適切な勤怠管理とは?企業が気をつけたいこと、テレワークの注意点も解説

急速なテレワークの普及により、社内の就業規則を見直さなければならない企業も多いのではないでしょうか。テレワークで課題になるのが、リモートでもセキュアに仕事をできるシステム面の整備と勤怠管理ではないでしょうか。

勤怠管理とは、社員の「勤務状況・勤務時間」を適正に把握、管理することで、リモートワークでどのように行うかがキモとなります。給与計算にも紐づく勤怠管理について、本記事では詳しく掘り下げていきます。

 

勤怠管理とは

勤怠管理とは、企業が社員の「勤務状況・勤務時間」を適正に把握、管理することです。社員の始業・終業時間や休憩時間、時間外労働、有給休暇の取得状況なども記録し、正しく給与を支払うことが求められます。タイムカードやICカード、勤怠管理システムを活用して管理します。また勤怠管理を適切に行うことによって、過剰労働の防止につながり社員の健康維持にもつながるのです。

「就業」と「勤怠」の意味の違い

勤怠と同義で使われる言葉として「就業」があります。

「就業」とは、仕事に就くこと自体を指し、仕事の開始時刻や労働時間・休憩時間などを統一することを就業規則といいます。一方「勤怠」とは、出退勤時間や早退・遅刻・欠勤、出勤日数など全体を意味します。

「勤怠管理」では社員の勤務状況を把握するため、労働時間に関する法令の遵守が求められます。労働基準法第32条で、法定労働時間が「1日8時間、1週間に週40時間を超えない範囲内」と定められています。

現在はほぼ同じ言葉として扱われることが多く、「勤怠管理システム」「就業管理システム」と言われます。

勤怠管理の対象、用語の定義も解説

勤怠管理すべき対象事業場・対象者は、厚生労働省のガイドラインにて以下のように定められています。

▼対象事業場
労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用される全ての事業場

▼対象労働者
労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者

引用:厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

これに当てはまらなくとも、社員の健康を図るために企業は適正な労働時間管理を行うことが責務です。ちなみに具体的に勤怠で管理する項目は以下の通りです。

1.出退勤時間・労働時間・休憩時間・遅刻・早退

出勤・退勤時間は1分単位で管理します。遅刻や早退も記録し、働いた時間を正確に記録することが必要です。遅刻や早退が目立つ社員に対しては、適切な指導や異動などの対処が必要です。反対にしっかりと社員が休憩時間を取れているか配慮することも大切です。

2.時間外労働時間・深夜労働時間・休日労働時間

労働基準法で定められている法定労働時間を超過したら、その分の手当てを支払います。時間外労働や深夜労働、休日出勤に対しては、割増賃金の支払い義務があります。賃金の割増率はそれぞれ異なるため、自社の就業規則と照らし合わせ給与の割増対象となる正確な労働時間を把握してください。

3.出勤日・欠勤日・休日の取得状況

休日がしっかりと取得できているか、休日出勤した際は手当の支給か振替休日の取得かなどの管理も必要です。休日出勤時の対応については、いつまでに振替休日をとるか、または手当がいくらかなども就業規則に準じて対応します。

4.有給取得日数・有給の残日数

ご存知の通り、2019年4月に施行された労働基準法の改正により、「年次有給休暇の取得」も義務付けられました。有給休暇の取得状況を把握するためにも適切な方法で管理し、状況に応じて有給取得を推奨する日を設定してください。

 

企業に勤怠管理が求められる理由は?

1、働きすぎや過労防止、働き方改革の実現

ひとつめは社員の働きすぎや過労の防止、働き方改革の実現です。元々日本は「24時間働けますか」というCMが流行るほど働きすぎでした。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、労働者1人平均年間総実労働時間は平成初期が2000時間を超えていたところ、20年をかけて1800時間を下回るまで改善されてきました。

引用:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
https://jsite.mhlw.go.jp/kochi-roudoukyoku/library/kochi-roudoukyoku/topics/topics222.pdf

大切な社員の健康を守り、会社としてより成長していくために適切な労働時間の順守は欠かせません。また、社員の働きすぎや過労防止には企業による社員の労働時間の正確な把握・管理・指導が求められます。

また、労働人口減少により、人手の確保が難しくなる時代です。せっかく採用ができた優秀な社員に健康で長く勤めてもらうためにも適切な対応が必要と言えます。

引用:総務省 平成30年度「人口減少の現状」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd101100.html

