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2021.11.19 掲載 2024.04.01 更新

誤解されやすいAI-OCR、3つのハードルから活用のヒントを知る。

AI-OCRで手書き文字や印刷文字をデータ化

AI-OCRとRPAシステムサービス


AI-OCRとは、AIを用いて認識処理を行うことで、癖のある手書き文字や、フリーフォーマットの手書き文章など、旧来のOCRでは認識が難しかった状況でも、より高い文字認識率を実現したソリューションである。
DXブームの高まり、もしくはRPAの普及により、注目を集めるAI-OCRだが、「本当に使えるの?」「どうせ、100%完璧な文字認識は無理なんでしょう?」といった懐疑的な声も聞こえてくる。
結論から言えば、AI-OCRは紙書類に悩む、すべての企業にとって福音となりうるソリューションである。
本稿では、AI-OCRを適切に活用するためのヒントを考えていこう。
 

そもそも、OCRが効果を発揮するケースとは?

(AI-OCRに限らず)OCRが効果を発揮するのは、紙に記載された文字情報をデータ化するニーズがあるからだ。
まずは紙書類を使った業務のケースパターンを挙げ、AI-OCRのニーズが存在するのかどうかを考えてみよう。

・すべての処理が紙書類ベースで行われているケース

紙(ノート)などによって、出納帳を始めとする会計処理を行っているケースを考えよう。
紙書類に記載された情報を、データ化するニーズは、後続処理においてPCやシステムなどを用いた電子処理を行うからである。
そもそも、後続処理も紙ベースで行われているのであれば、データ化の必要はなく、したがってAI-OCRのニーズもない。
 
「今どき、会計処理をノートで行っているの!?」──、確かに、個人商店に近い事業者でない限り、考えにくいとは思う。
だが、「後続処理にデータ化の必要がない」という観点から言えば、紙書類ベースで処理が完結しているケースは、間々存在する。
 
例えば、営業報告書や議事録。
例えば、研究者、開発者などの研究ノート。
私が活動のメインステージとしている物流業界では、倉庫作業員の作業予定表、トラックドライバーの運行予定(配車表)なども、手書きでノートやホワイトボードに書かれているケースがある。
 
AI-OCRのニーズが低い本ケースだが、後述するダークデータの観点を考慮すれば、本当にデータ化する必要がないのかどうか、議論すべき対象であることは付記しておこう。

・データ化のニーズはあるが、文字認識のニーズが希薄なケース

それ以上の後続処理が存在しない、もしくは別の業務プロセス、システムなどに断続的に引き継がれるケースでも、AI-OCRのニーズは低い。
 
例えば、配送時における受領書や、預けた荷物を引き取った際の引取書などの場合、大切なのは、顧客が証印として残したサインや印影の文字認識をすることではなく、サイン・印影の存在そのものとなる。
したがって、AI-OCRの必要性は薄く、せいぜいが画像データ(PDFなど)として保管するくらいだ。(電子保管による保管費用の削減効果などは別である)
 
見積書や、捺印締結後の契約書なども、本ケースに該当する。
そもそも見積書、契約書などは、先にPCで作成されることが一般的で、それぞれの書類に記載された情報は、データで残されている。
 
紙ベースの見積書は、顧客に対して提出されるものだし(顧客先でAI-OCRのニーズはあるだろうが)、発行元でのAI-OCRニーズは低い。

・入力・プロセス処理のインターフェイスとして紙が用いられているケース

ここまでは、AI-OCRの必要性が希薄なケースを考えてきた。
以降は、AI-OCRが必要とされるケースを考えたい。
 
稟議書の回覧などでは、捺印するため(承認の証を残すため)紙ベースの稟議書を用いるケースもまだまだ多い。
また、例えば契約書や提案書のレビューなどでは、複数の人が、紙書類に修正箇所等を赤入れし、共有するケースもある。
 
この場合、紙書類は、入力や、業務プロセスを遂行するためのインターフェイス(入力機器であり、処理機器)として用いられている。
 
このようなケースでは、紙書類で実施された入力・プロセス処理の結果を、AI-OCRでデータ化することも可能ではある。しかし、入力・プロセス処理そのものをシステム化(デジタル化)するほうが、現実的だし、より実践的だ。
 
私も、この類のご相談を頂いたことがある。
だが、こういった歪んだ形(とあえて言い切ろう)でAI-OCRを用い、そして紙処理のプロセスを残すと、対象となる業務全体に掛かる労力は、増加することもありえる。紙に固執する一部の方のために(そして、それは得てして組織上層部に多い)、せっせと紙書類をAI-OCRで取り込み、データ化する人手と労力が発生してしまうのだ。
 
AI-OCRでは、報告書などの自然文で構成された非構造データの文字認識にも強い。その意味では、本ケースにAI-OCRが貢献できる可能性はあるし、ニーズもあるのだろう。だが、業務全体を診たときに、本当にAI-OCRを採用することが最適な方法なのかどうかは、よくよく検討すべきである。

