
漸く注目・実現化が進む“ダイバーシティ”に向けた取り組み
今や“ダイバーシティ”(多様性)といったワードを知らない方は殆どおられないでしょう。更にここ数年においては、男女といった性差別のみならず、“LGBTQ”についての知識が薄い社会空間など淘汰されつつあります。
筆者は50代をとっくに超えた女性の一人ですが、社会に出て間もない頃、女子社員(なぜか女性だけは”女子“と呼ばれ、それについて、殆どの人が異を唱えない大昔)は早く出勤して清掃し、終業時は灰皿を洗うことがまかり通っていたので、たとえ速度は緩やかでも、良き世の中事情に移り変わっていると感じる今日この頃です。
さて、筆者のぼやきはこれぐらいにして、今回のテーマはダイバーシティといった文化が徐々に浸透しつつある企業内にて、財務パーソンの出番がどこになるのか、考えていきます。
関連部署との連携は外せない!
本連載にて、筆者が何度も記述したことの一つに他部署との連携がありますが、今回は、“ダイバーシティ”といった人材の多様性がテーマなので、人事部を主体に他部署との連携は外せません。又、総務、経理といった”モノ・カネ“を扱う部署も交えて、タッグを組みながらの行動は効果覿面のはずです。
以下にポイントを三点示しますが、単なるヒントにしかすぎません。正にあなたならではの多様性で持って、当たってみてはいかがでしょうか。
POINT1:これまでの“常識”にメスを入れる。
今、筆者は本原稿をマイカー点検で来訪しているディーラーのラウンジ内にて、書いていますが、化粧室の案内を意味するサインを見て、“なるほど。”と感じたことがありました。それは男女の区分けを黒赤ではなく、どちらも同じ青色で表されていたのです。
このような取り組みは数年位前から徐々に始まり、多くの人があつまる公共施設、或いは、潜在投資家を含むステークホルダーの目を意識する必要のある上場企業は、特に率先して当たっているように思われます。
さて、あなたが勤務している企業内では、こうした動向が表れているでしょうか?勿論、本質は見た目のみの改善ではありませんが、まず、筆者がお勧めしたいのは、自社内にて、当然のように存在するシステムや慣習の中に時代遅れ染みた固定観念が潜んでいないか、掘り下げてチェックしてみることなのです。
たとえば、ユニフォーム一つにしても、女性のみ(或いは男性のみ)着用が義務付けられている、或いは、身体のラインが表れやすいなど、ハラスメントやLGPTQの方への無配慮に繋がるようなデザインが採用されていないか否か振り返ってみてはいかがでしょうか。
まずは身近なところからスタートを切れば、次のステップにて、就業規則や社内ルール、ひいては組織構成に至るまでの目配りが可能になるかもしれません。多様性をテーマにより良き方向へとシフトさせることは、自社内整備に留まらず、外部のステークホルダーにも好影響を及ぼします。
すなわち、財務パーソンとしての重要な役割の一つとも言えるのです。具体的な手段としては、他部署の方々を混在させたプロジェクトチームを発足させたり、企画書を上層部に提出して起動させたり、諸々あるはずです。
是非、自社に応じたスタイルを見出し、実践してみてはいかがでしょうか。
POINT 2:人材活性化の機会提供をしているか否か?