2、労働時間把握の義務化

働き方改革関連法のひとつ、2019年4月1日に改正された労働安全衛生法では「客観的方法での労働時間の把握」が義務付けられました。企業は社員の勤怠状況をタイムカードやICカードを利用して客観的に記録し、データで管理することが求められるようになったのです。そして、このデータは3年間保存しなくてはなりません。

また、残業時間についても厳密に定められています。原則として、月45時間・年360時間をベースとして時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働 ・・・月100時間未満、2〜6カ月平均80時間以内、原則である月45時間を超えることができるのは、年6カ月までという複雑なルールになりました。

法律を遵守するということは企業としても最低限の責務です。しっかりと把握して、違反のないよう気をつけていきましょう。

引用:
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

 

 

なぜ企業にとって勤怠管理は重要なのか?

先ほど解説したとおり、法律を遵守することは企業の責務です。また、大切な社員の働きすぎを防止することも重要です。その他にも、勤怠管理をすべき理由はいくつかあります。

健全な労働環境と会社のイメージ

正しく勤怠管理をすることで、社員が健全に働けるということは、働きやすい労働環境を用意できているとも言えます。適切な勤怠管理、有給取得、労働時間に応じた適正な給与等により社員は安心して働けます。

安心して社員がのびのびと働いているかどうかは、会社に出入りしている取引先、社員の家族など関係者はよくわかるものです。このような評判は、採用、取引関係、株主…等につながり、社会的にも意義のある会社へ成長していくためには欠かせない条件のひとつです。

会社の成長に必要な組織づくりを実現

勤務状況を把握することで組織の問題点が見えてきます。繁忙期や閑散期、部署ごとの残業状況が可視化されれば、組織変更の際に最適な人員を配置することができるようになります。部署ごとに不平等な状況が続くのは、社内の雰囲気が悪くなったり、社員のモチベーションが下がったりという事態を招きます。また、単純に残業が多い部署の人を充てるということではなく、管理者のスキルやオペレーションに問題がないか、などの現状改善も考慮して対策を打つと良いでしょう。

勤怠管理をすることで単純に残業時間だけでは測れない見えなかった課題が浮き彫りになることがあります。

 

勤怠管理の方法

厚生労働省が定める『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』では、勤怠管理の方法として次の3つの方法を認めています。

・勤怠管理の担当者が確認・記録をする
・社員に自己申告してもらい、確認・記録をする
・タイムカードやICを用いて確認・記録をする

このガイドラインに沿って、どのような管理方法が考えられるのでしょうか。

◆紙の出勤簿による勤怠管理

カレンダー仕様のフォーマットに、出勤や退勤時刻、休憩時間、残業時間、遅刻・早退、休日取得など勤怠管理に必要な情報を記入する方法です。パソコンを一人一台所有していない業態や工場、アルバイトが多い企業など紙での管理はすぐに始められます。1枚の紙面で全情報を管理できる利便性はありますが、すべてが手書きなので不正申告やサービス残業が発生しやすい、紛失のリスクがある、客観的な記録にならない、などの欠点があります。

◆エクセルによる勤怠管理

エクセルでフォーマットを作成し利用するケースもあります。既に使い慣れているエクセルであれば、導入費用もかからずすぐに始められます。紙のように紛失のリスクもありません。しかし、社員全員にパソコンが支給されていない企業や、紙同様に手入力によるミスや不正申告のリスクもあり、客観的な勤怠管理ができるかという点では判断が難しいと言えます。

また、法改正で残業時間の数え方や割増賃金が変更になる場合などは、エクセルに組み込んだ数式の更新が必要です。常に最新情報を確認し、手作業で更新し続けなければなりません。社員数が多い企業であればあるだけ、ミスも起こりやすい上に全社員分の管理も困難と言えます。

◆タイムカードによる勤怠管理

社員が出勤・退勤時に打刻シートをタイムレコーダーに通して打刻する勤怠管理方法です。大型のシステムと比較し導入費用を抑えられ、誰でも操作しやすい点がタイムカードのメリットでしょう。

しかし、直行・直帰が多い営業担当者や出勤場所が毎日異なる店舗へ出勤する人、テレワークやサテライトオフィスでの勤務者が多い企業には向いていません。また、タイムレコーダーの機能が「打刻のみ」であれば、別途、労働時間や休日取得日などの管理・集計が必要です。

