前年比120%の成長を続ける「AI-OCR」とは?!バックオフィス電子化に向けて

大手のベンダーが各社力を入れている「AI-OCR」。リモートワークが促進され、引き合いや導入が加速しています。AIを搭載したOCRとはどのようなもので、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。将来的にもビジネスや身の回りに活用が見込まれるAI-OCRについて基本知識となる情報をまとめました。

参考)ミック経済研究所「ニューノーマル時代にAI OCRで拡大するOCRソリューション市場動向 2021年度版」より

 

「AI-OCR」とはそもそもどういうもの?

AI−OCRとは、その名の通りOCRにAIの技術をかけ合わせたもので、業務効率化の実現につながる新しい技術として注目を集めています。

まずはOCRについて説明します。OCRとは光学文字認識のことで、画像のテキスト部分を認識して文字データに変換する技術です。紙の文書に書かれた文字をデータとして活用するためには、人間が読み取り、文字データにする必要があります。この読み取りや文字データへの変換作業をやってくれるのがOCRです。

AI-OCRはAIが持つ機械学習や深層学習(ディープラーニング)を取り入れているOCRのことで、決められたルールで文字を読み取るのではなく、自ら学習した内容からルールを導き出して文字を読み取ります。

◆AI-OCRとOCRの違いは?

違い① 識字率の高さ

AI-OCRとOCRの大きな違いは、文字認識率(識字率)の高さです。AI-OCRは、特に手書きの文字を読み取る際にその性能の高さが顕著になります。

従来のOCRでは、パソコン等で印字された文字は識別しやすいものの、手書きの文字は筆跡等で判別が難しいことが多いことが懸念でした。例えば、漢字の「工」とカタカナの「エ」といった似ている文字と読み違えてしまうことがあるということです。特に、日本語の漢字、平仮名、カタカナは複雑なものが多いことも、OCRのぶつかる壁でした。

しかしAI-OCRの場合、AIの持つ学習機能で一度読み間違えた文字を学習することで、識字率を継続的に向上させることに成功したのです。先ほど例に挙げた「工」の場合も、AI-OCRであれば前後の文章や文字から正しい文字を読み取ることができます。

違い② 不定形の帳票対応も可能

2つ目はフォーマットが統一されていない帳票にも対応できる点です。OCRの場合、どこにどの情報が記載されているかを前もって指定しておく必要がありましたが、AI-OCRは自動で表や項目を認識し、どの情報が何かを識別することができます。

例えば、請求書の情報を入力する場合、OCRでは帳票に記載されている数字や文字の情報を予め手作業で意味付けしておく必要がありました。しかしAI−OCRは自動で情報を識別することができるため、事前作業が必要ありません。大幅な業務効率化につながります。

◆AI-OCRとRPAの組み合わせでさらなる効率化を実現

業務効率化を実現する技術として注目を集めているAI-OCRですが、RPAと組み合わせることでさらなる効果が期待できると言われています。

AI-OCRが帳票から読み取った情報を、RPAが自動で業務システムに入力すれば読み取りから入力までを自動化することが可能になります。例えば、紙でもらった請求書の情報をデータ化する作業から会計システムに入力する一連の作業を自動化することができます。また、申込書に書かれている内容を判別して自動対応させたり、担当者に紐付けて知らせたり、といったこともできるでしょう。AI-OCRが読み取った結果の正誤確認をRPAが自動で行うという使い方も可能で、自社の業務に合わせて展開が期待できます。

◆AI-OCRは3種類に分けられる

AI-OCRは得意分野によって大きく3種類に分けることができます。

1、印字の読み取りが得意

手書きの文字よりも印字の読み取りが得意なAI-OCRは、発注書や請求書、納品書等、一度にたくさんの帳票をデータ化する作業に向いています。

2、手書きの文字の読み取りが得意

手書きの申込書やアンケート等を読み取りたい場合に力を発揮します。AI-OCRが持つ深層学習(ディープラーニング)の技術によって様々な手書きの文字を瞬時に認識します。

3、印字と手書きの文字どちらの読み取りにも対応している

同じ文書の中で印字と手書きの文字が混在している場合でも柔軟に対応でき、あらゆる文書のデータ化を可能にします。

 

「AI-OCR」にはどんなメリット、デメリットが有るの?

