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2022.02.10 掲載 2022.07.08 更新

CSRからCSVの変遷と、企業がSDGsに取り組むべき理由を考える【企業におけるSDGsへの取り組みを整理する #2】

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務サービス


士農工商は、江戸時代、時の徳川政権が確立した身分制度と言われている。
武士が一番、国を支える米を作る農民が次位、製品を作る職人が続き、人のふんどしで商売を行い、金儲けを旨とする商人が身分制度の最下位というわけだ。

士農工商という身分制度には、実は異論もあるのだが(興味のある方はネットで検索して欲しい)、ともかく金儲けを卑しいことと感じる感性が、日本人には備わっているらしい。

「企業におけるSDGsへの取り組みを整理する」第二話では、CSRからCSVへの変遷と、SDGSの関係性を考えてながら、企業がSDGsを事業活動に実装し、ESG経営を目指さなければならない理由を考えていく。
 

CSRとは

CSRは、「Corporate Social Responsibility」の頭文字を取ったものであり、「企業の社会的責任」と訳され、「企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的(ボランタリー)に社会に貢献する責任のこと」(Wikipediaによる説明 )と定義される。

CSRは、2010年11月にISO26000(組織の社会的責任に関する国際規格)として、理論的に包括、体系化 されている。ISO26000が発行された背景には、2000年代初頭のCSRブーム下における、CSRに対する定義があいまい、もしくは誤解されていたという反省もあるのだろう。

中でも、CSRとは、企業が事業活動で得た利益を社会に還元する活動であるという誤解(つまり、CSRを利潤の追求のために利用してはならないという誤解)は多かったと、私は感じている。
もちろん、こんな活動は継続するわけがない。例えば、2008年に発生したリーマンショックを機に、それまで行ってきたCSR活動(と称したもの)を中止した企業が頻発したのも、誤った認識による活動を行ったツケであったのだろう。
 

CSVとは

CSVは、「Creating Shared Value」の頭文字を取ったものであり、「共有価値の創造」と訳される。
2006年、アメリカの経済学者マイケル・ポーターが論文の中で、企業による経済利益活動と社会的価値の創出( = 社会課題の解決)を両立させることを提唱したのが発祥とされる 。

CSRは、社会貢献と企業の事業活動を切り離して議論されるという反省を生んだ。
その反省を踏まえ、CSVは企業が事業活動を通じて、社会に対する責任を果たしつつ、価値を創出する方法を探るものであった。

だが、CSVはCSRほど、広く世間には受け入れられなかったと、私は感じている。
そもそも、CSVは、誤ったCSRに対する認識から生まれたアンチテーゼとしての意味合いが強い。ISO26000として規格化され、正しい理解が浸透するにつれて、CSVという言葉を使う必要が薄れるのも、当然の帰結であろう。
 

利潤の追求と、社会価値の創造をどのように結びつけるか?

とは言え、正しくCSRが理解されるようになり、根源的な課題が生じ始めた。
企業の目的である利潤の追求と、社会価値の創造をどのように結びつけるのか?
──この解決は、なかなかに悩ましい。

例えば、「植林活動を行いますよ。地球温暖化の防止に貢献しますよ」と社会貢献をアピールするのは簡単だ。だが、植林活動は、誰もが行うことのできるものだ。実行者は、運送会社でも、医薬品メーカーでも、システム開発会社でもいい。
植林活動そのものは有益な活動だが、「私の会社は、なぜ植林活動を行うのか?」という、事業活動と社会価値の創造を結びつけるストーリーがないと、継続して植林活動を行なう必然性がなくなってしまう。

正しいCSR(とあえて言おう)は、継続的に行われることが求められる。つまり、企業が稼いだ利益を消耗する場であることは望ましくない。だから、CSRは、企業が社会の一員として社会価値の創造を行いつつ、事業活動においても価値をもたらすものであるべきだ。

CSRのストーリーを考え出すのは、簡単ではない。
一例として、イオンのプライベートブランド「TOPVALU」のエピソードを紹介 しよう。

イオンでは、2000年代から「TOPVALU」を介して、フェアトレード商品の展開を始めた。
きっかけは、「買い物を通じて国際貢献がしたい」であったという。
だが、一方で別の消費者からは、「価格が高い」「品質に不安がある」という声もあったという。
そんな課題を踏まえ、2009年、イオンは「TOPVALU」製品を、現地生産から、フェアトレード認証原材料を輸入し、国内工場で加工する方式に切り替えた。
結果、価格も抑え、品質、味ともに、消費者が納得できる製品を作り上げたという。2010年、イオンは日本初の国内製造フェアトレード認証チョコレートを発売した。

イオングループは、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」を基本理念 として掲げている。「TOPVALU」が、CSRの好事例として挙がる背景には、経営理念を正しく咀嚼した上で、イオンなりのCSR活動に結実させた点にある。
 

ESG、そしてSDGsが企業に求められる背景

CSR、ESG、SDGsは、経営理念の元、それぞれ相互に作用し合う

2006年、当時の国連事務総長 コフィー・アナン氏は、責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)を提唱した。
これは投資家の短期主義を危惧し、投資先となる企業に対し、ESG評価も踏まえた、長期的な分析・評価を行うことを求めるものであった。
現在の企業は利己的に経営をすることは許されない。
企業は社会の一員であり、身勝手な行動を起こせば、必ず社会に悪影響を与える。逆に、社会の一員たる企業が、社会を良くするように活動すれば、その影響は社会全体に波及する。

企業にとってのSDGsの必要性も考えておこう。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標とされる。
SDGsが掲げる持続可能(サステナブル)とは、企業経営の目的でもある。利潤の追求という企業の目的を継続するための方策が経営なのだ。

健全な社会なくして、企業活動を継続することはできない。そのことを、私たちは新型コロナウイルスによって、嫌というほど思い知らされたはずだ。
「中小企業にとって社会的責任の比重は自社の業績に比較して明らかに低く、明確な対応をとるレベルではない」(※第一話で紹介した、SDGsに取り組まない企業の言い訳)などと言っている場合ではない。

幸いなことに、SDGsでは17の目標、169のターゲット、244の指標(重複を除くと232)という豊富なテンプレートが用意されている。きっとあなたの会社でも利用可能なアイデアがあるはずである。少なくとも、これらを確認することもせずに、「SDGsなんて無理無理!」とはなから諦めることことだけはすべきではない。

SDGs、ESG、CSRなどの社会要求は、年々高まっている。
「金儲けをしながら社会貢献なんて…」などと言っている場合ではない。利潤の追求も、SDGs等への対応も、どちらも現在の企業にとっては大切なのだ。
仮に中小企業であったとしても、社会の流れから目を背けることは、いずれ自らの首を絞めることになりかねない。

だが一方で、SDGsウォッシュなる言葉も生まれている。
SDGsウォッシュとは、「誇張や曲解などを用い、SDGsを行っている体裁を繕うこと」を指し、見せかけのSDGsに対する批判である。
せっかく良かれと思って取り組んだSDGsも、SDGsウォッシュという批判を浴びてはかなわない。
そして、知性の伴わないSDGsは、滑稽を通り越して残酷ですらある。
本連載最終話となる次号では、SDGsに必要な知性の話をしよう。
 
出典および参考
● 企業の社会的責任 (Wikipedia)
●「現代CSRの論点と課題 : 日本型CSRの創造に関連して」
比較経営研究 / 日本比較経営学会2021.10
SDGsとは?(外務省)
 
 

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

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ライタープロフィール

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

坂田 良平

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