サービス提供会社が言わないAIやRPAを本当に活用するための必要な考え方
■注目されるAIやRPAと導入時にある落とし穴
AIやRPAは多くの企業が抱える課題である人手不足や効率化、生産性向上の解決方法として注目されています。一部の企業では、カスタマーサポートにAIを導入したり、入力業務をRPAで行っていたり、活用の事例が出つつあり、ますます期待が高まるところです。
日本企業の場合、人事・総務・経理といった管理部門の業務は社員がやるべきという認識が強く、かつ管理部門の特性上ルーティン業務が多くなりがちになります。そのため会社全体から見れば、管理部門は人件費が重いコストセンターであり、AIやRPAによって、ある意味改善しがいのある部門といえます。
しかし、いざ導入をしようとしても様々なハードルを越える必要があることに気づき、検討はしているが、躊躇している企業は多いのではないでしょうか?
管理部門は定型的な業務が多いとはいえ、ふたを開けてみると、属人化されてどんな業務が行われているか担当者しかわからないということが多く、どこから手をつけるとAIやRPAを効果的に導入できるのはよくわからない企業が多いのです。
さらにAIやRPAは魔法の杖のように思われがちですが、そもそも「何のために導入するのか」「自社のどの業務の代替えとなるのか」「導入することでどんな効果が見込めるのか」ということをしっかりと理解していないといけません。
これらをしっかり理解していないとAIやRPAは「使えない仕組み」になってしまうのです。
■AIやRPAを活用するための考え方
AIやRPAを導入検討するための一歩として、社内もしくは部内で処理されている業務がどのようなものなのか、そしてプロセスがどうなっているかを可視化する必要があります。
以下、その進め方を簡単にご紹介します。
①それぞれの社員が、自分たちが行っている業務をリスト化していきます。さらにどのようなプロセスで処理していくかをフロー図として記載します。
②関係する社員同士でプロセスを結合し矛盾がないか確認調整します。
③それぞれのプロセスで停止できる業務、遅らせることができる業務を特定します。
④残った業務のうち、社員がやるべき業務、優先順位が低い業務もしくは、やらなくてもよい業務に分けます。社員がやるべき業務の基準は企画設計や高度な判断業務です。
⑤優先順位が低い業務もしくは、やらなくてよい業務のうち、AIやRPAで代替えできるものか、人が処理する必要があるものかに分けます。
⑥AIやRPAに代替えできる業務はそのまま検討し、人が処理する必要がある業務は正社員、派遣社員、もしくはアウトソーシングなど、どの手段で行うかを検討します。
以上のような進め方ができるとよいでしょう。
しかし、社員でこれらを行うとすると結構な時間と労力がかかります。その場合は業務調査の時点からコンサルティング会社やアウトソーシング会社にサポートしてもらう方法もあります。
■見逃しがちなAIやRPAで対応できない業務とは
AIやRPAを導入する際にあまり認識されず、見逃されがちな必須条件があります。
それは、「その業務がデジタルで完結できるかどうか」という点です。さらにRPAついていえば「イレギュラーなく処理できる業務であるかどうか」という点が追加されます。
「その業務がデジタルで完結できるかどうか」という点は、人の手が必ず介在してしまうような業務が間にあるとAIやRPAは導入しにくいということです。
「イレギュラーなく処理できる業務であるかどうか」という点は、特にRPA導入においてはかなり難しくなります。
例えば、経理業務はルーティン業務が多くありますが、各社の請求書フォーマットが違うのでルール化できない、仕訳の判断が難しい、請求書の発行日でイレギュラーがある、突発的に歩引きが発生する、営業部から紙で計上依頼が来る、月1回だけしか発生しない、数十件のボリュームなので人がやったほうが早いなど、細かく業務を見ると、すべてを完全にルール化するのは難しいことが多いのではないでしょうか。
■AIやRPAとアウトソーシングとの相乗効果
企業としては、人手不足や生産性向上といった課題解決のためAIやRPAを早く導入したいという気持ちの一方、AIやRPAのベンダーからは導入後の都合の良い話しか説明されず、そもそも本当に自社に適合できるのか判断できないという状況が現在のフェーズです。
その場合、「第三者に聞く」という方法があります。第三者とは例えば、コンサルティング会社やアウトソーシング会社です。
コンサルティング会社やアウトソーシング会社は、それぞれプロセスは違いますが、基本的にクライアントのあるべき姿と現実とのギャップを把握し、その解決方法を提案することを生業のひとつにしています。業務のひとつひとつ、属人化している業務ですら棚卸を行い、業務のプロセスを洗い出します。そのうえで適切なソリューションを提案します。
コンサルティング会社とアウトソーシング会社との違いは、その後、提案した内容を自らが行うかどうかです。
解決手段を明確にして、その後は自社主導でAIやRPAの導入を進めるならばコンサルティング会社が最適でしょう。業務そのものを代行してもらい、かつAIやRPAの運営・メンテナンスまでお願いしたい場合はアウトソーシング会社が最適です。
(いくつかのアウトソーシング会社はAIやRPAを活用したサービスを提供し始めています)
さらにアウトソーシング会社は業務改善やコスト削減にかけては理論だけではなく自ら実践してきたノウハウもあり、AIやRPA導入以外の人で行う業務の最適化やその後の継続的な改善提案も見込めるため、コア業務に集中したい企業にとっては重要なパートナーとなりえる可能性があります。
■まとめ:AIやRPAを導入する環境をどう準備するかが成功のポイント
いずれにしてもAIやRPAの導入には業務の実態を正しく把握し、プロセスや仕様が明文化できていることが重要です。それをもって初めて導入の可能性、活用できる可能性が見えてくるのです。
そのうえで人の判断や紙の処理がどうしても発生する場合は、諦めるのもひとつの判断ですが、人とAI・RPAのそれぞれの特長を生かした体制をとる方法もあります。さらに効果的に考えるのであれば、人でやるべきところを自社の社員ではなくアウトソーシングなどを選択することも手段とすべきでしょう。もしかしたらアウトソーシング会社がAIやRPAを活用したサービス提案をしてくれるかもしれません。そうすれば、わざわざ自社で導入する必要すらなくなります。