財務パーソンが活きる!ヒト・モノ・カネが躍動する企業とは?【 第十一回】いよいよM&Aの到来。 その③:「プロジェクトメンバー実務編」

現場視点で進めることが肝要!

今回はいよいよM&A実務編です。本段階では、入念に策定されたスケジュールに沿い、それぞれの担当業務を進めていくのでしょうが、段取り良くプロジェクトをこなすばかりではなく、そもそものM&A実行後の目的を達成するため、そして、実行後の現場がスムースに稼働出来るのか、といった視点を持ち合わせて臨むことが肝要なのは言うまでもないでしょう。少しでも疑問・課題点が生じたのであれば、プロジェクト全体に共有して、軌道修正をはかるなど、メンバーとしての責務を忠実に果たさなければなりません。

既に実務に当たっている方もおられるでしょうが、本項からも参考にして、取り入れてはいかがでしょうか。

 

財務だからこその実務の進め方

M&Aの実務と一口に言っても、売り手側や買い手側などの立場により内容は異なるでしょうが、本連載をお読みになっている財務パーソンが担当する実務の中では、何かしらの共通項があるはずです。是非、あなたが進行している職務を振り返りながら、以下のPOINT1から3も読み解いて、臨んではいかがでしょうか。

財務パーソンだからこその視点が効いた実務により、目的達成は確実になるはずです。

 

◆POINT1:財務&税務に注意を払うのは基本事項。

M&Aにより、資金がどのタイミングで動くのか、といったところはかなり基本的なところでしょう。たとえば、株式譲渡によるM&Aなのであれば、買い手側である法人は、大口の資金準備をする必要があるでしょうし、一方で売り手側も予定通りの益金が生ずる等、注視するところがあるでしょう。ここは財務パーソンが前に出て、具体的なスケジュールや手順など詳細を把握して、もしも曖昧な点などがあれば、クリアにしながら進める必要があるはずです。また、無視できないのは税務でしょう。売り手側の場合、譲渡所得がどのくらいで、それに伴う法人税等の額なども試算して、資金繰りや実行後の財務数値が予定通りなのか、十分な確認が必要になるはずです。

こうしたM&Aの基本事項とも言われる資金が絡んだところは、財務パーソンのみならず、経理部隊と連携を取らなければならないはずです。必ず、詳細な情報を得ながら当たってみてください。

 

◆POINT2:財務情報関連の資料の精査は入念に。

企業価値を算出するバリュエーションは、M&Aを進める中でも主軸となるところです。売り手側は少しでも高く売りたいでしょうし、逆に買い手側は、なるべく安く買いたいといった心理が働きます。こうした場で重要な位置にあるのが、やはり財務情報をはじめとした経営資料でしょう。充分な威力を発揮できるように、売り手側の財務パーソンであれば、DD(デューデリジェンス)の前に財務情報などの資料の内容に不備・不利にあたるような事柄が含まれていないか、入念にチェックに当たるのも基本姿勢です。ただ単に数値と元データを突合するに留まらず、交渉相手の立場になって情報を客観視することが大切です。
たとえば、希望価格に対して説得力に欠ける情報だと感じられたのであれば、プロジェクトリーダーに報告して善処を起案するなど、率先した行動を執らなければ、M&Aの相手方との信頼関係にもひびが入り、成功は危うくなるかもしれないと捉えましょう。

一方、買い手側の財務パーソンであれば、DDにて提供された相手側の財務情報と希望価格を鑑みて、適正か否か自分なりの見解を持つようにして、プロジェクト会議などの場で意見を述べるなど、能動的な姿勢で取り組んでください。

たとえ、あなたがスタッフクラスであっても、重要なプロジェクトメンバーの一人です。もし知識レベルなど不安なところがあれば、専門書などから学ぶなどして、実践しましょう。

 

◆POINT3:現場社員とのパイプ役を担う。

M&Aは、かなりの時間を要する一大イベントです。企業同士のトップやプロジェクトメンバーのみで進められているように見えても、実行後は、現場社員ら全員にも、人事面や処遇面など、影響が及ぶケースが多いはずです。よって、財務パーソンは、スケジュールと実際の進捗状況を鑑みながら、適宜プロジェクトリーダーに詳細を確認して、必要に応じて現場社員へ情報発信するようにしましょう。こうすることで、現場の社員は自身の立場や今後の職務を鑑みて、先々の準備が出来ます。

また、M&Aの実務が予定通りに進んでいない、不備が生じているなど、難航することもあるかもしれません。こうしたことにより、現場社員が不信感を抱かないように、財務パーソンは、プロジェクトリーダーと相談しながら、適切な表現で情報発信をするなど、慎重な姿勢で臨まなければならないこともあるかもしれません。中には、M&A実行後にプロジェクトチームですら気づかない、その部署ならではの懸念事項が潜んでいることもあり得るでしょう。スタッフクラスだから出来ることは、現場社員の声を掬い上げて、不安要素をクリアにすることです。時にはプロジェクトリーダーに対して現場事情を報告して相談するなど、あなたの行動により不安材料が解消されることもあるはずです。

プロジェクトチームと現場社員とのパイプ役を率先して担うようにしてみてください。

 

目的達成+αを意識する

さて、あなたは自社にとってのM&Aの目的が何か、即答出来るでしょうか?もし、目の前の実務のことで精一杯で、「そういえば・・・何?」と少しでも感じたのであれば、今一度振出しに戻り、あなたの視点と頭で目的が何か確認する必要があるでしょう。また、もしも実務を進める上で、その目的を達成出来るのか、わずかでも疑問が生じたら、プロジェクトリーダーに確認することで、その方自身のみならずプロジェクトメンバー全員が再確認できる機会になり得るのです。次に筆者が勧めたいのは、掲げている目的達成+αを目指すことです。もしM&A実行後の目的が、他業種の収益の計上により経営規模を拡大することなのであれば、財務スタッフのあなたは現場視点で創造を巡らせ、どうすれば収益確保を図ることが出来るのか、アイデアを模索することで、プラスαとなるものが生まれることもあるはずです。たとえば、他部署と連携しながら社員の潜在能力をより活用して、収益・利益確保に繋がるようなシステムを構築することで、経営リソースの最も重要な位置である、人材の質を高めることも可能かもしれません。

あなたの率先した実務の進め方は、上層部の活動にも波及し、より良いM&Aが実現するのです。少し先の未来を鑑みて挑んでみてください。

※参考文献:「M&A実務のプロセスとポイント」(中央経済社)

 

 

ライタープロフィール

田村 夕美子

田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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