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2017.02.28 掲載 2023.11.01 更新

ロボティック・プロセス・オートメーションで本当に人の仕事は付加価値業務にシフトするのだろうか

間接部門にロボットを導入し業務効率化

NOC RPA導入・サポートサービス

RPA
 

■とどまることを知らないロボットの普及

最近はロボットが大流行りです。ロボットがテレビCMにたくさん登場しています。
ロボットには大きく二つの種類があります。ひとつは物理的な存在としてのロボット。これは工作機械から、家庭で使われるロボット掃除機まで、物理的な作業をしてくれるものです。日本は工作機械などの産業用ロボットでは世界最大の稼働国になっています。
もうひとつは、論理的なロボットです。このロボットはシステムの中に内蔵され、処理ロジックと一連の処理作業を自動化してくれるものです。処理プロセスの自動化です。
たとえば、身近な例では、エクセルのマクロは初歩的なロボットと言えるでしょう。ロボットとは言えないレベルですが、これも立派な処理プロセスの自動化ですから、ある種のロボットなのです。ロボット処理は、最近Fin-Teckと呼ばれる金融取引領域で、ロボアドバイザーと呼ばれる自動売買やポートフォリオ推奨などにも使われています。
今回のコラムでは、この2つめの論理上の処理ロボットが担う、ロボティック・プロセス・オートメーションについて書いていきます。ロジック処理の延長が、仕事の処理=プロセスの自動処理となるからです。
 

■ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とは

たとえば、次のような処理はどうでしょう。
A社宛に請求書を作る作業を考えてみましょう。今月の取引をすべて検索し、データベースから抽出します。値引き対象は値引き、大量に購入してくれた際のボリュームディスカウントも計算し、すべての金額を集計したあと、A社向けの特別値引きを計算して減算します。請求に対し消費税を別建て計算して、請求書フォーマットに書き出すという一連の作業があります。
従来であれば、こうした作業は、古くは電卓をたたいていましたし、最近でも人が表計算ソフト上で計算するなどしています。基幹システムが導入されていても、抽出、計算、印刷といった処理はひとつひとつ人間がプロセスの指示をしなければならず、人手がかかっているのが現状です。
こうした処理プロセスを自動化してくれるのが、ロボティック・プロセス・オートメーション(以下。RPA)です。請求書の例では、A社請求書作成を指示すれば、データ検索・収集、計算、集計、印刷まで一発で処理してくれるのです。RPAでは、判断も組み込まれ、当月だけを抽出したり、値引き対象を選択して計算したり、値引きもA社向けの掛け率を特定して計算したりしてくれます。処理ロジックと判断ロジックを組み込んで一連の処理を一気に実行してくれるのです。
 

■ロボティック・プロセス・オートメーションにおける三つの分類

大まかに言って、RPAには3つの分類があります。
1つは決まりきった同じ操作の繰り返し処理の自動化です。これは、データの取得し、定義された場所に取得データを転記していくといった機械的な処理を行うRPAです。申込書のOCR読み取りとデータベースへの書き込みなどはこれにあたります。最も初歩的なRPAです。
2つめは判断アルゴリズム組み込みで、判断処理をしたうえで処理を行うものです。判断分岐は人間がプログラムしていることがほとんどです。先の請求書発行のRPAはこれにあたります。
3つめはAIによる処理です。あらかじめ判断ロジックを埋め込むのではなく、AIに機械学習をさせて処理を学ばせていく方法です。過去、ニューラルネットが流行った時は、判断・探索の処理を人間のニューロンの組成を模倣してなんとか自動化しようとしましたが、いまはそうした試みは下火になり、膨大な繰り返しの中で処理パターンを学習させるディープラーニングが主流になっています。
上記の3つの種類ともRPAです。AIが取りざたされてばかりいますが、企業の業務プロセスでは、ひとつめのレベルでの処理の自動化さえ、立派なRPAなのです。企業内では、いまだに人間が入力し、転記し、処理を繰り返していく人的プロセスが大量に残されています。都度判断を人間が行いながらデータ転記していくのも普通に行われています。付加価値のない業務に対し、膨大な人的処理工数が投入されているのです。
 

