バックオフィス業務のリモートワーク、 3つの壁とその壊し方

新型コロナウィルス感染症(COVIT-19、以下コロナと略)の早い収束を祈る日々が続いています。パーソル総合研究所の3月の調査では、全国でおよそ170万人の正社員が勤めている会社が、コロナでリモートワークを初めて経験したようです。リモートしやすい業種や職種、規模に左右されず、大手企業も本気で取り組み始めたことは日本の働き方が変わる一歩と言えます。とはいえ、まだ全体の2・3割しか実施されていないという声が聞こえています。本記事ではリモートワークが始めにくいと言われるバックオフィス職に焦点をあて、どのように始めていくべきかを整理しました。

 

バックオフィスがリモートワークできない3つの理由

全体的にリモートワークが進まない理由としていくつか考えられます。情報の持ち出しに関するセキュリティ面・成果をどう見るかという人事評価、本当に稼働しているのか性善説に頼る側面、リモートワーク実施に当たるインフラやシステム投資にかかるコストの課題などが一般的なところでしょう。それではバックオフィスの具体的な業務に落として「リモートできない」理由を考えてみましょう。

1、根強い「紙」文化

もっとも問題となるのが「紙文化」です。経理、事務では請求書や契約書、人事では採用候補者の履歴書と少し考えただけでも紙の書類が多くあがります。ペーパーレス市場が伸びているとはいえ、初めて導入する場合は簡単には進みません。また、自社がペーパーレス対応していても、取引先から来る請求書類が郵送で紙が送られてくるケースもあります。これらの書類を会社から持ち出すことは、当然不可です。

2、「ハンコ」という物理的な拘束

会社では、個人で決裁・承認・実行できるものはありません。各種申請、特別決裁、稟議、経費・出張承認などすべてに申請・承認プロセスが必要です。
一部システム化されていても「◎◎の申請には捺印(ハンコ)が必要」というケースもあります。営業側から申請された書類を最終的に処理するのがバックオフィス部門です。上司の承認を得ているのかは紙を確認しないと処理できません。また、お客様が絡む書類の場合は、大抵が「急ぎで対応してほしい」と言われます。バックオフィスは部門内だけで調整できない仕事が多いのです。

3、機密情報の取り扱い

バックオフィスは重要な会社のヒト・モノ・カネを管理しています。機密性が高いことや個人情報などは当然持ち出し禁止でありますが、情報がないと業務が遂行できません。また、自社でサーバーを構築して管理している場合、社外からのアクセスを遮断していたり、会社に持ち出し用パソコンがない場合は更に接続のハードルが高まります。

 

バックオフィス部門もリモートワークを実現するために

要因として大きいものは、やはり物理的なモノ文化でした。それを解決するのは、やはりクラウドサービスが大きなカギを握っています。

ペーパーレスに本気で取り組む

◆請求書が紙で困るなら

請求書のペーパーレスといえばWeb請求書」があげられます。Web上で請求書を作成し送付するため、印刷する必要もなく紙が発生しません。会計システムにも連動できるものが多いためJsoxにスムーズに対応でき、業務負担も軽減されるというメリットも生じます。また、ペーパーレスという観点だけでなく、請求書業務は担当者のミスや相手先での紛失・郵送遅延などのトラブルリスクも軽減されます。コストだけを見るのではなく、社員の作業時間・リスクヘッジも含めて検討するのがベストでしょう。

◆契約書が紙で困るなら

次に多い紙の書類といえば契約書ですね。インターネット上で、締結・保管までが完了する電子契約も進化しています。代表的なところでは、インフォマート社の「BtoBプラットフォーム契約書」、弁護士ドットコム社の「クラウドサイン」、GMO社の「Agree」などが有名です。電子帳簿保存法の要件を満たすものが多く、また認印からサインまで対応できるサービスもあります。

◆社内の申請書類が紙で困っているなら

各種申請や稟議などの社内手続きを電子化した仕組みを「ワークフロー」といいます。ワークフローを活用することで、上長がどこにいてもスムーズに承認を受けることができ、不毛な待ち時間がなくなります。クラウドサービスならインターネットさえ繋がっていれば申請内容がすぐに確認できるため、リモートワークでもスムーズに対応できます。

