財務パーソンが活きる!ヒト・モノ・カネが躍動する企業とは?【 第十四回】上場準備。財務スタッフの然るべきスタンスとは?

 

生の財務データに触れているスタッフだからこその役割を果たす!

いよいよ自社が上場デビューする!正に企業の成長度が一気に加速するような、華々しいイメージを持つ人が多い中で、財務スタッフは、IPOに向けた実務従事者を担う必要があるため、ナーバスな気分になっている方もおられるかもしれません。ただ、生の財務データに触れている立場だからこそ、疑問視したり、意見を言ったりできることもあるので、財務スタッフの役目は貴重であるはずです。是非、このステージは、一歩前に出るような意識で、自社の上場に一役買うようなスタンスで当たってはいかがでしょうか?

本項の記述もヒントにしながら、IPO実務の中に取り入れてみてください。

 

上場デビューをスムースに進めるためのポイント

上場準備のプロジェクトメンバーは、財務部や経理部の幹部社員を筆頭にスタッフを従えるばかりではなく、営業部や製造部といった直接部門等のマネージャーなど、部門間の垣根を越えた人員で構成されるケースも多いようです。いずれにしても、普段とは異なるメンバー構成で、企業の一大イベントを果たす必要があるので、互いが適切に意思疎通を図りながら、進める必要があるでしょう。

また、上場実務に慣れている社員ばかりではないため、前述したように財務に精通したスタッフが前に出て、適切な役目を果たすことは肝要です。そうは言っても、どちらかと言えば目上の人ばかりのチームの中で、物言いをすることなどはばかられると感じてしまう人も多いかもしれませんが、まずは、財務スタッフとしてのあなた自身の役割を意識して、どんな行動を執ることが最良なのか、模索してはいかがでしょうか。

以下の3つのポイントも参考に進めてみてください。

◆POINT1:スケジュール精査がIPO実務スタートの要。

株式上場をゴールとするまでのスケジュール表は、プロジェクト発足当初から最終ゴールまで、プロジェクトメンバー全員が日々、目を通すはずです。あなたは、単に与えられたスケジュール表を眺めながら、準備を進めるに留まらず、自身の目でしっかりと精査する必要があるでしょう。

まず、ムリ・ムダと不足箇所の有無を確認するのは基本どころではないでしょうか。企業の中には人材不足等の理由により、通常業務にも従事しながら、プロジェクトメンバーとしての実務を兼任する場合があるでしょう。そうした際、各々の役割に偏りが生ずれば、通常業務にも支障が生じたり、上場が遅れたり、といった事態に繋がりやすくなるのは言うまでもありません。あなたは、自身が与えられたスケジュール表を鑑みて、役割を果たす中で困難が予想される点、必要性があまり感じられない点、或いは、逆に盛り込まなければならない不足点の有無など、見極めることが肝要です。

また、出来れば、経理や他部署のプロジェクトスタッフとも連携しながら、スケジュール表上に記されている期間や分担内容を精査して、各々の役割が十分に果たせるか否か、確認し合うこともお勧めします。

たとえば、IPO実務の中には、予算や会計制度の整備など財務・経理に精通している人材が当たるものばかりではなく、社内の管理体制や社内規定の整備など、人事や総務の出番が必要なものもあるでしょう。それらの担当メンバーにスタッフクラスが含まれず、マネージャークラスのみで配置されている場合、スタッフらが通常の実務の中で抱えている、善処しなければならない事柄が十分にすくい上げられない危険性があるかもしれません。わずかでも懸念するところがあれば、役割分担の改編や、スタッフクラスも主要業務に加えるなど、具体的に改善案をプロジェクトリーダーに提示することに、二の足を踏んではなりません。

もし、既にIPO実務が進められているのであれば、スケジュールを再精査してみてください。軌道修正するのに遅くはないはずです。

 

