財務パーソンが活きる!ヒト・モノ・カネが躍動する企業とは?【第五回】「BSとの向き合い方」やはり“バランス感覚”が必須

 

財務パーソンにとっての主役クラスの職務

今回は正に財務パーソンにとって本業中の本業と言っても過言ではない、“BS(貸借対照表)”をテーマにお送りします。財務パーソンが担当するBSに関する職務について、単に定型業務の一つとしてこなすのみではNGのケースもあるでしょう。
なぜなら言うまでもないでしょうが、上場企業は現在の投資家のみならず、将来における投資家からの評価にも気を配る必要があるわけで、もし、財務パーソンが本業中の本業であるBSについて、事務手続きの一環のような取り組み方であれば、財務部としての機能が果たせなくなるからです。
つまり、広い視野を持ちながら、自社内部のみならず、社会においての自社が如何なものなのか、冷静に注視するスタンスも必要なのです。

既に貢献度の高い職務に当たっている方が殆どでしょうが、本項も参考資料の一つとして、あなたの明日からの仕事スタイルとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

自身・自社・社会。3つの視点を合わせ持つ

冒頭で述べたように、財務パーソンが持つべき“広い視野”とは?ですが、勿論、捉え方は様々で、財務パーソン個々の価値観や潜在能力によって違うでしょうが、筆者はまず、“自身・自社・社会”といった三本柱を意識しながら取り組むことをお勧めします。
以下を読み説きながら、あなたが担当する実務に落とし込んでみてください。

1、“自身” → 職務環境の見直し・改善

まずは、あなた自身が置かれている環境に視点を向けてみてください。財務パーソンの中でも、スタッフクラスの方が特に見直す必要があるでしょう。日々の職務を遂行する上で良好な環境なのか否か冷静に判断して、僅かでも足かせとなるような障害があるのだとしたら、早急に取り除いたり、不足な点があれば補ったり、改善する箇所が潜んでいるかもしれません。

たとえば、各セクションから、あなたに送信されてくる財務データが遅れがちである。或いは、自社の経営方針やセクションごとの活動が不明など、情報が不足しているのであれば、あなたの職務であるデータチェックや財務分析にも支障をきたしているのではないでしょうか?それらが他のセクションの中で生じている人手不足や役割分担等によるものなのか、或いは、財務部内の業務フローに問題があるのか、原因を追究して善処することは外せません。中には、あなた一人で解決出来にくいケースで、他のセクションに対して改善を求めたり、システム改修や組織間の業務フローを見直したり、マネジメントを図る必要性が潜んでいることもあるかもしれません。そうであれば、上司に対して直接進言して、改善を求めなければならないでしょう。

スタッフクラスである、あなた自身の職務環境を整えることが、自社の財務状況を良くする要だと捉えて、行動を執ってはいかがでしょうか。

2、“自社”→経営方針を俯瞰する。

巷では、財務分析の方法論について、様々なポジションの方が論述していますが、どのような財務状況が良好なのか?その答えの一つに、自社の経営方針が反映されていることが挙げられます。例えば、現預金等の流動資産の割合が、固定資産の総額よりも高い場合、設備投資があまり活発ではないと評価されがちですが、もし、自社が新事業を立ち上げるための準備資金をプールしているのであれば、経営方針に沿っている財務事情だと言えるでしょう。

財務パーソンが自社の経営方針とBS上のデータを冷静に鑑みるのは、基本中の基本です。もしもズレが生じているのであれば、早急にしかるべきセクションか上司に対して、データを示しながら実情を確認することが肝要なのは、言うまでもありません。

ただ、場合によっては、不採算が予測されるような事業に対する現預金投入や設備投資など、財務パーソンとして疑問視されるような実情に触れることもあるかもしれません。そのような時も、今後予測される財務状況の悪化を具体的に示しながら、改善案を提起することも、プロの財務パーソンの職務であると意識して臨んでください。

3、“社会”→社会の中での自社を客観視する。

冒頭でも述べたとおり、上場企業であれば、現在の投資家や将来における潜在投資家の評価を意識しなければならないため、財務パーソンは自社を客観視して、投資家の満足度に応えているか否かシビアに判断することも必要です。時には同業他社の動向や、今後のわが国の政策等にも視点を向けながら、自社のBSデータの推移に注視し、果たして自社が突き進む未来が、投資家のみならず、顧客や社員といったステークホルダーらにとっても、相応しいことなのか否かを見極めましょう。もしも、疑問視されるような事例が生じたら、財務部内に留まらず、経理や営業といった他のセクションのスタッフらとも問題共有をしながら、アイデアを募るなど、現場に近い財務パーソン・スタッフならではの行動が出来るはずです。

勿論、財務データについて、守秘義務もあるでしょうが、具体的な財務数値を公言せずに言葉を工夫して状況をレポートするなど、方策はいくらでもあるでしょう。財務パーソンしか成し得ない職務に当たっていきましょう。

 

BSを噛み砕いたプレゼン効果

我が国は上場企業であっても、PLを重視した経営スタイルを進めているところが多いようです。その理由は投資家の方々が四半期ごとの売上・利益に注目しがちであること、或いは、財務知識がなくても、足し算引き算の世界で解りやすいなど、諸々あるようですが、財務パーソンがもっと、BSを広く宣伝するスタンスで職務に当たれば、自社内の各セクションでの事業行動が活発になることも大いにあり得るでしょう。
たとえば、BSデータを自社内で公表するにしても、そのままプレゼンするのではなく、セクションごとの影響度も添えることで、興味をもって注目してくれる効果が期待出来ます。
具体的には “〇〇企画室の新規事業が予想よりも良好であったため、設備投資額の回収が早まりそうである。”“総務部の在庫スリム化活動により、棚卸資産がこれだけ圧縮された”等、各セクションに所属する社員らが自分の行動を省みてくれるようなコメントをプラスすれば、今後は各社員らが財務も視野に入れた事業行動を意識するようになり、自社の企業価値が高まることも期待出来るでしょう。ひいては、投資家からの高い評価も得られるのではないでしょうか。

あなたの身近にあるBSデータに関して、あなたのスタンス、見せ方、行動の仕方を工夫して職務に当たれば、自身・自社・社会にも好影響が及びます。既に実践されている方も多いでしょうが、更に前進する道は無数にあるはずです。

 

 

ライタープロフィール

田村 夕美子

田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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