人事考課とは?評価の手順や策定のポイント

戦後、高度経済成長期を経て急成長を遂げた日本経済。これを可能にしたのは、働けば働くだけ報われる、最後まで会社が面倒を見てくれるという、いわゆる終身雇用の文化が有効に機能したことだと言われています。終身雇用は、日本人にとっては、「働く年数に比例して報酬が上がる点」で納得性のある働き方でした。

しかし、バブル崩壊による業績低迷、グローバル化による競争力激化、ITの進歩、人材不足など環境が大きく変わってきたことで、徐々にですが終身雇用が崩れ始めています。働けば働くほど報われる時代は終わり、働き方の質や生産性が重視される時代になってきています。

その途上で成果主義の人事考課が注目されましたが、結局、日本人の働き方にマッチせず、終身雇用に軸足を置きつつ、どう成果主義的な要素をいれた人事考課制度を作れるか、現在でも試行錯誤している人事担当者は多いのではないでしょうか。

このような中で、改めて人事考課の手順や評価事項についても確認しつつ、どのようなことに気をつけるべきか、最後に人事考課策定のポイントも見ていきたいと思います。

 

■人事考課とは

人事考課とは、従業員を公正に評価し、適切に処遇することで企業と従業員との円滑な関係を築き、組織全体のモラル向上に役立てる制度のことです。また、適正な配置や昇進、効率的な賃金などの管理、効果のある能力開発・人材育成など、さまざまな面で活用されています。
※厳密にいえば違いますが、「人事評価」も同じような意味になります。

 

■人事考課の手順

人事考課の手順は、一定期間(1年、半年、四半期など)における各従業員の貢献度や発揮された能力の評価を行うもので、大きく3つの手順があります。

1.目標設定
対象期間においてどのような目標を達成するのか、社員とその上長とが相談しながら互いに納得する目標を設定します。ポイントとしては、評価を客観的に行えるよう極力定量的な目標とすること、また、努力すれば達成できる可能性がある難易度とすることが挙げられます。

目標設定はとても重要です。会社全体の方針から落とし込まれた部門のミッションに対して、どうすれば完遂できるのか、そして各社員はどういうことをすればよいのか、しっかり議論すべきです。
実際に各社員に落とし込み、部門のミッションと照らし合わせて納得感のある目標設定をすることは難しいことに気づくはずです。そのうえ、組織再編成や予算策定の遅延などがあれば、目標設定や議論の猶予もなく適当に数値目標だけを設定してしまいがちです。
たしかに数値達成は必要なのですが、「数値が達成できれば全てOK」が自社にマッチしているかは考えたほうがよいでしょう。

2.自己評価と上長評価
目標達成度や能力の発揮度を自己評価したうえで、上長がこれを評価します。

ここで問題になるのが、評価基準が曖昧であることです。ある程度の基準はありつつも上長によって評価が変わってしまうことも往々にしてあります。評価基準については人事部門がきちんと設計・明確化すべきです。

3.上長から本人に対するフィードバック面談
評価結果の共有説明のみならず、具体的に何ができていて、何が不足しているのか、来期に向けて何を期待するのか、また改善すべきは何なのかなどといた観点から、上長が部下を育成する機会です。

重要なのは、評価の結果を伝えるだけでなく根拠をきちんと示すことが重要です。例えば、目標達成したのにもかかわらず、ほかの社員との相対評価で高く評価できない場合、どうフィードバックするかはとても重要です。

 

■社員への評価事項

評価は、主に以下の3つの指標から行われます。

1.仕事・業務への姿勢
情意(態度)考課とも呼ばれる項目で、仕事への取組姿勢を評価します。具体的には、マナー・規律性・積極性・責任性・協調性などの項目があります。一般的には3~5段階で評価をし、①まずは自己評価、②それを受けて上長が評価するという手順が一般的です。

2.成果・業績
成績(業績)考課とも呼ばれる項目で、会社や上司の要求レベルに対する成果のことです。所属部門、あるいは会社としての事業計画達成のためにどのくらい貢献したかが評価されます。

