どうなる?消費税の軽減税率

国会

2015年3月の参院本会議で、2017年4月から消費税の税率が8%から10%に税率が上げられることと決定しました。そして消費税増税が決定した後、議論の中心は増税の可否から消費税の経理方法と軽減税率の導入するかどうかに移ってきました。
(詳しくは『インボイス方式・請求書等保存方式とは?消費税の経理方法について解説』)

今回は軽減税率についていろいろと考えてみたいと思います。

 

■ 軽減税率とは?

消費税は幅広い商品やサービスに課税される間接税です。一部、政策的な目的により課税されない場合(例えば住宅や医療など)もありますが、原則としてほとんどの商品やサービスを販売(購入)する際、購入者に付加されるという性格の税金です。

高所得者より低所得者の場合のほうが、所得に対する税の負担が高くなるため、消費税は“逆進性が高い”とか“公平ではない”と言われることが多い税金です。

そのため、低所得者層への家計への負担を考慮するために、「軽減税率」と呼ばれる複数税率制度が検討されてきました。具体的には、食料品や日用品などの生活必需品に対する消費税率を低く設定し、贅沢品や高級品の税率を高く設定することで、高所得者層への課税を増やし、低所得者層の負担を低減させるというものです。

 

■ 軽減税率導入に伴う問題点

軽減税率の導入は、それ自体には「所得の移転・再配分」という効果があることはたしかではあるのですが、その一方で様々な問題点を孕んでいます。

複数の税率を課税事業者が処理することとなるため、事務負担が大幅に増えるということや、日本の場合であれば新たに「インボイス方式の導入」が必要となるため、官民問わずその対応が要求されこれもまた負担増となることも挙げられます。

また、「軽減税率の対象をどのように決定するか」ということも大きな問題点です。
ここで軽減税率対象品目に関するニュースを見てみましょう。

2015/11/19 『軽減税率、自公の溝埋まらず 両幹事長交えて協議』(朝日新聞デジタル Webサイト)

この記事では、自民は「生鮮食品と一部の加工食品」(税収減は年4千億円)を主張し、公明は「酒類を除く飲食料品」(同1.3兆円)や「酒と外食を除く飲食料品」(同1兆円)を主張しているという“綱引き”が指摘されています。

※2015/12/9のヤフーニュースのトップでも取り上げられています。
軽減税率めぐり自公が最終攻防 自民「生鮮」限定を再確認』(ヤフーニュース/産経新聞)

また、日本新聞協会が新聞を軽減税率の対象にするように主張もしています。

参考:『なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?』(日本新聞協会Webサイト)

このように軽減税率の対象品目の絞り込みには業界団体の言い分や政治的問題になる可能性が非常に高いため、これも大きな問題点と言えるでしょう。

 

■ 軽減税率を導入している各国の事情

現在の日本の自民公明の協議は、先程も触れましたが、対象品目は食料品に絞りこまれ、その中で生鮮食品に限定するのか加工食品まで範囲を広げるのかという点が議論の中心となっているようです(今後もどうなるか余談は許さないですが)

ここではすでに軽減税率を導入している国の状況を見てみましょう。
軽減税率の導入目的は逆進性を防ぎ、再配分を促進するという点では共通しているようです。

・カナダ
カナダでの軽減税率の代表例はドーナツです。
ドーナツなどのお菓子等を「その場で食べるかどうか」という基準でわけているので、
ドーナツを5個以下購入した場合には標準税率の5%が適用され、6個以上購入した場合には軽減税率0%が適用されます。(外食なのか食料品扱いなのか)

・ドイツ
ドイツでもカナダと似たような線引がされているようです。
例えば、ハンバーガーショップでハンバーガーを購入する場合、テイクアウトであれば軽減税率の7%が適用されますが店内での飲食の場合は標準の税率19%が適用されます。そのため、テイクアウトOKの飲食店では、店内の価格表示も2段書き等で表示されるケースが多いようです。

・イギリス
イギリスでもドイツと同様に外食か持ち帰りかという基準を適用していますが、さらに”その温かさ”で軽減税率の適用の可否を決定しています。具体的には、ハンバーガーが温められていれば標準税率20%が適用となり、そのハンバーガーが冷たい状態であればお惣菜などと同じ扱いとなり軽減税率0%が適用されるとのことです。

・フランス
フランスでは、その食料品が贅沢品かどうかの判断に加えて、国内の農業や酪農業などを保護するという政策的な目的も含まれています。

 

■ 軽減税率をどのように設定するのか?

議会
ここまで述べてきたように、軽減税率の対象となる品目の絞り込みは、軽減税率の導入の先輩であるEU諸国の事例からも分かる通り極めて複雑かつ高度な(政治的)判断を要求されるものです。

現在、日本での議論は、生鮮食料品と加工食品というような議論になっていますが、そのように限定的な話にしたとしても「加工という範囲はどこまでなのか?」とか「刺し身は生鮮食料品なのか加工食品なのか?」、あるいは「飲食店のような加工された食品等を提供するサービスの取り扱いはどうするのか?」などなど、おそらく合理的、客観的な基準を法律等で定めるためには非常に難しい問題です。(であるが故に政治性の高い=選挙対策的な側面が強くなってしまうのですが・・・)

いずれにせよ消費税の増税が確定し、また最近のニュースを見る限り軽減税率の導入が前提となりつつある中では、今後の動きを業務担当者としても消費税の税負担者としても注意深く見ていく必要がありそうです。

当欄でも、新しい動きをウォッチしつつ解説記事等をお届けしたいと思います。

ライタープロフィール

本山 シーエン

本山 シーエン

現場支援型コンサルタント

税理士事務所時代の経験をもとに、インターネット関連の会社で財務会計ソフトの開発と販売を通じて中小企業のバックオフィス業務をサポート。現在も「インターネット活用が中小企業の成功のカギ」を信念に現場支援型コンサルタントとして活動中。