
新しい生活習慣を取り入れた財務パーソンの仕事スタイルとは?
長引くコロナ禍が影響し、ライフスタイルも否応なしに変わらざるを得なくなりました。
その中で職場についても、リモートワークを導入するなど、情勢に対応した企業の数は計り知れないでしょう。
しかしながら、巷ではリモートを導入したが故なのか、コミュニケーション不足が露呈したり、上司らのマネジメント能力が疑われたり、といった悪しき実情が浮き彫りになっているところも散見されるようです。
さて、本項をお読みの財務パーソンの方々は、どのようにリモートワークを捉え、仕事に当たっているでしょうか?
勿論、スタッフクラスとマネージャクラスでは、立場と同様に職域が異なるでしょうが、アフターコロナを見据えながら、リモートを活用した、より良い体制と方法を築く必要もあるかもしれません。
今回は、リモートが今後も持続すると仮定した場合、財務パーソンがどのようなスタイルで、職務に当たるのが相応しいのか考えていきます。
ポテンシャルを活かした仕事スタイルが主流化する!?
リモートと対面の大きな違いは、言うまでもなく、自分の周囲に上司や同僚・部下が座っているか否か、といった点でしょう。
つまり、オフィスでは、同僚に相談したり、上司から指示を仰いだりすることが通常でも、リモートでは、個人の裁量で進めざるを得ないこともあるため、他者に依存した仕事スタイルでは追い付かず、否応なしに個々のポテンシャルを活かした職務の遂行が求められる傾向になっていくはずなのです。
よって、これまで、どちらかと言えば受け身な姿勢で職務を進めてきた財務パーソンは、自身の潜在能力に対して真摯に向かい、能動的な姿勢で職務に臨めるよう、軌道修正することは、急務でしょう。
勿論、スタッフクラスばかりではなく、マネージャクラスの方についても、部下らに対しての接し方を省みて、この情勢を契機に権限移譲も検討しながら、自身の職務の精度を向上させる必要があるかもしれません。
まずは、他人事と思うことなく、財務パーソンそれぞれが昨日までを振り返り、メスの入れどころを探ってみてください。
これから筆者からの提案を二通り述べていきます。
★Suggest 1:マネージャクラスの意識改革は必須!
まずは、マネージャクラスの方々に対する提案です。
同じオフィスで皆が一緒に仕事をするのが当たり前、といったムードからの脱却は中々難しいでしょうが、あなたの部下に当たる“財務スタッフ”といった貴重な人的リソースを率いる方であれば、この情勢を契機に抜本的な意識改革をして、部下らに采配のし直しをする必要があるでしょう。
勿論、既に試行錯誤しながら、講じている方が殆どなのでしょうが、ここで少し力を抜いて、これまでのご自身の方法を振り返ってみてはいかがでしょう。
以下にヒント二点を示しますので、取捨選択をして、実践してみることをお勧めします。
◆ヒント1 生産性悪化を契機と捉える?!
“チームワーク”を念頭に置いて、業務を進めていた部内ムードであれば、リモートワークを導入したことで、財務部内が分断されたように感じてしまい、生産性悪化を危惧する方も多いかもしれません。
そのような状況に対し、責任を感じるのは、最なことでしょうが、チーム一体が同じ場所ではなく、各々の自宅での仕事となると、家事や育児といった生活面がリアルに表れる部員もいるでしょうから、従前と同様の生産性を求めること自体に無理があると捉えてはいかがでしょうか。
つまりは、マイナスに捉えるのではなく、むしろ、これを機会にこれまでの業務にムリ・ムダがなかった否かに焦点を絞り、本質に添った生産性向上策に視野を向け、抜本的な業務改革を検討するといった、プラス思考を持つのです。
たとえば、長年、同じように作成していた財務データに関するレポートでも、陳腐化している、或いは、組織間においても役立っていないのでは?と感ずる面は潜んでいないでしょうか?
又、部員ら各人も、オフィスではない、プライベートな空間で仕事に当たるからこそ、これまで気づかなかった疑問が、ふっと表出しているかもしれません。
次回のオンラインミーティングの場でも、部員らに意見をヒアリングすることで、実務者だからこそ解る、ムリ・ムダが浮き彫りになるかもしれません。
そこにメスを入れて、部員らに改善策を練ってもらい、あなたが適宜、指導・支援しながら、真の意味である生産性向上策を追求してはいかがでしょうか。
◆ヒント2 旧態依然のマネジメントを廃す!
