財務パーソンが活きる!ヒト・モノ・カネが躍動する企業とは?【第九回】いよいよM&Aの到来。 その①:準備編「プロジェクトチームに抜擢された! あなたの執るべきスタンスとは?」

 

いよいよM&Aチームに抜擢!

今回から4回にわたり、財務パーソンがM&Aのプロジェクトチームに抜擢された場合、どのような役目を担うべきか考えていきます。初回に当たる“その1”では、実践に当たる前のスタンスについてです。本連載をお読みの方であれば、既に専門書籍やホームページなどで、M&Aに関する情報については熟知されているでしょうが、実践の場では、自社のケースに置き換え、財務パーソンとしての手腕を発揮する必要があるはずです。

また、当面M&Aの予定がない方もおられるでしょうが、自社の企業価値を見据えながら当たる場面では、日常の職務の中で何かしらの共通点もあるでしょう。

いつものように、現場視点で綴ってまいります。自社のケースに沿いながら当たってはいかがでしょうか?

 

財務のプロ+あなたならではの視点・見解がカギ!

筆者は本連載の中で、財務パーソンが受け身のスタンスで臨むことなど、NGであると説いてまいりました。今回も同様に当事者意識を持ちつつ、上層部と現場双方にとってのパイプ役も意識しながら進める必要があるのは言うまでもないでしょう。たとえ、この度のM&Aプロジェクトの発足やメンバー抜擢があなたにとって突然のことであっても、冷静かつ堂々として臨んでみてください。プロジェクトは、主に上層部の責任者に当たる方が舵取りしながら進めるのでしょうが、互いの企業にとってより良いM&Aを実現するためにも、財務のプロそしてあなたならではの視点・見解を持ちながら、遠慮なく、意見や代替案を発することも必要なはずです。

以下にM&Aプロジェクトメンバーの一員として、どのような準備を整えるべきか、3STEPにしてまとめました。参考にされながらあなたの明日からの職務に邁進してはいかがでしょうか。

STEP1:M&Aのシナリオについて精査する。

M&Aと一口に言っても、吸収合併のみならず、事業の譲渡、或いは、資本提携、業務提携などスタイルは様々で、あなたが所属する企業がどの位置にいるかにより、目配りしなければいけない箇所ややるべきことは異なるのでしょうが、目的やメリットがあるからこそ、自社はM&Aを選択したはずです。まずは、あなたの目で自社がM&Aに踏み切った背景や目的、そしてメリットについて詳細が盛り込まれたプロジェクト計画書などを読み込むことから、スタートを切る必要があるのは言うまでもないでしょう。計画書は今後生まれ変わる事業体への道筋が描かれたシナリオとも言えます。もし、何かしらの疑問点や課題点が見つかったのであれば、怠ることなくレポートしなければ、円滑なM&Aが実現しないと、捉えて当たってください。

たとえば、M&Aの実務サポートにあたるコンサルティング会社が、何をどこまで支援してくれるのか曖昧であったり、互いの企業価値の集計・算出期間が短かったり、現場事情について詳しいあなただからこその、無理・ムダが潜在しているかもしれません。

もし、僅かでも腑に落ちない箇所が見つかったのであれば、あなたが求めている内容や改訂すべき点を、具体的にまとめて提起するようにしましょう。ここが抜けていると、余計な人件費などのコストが発生する危険性もあるでしょう。

あなたの的を射た問題提起によって、シナリオに描かれたメリット以上に良好なM&Aが実現することも十分にあり得るのです。

STEP2:M&Aによる心理的ストレスを予測し、回避策を探る。

次は社員らの心理的ストレスについて目を向けましょう。本項をお読みの方の中には、財務部内のいちスタッフに過ぎず、権限が殆どない、或いは、采配された職務について具体的にどうすべきか考えるのみで精一杯・・・といった立場の方も少なくないでしょう。

