に出勤して仕事をするときとは異なる費用が発生しますが、これをどこまで会社負担とするのかも課題となりました。

この他にも、帰宅困難になってタクシーを使ったら経費として計上できるのかなど、会社が独自に采配をふるって判断しなければならないことも数多くあります。

◆情報漏洩が問題になることも

社員の個人情報そのものが消失する、労働保険や社会保険などに関する過去の申請書などの重要な書類が全て消失するようなときには、情報漏洩の危険性も考えなければなりません。

個人情報が外部に流出するおそれがあるときには、個人情報保護委員会に速やかに報告することが求められています。また、業法によっては監督当局への報告が義務づけられていることもありますので、事前に確認しておきましょう。

 

緊急事態に備え、会社が準備しておきたいこと

緊急事態に陥ったときにできる限り冷静に対処し、被害を最小限に抑えるためにも、ある程度の緊急事態を想定して事前に備えておきたいところです。ハザードマップなど、公的機関が出している情報を事前に確認しておくことは大前提ですが、会社としては、どのようなことを意識しておけばよいのでしょうか。

◆書類が毀損したときに備えて書類のデータ化やクラウドの格納などを進めておく

決算書や契約書、請求書や各種申請書など、会社が作成・保管しておかなければならない重要書類は多岐にわたります。

重要書類を毀損してしまったときには、税務署の申告書等閲覧サービスなどを利用することで、過去に提出している申告書などを閲覧することもできます。万が一のときはこうした制度の活用を想定しつつ、予防策も立てておくことが大切です。

さらに、書類の毀損によって取引先や社員の個人情報が外部に流出してしまうことは避けなければなりません。物理的な流出を防ぐためにも、書類の電子化を進めておきたいところです。

電子化して保管していたとしても、そのデータそのものが毀損してしまう恐れもあります。機密情報Jはクラウドに格納する、社労士やアウトソーシングなど外部と連携してデータを自社で保管しないなど、電子情報そのものを保護するための働きかけも大切です。

◆オフィスが稼働しなくても業務が止まらないように体制を整える

労務管理データをクラウドやサーバで保存する、管理部門をアウトソーシングに切り替えるなど、オフィスが物理的に壊滅したとしても、業務が回る仕組みを構築しておくことは重要です。また、紙の書類の電子化も進めておきたいところです。

◆あらかじめ緊急時のルールを策定しておく

どのような緊急事態が発生するのかによって対応が変わってきますが、在宅勤務に切り替える基準や、休業、各種手当ての基準、帰宅禁止や自宅待機の基準など、細かいルールを事前に作って周知しておくと、緊急時でも素早く対応できます。

 

災害やサイバーテロなど、緊急事態を招く要因はさまざまです。会社としては、緊急時にもできるかぎり業務を止めず、社員の人命を守ることが求められますが、そのためには平常時に緊急事態に備えた準備を進めておくことが不可欠です。

 

 

ライタープロフィール

金子 千鶴代

金子 千鶴代

ステラワークス代表・ライター。 商業施設や飲食業界などで10年近く経理・総務に従事し、2016年からライターとして独立。 「難しいことをわかりやすく伝える」をモットーに、これまで法制度や行政、住宅や公的保険などのコンテンツを数多く執筆。

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