リモートワークが浸透する中で、よく見聞きされることが、“部下らが、キチンと仕事をしているのか?”と疑ってしまい、どのようなマネジメントを図れば良いのか、迷ってしまうといったケースです。
勿論、感情的な面では理解出来ますが、財務部員らそれぞれが、異なる環境に身を置いての仕事スタイルなのですから、旧態依然の方法では、統制を執りにくくなるのが、当たり前だと捉えてみましょう。
たとえ同じ財務部内のメンバーだとしても、スタッフそれぞれに“個”が存在します。
リモートの環境下で仕事を進めれば、個々の価値観が表れることもあるでしょう。
そのように考えれば、従前の方法を改め、更に本質に迫った策が求められるのが、必然になってくるはずです。
たとえば、“リモートワークをしっかりやっている!”との証にも当たる、業務日報の提出を求めているところも多いでしょうが、そのフォーマットに目を向けてください。
業務内容や所要時間といった形式的な項目の羅列ばかりではないでしょうか?
これを機にフォーマットを改め、財務部各人に対し、日頃考えていることや、アイデアなども盛り込める枠を設けて自由に描いてもらうようにすることで、オフィスとは異なる生活環境だからこその企画が生まれるかもしれません。
ひょっとしたら、一財務スタッフが自社の企業価値向上を狙えるような財務体制の抜本改革策を綴るなど、意外な展開を見せることもあるのではないでしょうか。
財務部としての使命を追求し、部員各人の価値観・ポテンシャルを掬い上げながらのマネジメントを諮ってみてください。

★Suggest 2:アウトソーシングを活用しながら、独創的な財務プロジェクトを立ち上げる!
次に財務部内ばかりはなく、外側にも目を向けてみましょう。
マネージャクラスのみならず、一スタッフの方でも、視野を広げながら仕事を進めるのは、有意義であるはずです。
リモートワークが主流になれば、どうしても自社の財務部内に閉じこもっての仕事スタイルではないため、これまで内製で行ってきた仕事を客観視出来るチャンスと捉えることが出来るのではないでしょうか。
リモートワークは、個人の裁量で進める必要があるでしょうから、じっくりと俯瞰する時間を割くことが可能な財務パーソンもおられるでしょう。
中にはスタッフクラスで充分な裁量権が認められない方もいるかもしれませんが、僅かでもご自身で俯瞰してみてください。
たとえば、あなたがアウトソーシングを導入するリーダーに任命されたとしたら、どのように進行するでしょうか?
多くの方は、委託業者の選定やこれまで内製に当たってきたことを委託するため、業者へのプレゼン準備をすると応えるのではないでしょうか。
もし、アウトソーシングの導入が実際に検討されるのであれば、こうしたプロセスの中で、自身らが当たってきた業務の意義を改めて認識し、且つ、委託業者側のシステムや同業他社のアウトソーシングに関する動向など、プロだからこそ提供できる情報に触れることが出来るのです。
ひいては、あなたが属する財務部自体の在り方も見直し、更に良い仕事を追求できるでしょう。
アウトソーシングの導入は、これまで“井の中の蛙”であったかもしれない環境からの脱却が叶い、捻出された時間で独創的な財務プロジェクトを企画し、始動させるなど、財務の本業である、ステークホルダーらの満足度向上に繋がる仕事にエナジーを注ぐことが可能になります。
否が応でも、個々のポテンシャルを活かす必要のあるリモートワークだからこそ、自身で素案を練り、企画提案の第一歩を踏んではいかがでしょうか。

あらゆる手段での企業価値向上策が表れる機会
リモートワークでは社員らそれぞれのプライベート空間が仕事の舞台になるので、これまでの“スタンダード”が通用出来ない場面が生ずることもあるでしょう。
このような状況をコロナ禍といった未曽有な事態だからではなく、これまでの仕事スタイルにも進化が到来したのだと、捉えることは必須でしょう。
リモートワークは何より、各人における能動性が効きます。
よって、マネージャー側も単に従前の仕事の遂行にばかり目を向けず、部下らの成長機会を提供する場として、ある程度任せるような方法に転換してはいかがでしょうか。
人によっては、好きな音楽を聴きながら、或いは、インターネットで情報を閲覧しながら、リラックスムードで仕事をこなすようになるでしょうが、このような自由空間だからこそ、思いがけない発想も生まれるかもしれません。
リモートの強みを活かした財務部の仕事ぶりは、そのまま自社の企業価値向上に繋がっていくのです。