■ロボティック・プロセス・オートメーションで人は付加価値業務にシフト

RPAが普及すると、こうした処理を人間が行うことが不要になり、人間はより付加価値の高い仕事ができるようになると言われています。膨大な処理業務をRPAに任せれば、考えたり、判断したり、計画したりすることの時間をとれるというわけです。実際に、私が手掛けるコンサルティング業務で行う業務分析では、人間が些細な作業ばかりしていて、分析、判断、再計画、実行を回していないのが気になります、確かにそうした「高付加価値シフト」論は可能なのです。
しかし、すべてがハッピーではないでしょう。RPAは省力化にも向きます。実際、この数十年で消えると言われている仕事がたくさんあると言われています。そうした仕事に就いていた人たちのすべてに、潤沢な高付加価値仕事があるといえるのでしょうか。おそらくないでしょう。あるいは全員が高付加価値業務に適応できるのでしょうか。
たぶん、無理が出てきます。かえって、低付加価値労働の低価格化が進行するでしょう。企業としては効率化として良いのですが、働く方は大変です。
こうした「人間はより付加価値の高い仕事にシフト」という話はずっと昔からあります。仕事が機械化されれば楽になるとか、単純労働は新興国に移して先進国の本社側は高付加価値の仕事を行うといった話です。
しかし、実際に起きたことは仕事の低価格化でした。例えば、コールセンター業務がより安い労働力を求めてアジア諸国に流出しました。
RPAはもっと低コストになるので、こうしたアジアの仕事も取り込んで、アジアから仕事を奪うことにもなるでしょう。RPAは先進国でも新興国でも労働者と競合を起こすのです。
RPAは確かに大きな進歩です。人類総体としてはより便利になる福音でしょう。しかし、個々人の仕事を考えると、より格差が拡大し、新興国といえども、その比較的安価とされていた労働力とRPAが競合して行くことになるでしょう。
 

■アウトソーサーはロボティック・プロセス・オートメーション・サービサーになるべし

付加価値の高い仕事は社内に残し、繰り返し作業や専門特化した処理はアウトソーシングやシェアドサービスに外部化するということが一般化しています。
実は、RPAは労働力のソーシング(調達)において、こうしたアウトソーサーやシェアドサービサーと競合する恐れも出てきています。
給与計算や仕訳処理といったロジック化できるものはRPAの代替をされる可能性があります。人間は労働時間が決まっていますし、疲労もすれば、ミスもします。しかし、RPAは24時間働き続けることも可能ですし、疲労もせず、ミスもしません。構築さえしてしまえば、ランニングコストでは人間は太刀打ちできません。こうした理由から、アウトソーシングやシェアド化するよりも、もっと低コストで処理ができるようになるのです。
企業の立場で考えると、RPAによる効率化は魅力的です。究極の効率化が可能なのです。しかし、こうしたRPAがひとつひとつ個別に企業に導入されるのも無駄です。統合してサービス提供していくという点で、アウトソーサーやシェアドサービサーが積極的にRPAを仕組化して、RPAをシェアド化しながら展開することで、よりROA(Return on Asset)の高い世界になっていくでしょう。
アウトソーサーやシェアドサービサーはロボティック・プロセス・オートメーション・サービサーになるべきですし、優位な立場にいるのです。実際RPAはRPA単独では成り立たたず、かならず、高度な業務知識を持った人間とのやり取りが発生します。ROAにイレギュラー処理はできませんし、なによりも企業利害やリスクを勘案した判断はできないのです。
一方、企業で働く人は、より機械代替されない仕事のスキルを身につけなければならなくなるでしょう。労働力不足を補うという点ではRPAは有効ですが、すべての人が高付加価値な仕事ができるわけではないのです。テクノロジーの進歩は多面的影響が生じてしまうものですね。我々はラッダイト(※1)になるのではなく、積極的に変化していかなければなりませんね。
※1 19世紀の産業革命時にイギリスで起こった機械破壊運動。機械化により失業を恐れた労働者が起こした運動。ラッダイトのはっきりした由来は不明。

間接部門にロボットを導入し業務効率化

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ライタープロフィール

石川 和幸

経営コンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

石川 和幸

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