企業は、多種多様な個性・価値観を持ちあわせた人材で構成された組織構成で成り立っています。よって、人材らが互いに協調し合いながら、職務を全うしているように見えても、更に有効な人材活性化に関連する機会提供を行えば、もっと個々の潜在能力が光放つこともあるはずです。
このような機会提供が行われているか否か自社の体制を俯瞰するのは、人事部の役どころなのでしょうが、貸借対照表には計上されていない人材の知的財産をフルに活性化し、企業価値を活性化させる任務は正に財務パーソンが表に立つべきステージであるでしょう。
それは綺麗ごと、体裁ごとに過ぎない、との声も聞こえてきそうですが、人事部隊と連携しながら、自社内でメスの入れどころを探り、実践してはいかがでしょうか。
たとえば、長きに渡って、昇進や配置転換の機会がない人材の存在の有無や研修システムが全社員に対して平等に且つ有効的に行われているかなど、メスの入れどころを探ることで、実は同じようなタイプの人材ばかりに機会提供をしている、一部の上層部の好み等で決められているといった、多様性の尊重に反する事態が潜んでいる箇所が浮き彫りになるかもしれません。
人事部門が担う職務のダブルチェックの位置づけで、財務パーソンが第三者の視点でその役目を担うようになれば、企業内の個々の多様性が活きる職場形成が創造され、より一層の生産性・収益アップも可能になるでしょう。
そして筆者がお勧めしたいのは、あなたが一社員として、そして財務パーソンの一人として自社そして、外部の社会に対し、貢献出来ているか、客観視してみることなのです。
勿論、あなたは充分な能力が備わっているでしょうが、もし、疑問符が浮上するようであれば、職務内容や人事体制を疑う必要があるでしょう。
是非、あなたの視野を広くして、人事部など関連部署との連携方法を自身で考え、前進してみてはいかがでしょうか。
”社員らに対し、適切に機会提供をしているか?“
POINT3:人材が有益な行動をとるための指標が発信されているか?
最終は自社の労務人件費にスポットライトを当てます。財務パーソンの多くは、社員に対する費用支払いといった意味合いよりも、人材への投下資本との捉え方をしているのではないでしょうか。
そして、月次の財務データの中でも、特に注目して推移をチェックしている方も多いと思います。ダイバーシティがテーマであれば、人材に係る費用・投資は無視できません。人事部や経理部と連携し合いながら、役どころを探りましょう。
ここで、筆者がお勧めしたいのは、自社内部で発信している情報についての見直しです。公開会社であれば、四半期ごとに財務データを公表し、その中には人件費も表れているでしょうが、このような固定化されたデータのみならず、上層部も含めた社員らに対し、有効な情報発信が出来ているのか、振り返ってみてください。
たとえば、“社員一人当たりの営業利益”といったデータは定番で、自社内で情報共有しているところは多いかもしれませんが、単に定期的に発信するのみで終わってはいないでしょうか?
“有効”といった意味は言うまでもなく、社員ら個々が今後、どのような行動を興すのが相応しいのか、検討・実践する指標として扱われているかということです。ひょっとしたら、一部のマネージャーらにしか届いていない、或いは、形骸化されているといった事態が潜んでいれば、そもそもの指標が機能していないということなので、情報内容を刷新する必要があるでしょう。
ひょっとしたら、“社員一人あたり~”の括りではなく、社員ら個々の役割・能力に応じた貢献度といった細分化された指標に刷新することで、伝わりやすくなり、ひいては、人材個々の能力、センスが活かされている組織形成がなされるかもしれません。
音頭を取るのは、内外のステークホルダーの判断を左右する財務パーソンが相応しいでしょう。人事・経理のスタッフらと相談し合いながら、意見交換からスタートを切ってはいかがでしょうか。より一層の適材適所が可能になるはずです。
本質的な“ダイバーシティ”の取り組みを!
冒頭でも述べたとおり、”ダイバーシティ“といったワードはかなり普及し、加えて昨今では”LGBTQ“に対し、配慮に欠けた言動・行動など、冷ややかな視点が向けられる世の中です。
ただ、筆者が危惧するのは、単に性や民族に対しての差別はしない、といったお題目を唱え、体裁を整えるのみで、”やっている感“をアピールすることなのです。
言うまでもなく、本質的に備わっているか否かを問うべきであり、一人一人が自問自答してみることは、最低限必要なことでしょう。
さて、あなたが身を置く企業は、個々の人間性、センス、価値観を自由に表出出来るような場が設けられ、何らかの不具合が生じれば、相談窓口が機能しているでしょうか?
もし、首を傾げる箇所があれば、そこはメスの入れどころです。中には、綺麗ごとだと、苦笑いする方もおられるかもしれませんが、その“綺麗ごと”へ突き進めるか否かが、自社の企業価値を左右すると捉えてみてはいかがでしょうか。
是非、あなたならではの多様性が効いた具体的な行動を執ってみてください。一年後の自社は変化が訪れているか?保証は出来ませんが、あなた自身は良き方向に変化しているはずです。