PLを効果的にプレゼンすれば、経営改善が
今回は、財務・経理知識があまりなくても、足し算引き算の世界と言われ、解りやすいPL(損益計算書)がテーマです。今更感もあるうえ、昨今では“PL脳”といったワードも飛び交い、PLばかり重視する経営スタンスについて、軽視されがちですが、財務パーソンらが全社に向けて、効果的にプレゼンし、社員がそれぞれの役割に応じた有効な行動を執るようになれば、経営改善にも結び付くはずです。
『そうは言っても、どうすれば・・・』と感じた財務パーソンもおられるかもしれませんが、本項からもヒントにして、自社の中で活用出来そうなところを徐々に進めていくようにしてはいかがでしょうか。“今更感”が払拭され、あなたの活躍の場が広がるかもしれません。
現場に寄り添いながらのPLプレゼン策を検討する
月次レポートの一つとして各セクションにもPL資料を配信している企業が多いでしょうが、財務・経理部門に所属している社員であれば、一般的なPLでも、他の社員からすれば、勘定科目と数値の羅列のみで形成されたスタイルなので、あまり注目していない社員もいるかもしれません。また、経営陣ら主導による経営会議の場では、各セクションの部門長のみが出席するケースが多く、実際に現場で活躍する社員らに対して、情報公開される際には、詳細まで浸透しきれないこともあるようです。
あなたが勤務している企業内でも、同様な実情が生じているかもしれません。筆者がお勧めしたいポイント三点を以下に示しますので、あなたが置かれている環境にフィットさせながら、実践してはいかがでしょうか。
1、経理部との連携
PLは月次実績がベースとなっているため、収益・仕入・費用等の元データが集まる経理部との連携は外せないでしょう。財務部主導というよりも経理部と連携しながら、効果的なプレゼン策を検討し合い、実践に当たる方法が望ましいでしょう。経理部では、PLを含めた月次試算表を作成する際、各セクションからのデータを受信し、チェックする際、相手方に質問をしたり、実情をヒアリングしたり、何かしらのやりとりをするのが通例です。その中で財務部が知り得ない情報も存在していることが十分にあるでしょう。
まずは、あなたが財務部のスタッフクラスであれば、同じ部内のスタッフや経理部内のスタッフらを交えてミーティング等の場を設け、経理部側から見た各セクションの現状などを聞き取りながら、現場視点で、役に立つPLの見せ方の工夫を模索し合うなど、今後の方向性を見つけてはいかがでしょうか。そして、ミーティングを重ねながら、何となくでもカタチになれば、企画として上司に提示したり、財務部内会議で起案したり、前進する方法は諸々あるはずです。
たとえ、いちスタッフでも他のスタッフや経理部とも連携しながら、徐々に行動を進めることで、こうした取り組みが財務・経理部全体で進めるべき使命の位置に登ることもあり得るのです。
2、各セクションには、“共通言語”を用いたプレゼンを心掛ける
いよいよ各セクションに対するプレゼン方法についてです。前述したように、勘定科目と数値の羅列ばかりのPLを単に配信するのみでは、興味を持ってもらうことの方が至難の業だと思うべきです。コツは各セクションとの“共通言語”を用いること。“共通言語”とは、普段相手が接している業者さんの名称や商品名などを指します。
つまり、出来るだけ、各セクションの社員らが興味を持ってくれるように、“業者名”“エリア名”“商品名”など具体的なワードを用いたプレゼンを心掛けるのです。
たとえば、営業部であれば、顧客名・取扱商品名等、あるいは、製造部であれば、使用部品名や取引先業者名などが挙げられるでしょう。PLを配信する際には、月次の通常の実績データの他、顧客や業者ごとの実績や商品・サービスごとの利益を表すことで、各セクション側は自身の成果を実感し、振り返りの場を設けると共に今後の行動策を見出すはずです。
もちろん、各セクションでも、ある程度の実績データを活用しながら、日々、事業活動を進めているでしょうが、案外、財務・経理部側が配信したPL情報の方が有効だと判断し、相手方の事務処理軽減にも功を奏すこともあり得るものです。
出来るだけ、相手方の行動に寄り添うPL配信スタイルは、まだまだ方法論があるでしょう。自社の業種や規模等に見合ったオリジナルなカタチを模索してはいかがでしょうか?
3、経営陣へは、人材活用のヒントになり得る情報をプレゼンする
経営陣はもちろんのこと、しかるべき経営責任があるため、PLを含めたデータについて、真摯に受け止め、次なる経営戦略を練らなければならない位置にいます。よって、財務パーソンは、自社の経営方針を十分に鑑み、前述したように経理部と連携を取りながら、経営陣らにとって重要な情報をPLと共に配信するのは不可欠でしょう。中でも、各部署がどのような取り組みをし、現在のデータに至っているのか、具体的な内容を挟み込みながらのプレゼン方法は基本的なところではないでしょうか。
たとえば、直接部門については、人件費対営業利益の推移を示したり、間接部門については、“コスト抑制”“在庫圧縮”など取り組んだ課題の進捗状況が記されたレポートを添付したり、自社の重要な経営リソースの一つである、人材がどのように活躍しているのか、経営陣があまり知り得ないところまでプレゼンすることで、経営陣は更に人材を活かした経営方策を見出す可能性が高まります。
ひいては、こうした経営陣らの人材活用策により、財務部が担うところである「企業価値を高める効果」も表れるのです。
財務パーソンとしての役割を全うする
PLは、社員らの活動による収益・費用・利益が表され、工夫次第でプレゼンすれば、実績データについて、社員らが身近に感じてくれるので、良き振り返りの材料としても効果的です。よって、財務パーソンがBSばかりを重視するような仕事スタイルを続けるのは、正に“バランスが悪い”と感ずるべきなのです。社員らの貢献度が、財務パーソンのあなたに伝われば、そのバトンを受けて、未来に待ち受けるステークホルダーに対し、どのようにアピールして企業価値を高められるか、あなたの手腕が試される場面が多々表れるのではないでしょうか。
そして、忘れてはならないのが、社員の中には財務パーソンである、あなたも含まれているということです。やがて、自身の貢献度もPL上のどこかで表れるはず。あなたを含めた全社員の貢献度を次のBS上のステージで、どのように形づけるか模索し、行動を続けることが財務パーソンの基本スタイルなのです。