MENU

2022.06.23 掲載 2022.07.12 更新

「テレワークを始めてから働きにくくなった」──テレワーク時代に求められる組織論

新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、はや二年が経った。私たちの生活に与えた影響も大きい。
巷では、「マスク=顔パンツ」なる言葉も生まれた。
「マスクはもはやパンツのような存在だから…」
「マスクをしている方が美人に見られるし」
──コロナ収束以降でもマスクを外さずに生活したいという人の気持を表した言葉だが、これもコロナ禍が私たちの生活に与えた影響の一例なのだろう。

テレワークは、以前から働き方改革の文脈上において推奨されていたものではあったが、新型コロナウイルスの拡大によって、急激に社会に普及した。
一方で、テレワーク下での働き方について、不安や不満を感じる人も少なくない。

パーソル総合研究所 「 新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によれば、2割強の人が「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安」、3割弱の人が「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安」と答えている。

急激に拡大したテレワークという新たな働き方が、多くの人に、不安と不満を与えている。
本稿では、従来の組織論ではカバーしきれない、テレワーク下で求められる新たな組織論について考えていこう。

今、職場で起きている課題

先日、知人とコワーキングスペースで一緒に仕事をする機会があった。
ふと知人のPCを見ると、Zoomがつながっている。だが、知人は会話にマイクもヘッドホンも使っておらず、会議に参加している様子はない。

何してるの?──聞く私に、知人は苦々しげに答えた。
「うちの会社、テレワークで働く際には、Zoomをつなぎ続けるのがルールなんだ」

別の知人は、朝礼、中礼(昼)、終礼(夕方)と三回定時報告を強いられるようになったという。部内の全員がオンライン参加し、状況報告を行うのだと言う。
「そのたびに仕事が中断されるんだよ。こんなこと、オフィスで働いているときだってしなかったのに」とぼやく。

ただ、それでもまだマシな方だと知人は言う。
知人の知人は、一時間ごとに業務内容を記す日報を書かされているそうだ。

テレワークを機に、このような神経質で行き過ぎたマイクロマネジメントを行う企業が散見されるようになってきた。さらに、ネット上には、パワハラ・モラハラすれすれの行為も報告されている。

  • 昼食やトイレなどで離席する前には、チャットで報告することが義務付けられている。
  • 30分ごとに上司から電話がかかってきて、電話に出ないとその理由を報告させられる。
  • 仕事に対する指示や内容、ボリュームなどについて意見すると、「○○さんは文句を言わずにこなしているけど」「オリンピック見ながら仕事しているから、効率が下がっているんでしょ!」などと嫌味を言われる。

目の前に同僚や部下がいないことから不安を感じる気持ちは分からないではない。
だが、行き過ぎたマイクロマネジメントは、職場の環境、ひいては人間関係をも悪くしてしまう。

「だったら、事務所に出勤しますよ」──テレワークを嫌がる人だって出てくるはずだ。

組織論のあり方

いつの時代も、職場に対する不平不満は尽きない。
読者の皆さまも、職場の愚痴を肴に酒を酌み交わした経験があるだろう。
もちろん、酒席ではなく、日頃から職場環境、労働環境の改善を議論している企業も少なくない。仕事柄、筆者も、そういった企業からアドバイスを求められることがある。

より良い職場や仕事の実現を求め、議論を行うことは必要だ。
テレワークのような新たな働き方を導入する際には、なおさらである。

だが、私は常々疑問を感じていたことがある。
ほとんどの企業は、まず現状の職場運営ないし組織論ありきで議論をしようとするのは何故だろうか?

現状ありきで議論を行うことも必要なことだ。
だが、現状ありき「だけ」を基点に議論を進めて、本当の改善など得られるのだろうか?

組織論は、企業を動かすためのフレームのような役目を果たす。
企業理念や、目指す企業風土・文化を実現するために、組織論が必要となる。

自動車に例えよう。
速さを求めるのであれば、必要とされるのはスポーツカーのフレームであろう。
大量の荷物を運ぶのであれば、トラックのフレーム。
多くの人が一度に移動することを求めるのであればバスのフレームが最適だろうし、限られた人数が快適に移動するのであればセダンのフレームが必要となるはずだ。

組織論は企業理念、求める企業風土・文化などを基点に考えるべきであって、現状を基点としてしまうと、行き届いた議論ができなくなる。

そもそも、テレワーク以前の組織論は、企業理念などを基点として最適にデザインされたものであったのか、検証する必要もある。
なし崩し的、自然発生的に生じた組織論、もしくは昭和の時代の日本企業におけるテンプレートな組織論をそのまま使っている企業も多いはずだ。

