
本当に定着化しているのか?SDGsを見据えた企業経営。
「SDGsとは、一体、何なの?」こんな質問を投げかけるのは、自身の勉強不足を露呈するようで、恥ずかしいことだと捉えるビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。確かに今や小学校の課外授業のカリキュラムの中でも登場するくらいのテーマなので、認知度は高くなってきているでしょう。又、本項をお読みの財務パーソンであれば、SDGsと関連性の高いESG(環境・社会・ガバナンス)投資の面で、既に自社に置ける課題に対し、具体的に取り組まれているもおられるでしょうが、業種や企業文化の関係で手探り状態である方も少なくないはずです。
今回はあなた自身として、そして財務パーソンとして、SDGsに対しどのように向き合い、職務を進めていくのが相応しいのか考えていきます。既に積極的に進めている方、これからの方や予定がない方、いずれの方々も、何かしら参考になるヒントがあるかもしれません。
基本からおさらい→職務への落とし込み。
まずは“SDGs”「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)について、基本からおさらいしていきましょう。
SDGsとは、2015年9月に開催された国連サミットの中で決議されたもので、世界各国が2016年から2030年にかけて達成すべき目標のことです。具体的には主体となる17項目とそれらを達成するための具体的なターゲットに当たる169の項目で構成されています。以下に17項目の図表を示します。
出典:「国際連合広報センター」
すっかり見慣れた図表だと感じた方も多いでしょう。又、カラフルな色彩を用いて、解りやすいデザインで創られているので、とても馴染みやすく、頭で理解するよりも心身に浸透されるようなイメージを持つ方もおられるのではないでしょうか。
さて、認知度が高くすっかり定着化したとも思われる“SDGs”。財務パーソンが具体的にどのようなスタンスで職務に落とし込むのが相応しいのか、3つのヒントをお届けします。
◆HINT1:あなたの感性で俯瞰してみる。
まず、筆者がお勧めしたいのは、一企業にて勤務する財務パーソンといった立場の前に、あなた自身の感性でSDGsを俯瞰してみることなのです。前述したSDGsの17項目をざっとでも見た中で、あなたは何かしら感じたことが、一つくらいはあるでしょう。
たとえば、あなた自身にとって興味深く、ハッとするよう項目が含まれている、或いは、どの項目も当たり前すぎて今更感があるなど、個々の性格や価値観により、様々な感想が生じたのではないでしょうか。そこであなたが感じた事柄に焦点を絞り、日々の生活の中で配慮すべきことや、新たに取り組むべきことをあぶり出してみるのです。
SDGsは、ご存知のとおり地球規模以上の取り組みです。つまりは、あなた自身が当事者意識を持って、具体的にどのような行動を執るのが相応しいのか、思案することが通常でなければ、企業人としても、財務パーソンとしても、真っ向から当たることなど困難なのです。あなたの感性から生じた行動が、自社のSDGsへの取り組みを後押しすることもあるかもしれません。
たとえば、普段、使用している事務用品や消耗材の調達先に目をやれば、そこに自社のビジネスパートナーが存在しています。もし、SDGsに関しての取り組みがあまり見受けられない物品が納めている業者だと感じられるのであれば、直接関わっている総務部門の発注担当者と連携を執りながら、他の業者との取引も提案するなど、取り組み方はいかようにでもあるでしょう。
まずは、立場よりもあなた自身。財務部員としてのみならず、個としてのあなたの小さな発信が、説得力あるメッセージとして、大きな組織に響くこともあり得るのです。
◆HINT2:自社での取り組みを冷静に見つめてみる。
次に自社のスタンスの中で、必要な取り組みや欠けている点を挙げて、漠然とでも改善策を検討してみることをお勧めします。しかしながら、自社内においてSDGsに関する取り組みなど、未だ検討段階、或いは、盛り込む予定がない、といった財務パーソンもおられるでしょう。そのような場合であっても、ゼロ地点からのメッセージが発端となって、大きな影響を及ぼすこともあるかもしれません。
