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2022.02.10 掲載 2022.07.12 更新

企業がSDGs・社会貢献に求められるうえで求められる知性とは【企業におけるSDGsへの取り組みを整理する #3】

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務サービス


SDGsの必要性・重要性を認める人は、増えていると感じる。第一話で紹介した、小学生、もしくは大学生のエピソードは、その一例であろう。

だが一方で、不可思議なSDGsも散見されるようになってきた。
「それ、本当にSDGs?」と首を傾げるような取り組みに出会うこともある。

今回は、SDGsをに取り組む上で必要な知性──もう一歩踏み込んで、物事を考察する能力──の必要性について考えよう。

植樹と薪のエピソード

その村は、貧しい暮らしにあえいでいたと言う。乾燥した大地では作物も育たず、村は収入を得る方法がなかったからである。状況を憂いたある人が、村の土地でも育つ、果実の樹を植樹することを思いついた。
「果樹のなる木を植えてあげましょう」──果実を売って村の収入とすれば、村を豊かにできる。

彼の人は私財をなげうって、植樹を行った。5年も経てば、豊かな果実が実るはずだ。村民たちは、涙を流して喜んだという。

数年後、彼の人は村を再訪した。
豊かに暮らすその村を、自らの目で確認したいと考えたのだ。再訪したその人を、村人たちは歓待した。
だが、その人は驚いていた。村の暮らしぶりは以前と変わらぬように見えた。そして、植樹したはずの木々がない。

理由は、村長の感謝の言葉で知ることができた。

「あなたが来てから3年後、私たちは太く育った樹を切り倒し、薪として売ることで、一年間だけですが豊かな生活を送ることができました。これまでずっと貧しい生活しか知らなかった私たちにとっては、夢のようなひとときでした。これもあなたのおかげです。ありがとうございます。ところでご覧になって分かるとおり、樹はもう無くなってしまいました。ついてはまた植樹をしてはもらえませぬか?」

彼の人は、自分が大きな間違いを犯したことに気づいた。

「果樹のなる木を植えてあげましょう」では駄目だったのだ。

村人たちに対し行うべきは、貧しさから抜け出す方法、経済や経営の仕組みをまず教えるべきであった。
彼の人は、自分の浅はかな考えが、かえって村人たちを不幸にしてしまったのではないかと、深く悔いた。

この話は、私が尊敬するある方から聞いた話である。残念ながら、実話かどうかは分からない。
だが寓話としても、学びのある話だと思う

脱プラストローは本当に環境に優しいのか?

先日、あるファミリーレストランに行ったところ、ドリンクバーにおいてあるストローが、紙製のものに代わっていた。店内には、プラスチック製ストローを廃止し、紙製ストローに変更することで、環境に貢献していることを謳うアピールがいくつも掲示されていた。

一昨年くらいからだろうか、マイクロプラスチックに対する危機意識から、カフェチェーンやファミリーレストランで、プラスチック製ストローから紙製ストローに切り替える動きが相次いだ。

マイクロプラスチックとは、大きさ5mm以下の微細なプラスチックを指す。2016年、東京農工大学、東京海洋大学がそれぞれ発表したレポートによれば、東京湾で捕獲されたカタクチイワシ8割近くの内臓から、マイクロプラスチックが検出されたという。魚などがマイクロプラスチックを蓄積してしまっていることから、その魚を食べる人間も、マイクロプラスチックを体内に蓄積してしまう危険性が指摘されたのだ。

確かに、この報道は刺激的であった。

私たちが不用意にポイ捨てしたプラスチックが細かく破砕され、海と、海に生きる生き物を犯しているのだ。
だが、ファミリーレストランでストローをプラスチック製のものから紙製のものに変更したところで、マイクロプラスチックを防げるとは思えない。

マイクロプラスチックは、不法投棄されたプラ製品から発生する。テイクアウトが存在しない、ファミリーレストランのストローは、100%正規のごみ処理プロセスを経るはずだ。そこに、マイクロプラスチックが発生する余地はない。

もちろん、プラスチックを廃止する理由は、マイクロプラスチックだけではない。
プラスチックごみの不法投棄問題とともに言われるのは、石油由来ゆえに燃やすと温暖化ガスが発生するという問題である。