◆POINT2:上場審査にパスするためのダブルチェック役+α

既にご承知のように、上場するには主幹事証券と証券取引所、両者による審査にパスしなければなりません。上場するに相応しい企業なのか否か、財務関連の資料も元に審査されますので、財務スタッフの役どころは重要です。(以下に概要を示します。)提出前のダブルチェッカーとして、慎重に且つ正確な任務を果たさなければならないでしょう。ただ、ここでの注意点は“ダブルチェック”に終始した事務処理係に留まることなく、財務スタッフの視点から、自社が上場するに相応しいか否か、判断するような意識で臨むことです。

たとえば、あなたが日常当たっている定型業務に関連する財務データに注視し、わずかでも危ういところが感じられたら、チームリーダーに報告して善処を提案する、といった行動は、財務スタッフのあなただから出来得ることでしょう。

また、以下の概要からも見て分かる通り、提出書類は多種あるので、財務畑のスタッフのみならず、経理・法務・総務などが関わるものも少なくありません。よって、POINT1と同様に、実務者同士が連携した体制で、意見を発信しながら、進めるのが望ましいでしょう。

ダブルチェッカー+αを意識して当たってみてください。

*審査の種類

*提出書類

1、証券取引所への提出書類

(1)上場申請時
有価証券新規上場申請書、有価証券報告書、各種説明資料等

(2)上場承認・公表時
株券上場契約書、取引所既定の遵守に関する確認書、有価証券報告書等

 

2、主幹事証券会社の審査段階にて提出を求められる書類

1の書類の他、以下の書類の提出が求められます。

(1)経理関連書類
会社法関連書類、不足明細書、税務申告書、子会社及び関連会社の決算書、監査人のレポート

(2)内部管理関連資料
資金繰り表、予算実績比較表等月次統制資料、内部監査実施報告書等

(3)役員、組織関連資料
組織図、契約書、株主総会議事録、取締役議事録、監査役議事録

(4)業績見込み、利益計画
利益計画、年度・月次予算等

 

◆POINT3: 実務視点で上場後のオペレーション等を再確認する。

最終ポイントは、上場後の実務にも目を向ける点です。勿論、既に体制が築かれているでしょうが、実務担当者として、懸念されるところがないか、再確認することは欠かせないでしょう。

社内・社外の二つに大別し、それぞれの変化をあなたなりにシミュレーションして、不安要素があれば抽出して、クリアするように努めましょう。基本的なところを以下にまとめました。参考にしてみてください。

担当する実務者にしか、知り得ない課題も潜在しているかもしれません。IPO実務でいっぱいいっぱいでしょうが、この場でも実務者同士でざっくばらんに話しながら、整理してみてはいかがでしょうか。

 

あなたが日々、良策を講ずることで自社の企業価値が高まる!

上場すれば、自社はこれまで以上に社会的責任が追及されます。言わば、投資家による監視効果が働くので、収益・利益の向上に留まらず、財務状況の健全性、そして何より、投資家満足度にいかにして応えていくかといった、経営姿勢をアピールしなければならないでしょう。従って、企業内部においてわずかでもほころびがあれば、必ずや投資家からの支持率低下に繋がると捉えて臨む必要があります。

上場後にもしも、財務スタッフのあなたから見て、自社の経営方針や組織に疑念が生じたら、財務部内のミーティングなどの場で、意見を発信したり、改善策を提案したり、具体的な行動を執ることは必要最低限のことです。

あなたの財務スタッフとしての日々の活動は、必ずや自社の企業価値を高めることに繋がるでしょう。こうした先々のあなたの使命も意識しながら、明日からIPO実務に励んでみてください!

参考:「EYジャパン『IPOの基礎』」

 

 

ライタープロフィール

田村 夕美子

田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント・ビジネス系作家。経理関連のセミナーや「日経ウーマン」「ダイヤモンドオンライン」など各種メディアへの執筆を中心に活動中。「できる経理の仕事のコツ」(日本実業出版社)など著書多数。 最新刊「税理士のためのコミュニケーション術」(第一法規)が好評発売中。インスタグラムにて『前向きビジネスパーソンに贈るYumiko録×夕美子録』配信中。https://www.instagram.com/yumiko.tamura.giftwind/

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