まずは、自社のIR情報に目を向けてみてください。言わばステークホルダーに対してのプレゼンテーションに当たる重要な位置ですが、SDGsに関する取り組みとして、具体的な事例は盛り込まれているでしょうか?或いは、これからの課題であれば、CO2削減や食品ロスを出来るだけなくすなど、自社の業種に応じ、可能な取り組みに視点が向いているでしょうか。
又、筆者が強く伝えたいのは、たとえ、発信されているIR情報の中にSDGs関連の取り組みが盛り込まれていたとしても、現状と合致しているかといった点です。現場視点で持っての真実が伝えられているのか、シビアに検証してみてください。勿論、何かしら課題点があると感じられたとしても、スタッフクラスであれば、異を唱えることなど困難でしょうが、部内ミーティングの中で、改善案を発言するなど、何かしらの行動が執れるのではないでしょうか。
財務の内側から、根底を整える役割にも目を向けて、取り組んでみてください。

◆HINT3:実務への落とし込み
最終HINTは、財務パーソンの実務への落とし込みについてです。つまり、自社が通常モードで、SDGsを取り込んだ経営活動に当たっているか、見極めながら自身の職務遂行をしていくことです。方法としては、オーソドックスかもしれませんが、BSなどの財務指標に基づきながら、自社の資産活用や資金調達の仕方の中にSDGsの観点が盛り込まれているのか、シビアにチェックすることが一つにあるでしょう。
たとえば、総務部や製造部と連携し、有形固定資産として計上されている機器や製造機械の稼働状況と帳簿残高を突合しながら、ECOに添ったものが選定されているか、使用方法にも地球環境への気配りが出来ているか確認する。或いは、資金調達先の金融機関はSDGsに取り組みながら社会貢献に勤しんでいるのか注視するなど、具体的に当たっていくのです。勿論、実態調査については、日常業務の一環として行っている方が多いでしょうが、SDGsをテーマに掲げての取り組みになると、ベクトルも変わってくるでしょう。
もし、何かしらの課題が表れれば、資産活用方法の見直しや資金調達先の再考に焦点を当てた実務を模索し、実行していくことで、自社の財務状況のみならず、ステークホルダーからの高評価が持続していくことも可能になるはずです。
SDGsの実務方法であれば、むしろスタッフクラスが得意としているところでしょう。業種や規模により、多種多様な実務が存在しているでしょうが、あなたが率先して当たることで、財務部内の他の部員達の実務にも影響が及ぶでしょう。
是非、一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
未曽有な事態だからこそ不可欠な取り組み!
この度のコロナ禍といった未曽有な事態で、テレワークやリモートでの商談など、仕事スタイルが大きく変わった方は多いでしょう。又、このようなレベルの変革に留まらず、仕入や売上そして資金調達に関し、これまでとは異なる相手と、異なる方法での取り組みをやらざるを得ない経験をした財務パーソンも少なくなかったのではないでしょうか。
今後もコロナ禍が静まりそうもない中、ステークホルダーからの信頼を得て、投資家から選ばれるような状況を持続させるには、視野を広げながら、策を講じて実践することが否応なしに求められるでしょう。つまりは、自身や所属の財務部門そして自社のみならず、我が国と近隣諸外国の実情にまで、目を向けなければならないので、正に地球規模以上での取り組みであるSDGsは、こうした未曽有な事態にリンクした必須事項とも言えるのではないでしょうか。
まずは、あなたが課題だと思われたところからスタートを切ってみてください。徐々にでも進展させていくのです。
あなたの行動が周囲に影響を与えて、ひいては、持続性が単に可能ではなく、“確実”になる体制が整っていくのではないでしょうか。
【参考URL】
“イマココラボ メールマガジン”
https://imacocollabo.or.jp/about-sdgs/