テレワークでは、同じ場所、同じ時間を物理的に共有して働くことができない。働き方は、社員一人ひとりの自主性に委ねざるを得ない要素が大きくなる。テレワークという新たな働き方においても、あなたの会社が守りたい企業理念、企業風土、企業文化とは何なのか?
このことを考えて、組織論は論じられなければならない。

オフィスで働く組織論は、自動車で言えば、バスに近いのかもしれない。
テレワークの実施により、バスを降りた今、必要とされる組織論はどんな形だろうか。会社によっては、スポーツカーの速さかもしれないし、セダンのような上質さかもしれない。だがいずれにせよ、バス型組織論をベースに議論をしても、的外れになってしまう可能性が高い。

テレワーク下では、新たな組織論が必要となる。

組織論とは

組織論は、ミクロ組織論とマクロ組織論に大別される。
ざっくりと言えば、ミクロ組織論は従業員のモチベーション設計を論じるものであり、マクロ組織論は組織構造を基点に理想の組織形態を目指すものとなる。

もちろん、テレワーク時代における理想の組織論を目指すのであれば、ミクロ組織論、マクロ組織論の両輪で議論を進める必要はあろう。
だがまず先行して議論すべきは、ミクロ組織論だと私は考えている。

就業規則や組織体系の見直しも必要だが、まずはテレワーク下でもお互いに信頼し、安心して仕事をすることができるように、ミクロ組織論、すなわちモチベーション設計を再考するべきである。

テレワーク下では、新たなルールも必要となる。
行き過ぎたマイクロマネジメントを具現化したような日報は駄目だ。だが、どうしても仕事内容が見えにくくなるテレワークにおいて、会社が従業員に日報を要求するのは、当然の流れだ。
だが、従業員からすれば、これまで要求されてこなかった「日報を書く」という仕事が加わるわけである。当然、反発も起こる。

反発をクリアし、日報という新たなルールであり仕事を浸透させるためには、「日報を書く」ことに対するモチベーションを設計し、用意する必要がある。

人は、モチベーションの伴わないルールは守らない。

信号無視を例に考えよう。
自動車を運転していて、信号無視を日常的に繰り返す人はいないはずだ。理由は、自動車による信号無視が、重大な事故を引き起こす可能性が高いこと、警察によって検挙され罰則を受ける可能性があることを知っているからだ。

一方、自転車や歩行者の場合、信号無視をする人は少なからずいる。自動車運転中は信号無視をしないのに、自転車乗車中、歩行中には、何故信号無視をするのか?

警察が、検挙をほとんどしないことも理由の一つであろう。
また、自転車・歩行者の場合、「安全確認は十分に行えている」というおごりもある。信号を守らずとも、「自分は安全確認を十分に行えている」と過信しているのだ。

小学校などで交通安全教育を受けた直後の子どもたちは違う。
彼ら彼女らには、「交通ルールは遵守しなければならない」「信号無視は駄目」という価値観が備わっているから、信号を守るというモチベーションが維持されている。

年齢を重ね、よけいな知恵やおごりを身に付けることで、「信号に従う」というモチベーションが下がり、信号無視を行うようになる。
逆に言えば、新たなモチベーション設計を与えてあげれば、人は信号無視をしなくなる。

筆者は物流ジャーナリストとしても活動しているが、心ある物流従事者は信号無視をしない。理由は、物流従事者としてプライドがあるからだ。安全が絶対正義である物流ビジネスにおいて、信号無視など、プライドが許さないのである。

モチベーションの再設計に有効なOKR

従業員のモチベーション構造を再設計する上で、私がおすすめするのがOKRである。かいつまんで説明しよう。

OKRは、「Objectives and Key Results」の頭文字を取ったものである。肝は、Objective(目標)とKey Result(重要な結果指標)の設定にある。

OKRでは、企業の掲げるビジョンをブレイクダウンして、企業、組織、個人のそれぞれに、ObjectiveとKey Resultを設定する。ObjectiveとKey Resultに関しては、「容易ではないが達成可能な水準」、つまり挑戦的な目標を掲げることが推奨されている。これは、OKRが、個人と組織の成長を促す目標管理手法であると同時に、組織マネジメント手法であることに由来する。