だが、石油由来であるがゆえに、焼却すると、紙製品や繊維などに比べ、プラスチック製品発熱量が高い。プラスチック製品を焼却すると、焼却のための燃料を削減した上で、発熱を発電に回し、リサイクルプロセスに回すという効果も得られるという研究も発表されている。

さらに言えば、多くのブラスチック製品の原料となるポリエチレンは、原油から精製されるナフサから作られるが、その割合は、原油全体における3%程度である。ポリエチレンは、ガソリンなどを精製する上で生産される副産物の一つでしかなく、プラスチック製品のために原油が採掘されるという考え方は、正確ではない。

別の観点からの評価も必要だ。
本当に環境に優しいかどうかは、LCA(Life Cycle Assessment / 原料調達から始まり、製造、流通、廃棄、リサイクルといった一連のライフサイクルにおける環境負荷のこと)を算出してみないと分からない。
紙製ストローをきちんと評価するためには、LCAを算出することが必要だし(そして、紙製ストローは、製造過程での環境負荷が高いという決して指摘もある)、また一部の紙製ストローでは、耐久性や耐熱性を確保するために、プラスチックの被膜がコーティングされていることもある。

確かに、マイクロプラスチックの抑制は、SDGsの文脈とマッチする。地球温暖化ガスの発生を抑制することも同様である。
だが、プラスチック=悪者と決めつけ、急速に、そして衝動的に広がった脱プラスチックストローの運動は、本当にSDGsなのだろうか?

ストローに限ったことではないが、プラスチック製品を製造するメーカーは、脱プラスチックの逆風にさらされ苦しんでいる。例えば、先のファミリーレストランチェーンにプラスチックストローを納品していたメーカーは、紙製ストローも製造しているのだろうか?

もし、脱プラスチック運動の流れで取引を解消されていたとしたら、それも誤ったSDGsによるものであったとしたら、泣くに泣けない。

歪なSDGsは、時として被害者を生む。
きちんとした検証をせずに行うSDGsは、あなたを加害者にする可能性もある。
知性の伴わないSDGsは、滑稽を通り越して残酷ですらあるのだ。

SDGsウォッシュのリスク

SDGsウォッシュとは、「誇張や曲解などを用い、SDGsを行っている体裁を繕うこと」を指し、見せかけのSDGsに対する批判である。

例えば、企業Webサイトにおいて、SDGsアイコンを掲げているにも関わらず、実際にはSDGsに結びつく行動を行っていないケースがある。

余談だが、先日知人と話していた時、「SDGsマークの襟章って、どこで手に入れられるのかな?」と聞かれたことがあった。カッコが良いので、身に付けたいらしい。当人には、SDGsウォッシュという言葉のレクチャーを行い、SDGsを行っていないのであれば(当人はSDGsそのものに関心があるようには見えない…)後ろ指を指されるだけなのでやめたほうが良いとアドバイスをした。

これもSDGsウォッシュの一つだろう。
過去の事業活動をSDGsの取り組みとして報告しているものの、現在進行中のSDGsへの取り組みが表明されていないケースも、SDGsウォッシュとみなされる可能性がある。そもそも、スポット的な活動は、サステナブルではないからである。

ユニクロ製品が、中国・新疆ウイグル自治区において、ウイグル族らが強制労働をさせられている工場製の綿を使っていると告発されたニュースは、SDGsウォッシュの事例として記憶に新しい。

“仏当局、ユニクロなどを捜査 ウイグルでの人権問題巡り”
https://www.asahi.com/articles/ASP722HRZP71UHBI04K.html

このように、SDGsを謳っていながら、SDGsに反する事業活動を行っていると、SDGsウォッシュとみなされる。
ただし、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、この告発に対し、「生産を委託している中国の工場で自治区に立地する施設はなく、綿も生産過程で労働環境が適正に守られたものだけを使っている」として反論をしている。

“ユニクロ縫製工場は「人権に問題なし」…ウイグル問題巡り”
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210715-OYT1T50232/

SDGsウォッシュの課題は、指摘する側も思い込みで行っているケースがある点だ。
十分な検証と裏付けが行われた指摘ではなく、憶測の域を出ない考察がSNSなどで拡散し、SDGsウォッシュと誤解されるケースもある。