・紙書類をシステムに手入力しているケース

AI-OCRの効果をもっとも発揮できるのが、このケースだ。
 
顧客からの発注書、現場からの報告書、請求書などの帳票を、社内の業務システムに手入力しているケースは、業務改善を阻む最大最多のケースパターンかもしれない。
 
紙書類に書かれた情報を手入力しなければならないのは、それが後続の処理につながり、そしてビジネスの遂行に欠かせないからである。このケースでは、積極的にAI-OCRの導入を検討する価値がある。
 
しかし実際にAI-OCRの検討を開始すると、別の課題が立ちふさがってくるものだ。
次は、AI-OCR導入を阻む、3つのハードルについて考えよう。

AI-OCR導入を阻む、3つのハードル

ハードル1:OCRに落胆した過去がある

AI-OCRが話題になると、たびたび「AI-OCRってホントに 使えるの?」という声を聞く。
このような方は、大概過去にOCRを試し、そして期待はずれだった経験をお持ちだ。
 
AI-OCRが、かつてのOCRとは別物であり、文字認識率が大幅に向上していることは、実際に試し、そして使えるかどうか、実感してもらうしかない。
 ちなみに、FOCでの実績では、AI-OCRの文字認識率は96%に及ぶという。
 
こういう方こそ思い出して欲しい。
かつて紙文書の非効率さに気づき、そして何かしらの改善を求めてOCRを求めたときの理由を。
もしその理由が、現在も継続しているのであれば、ぜひかつてのOCRから格段に向上した、AI-OCRの実力を体験して欲しい。

ハードル2:文字認識率が100%にならないと、意味がないと考えている

「AI-OCRの認識率は、100%にはならないのか?」
 
この質問は、先日FOCが芙蓉総合リース、NTT東日本とともに開催したオンラインセミナーでも、参加者から寄せられた。
この先、AI-OCRがさらなる発展を遂げても100%の文字認識は無理だろう。理由は、人が読もうとしても難しい達筆の方がいるからである。
 
では、文字認識率が100%に達しないと、AI-OCRを利用するメリットはないのかと言えば、そんなことはない。文字認識率が96%もあれば、それだけでメリットがあることは間違いない。
 
ただし、その代わりに発生する、文字認識結果の確認は、AI-OCRを利用する上では必須である。この確認作業について、AI-OCRとRPAを用いて業務の工数削減・品質向上を実現した舞鶴市(京都府)の事例では、興味深い見解が述べられている。
 
「モニタ上でチェックするというのはけっこう疲れるもので、この負担をどう減らすかが課題になります。『だったら最初から手で打ったほうがいい』と考えるか、『それでも大半は正しく入ってくるだけでも助かる』と考えるかですが、前者の場合は今の体制・人数ありきの考え方であり、現在はそれで乗り切れますが、この先ずっと対応できるか疑問が残ります」
 
ちなみに、舞鶴市の事例では、入力チェックも含め、これまで約10時間掛かっていた作業時間が、RPA+AI-OCRによって4時間15分まで短縮できたという。
 
そもそも、AI-OCRを求める目的は何か?
今一度、原点に戻り、考えて欲しいものだ。

ハードル3:難しく考えすぎている

AI-OCRの事例を調べていると、多くの事例がRPAとともに語られている。
そして、記事になるような事例のほとんどは、しっかりとした業務改善へのビジョンがあり、その文脈にそって、AI-OCRの活用が語られている。
 
「RPAも一緒に導入しなければ、AI-OCRの意味がないの?」「そもそも、業務改善の全体ビジョンなんて、当社には存在しないし」──、もしそう思ってAI-OCRを用いた業務改善への一歩を踏み出せないのであれば、それはとてももったいないことだ。
 
AI-OCRを導入することで、作業時間の削減が見込まれるなど、投資対効果があることが分かったのであれば、ぜひ導入を前向きに検討すべきだ。
理由は、舞鶴市のエピソードで既に語った。少子高齢化が進み、人不足が社会全体の課題になる日本において、業務改善、特に作業時間の削減は、人手があるうちに着手すべきだからである。
 
以下、余談である。
私は、これまでも多数の事例記事を手掛けてきた。
事例記事になるような取材対象は、各社が手掛けた仕事の中でも、特に優秀なものである。読者の参考になるように書かれる事例記事ではあるが、事例記事を読んだ結果として、逆にハードルを感じ、「当社には無理だ…」と萎縮してしまう方がいることも、心情として理解できる。
だが、事例記事になるような優秀な結果を出した一握りの企業を見て、萎縮するのは、もったいない。
事例記事を執筆していると、事例取材先から、時折「自信が付きました」という言葉を頂く。取材をした私が、「これは素晴らしい」と驚いたような事例でも、実は自己評価が低く、「当社の事例なんて、記事にしても良いのですか?」と言われることも多い。
事例取材で取り上げられる側の皆さまも、決して自信満々というわけではないのだ。
AI-OCRに限ったことではないのだが、業務改善に挑む上では、勇気を持って一歩を踏み出すことを大切にして欲しい。