3.能力
能力考課とも呼ばれる項目で、会社が定めた各等級(資格)の職能要件に対する能力レベルのことです。職務知識、判断力、企画推進力、折衝力、熟練技能、指導力などの項目があります。

 

■注意すべきこと

人事考課(査定)とは企業が行う従業員に対する評価であり、職能資格制度や賞与額の決定などで大きな役割を担っています。人事考課を行うにあたり、原則として企業に広い裁量が認められますが、人事考課が違法な差別に基づき行われた場合などは例外的に違法と評価されることがありますので、注意が必要です。

具体的には、

(1) 人事考課が法律上禁止された差別に該当するような形で行われた場合
例えば国籍や社会的身分(労働基準法3条)、組合活動(労働組合法7条)、性別(男女雇用機会均等法6条)などを理由とする差別があった場合です。
(2)評価が著しくバランスを欠いて行われるなど権利濫用(人事考課権の濫用)に該当する場合(労契法3条5項)
(3)人事考課に関する就業規則等の定め(つまり労働契約)に反する場合
例えば、制度上定められた考慮要素以外の要素に基づき評価した場合です。

以上の場合、違法と評価されることになります。

また、どうしても評価によっては、社員が落ち込んでしまう場合があります。

人事考課の目的は、短期的に見れば昇進昇格や給与を決めることですが、長期的に見れば社員を育成することにあります。人事考課の結果が本人の期待に及ばなかった場合、社員が落ち込んでしまうケースもありますが、そういった場合、上長は安易に精神的な感情論で慰めるのではなく、人材育成の視点に立ち返りましょう。気づきを与えモチベートできるよう、極力具体的な理由や根拠とともに、何が足りないのか、そしてどれほど期待しているのか、丁寧に向き合う必要があります。

 

■人事考課制度はどう策定する?

人事考課制度は給与を決めるためだけのものではなく、人材育成のための方法のひとつです。言うまでもなく、報酬アップだけが社員のモチベーションアップにつながるわけではなく、上長(会社)が期待をかけてくれていること、認め育てようとしてくれていることを感じるとき、働く意欲が湧いてくるものです。

ここに人事考課を策定するポイントがあり、“イコール報酬アップ”とすべきではなく、働く意欲も喚起することにフォーカスすべきです。冒頭でも伝えたように、成果主義的な人事考課をしないで年功序列で昇進昇級する時代は終わりました。成果主義を取り入れつつも社員の生産性を上げる人事考課制度を策定することが重要です。

「新しい採用活動の本」の著者である牧 伸英氏は、

「満足を引き起こす要因」と「不満足を引き起こす要因」は異なる。仕事で満足を得られる要因は、達成、承認、仕事のやりがい、責任、昇進が挙げられ、逆に不満足の要因は、労働環境、給与、人間関係が挙げられる。
この要因のうち満足度が上がれば、不満足度が下がるといった対照的な関係ではなく、満足要因と不満足要因はまったく別のものになる。

と述べています。

例えば、給与が上がれば不満足は解消されるが、満足度が上がるわけではないということです。

※参考 牧 伸英氏 著書「新しい採用活動の本」 第3章より

つまりは、この考えをもとに満足と不満足を引き起こす要因を分析し、人事考課を策定していくことで、「従業員を公正に評価し、適切に処遇することで企業と従業員との円滑な関係を築き、組織全体のモラル向上に役立てるような」自社に合った制度を導き出すことができるのです。

人事考課策定で試行錯誤している人事担当者の方の一助となればと思います。

ライタープロフィール

くもと編集

くもと編集

マーケター兼編集者

NOC 当コンテンツの編集者。 宝飾業界と広告会社を経て2008年 NOC入社。営業や制作ディレクターを経験し、現在はWebマーケティング担当兼当コンテンツの編集を担当。 「NOCのサービスに直接関係のない記事であっても、読んでくれた方の役に立つ情報をお伝えしていきます。」