間接業務のロボット化・RPA化は今後加速する

 

■人手不足の日本ではセルフ化とロボット化が進展する

 日本はすでに人手不足です。小売店舗の窓口、大企業の事務職、工場の工員などは採用が難しくなっています。特に地方はこれから人口減少が激しくなるため、さらに深刻でしょう。

その結果、最近目立つようになったのがセルフレジです。たとえば、コンビニなどでは、買い物をした客が自分でレジ作業を行えるようになっています。

セルフレジでバーコードを読み取らせ、現金やクレジットカードなどで支払いをします。この仕組みにより、レジ打ちの人件費が大幅に削減されました。

アメリカのスーパーは極端に人が少なく、すでにセルフレジが一般化していますが、日本でも段々とセルフレジが一般化してきています。セルフレジはある種のロボット操作をしているようなものといえます。

日本の製造現場では省力化、生産性向上のために、ロボットが多く導入されています。たとえば、旋盤や研磨機などの電子制御で動く工作機械などがそれにあたるといえるでしょう。

そして、最近は間接業務にもロボット導入の波が訪れています。

このことは、すでに2月に執筆した「ロボティック・プロセス・オートメーションで本当に人の仕事は付加価値業務にシフトするのだろうか」に書いたとおりです。このように、システム上で事務処理をこなす論理的なロボットの導入が一般化してきました。

間接業務へのロボット導入は人手不足への対応です。しかし、生産性向上のためとの見方もできます。

たとえば、保険事務などの「申し込み処理」などには、莫大な作業量が必要です。手書き申込書に書かれた項目をPCに転記入力する作業、入力された内容が正しいかチェックする作業、さらに、ミスがないか入力者以外の人がチェックするダブルチェック作業と、最低でも3つの作業が発生します。

この作業をロボット化すれば、ロボットOCRで読み込み、データ項目を書き込み、チェックもシステムで行われるため、ミスがある部分だけ抽出して人にアラートが届けられれば終わってしまうのです。人の何倍ものスピードで、疲れも知らず、ミスもせず、仕事を仕上げてしまいます。

事務作業は人によるデータの転記入力、チェックの集合体です。特に高い付加価値があるわけではないのに、人が作業しないとできないかのように考えられてきました。しかし、今ではこうした事務作業を担うことが可能な処理ロボットがどんどん作られ、人手不足を補いつつあります。

ロボットで代替できる事務作業は多岐にわたり、役所・金融機関・企業など、間接業務の仕事のかなりの部分がロボット化されていくでしょう。

ただし、これは雇用に対する危機を生み出す可能性もあります。単純作業がロボットに代替されていくと、今まで人がしていた仕事が奪われてしまうからです。そうなった場合、人はより付加価値の高い仕事を担うようになるといわれていますが、すべての人が付加価値の高い仕事ができるわけではありません。人材の再配置を適正に行う必要があります。

 

■当分の間AIは人間を超えないし、シンギュラリティは来ない

 

最近では単純作業だけではなく、判断作業もAIを使ってロボットにさせることが可能になってきました。判断分岐を学習させ、判断分岐をAIに仕込んでおけば、ロボットが判断作業を行えます。

ただ、AIはかなりの判断作業ができるようになりますが、人間の思考力を超えるような「シンギュラリティ」は当分の間は来ないでしょう。なぜなら、現在の時点では過去の判断事例や判断ロジックをAIに記憶させているだけだからです。単に過去のパターンから判断できないことは、AIに判断することはできません。それでも、間接業務におけるかなりの判断作業がロボットで代替されるでしょう。

日本では人手不足解消のために、ロボットに代えられるところはロボットで代用し、人でしかできない仕事に人をシフトさせる必要があると考えられます。たとえば、介護分野などのヒューマンタッチが必要な仕事に人がシフトできると良いのですが、なかなか簡単にはいきません。

 

■先進国での賃金高止まりに対するロボット化

 先進国では賃金が高く、企業も多くの人を抱えて業務を遂行しているため、コストの競争力を失いかねない状況です。政府は「働き方改革」を唱え、より人間的で、効率の良い働き方を推奨しています。ロボット化は「働き方改革」の実現手段にもなり、産業界の人件費高騰の抑制とも親和性が良く、今後大きな波となって推進されていくでしょう。

 

■人件費が高騰しつつある新興国でもロボット化の波が

 新興国でも、賃金が高騰し、人手不足の上に、労働者がより給与の高い職にすぐ転職してしまうため、間接業務における定着率が悪化しています。

その結果、重要な業務に常に新人が投入されるような状況になり、間接業務の品質維持と継続性が危機的状況にあるのです。

そのため、新興国でも間接業務にロボットが導入され、人件費の抑制、作業の効率化、業務品質向上の取り組みが一気に進み、雇用の不安定化に影響を与える可能性が出てくるでしょう。

また、新興国は先進国企業のビジネス・プロセス・アウトソーシング(以下、BPO)拠点にもなっていますが、BPOで請け負う仕事の大部分がロボット化やAIと今後競合を起こす可能性があります。

たとえば、コールセンター業務です。コールセンター対応をロボット化し、質問事項を辞書化してしまえば、ロボットとAIで大部分の質問対応ができてしまいます。コールセンターはロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)に最も適する業務領域です。

人は、ロボットが処理できなかった例外的な対応を行えばよくなり、大幅な効率化、省人化がなされることが予想されます。

今まで低コストを武器に、世界中の先進国企業からコールセンターなどのアウトソーシングやBPOを受託してきた国や企業も、ロボットと競合する事態になるかもしれません。

 

■アウトソーサーはロボットを、あるいは人とロボットを派遣する業態に

アウトソーサー側の仕事も変わる可能性があります。今までアウトソーシングは人を派遣、または作業を受託してビジネスを行ってきました。

しかし、今後はその一部の作業をロボットがこなすことになるでしょう。つまり、人とロボットを派遣、または人とロボットが仕事を受託することになるということです。

あるいは、単にロボット派遣、またはロボットが仕事を受託することになるかもしれません。間接業務や事務作業の分野に、本格的なオートメーションが訪れようとしています。

 

 

ライタープロフィール

石川 和幸

石川 和幸

経営コンサルタント

早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。