AI-OCRは、ダークデータの活用に光明を当てる

ダークデータとは、日々の企業活動において蓄積されているものの、有効に利活用されておらず、その価値にも気づかれていないビッグデータを指す。
 
営業日報を例に考えよう。
営業に、営業日報を書かせている企業は少なくないが、もしそれが紙の場合、過去に振り返って読み返されているだろうか?
おそらく、上長が一度読んだ後は、ファイリングされて、書類棚の肥やしとなっているケースがほとんどだろう。
 
データ化された情報ですら、有効活用できずに放置されていることが多い。
まして紙書類であれば、放置されているケースは、さらに多いことだろう。
 
AI-OCRは、ダークデータを利活用する、最初の一歩となる。

AI-OCRを介して、DXに取り組むきっかけを掴む


 
AI-OCRは、DXとの相性も良い。理由は2つある。
 
1つ目の理由は、多くの企業にとって、紙書類が介在する業務が、生産性が低く、デジタル化を阻むボトルネックとなっていることが自明だからである。
 
2つ目の理由は、DXの取り掛かりとして、AI-OCRが適当だからである。
誤解のないように申し上げておくが、紙書類をAI-OCRでスキャン、データ化しただけでは、単なる業務改善であって、DXではない。
だが、現在ではAI-OCRを活用した事例が多数生まれ、かつ参考にしやすいこともあり、DXにつながるような次の取り組みへのヒントをつかみやすい状況ができつつある。
 
AI-OCRによってスキャン、データ化した情報を、RPAを用いて業務システムに自動入力する事例などは、業務のデジタル化を行う上での定番ストーリーとなりつつあり、参考にできる事例も多い。
 
百花繚乱のDXではあるが、一方で、「DXをやるべき」「DXに取り残されると▲▲というリスクが!」などといったやるべき論が先行し、「ではどうやったらDXに取り組むことができるのか?」という方法論が取り残されていることを、私は強く懸念してきた。
 
AI-OCRには、「走りながら考える」、すなわち業務改善を実践していきながら学びを深め、徐々に大きな取り組みや、企業としてのDXビジョンへと、思考を広げることができる可能性がある。

労働人口が減少する日本社会において、企業が行わなければならないこと

最後に、人不足問題について再度ふれておきたい。
 
人不足が社会課題となっている現代において、手入力という生産性の低い作業を放置して良いのだろうか?
「この作業は▲人いないと継続できない」──、人の頭数が必要な業務において、もし人員が減れば、業務品質・サービス品質の低下を引き起こすことは必至だ。
これからの日本社会では、人員が減ったとしても、今の業務品質・サービス品質を維持できるか、もしくは向上できる対策を打つべきだし、これができない企業は、いずれジリ貧に陥ることは目に見えている。
 
その観点で、AI-OCRは、人不足が進む日本社会においては、福音となりうるソリューションなのだ。
 AI-OCRに懐疑的な方も、まだまだ多いこととは思う。
だがもし紙書類を取り扱う業務の存在にリスクを感じているのであれば、ぜひAI-OCRの最新情報を知り、テスト運用なども行った上で、その可能性を感じて欲しい。
 
参考資料
● 舞鶴市(京都府) AI-OCRからアプローチするBPR・EBPMの取り組み (特集 AI・RPAで地域が変わる)
吉崎 豊 / J-LIS (地方公共団体情報システム機構 編)2019.11
● AI-OCRを活用した帳票認識サービスによる業務効率化 (FEATURED ARTICLES 価値創出を加速するデジタルソリューション)
山崎 敦央, 稲田 学, 鈴木 尚宏, 井本 直樹 / 日立評論 2020.7
 
 

AI-OCRで手書き文字や印刷文字をデータ化

FOCのAI-OCRとRPAを合わせたサービスです。紙からデータ、さらにはシステムへの入力作業をAI-OCRとRPAを活用することで人の手を介在しない自動化を実現します。NOC AI-OCRとNOC RPAを同時にご利用いただくだけでなく個別でのご利用も可能です。

サービスの特徴

  • 社内に存在する「紙書類」のデータ化を実現
  • 手書き書類95%以上の識字率※
  • 初めて使う人でも簡単操作
  • クラウドシステムのため簡単導入に可能

※NTT東日本が2018年8月~9月に3社で行ったAI-OCRサービスのトライアルにおける、申込書・現金通帳(手書き文字を含む20,275文字)の読取精度(正解数/全文字数)の平均です。
※ AI inside 株式会社の文字認識AIを活用

FOCは、30年/1,000社以上のノウハウを活かし、御社のコア業務の生産性向上、バックオフィス部門のコスト削減に貢献します。

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ライタープロフィール

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

坂田 良平

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