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2022.01.27 掲載 2022.07.08 更新

改善・変革に「飛び道具」を求めるなかれ、1%の効果を積み上げる「マージナルゲイン」の価値

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務サービス


改善や変革とは、一朝一夕で成し遂げられるものではない。あたり前のことなのだが、いざ自分が改善・変革を行う当事者になると、そのことを忘れ、ショートカットできる方法や、飛び道具のような、安直に大きな成果が出る方法を求めてしまう。

マージナルゲインとは、1%しか効果が見込めないような小さな施策を積み重ねることで、大きな成果を得ようとする考え方である。
もともと、イギリスのプロサイクリングチームのジェネラルマネージャー(GM)が、ツール・ド・フランス総合優勝という大きな成果を獲得するために考え出した方法論であり、実際、そのチームは、わずか2年で総合優勝を獲得し、その後7連覇を成し遂げた。

本稿では、マージナルゲインを紹介しつつ、1%の積み上げを怠らない大切さを考えていきたい。
 

DXを達成できる、飛び道具を探すコンサルタント

筆者は、このブログでは、RPAやDX、業務改善といったテーマを中心に執筆しているが、他メディアでは、物流ジャーナリストとして活動している。
1年ほど前、私が執筆した物流DXに関する記事を読んだ、あるコンサルタントから、ご連絡を頂戴したことがあった。

「物流DXを実現するためのカリキュラムを策定したい。ついては相談に乗って欲しい」というものであった。
私は、彼と会い、物流ビジネスにおけるDXについて議論を重ねた。
議論を2時間ほど続けたのだが、どうも彼は私の考え方に物足りなさを感じている様子である。

「もしかして、『これをやれば物流DXは達成できる!』みたいな飛び道具のようなアイデアを、私に求めていますか?」
「はい、あなただったら、そういった知見やアイデアもお持ちかと期待していたのですが…」
「私にはそんなアイデアはないですし、そもそもDXって、そんな簡単なものじゃないと、私は考えていますが」

その後、DXとは、企業のビジョン、社員の意識や社風、ビジネスに対するアイデア、それを実現するためのデジタル化施策など、複数の努力を積み上げて、初めてDXは達成できるという持論を話した。
彼は黙って私の話を聞き、そしてつぶやいた。
「ビジネスとしては、まったく面白味がないですよね、その考え方…」

DX実現講座を主催することでビジネスにしようと考えている彼からすれば、当然講座の目玉として、飛び道具は欲しいのだろう。
「○○をすれば、あなたのDXはバッチリ実現できます」というストーリーが成立すれば確かに彼のカリキュラムは飛ぶように売れると思う。
だがそんなものは、所詮夢物語だと、私は思う。 

サイクルロードレースで実践されたマージナルゲインの内容

ツール・ド・フランスに代表されるサイクルロードレースを楽しむファンの中で、チーム・スカイ(現在は、メインスポンサー交代に伴い、イネオス・グレナディアスにチーム名を変更)を知らない人はいないだろう。国内レースしか見ないサイクルロードレースファンでも、チーム・スカイの名前は知っている。
これは、チーム・スカイが誕生した2010年以降、目覚ましい成績を上げ、圧倒的な強さを誇ったことに所以する。あまりに強すぎるため「チーム・スカイがいると、サイクルロードレースがつまらなくなる」とぼやくファンや、他チーム関係者すらいたくらいだ。

しかし、チーム・スカイが誕生した当時、チームが掲げた「イギリス人初のツール・ド・フランス総合優勝者を5年以内に輩出する」という目標は、荒唐無稽な夢想だと笑い飛ばす人もいたのだ。
そもそも、スペイン、イタリア、ベルギーなどのサイクルロードレース強豪国と違い、イギリスはサイクルロードレースの弱小国であり後進国であった。

しかも、その方法論が…、何と言うか、実に地味なものであった。

空力に優れたサイクルジャージを作り上げる
──これはなんとなく、効果がありそうな気がする。
やはり空力を考えて、ヘルメットの穴を塞ぐようなプラスチックカバーを付ける
──これも多分効果が見込めるのだろう。
だが、「洗濯機を選手ごとに一台づつ用意する」(感染症予防のため)、「枕を変える」(睡眠の質を高めるため)と言われると、もはやどれほど効果があるのか、疑いたくなる。