例えば、ある金融機関が、SDGs(脱炭素社会の実現)を謳いながら、石炭火力発電事業に融資を行っていたケースが、SDGsウォッシュであると指摘されたことがあった。

だが、これは本当にSDGsウォッシュなのだろうか?
私たちの生活を維持するためことを考えると、いきなり石炭火力発電を停止することはありえない。太陽光、風力、地熱など、自然エネルギー由来の発電量はまだ限られており、私たちの生活を維持するために役不足である。
金融機関からの融資が、より燃焼効率の良い地球温暖化ガスの排出を抑える新型の石炭火力発電技術の開発や、発電所の建築に使われるのであれば、それは立派なSDGsであろう。

SDGsが、企業の活動にもたらす恩恵

企業にとって、SDGsに取り組むことは、容易いことではない。
だが、SDGsを企業の事業活動に実装することができれば、そこから授かる恩恵も小さくない。

ESG投資は、最たるものであろう。今後、ESG経営を投資家に対しアピールできない企業は、十分な資金調達ができなくなっていく。
採用に関しても、SDGsに積極的に取り組む企業と、そうでない企業では、格差が広がっていくと考えられる。
環境貢献、社会貢献などの意識において、ジェネレーションギャップが存在することは、本連載第一話で指摘した。

「マイナビ 2022年卒大学生就職意識調査 」によれば、大学生の就職観としてもっとも高いのは「楽しく働きたい」(34.8%)。次いで、「個人の生活と仕事を両立させたい」(23.0%)、「人のためになる仕事をしたい」(15.2%)と続く。

ただし、「楽しく働きたい」と「個人の生活と仕事を両立させたい」が、2020年卒との比較で、それぞれ3.8%、1.4%減少しているにも関わらず、「人のためになる仕事をしたい」は、3.1%増加している。

一方で、企業選択のポイントでは、「安定している会社」が42.8%でトップ、次が「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」が34.6%で次点となっているが、2020年卒との比較を診ると、「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」は1.1%減少しているが、「安定している会社」は4.2%増加している。

これは、企業の採用活動・インターンシップに対する支援も行っている私の肌感覚なのだが、最近の若年者は、自身の考えや意向がふわっとしているにも関わらず、「嫌なものは嫌」と、否定対象は、はっきりとしている傾向があると感じている。

だからこそ、本連載第一話で紹介した、「私たちは、子供の頃から、環境問題とか社会貢献の必要性を学んできました。私たちの価値観では、炭素を垂れ流すように排出し続ける企業や、社会貢献を考えない企業などで働くという選択はありえないのです」という大学生の発言は、私にとっては合点のいくものであった。

すでに社会で働いている私たちが考えている以上に、これから就職活動を行う学生・生徒らは、企業におけるSDGs活動状況について、シビアに判断をしてくる可能性が高いのだ。

「知性の伴わないSDGsは、滑稽を通り越して残酷ですらある」と申し上げたが、そもそもこれまで繰り返し申し上げたように、SDGsを行う上で、知性は必要不可欠なものである。

SDGsが掲げる、「『誰一人取り残さない(leave no one behind)』持続可能でよりよい社会の実現を目指す」という目標がそもそも難解である。
SDGsが掲げる、17の目標、169のターゲット、244の指標(重複を除くと232)を読み解くは苦痛ですらある。
だが、「知性を持って」、すなわちSDGsをきちんと理解し、そして十分な検証を行った上で、企業の事業活動に実装することができれば、必ずSDGsの恩恵を被ることができる。

本連載では、3話に分けて、企業とSDGsに関する情報整理を試みてきた。
恐れず、そしてためらわず、あなたがSDGsへ取り組むことを期待したい。

出典および参考
● 「プラ製品を悪者にする、脱プラの風潮に物申す」(和泉 / 筆者が執筆)
https://www.izumi-jp.co.jp/datsupura/
● プラスチックごみの処理方法を考える研究会
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwb1046/TRsetsumei.pdf
● プラスチックは石油をどれくらい消費している?(プラスチックのリサイクル 20の?)
http://www.pwmi.jp/plastics-recycle20091119/life/life3.html
● マイナビ 2022年卒大学生就職意識調査
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2021/04/2022_syusyokuishiki.pdf
● SDGsとは?(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務は、オフィスにおけるあらゆる業務が該当し、備品の管理、郵送物の受け取り、受付対応など、その仕事内容は多岐にわたっています。それゆえに属人的になりやすく効率化する事が難しい業務とも言えます。FOCがそういった煩雑な業務を整理し、一括でサービスをご提供します。

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ライタープロフィール

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

坂田 良平

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