◆勤怠管理システムの活用

勤怠管理システムを活用して、オンライン上またはタイムレコーダーなどとの連携により勤怠管理を行う方法です。

クラウド勤怠管理システムを選べば、いつでもどこからでもインターネット上で打刻できます。勤怠管理システムにアクセスするデバイスも、スマホやタブレット、パソコンなど複数あり、ICカードや指紋認証で打刻するタイプのものもあります。手入力が不要なため、入力ミスや不正の防止にもつながるでしょう。

また、勤怠データの打刻・集計・分析の作業をすべてシステム上で行うので、コスト削減も期待できます。クラウド型は社員数に応じた従量課金の料金体系が多いため、大人数の企業ではコストが割高になる可能性があります。オンプレミス型と合わせて検討すると良いでしょう。

 

テレワークの勤怠管理で浮かぶ課題

現在急激にテレワークを推し進める環境となり、スムーズな勤怠管理に困っている企業も多いでしょう。実際に、2020年10月にSKY株式会社が公開してるテレワークに関する意識調査では「管理職の7割が勤怠管理に課題を感じた」と回答しています。目の前で実際の出退勤を確認できないテレワークで浮かぶ課題とはどのようなことがあるのでしょうか。

引用:https://www.skygroup.jp/news/201019_01/

◆テレワークに合う勤怠管理システムの検討

オフィスに置いてあるタイムレコーダーで勤怠管理を行っていたり、紙に書き込んで申請をするようなやり方をしている会社ではテレワークでは利用ができません。場所を選ばずスマホからでも利用できる、クラウド型勤怠管理システムがおすすめです。社員に対して正確な勤怠報告のやり方、例えば始業時にチャットツールで「開始と終了、休憩時間」の報告をさせるなどと新たなルールを伝え、状況に応じて実態調査も行うことをお勧めします。

そして、開始と終了、休憩時間の管理だけではなく、中抜け時間のことも考慮しておく必要があります。例えば、育児中の家庭で「子供の学校から急に呼び出し」「保育園のお迎え」、急に体調不良となり2時間ほど抜けていた、など勤務時間中に抜けた時間があり再度働く場合などはどのように対応すべきでしょうか。企業によってさまざまな対応がありますが、このようなケースも考慮して、人事部がルールを定めておく必要があります。

◆「自己申告」を信用する

オフィスで目の前にいるわけではないため、自己申告の勤務時間を承認せざるを得ません。管理者は勤怠管理ツールを日々チェックし、社員が長時間労働に陥らないよう気をつけましょう。また、本当に稼働しているのかという「サボり」抑制も必要でしょう。監視ツールでは社員がやりにくさを感じるでしょうし、信頼関係にも影響しかねません。業務の進捗が可視化できるよう日報の報告をしてもらうことも一つです。稼働時間と成果を照らし合わせることで申告してくる勤怠を確認するのが良いでしょう。

◆評価制度の課題

先述した自己申告と合わせて、うまく対応していくために評価制度を見直すのもひとつです。内閣府のガイドラインでは、「時間当たりの生産性で評価をしていこう、そのために日々の業務の時間計画と日々の業務の見える化が必要」という内容があります。時間当たりの生産性を高めること、を評価の軸とすればサボりの抑制にもつながりますし、限られた時間しか働けない社員も活躍できるためモチベーションも上がります。評価制度の見直しは容易ではないですが、案のひとつとして見ておくと良いでしょう。

引用:内閣府「テレワークの適切な導入及び実施のためのガイドライン

 

まとめ|コミュニケーションをしっかり行い、社員の勤務状況を

勤怠管理を正確に行うことは、企業としては必須要件です。普通に行なっても不正打刻やサービス残業のような課題もある上に、今ではテレワークという目の前にいない社員の管理まで厳密に行うことを求められているため、ハードルは高いです。

管理者は報告される勤務が適正かというチェックだけでなく、コミュニケーションも大切にしてください。ただでさえ孤独感があるといわれるテレワークで、「上司と話したのが勤務報告だけ」という事態は避けたいものです。「いつもはもっと早いのに今日は時間がかかったな」など業務成果と勤務時間を照らし合わせて気づけることもあるでしょう。このような細かな目配りと心配りは離れていてもできることがあります。

テレワークによって、お互いを信用していないと成り立たない勤怠管理の課題もでてきました。社員のために工夫できるための方法のひとつとして勤怠管理を利用してみてください。

 

 

ライタープロフィール

パプリカ

パプリカ

外資系総合商社と総合マーケティング支援会社にて法人向け営業職を経験。 世の中にあふれる情報をかんたんにわかりやすく、一人ひとりに合ったかたちで伝えることをミッションに活動中。