冒頭、マージナルゲインを1%の積み上げと言ったが、マージナルゲインの創始者である、チーム・スカイ ジェネラルマネージャーのデイヴィット・ブレイルスフォード氏は、こういった小さな改善を数百も考え、選手にもチームスタッフにも徹底的に実施・継続することを強いた。

結果、チーム・スカイは、わずか2年で、ツール・ド・フランス総合優勝を獲得し、その後7連覇を成し遂げた。
なお、当初チーム・スカイのマージナルゲインを横目で見て笑っていた他チームも、現在ではチーム・スカイの真似をし、マージナルゲインを実践している。

死亡事故を起こした運送会社

「私が請け負っているある運送会社なんだけど、何をやっても中途半端で終わるんだよ」──知人の運送コンサルタントは、ほとほと参っていた。

例えば、コンサルタントは構内の3S(整理・整頓・清掃)を同社(以下、A社とする)に求めた。
ゴミが放置され、備品も整理整頓されていない構内・駐車場を異常と思わない同社の感覚を憂いたからだ。
だが、状況は変わらない。
当たり前である。社内に「3Sを徹底しよう!」とポスターを掲示しただけで実現できるほど、3Sは簡単で甘いものではない。

「注意はしているんですが」と言う所長に対し、コンサルタントはパトロールを提案した。週に一回、構内をパトロールし、3Sの進捗を確認するのだ。
初回は実施した。コンサルタントも参加したからだ。
だが翌週から、パトロールは滞った。コンサルタントがいないからである。

問題は、3Sだけではない。
例えば、構内の制限速度を守らない。
例えば、タイヤに輪留めをせずに駐車する。
運送会社の安全対策としては、当たり前のことが、ことごとく行われていない。
ルールを定めても、ドライバーも、それを管理・指導する立場にある所長らも、徹底する気がないのだ。

コンサルタントは、A社と少し距離を置くことにした。
ちょうど新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されたこともあり、言い訳は立った。

緊急事態宣言が明け、数ヶ月経過したとき、A社から連絡があった。
「うちのドライバーが、歩行者をはね、死亡させてしまいました…」──A社所長の声は深刻だったという。
もちろん、コンサルタントはA社に出向いた。

これまでのことを淡々と振り返り、一つ一つの安全対策を徹底することの大切さを訴えるコンサルタントの話をひとしきり聞いた後、所長は言ったそうだ。
「こういう事情ですので、先生には、死亡事故を絶対に起こさないような対策を考えて欲しいのです」

「死亡事故を絶対に起こさないような対策」などあるわけがない。
もしあったら、世の中の交通事故は撲滅されている。
だが仮に「死亡事故を絶対に起こさないような対策」があったとしても、A社では、実践することはできないだろう。
「目の前にあるゴミを拾いましょう」「備品はあるべき場所にきちんと片付けましょう」
──3Sの基礎すら徹底できないA社に、新たな対策を実施、徹底することなどできるわけがない。

それでも、人は飛び道具を求めてしまう

A社の事例を聞けば、多くの方が、「それはそうだろう」と感じることと思う。
だが、我が事になると、人はどうしても飛び道具を求めてしまうものだ。

「一日5分でOK!驚くほど簡単な魔法のダイエット」
「○○メソッドで、あなたもみるみるうちに英語が話せるようになる」
世の中には、こういった飛び道具を謳うコンプレックス商法があふれている。
だが、多くの場合、飛び道具にはからくりがあり、言われるほど簡単ではないことは、皆さまもご承知のとおりだ。

企業経営は、厳しさを増している。
テクノロジーの進化は日々加速し、テクノロジーの進化を牽引するイノベーターは、私たちを置き去りにし、どんどん時代の先へと進んでいく。
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)という巨人の出現が、DXという危機感を生じさせたことは、皆さまご承知のとおりである。
改善や変革は、一朝一夕に実現するものではない
その事実を、「1%の積み上げ」という分かりやすく、そして覚悟を必要とする切り口で示したところに、マージナルゲインの価値がある。

ところで誰か、「一日5分でOK!フリーライターのあなたもベストセラー作家になれる!」方法を知らないだろうか。
あれば、私もぜひ実践したい。
 
 

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

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ライタープロフィール

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

坂田 良平

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