「紙とハンコ」ではなく、今は「クラウドサービスを使うのがスタンダード」になってきています。

◆クラウドサービスの発展を知る

勤怠管理や会計、経費精算、人事労務、給与計算のバックオフィス系業務をひとつのサービスで管理できるクラウドサービスも増えています。例えば、Donuts社の「ジョブカン」や、家計簿アプリでおなじみマネーフォワード社の企業向け「MFクラウド」、freee社の「freeeシリーズ」などが代表的です。いちシステムの導入時に、連携する工数や不具合などのリスクもありません。ここ数年のHRtech盛況とともにバックオフィスは進化を求められています。

クラウドサービスは便利ですが、反面、自社でカスタマイズしたシステムを利用中の企業は移行のハードルが非常に高いと言えます。なぜなら自社の業務フローに合わせたシステムになっているので、使い勝手はクラウドサービスの比になりません。また、「他社のサーバー上に重要情報は預けられない」というお客様もまだまだ多いでしょう。

しかし、セキュリティ上の規定の問題ではなく「自社は特殊だから既存のクラウドサービスに従った業務フローで対応するのは難しい。だからクラウドサービスは検討できない」という方はこの機会に、自社の業務フローしか正解はないという思い込みを取り払い、他社の効率的な事例を参考にするきっかけにしませんか。クラウドサービスはバックオフィスの課題や悩みを解決すべく研究されて作られていますので、最新のバックオフィスへ変化するチャンスとも捉えられるでしょう。

 

リモートワークはいいことばかりなのか?

リモートワークにはデメリットもあります。実践する方法だけではなく、セキュリティやリモート構築のコスト以外に、どんなデメリットがありどう対策をしていくのかを考えてみました。始める前に知っておくことで後手にならない対応をしてくださいね。

社員同士のつながりが希薄になる

リモートワーク中のやり取りはチャットツール、Web会議が中心になります。そのため、対面でのウェットなコミュニケーションや他愛ない雑談をする機会もなく、業務連絡のみとなります。表情や声色、仕事中の雰囲気から汲み取れるような相手の気持ちも、Webや文面経由ではなかなか難しいですよね。また、チャットツールでのコミュニケーションではテキストのやり取りのため、ちょっとした行き違いやストレスも発生しがちです。直接伝えるよりも冷たく感じてしまうこともあり、特に上司からメンバーへの指摘や指導がしにくく悩まれる場合もあるでしょう。小さな「コミュニケーションのズレ」を積み重ねないために、細心のやりとりを心がけましょう。

成果の定義が難しい

成果がわかりやすい営業職と異なり、バックオフィス職の仕事は専門的で、一概に効率とアウトプットだけでは判断できず成果を定義づけることが難しいものばかりです。そのためできて当たり前、間違えればマイナスという減点方式の評価になりがちです。ミスがなく業務遂行できること、稼働時間に対する進捗をどう可視化するか、など成果の定義は実行前に考えましょう。

 

まとめ

リモートワークは、ただ会社にいる時間=成果ではなくなり、自身のスキルが可視化され生産性を求められるようになりました。更に、コミュニケーションも難易度が上がります。またその業務を一人で律しながら集中して行わなくてはならないところもポイントです。

一人ひとりが自分自身で考え、実行することで、生産性の高い業務遂行ができるようになれば、無駄な残業がなくなり、リモートであれば通勤時間も本質的な時間に充てられます。社員が生産性の高い人材になればなるだけ、企業にとっては大きな資産となります。しかし、自律的な行動を一人で実践していくには、強い精神力が必要です。最初はうまくいかないことが多いでしょう。それでも「長時間働くことが美徳」という文化から脱却すべきときです。一人でも多くの人が、本質的な活動で生産性高く会社と社会に貢献できるように、またその引き換えに有意義な時間を手に入れられる、そんな双方win-winの関係性を目指して有意義な情報を提供していけたら、と考えています。

 

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ライタープロフィール

パプリカ

パプリカ

外資系総合商社と総合マーケティング支援会社にて法人向け営業職を経験。 世の中にあふれる情報をかんたんにわかりやすく、一人ひとりに合ったかたちで伝えることをミッションに活動中。