しかしながら、M&Aの実行後は、いくら事業拡大や国際競争力の強化の見込みがあっても、正にそれらを実現する担い手である社員らにとって、より良い社内環境が実現しなければ、“成功”などあり得ないのです。ここは、財務部の視点に加え、社員の一人としてM&Aにより生じそうな社員らのストレスを予測し、回避策を探るようにしましょう。

たとえば、合併する側とされる側の双方の査定基準が異なることにより、従前と比べて昇給の差が生ずる可能性がある、或いは、社員の中には経験値が殆どない部署への配置転換の予定が組み込まれているなど、企業にとっては致し方ないことでも、社員にとっては死活問題である事例も起こり得るでしょう。STEP1のところで、あなたがシナリオを精査し、もしも、社員らに理解を求めるばかりの計画であれば、上層部に対して疑問を提起したり、或いは、人事側に対して、M&Aを契機に査定基準の改訂を提案したり、具体的な回避策を提案してはいかがでしょうか。

社員は経営リソースの中でも最も重要な位置にあると言っても過言ではありません。
プロジェクト会議の場などで、真摯な姿勢であなたが発言することで、他のプロジェクトメンバーの方も同意し、皆で解決していく方向で進展していくはずです。たとえ、上下関係等でここまで行動することが難しくても、同等クラスのプロジェクトメンバーらとも意見交換をしながら、当たってみてはいかがでしょうか。

STEP3:いよいよ、実務に落とし込むシミュレーションを!

ラストステップにあたるところでは、これまでの1から2までのステップを踏まえ、実務にしっかりと落とし込むシミュレーションをしましょう。M&Aのプロジェクトメンバーは、企業規模や業種などにより、人員構成が異なるでしょうが、あなたが抜擢された理由の中には、やはり財務従事者であることに加え、M&Aにより、全く新しい事業体を牽引するに相応しい人材だと認識されたこともあるはずです。よって、責任感はもとより、あなたなりに全うできるようにスケジューリングする、或いは、自身が采配された職務の中で、ハードルがやや高いと思われるものがあれば、必要な知識を補うためにセミナー受講や関連書籍を読み込むなど、積極的に当たりましょう。また、他のメンバーとも意思疎通を図りながら、今後の活動の方向性を模索したり、意見を交換し合ったり、自身以外の人材とも刺激し合いながら先々を見つめ合うことで、更に良いアイデアも見つかるかもしれません。

あなたの行動が、M&A後に予測されたメリットを超えることが十分にあり得ることだと肝に命じながら進めてはいかがでしょうか。

 

M&A効果を最大限に発揮するための具体的な行動が必須!

今回のテーマであるM&Aに限らず、新しいプロジェクトメンバーへ抜擢されることについては、喜びを感ずる人や緊張感で臨む人など、様々なはずです、それは当然のことで、個々により捉え方は様々でしょうが、特に経験のない舞台だと感じる方にとっては、プロジェクトリーダーの指示を実直に聞き入れ、与えられたことをまんべんなくこなすスタイルを選択するケースが少なくないでしょう。勿論、このような手法は単に誤っているとは言えませんが、あなた自身の潜在能力が活かされているのか、といった観点では、マイナスな点が生ずることもあるかもしれません。

企業間のM&Aは、歴史的な場面です。また、現在は、利益推移のみならず、ESGの側面での指標など、幅広い観点で自社が評価されることが、当然のようになっています。これは筆者の見解かもしれませんが、このような実情だからこそ、現場で実務を担う個々の人材の感性・声が反映されなければ、M&Aの効果が十分に発揮できなくなる、と肝に命じるべきなのです。

たとえ、あなたがアシスタントクラスでも、M&Aのプロジェクトメンバーの一員としてのプライドを持ち、能動的に当たってみてください。あなたの行動が効いたプロジェクトは、メンバー全体にも波及し、ひいては近い将来、企業価値もより高まるようなM&Aが実現されるのです。

(次回“その2”では、コンサルティング会社の選定についてお送りする予定です。)

 

 

ライタープロフィール

田村 夕美子

田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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