財務パーソンが活きる!ヒト・モノ・カネが躍動する企業とは?【 第十三回】いよいよM&Aの到来。その④:「成否評価」

 

成功率がわずか20%から50%と言われる中で・・・

M&Aが実行されて、統合作業もゴールを迎えると、ようやく新境地にて自身の使命にあたる職務に従事する場面に入ります。そこで忘れてはならないのが、やはりM&Aを実行したことによる、成否評価ではないでしょうか。実のところ、M&Aの成功率はわずか20%から50%程と言われています。こうした中で自社のケースがいかがなものだったのかシビアに客観視して、今後を見据えた経営行動を執ることは優先課題でしょう。

本項をお読みの方々の役職、立場は様々でしょうが、たとえ、スタッフクラスの財務パーソンでも、実務・現場目線で自身の使命に邁進する必要があるはずです。

本項の内容もヒントにしながら、あなたの職務に落とし込んでみてください。

 

自社の評価を鑑み、あなたの次のステップを問う

M&Aを実行し、何を基準に成功したか否かを判断するのか、その物差しは様々でしょうが、基本的なのは、そもそもの目的が達成されているか否かであることは、言うまでもないでしょう。よって、上層部のみならず、旧プロジェクトメンバーらと、M&A実行後の進捗状況を共有し、実態を見極める必要があるはずです。

しかしながら、それが単なる定例行事の位置になったり、中身が形骸化したりといった状況に陥れば、本末転倒です。ここで正しく成否評価するための、お勧めのポイントを三点ご紹介します。

自社でのケースに置き換えて、取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

◆POINT1:プレゼンターは、解りやすい表現を用いる。

M&A実行後の財務データを関係者に公開するのは、基本どころでしょうが、各人が当事者意識を持ってもらえるように、プレゼンターが、解りやすい表現を用いて現状をプレゼンテーションすることは不可欠でしょう。いくら緻密なデータを集めて懇々とプレゼンしても、相手方に伝わらなければ意味がないのは言うまでもありません。

既に多くの人が心掛けているでしょうが、解りやすいプレゼンをするための工夫策の三点を以下に示します。

①専門用語を用いることを極力避ける。

EPS、PERなど、財務畑の人であれば一般的な略語も、中にはピンとこない人がいるかもしれません。資料内に日本語表記も付記する、或いは、『一株あたり〇〇円上がっている・・・』『この時点での株価を利益で割ると・・・』といったように平易な言葉を使うなど、あらゆる人が理解できるような表現方法を用いましょう。

②M&A実行前後のデータの推移を表す。

その数値の推移が果たして、“吉”と表れているか否かは、やはり比較するものがなければ、判断しにくいのは言うまでもありません。M&A実行前後でどのように変化したかは、多くの人が注目するでしょうから、グラフなどを用いながら、視覚に訴えた見せ方も取り入れるのは、基本的なところです。

③同業他社のケースも盛り込む。

②で述べた他、同業他社でのM&A実行後のケースなども盛り込むことで、比較要素が一つ加わるので、多角的な視点で判断しやすくなるでしょう。自社ばかりに注目した“井の中の蛙”のような状態が回避され、より客観的な評価も可能ではないでしょうか。

このような工夫を施すことで、各人が正にM&A実行後の現場の中に位置していて、今後はどのような方向性で自身の職務を進めていけば良いのかといった模索・実行ができるようになるでしょう。

まずは、プレゼン資料の内容やプレゼンスタイルなど、あなた自身の視点で解りにくいところがないか精査して、改訂する必要があると思われるところがあれば、改訂案を提起するなど実践に当たってください。

 

◆POINT2:現場の実態も外せない。

自社内部の現場の実態がどのように変化したのか、こちらについても評価基準として外せない事柄でしょう。筆者は本シリーズの中で、現場社員にも視点を向けた取り組みの大切さを記述してまいりましたが、今回の評価段階についても重要な位置にあると思います。

たとえば、M&Aの目的の中に他業種の収益を買収して、多角経営を目指すことがあるのであれば、買収後にその業種に精通した社員が、どのような活動をして実績を上げているか見極めましょう。或いは、その業種に関連したノウハウを社員に身につけさせるため、人事部などがどのような研修スタイルを取り入れ、社員がどのように反応しているのかなど、進捗状況を共有することは、正にM&Aの目的達成がされているか否か判断する上で、肝に当たる部分でしょう。

データの羅列ばかりに注視した判断ではなく、正しく現場の実態を見極めているか、スタッフクラスだからこそ、解ることもあるはずです。もしも、危ういところがあるのであれば、現場の実情を適切にレポートするなど、軌道修正に努めてください。

 

◆POINT3: 役割分担をして、原因追求に臨む。

様々な側面を評価していく中で、“ここは及第点””ここは芳しくない“といった見解も表れるかもしれません。こうした際、原因追求することも、基本事項のはずです。ただ、原因を調べる際の方法にも注意を払う必要があるでしょう。

たとえば、「DD(デューデリジェンス)が不十分だったために、期待していたシナジー効果が得られなかった」といった評価一つにしても、“費用を抑えたため、DDが不十分だった”或いは、“そもそものシナジー効果を期待しすぎた”など、人によっては、捉え方が異なることも生ずるかもしれません。もちろん、見解を統一すること自体、難しいのでしょうが、少しでもズレ幅を抑えるために、ダブルチェック機能を働かせる、或いは、複数のスタッフで精査するなど、しっかりと役割分担を決めた上で行いましょう

もしも、一部のメンバーで原因追求をしてレポートをまとめている、上層部のみが原因を把握しようとしているなど、偏りが潜在していれば、正しい判断が出来ないのは言うまでもありません。

多種多様の価値観の社員で集合されたメンバーだと再認識して、もしも、方法に疑問が生じたら、具体的な刷新案を掲げるなどの行動を執る必要があるでしょう。

 

未来に向けたあなたの行動が効く!

M&Aが実行された後はプロジェクトチームが解散するケースも多いでしょうが、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”といった姿勢ではなく、引き続きM&Aのコンサルティング会社なども交えて、旧メンバーらを中心に各自が現状を認識し合う場を設けることは、最低限の取り組みでしょう。もし、こうした仕組みさえ整っていないのであれば、スタッフの一人として、本項を参考に相談しながら、具体策を起案するなど、あなたから行動を執るようにしてみてください。

また、筆者がお勧めしたいのは、成否評価の詳細を全社員に向けて、適宜情報発信することです。そして、社員の意見も適宜すくい上げながら、今後を見据えて軌道修正を行う、こうしたことを続けていけば、やがてステークホルダーからも、高評価を受け、ひいてはM&Aの目的以上の達成度に到達するのではないでしょうか。

未来に向けて、使命を邁進する。正にあなたの底力を効かせる場と捉えて当たってみてください。

 

 

ライタープロフィール

田村 夕美子

田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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