OKRを設定するプロセスは、モチベーション構造の再設計にも有効に働く。
OKRの基点は企業ビジョンであるから、組織、個人としてOKRを設定する際には、自ずと企業の掲げるビジョンと向き合うことになる。
ポイントは、「容易ではないが達成可能な水準」のObjectiveとKey Resultを求められることにある。

従業員は、企業が掲げるビジョンを自分なりにブレイクダウンし、自分なりの「容易ではないが達成可能な水準」を模索しなければならない。

こういう方程式がある。
個人のチカラ=最大出力×発揮率

最大出力とは、個人スキルを指す。また発揮率を左右する重要な要素が、モチベーションだと考えて欲しい。
「容易ではないが達成可能な水準」を導くためには、「個人のチカラ」を見定める必要がある。
そして、「個人のチカラ」を左右するのが「発揮率」であり、「発揮率」はモチベーションにつながる。

部下がより高い目標を達成したり、ストレスの高い仕事をこなすため、上司は高いモチベーションを発揮してもらえるよう、モチベーション設計をきちんと行う必要がある。
部下自身も、自分にとっての「容易ではないが達成可能な水準」をObjectiveとKey Resultに設定するためには、自分自身の中にあるモチベーションと向き合う必要がある。

目標とは、「はい、これがあなたの目標です」と従業員に丸投げして良いものではない。その目標に向き合うための制度設計がしっかりとしていないと、「目標はやらされるもの」「目標そのものが忘れられてしまう」といったことが起こりうる。

だからこそ、従業員一人ひとりのモチベーション設計にまで心を配る必要がある、OKRを私は推奨するのだ。

「企業>従業員」の発想から、間違いが始まる

「君の主張も分かるんだけど、これは会社からの命令だからさ。四の五の言わずに従ってよ」
──もはやこういう時代ではない。「命令だから」ですべて通じると思うのは、昭和の名残の悪しき風習である。

「日報を書きたくない」という部下の強情さを嘆く前に、テレワークという新たな働き方において、日報という新たなタスクが必要となる理由を、会社側がきちんと説明しなければならない。

企業と従業員は対等の関係にある。決して、企業は従業員よりも偉いわけではない。業務命令を全否定することは組織運用上、現実的ではないのも事実だ。だからこそ、業務命令を乱用することは愚かだし、従業員と説明や対話を行うことから逃げてはならない。

新型コロナウイルスの感染拡大という不安だらけの社会状況において、「テレワークをしなさい」と言わざるを得なくなった企業側も、言われた従業員側も、不安と不満を抱えている。
率直に言えば、コロナ禍によって、半ば強制的にテレワーク実施に踏み切った企業もあることと思う。

だが、「ピンチはチャンス」とも言う。
これを好機と捉え、従業員のモチベーション設計から見直しをかけた、テレワーク下での新たな組織論構築に取り組んではいかがだろうか。

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務は、オフィスにおけるあらゆる業務が該当し、備品の管理、郵送物の受け取り、受付対応など、その仕事内容は多岐にわたっています。それゆえに属人的になりやすく効率化する事が難しい業務とも言えます。FOCがそういった煩雑な業務を整理し、一括でサービスをご提供します。

サービスの特徴

  • 実績に基づくノウハウ
  • 柔軟な体制構築
  • ホスピタリティ
  • サービス領域の広さ
  • コミュニケーションの柔軟さやスピーディーな対応

FOCは、30年/1,000社以上のノウハウを活かし、御社のコア業務の生産性向上、バックオフィス部門のコスト削減に貢献します。

庶務業務サービスに関する

ご相談・お問い合わせはこちら

03-5275-7137(平日9:00〜17:30)

ライタープロフィール

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

坂田 良平

人事・総務・経理部門の
根本的な解決課題なら

芙蓉アウトソーシング&
コンサルティングへ

03-5275-7137(平日9:00〜17:30)

MAIL MAGAZINE

メールマガジンで
役立つ情報をお届けしています

人事・総務・経理の課題解決メールマガジンを定期的に配信しています。
お気軽にご登録ください。

SERVICE

私たちは、お客様の
問題・課題を解決するための
アウトソーシングサービスを
提供しています

30年にわたり1,000社の人事・総務・経理など管理部門に対してコスト削減、業務効率化の支援をしてきたFOCだからこそできる、ソリューションをご提供します。
アウトソーシング・BPOの枠を超え、クライアントの本質的な課題解決のために、最適なサービスを提供します。