財務パーソンが活きる!ヒト・モノ・カネが躍動する企業とは?【第七回】キャッシュフローを良くする財務パーソンの役どころ

 

企業の血液に例えられる“キャッシュ”。流れを良くする役どころの再考。

企業の規模の大小に関係なく、キャッシュフローを無視した経営など、もはやありえません。”勘定合っても銭足らず“ といったことがないように、経営規模が小さな企業は経営者が預金通帳を凝視しながら、資金ショートが生じないような経営に努めているようです。その一方で、本項の主役である財務パーソンの多くは、中堅規模以上の企業で活躍されているでしょうから、円滑な資金調達と運用を最優先しながら、それぞれの役どころを遂行する必要があるでしょう。

今回は、企業の血液にも例えられるキャッシュフローに焦点を絞り、財務パーソンとしての役どころを再考していきます。これまでのご自身の担当職務の在り方を振り返りながら読み進めてください。

 

キャッシュフローを良好にする3つのアプローチ

筆者は財務・経理部員向けのセミナー講師として従事していますが、その中で強く感じられるのは、上場企業に勤務していても、スタッフクラスの方は、BSやPLには注目するも、キャッシュフロー計算書には、あまり注目していない様子が伺える点です。その理由の背景には、スタッフクラスの場合、資金調達や運用についての実権を握る機会があまりないため、他人事になっている点が挙げられるでしょう。よって、懸念されるのは、冒頭で述べた経営規模の小さい経営層のように、資金ショートが生じないように注意を払う必要性もないため、危機意識が薄くなっている可能性があるのではないでしょうか。

たとえ、資金が潤沢な企業に身を置いている財務パーソンでも、当事者意識を持ちながら、自身の職務を遂行する必要があることなど、言うまでもありません。勿論、既に十分に当たっている方も多いでしょうが、僅かでも工夫したり、視野を広げたりすることで、更に付加価値の高い職務になり得ることもあるはずです。

以下にキャッシュフローを良好にするため、財務パーソンとして当たるべき、お勧めの3ステップを挙げました。心もとない部分があれば参考にしてみてはいかがでしょうか。

■STEP1:キャッシュフロー計算書の読み方の基礎を押さえる。

まずは、今更感を抱く方も多いかもしれませんが、キャッシュフロー計算書の読み方の基礎をおさらいすることをお勧めします。本計算書は、“営業キャッシュフロー”、“投資キャッシュフロー”、“財務キャッシュフロー”の三部で構成されています。自社の計算書を紐解き、それぞれのキャッシュの増減を精査すれば、自社がどのような経営スタイルでキャッシュを調達し、運用しているかが改めて認識されるでしょう。そこで、自社の強み・弱みを探りながら、適宜、上司へ現況を確認して、財務パーソンとして何をどうすべきか、模索するのです。場合によっては、机上でこなす仕事ばかりではなく、現場担当者の元に足を運びながら、情報発信しなければならないこともあるかもしれません。

次の2~3のステップを参考にしながら、当たってはいかがでしょうか。

■STEP2:関連部署への行動指南役を担う。

言わずもがな、キャッシュフロー計算書を含む決算書類は、単に勘定科目等や数字の羅列を表しているものではありません。特にキャッシュフロー計算書上に表記されている“営業キャッシュフロー”が増えている程、本業によりキャッシュを稼いでいると評価されます。よって、これらのキャッシュの増減が、社員における経営活動の結果を表していると捉え、軌道修正する箇所を探りましょう。

まず、当期純利益がプラスでないと営業キャッシュフローがプラスになることなど困難ですが、他にも、売掛金の回収時期よりも買掛金や未払金の支払時期が早いケースがあれば、キャッシュアウトが先行するので、資金繰りにも無理が生じます。こうした基本的な考え方が組織内で根付いているのか否か確認し、営業部や製造部、資材部等へ“営業キャッシュフロー”の仕組みについて公開し、不十分な箇所があれば早期に改善を図る必要があるでしょう。たとえば、売掛金回収の早期徹底化を図るため、営業部に対して請求書発行の早期化を提案する。或いは、製造部や資材部に対しては、適切な時期に適量な材料を調達して、余剰在庫を防ぐなど、意識的に“営業キャッシュフロー”を増やすような行動を促すことで、徐々にでも計算書上に好影響が及ぶはずです。

いくら、財務パーソンが机上でアレコレと悩んでいても、組織内は何も変化が生じません。現場に出向いてあなたが執るべき行動を見出してください。

■STEP3:経営陣への助言役を目指す。

最後のステップでは、財務パーソンが経営陣への助言役として、どうすべきか考えていきます。経営陣であれば、言わずもがな、経営に対する重責を担いますが、財務パーソンらが適切な情報を発信して、良好な経営判断を下せるような体制は不可欠です。財務パーソンは、キャッシュフロー計算書上の数値の増減を精査し、財務状況や現場の実情なども併せ見ながら、課題・問題点を提起したり、改善策を提案したり、具体的な行動を執るようにしましょう。たとえば、生産性が低い設備・機器の稼働率を上げて、不要な設備投資を防ぐ。或いは、各金融機関の動向を調査して、融資を受けやすい財務体質にするなど、財務パーソンならではの視点での取り組みをすることで、“投資キャッシュフロー”や“財務キャッシュフロー”にも好影響が及ぶはずです。もし、本稿をお読みの方がスタッフクラスであれば、こうした取り組みは、ハードルが高い上に直接的に経営陣らへ助言することなど困難かもしれませんが、財務部内の会議などの場で、現況をプレゼンして、課題・問題点の共有を図るなど、何かしらの行動は執れるはずです。

自身の立場上のことで遠慮せずに情報発信することは、やがて経営陣の耳にも届き、良好な判断材料となり得ます。出来るところから進めてはいかがでしょうか。

 

血液(キャッシュ)検査⇒改善行動があってこその財務パーソンを目指す。

冒頭でも触れたとおり、黒字倒産は決して他人事ではなく、キャッシュなくして経営など成り立ちません。よって、BS・PLと並び、キャッシュフロー計算書に直接触れる位置である財務パーソンは、当事者意識を持ち、率先して改善行動を起こすことは必須なはずなのです。もし、キャッシュフローが悪化するような危険因子が潜んでいたとして、放置すれば更なる悪化の道を辿るのです。あなたが一歩踏み出すことで、資金調達方法や運用策が更に改善されるでしょう。

まずは自社の血液(キャッシュ)事情を検査してみてください。全く非の打ちどころがないケースの方が稀ではないでしょうか。これまでの記述を参考にして、あなたならではの役どころを探ってください。検査のみで終わることなく、改善行動を起こすことが肝要なのです。

 

 

ライタープロフィール

田村 夕美子

田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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