従来のOCRはデータ入力作業の効率化、ペーパーレス化がメリットとされ、文字認識率の低さや異なるフォーマットの帳票には対応できない等がデメリットとしてあります。

それではAI-OCRにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット:入力精度の向上

OCRはデータ入力の作業の効率化がメリットですが、AI-OCRは効率化に加えて、その作業の精度を向上させることができます。

従来のOCRは文字認識率の低さがデメリットとしてありましたが、AI-OCRは文字認識率が高いため、人間の手による修正作業を大幅に削減することができます。たとえ読み違えがあったとしても、その間違いをAIが学習するため、継続的に読み取り精度を向上させていくことができます。

また、フォーマットが異なる帳票にも対応できるため、書かれている情報の意味付けの作業をすることなく、帳票をスキャンするだけで正しく情報を読み取ることができます。

AI-OCRのデメリット:手作業が全くなくなるわけではない

AI-OCRは文字認識率の高さが強みですが、100%ではなく人間の手作業がゼロになるわけではありません。AIの学習機能によって100%近くは可能とされており、例えばNOCの提供するAI-OCRでは一定の条件下では96%の実績があります。しかし、100%になることは今後も理論上不可能とされています。そのため、人間の確認作業や修正作業がゼロになることはありません。

とはいえ、100がゼロになるわけではないものの、6〜7割削減されただけでも大きく違います。AI-OCRがデータ入力の効率化やミスの削減を実現することには変わりなく、紙からデータ化の転記作業が発生している業務では必ず業務負担が軽減されるでしょう。

 

「AI-OCR」は将来的にどのように活用されるのか

このように、紙が多く残る業務では特に活躍が期待されるAI-OCRですが、将来的にはどのように使われていくのでしょうか。

ICT/ネット分野専門の市場調査機関であるデロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社が今年3月に発表した「ニューノーマル時代にAI OCRで拡大するOCRソリューション市場動向 2021年度版」によると、OCRソリューション市場は2019年から2年連続前年対比120%と安定成長している市場であると言われています。中でも顕著に牽引しているのはAI-OCRだと言われています。

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP607997_W1A400C2000000/
>https://enterprisezine.jp/news/detail/14228

この数字の伸びが証明するように、ビジネスシーンではAI-OCRやOCRを活用しているツールは既に多く存在します。たとえば名刺管理ツールのSansan「Eight」の名刺読み取りは機械学習機能を備えたOCRを搭載していたり、経費精算システムの「楽楽精算」では領収書の読み取り機能にAI-OCRが活用されています。

Sansan:https://jp.corp-sansan.com/news/2020/dsoc_ocr.html
楽楽精算:https://www.rakurakuseisan.jp/news/news180618.php

言葉自体を知っていなくても、既にわたしたちの周りにAI-OCRは浸透しています。また、AI-OCRに至ってはどんな帳票でも対応可能なため、紙が残っている限りは有効なツールとして活用され続けるでしょう。紙帳票全般に対応しているAI-OCRツールから、最近では特定の帳票や業務に特化したツールも出てきました。将来的にも「AI-OCR」という単独のツールだけではなく、ツールの中に技術が使われる機会も増えていくことでしょう。

また、2023年にはインボイス制度の施行も控えていることから、企業間の請求書やり取りを電子化する動きに注目が高まっています。請求書は紙、という会社もまだまだ多いことからAI-OCRが期待されるところと言えます。

紙が完全にゼロになるとは言えませんが、限りなく少なくしていこうという動きがあるのは明らかです。今回お伝えしたAI-OCRの知識は必ず貴社の紙文化脱却への一歩となると言えます。データ化促進のタイミングに周りから取り残されることのないよう、自社で見直せる業務を洗い出してみるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

※インボイス制度
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm

 

 

ライタープロフィール

パプリカ

パプリカ

外資系総合商社と総合マーケティング支援会社にて法人向け営業職を経験。 世の中にあふれる情報をかんたんにわかりやすく、一人ひとりに合ったかたちで伝えることをミッションに活動中。