ロシアによるウクライナ侵攻といった惨事禍でも先を見据えた行動が肝要。
21世紀にて生じることなど信じられない、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発し、数か月程が経過しました(執筆当時)。報道を見聞きする度に辛く、筆者は何ら助けも出来ない自身の無力さを痛感する日々に辟易しています。
しかしながら、多くのビジネスパーソンは、このような惨事も影響した円安や流通機能の麻痺による仕入物品の値上、品薄といった厳しい現実を直視しながら、日々の職務への落とし込みに邁進しているでしょう。
中でも本項をお読みの財務パーソンであれば、内外のステークホルダーに向けた真意のメッセンジャー役も担うわけで、凛とした姿勢で先を見据えた思考行動を執る必要があるはずです。
それでは、こうした悲惨の状況下においても、財務パーソンはどのようなスタンスで臨むのが相応しいのか、考えていきます。
過去の出来事において自社はどのように対処したのか?
多くの企業は自社の強みを全面に表して、経営活動を行っているでしょうが、今や内需頼みで100%上手くいっている企業ではない限り、仕入・営業・販売といった経営行動の中に諸外国が全く関係していないところなど、かなり僅少でしょう。
すなわち、この度、勃発したウクライナ情勢の影響のみならず、過去に置いても何かしらの影響を受けた企業は多いはずです。
そこで、お勧めしたいことが、サブプライムローン問題やリーマンショックといった歴史上でも甚大な出来事により、自社がどのような対処をしたのか記録を辿ってみることなのです。
若き財務パーソンであれば、当時は在籍していなかった方が多いでしょうが、何となくでも先輩や上司からヒアリングしてみることで、当時と現在の状況の違いや自社の体質が浮き彫りになるかもしれません。
それらを予備知識として、今回の乗り切り方を探り、あなたが出来ることを実践してみてはいかがでしょうか。
以下に三点のヒントを示します。どうぞ読み進めてください。
★HINT1:過去&予測される景色を配信する。
本項をお読みの頃は、この度の有事により、自社の原価や売上高、そして株価といった財務データ等々に影響が表れているのではないでしょうか。
恐らく、こうした事態を受けて、財務部のみならず、資材部や製造部、営業部、マーケティング部といったそれぞれのセクションにおいても、対策を検討しながら、適宜、実践しているでしょう。
そこで、本項をお読みの財務パーソンへお贈りしたいヒントですが、自社内の組織に対し、過去と予測される未来の財務データを効果的に発信することが一つにあるでしょう。
たとえば、過去データであれば、単に勘定科目ごとの数値を示すに留まらず、数値の変動幅の大きい箇所をクローズアップしたり、未来であれば、現況が続いた場合の原価率・利益率の予測値や損益分岐点売上といったシビアな数値を示したり、工夫しながら発信策を検討してはいかがでしょうか。
こうすることによって、各セクションの社員らが現状を真摯に受け止め、原価を維持させる方法や固定資産を有効活用する策について検討し、実行する期待が出来るでしょう。
勿論、既に講じている方が多いでしょうが、あなたが現在従事しているデータ配信のスタイルを振り返り、より良くする策を見出すことで、もっとプラス効果が表れるはずです。是非、再考して実践してみてはいかがでしょうか。
★HINT2:取引先との共存・発展の道を切り開く!
続いてのヒントは外部のステークホルダーにも目を向けてみます。
多くの企業は原材料や部品或いは、人材といった経営資源を外部取引先からの調達により、経営活動が行われています。
冒頭、HINT1でも述べたとおり、この度の有事による影響は計り知れなく、あなたが勤務している企業内においても、原材料の高騰等の対処策に追われているビジネスパーソンは多いことでしょう。
よって、こうした事態を目の当たりにして、財務パーソンが行うべきことは、やはりパソコン上の数値や自社内部の現況に注視するのみではなく、外部のステークホルダーの位置にある仕入先・外注先との関係性にも目を向けることではないでしょうか。
方法の一例を揚げれば、自社内の経理部や総務部といった関連部署らと連携しながら、各取引業者の在庫や価格推移、今後予測される状況について情報を共有し合って、これまでの関係性のスタイルを見直すことで、取引先との共存あるいは発展に繋がる策が見つかるかもしれません。
たとえば、取引業者らと共に代替材料を検討したり、国内産の調達ルートを探ったり、或いは、この度の有事により、自社内の生産性機能にも支障が起きているのであれば、外部委託の可能性を検討するなど、互いの実情に踏み込むことで、今後の道が切り開くこともあるでしょう。是非、現場視点で持っての行動を起こしてみてください。
★HINT3:「人材価値」を意識した評価向上にも目を向ける。
最終は財務パーソンの本業について再考してみましょう。
この度の有事や時代の移り変わりは、経営活動にも大きく影響しますが、財務パーソンの使命は、自社の企業価値を向上させることが一つにあり、それは普遍的です。
そこで、自社の価値の表し方を再考し、潜在のステークホルダーらに対してのより良いアピール策を検討することも、外してはならないでしょう。
たとえば、このところ漸く国内でも注目されている「人材価値」の開示に焦点を当て、自社の社員に対する教育面や福利厚生面の見直しをする、或いは、社員らの意見を募りながら、要望を掬い上げて社員満足度の向上を図るといった人材価値を上昇させる取り組みを検討、実践することで、投資家・融資元といったステークホルダーから高い評価を得ることが期待出来るかもしれません。
勿論、実現させるのは容易ではありませんが、原材料や部品といったモノの価格が上がるのであれば、人材価値も上げて生産性やクオリティの向上を図り、企業努力の要である収益・利益の追求を継続させる必要があるはずです。
既に人材に対する投資は進んでいる企業が多いでしょうが、ひょっとしたら、制度や方法が単なる形式的なもので、既に形骸化され、刷新が必要な事態が潜んでいることもあるでしょう。
今後も有事といった非日常が続くことも大いに予想されます。
刷新の必要性があるか否か、先々の経営活動にも目を向けて、あなたなりの視点で見直すことで取り組むべきことも見つかるはずです。
たとえ、スタッフクラスの財務パーソンも自分事として捉え、人材価値アップの方法について検討して、確実な一歩を踏み出してください。
財務パーソンの前に一人の人間として出来ることとは?
この度の有事を単なる傍観者として淡々とした気持ちで見つめている人は、少ないはずです。
既に各報道が発するワードは“侵攻”よりも、“戦争”の方が多いと感じられ、テレビ放送やインターネット配信による映像も直視できないもので溢れています。
このような状況下が続いてゆけば、正常な気持ちで職務に当たることが困難になるのは、感情のある人間だから当然でしょう。
よって、こうした尋常ではない事態だからこそ、近い周囲や遠くにいるステークホルダーに対して、思いやりを持ち、企業人の前に一人の人間として出来ることを進めていくことが、あえて言うまでもなく大切なことではないでしょうか。
筆者の私論ですが、”ピンチはチャンス“といった言葉は好みません。
お気楽な標語など払拭し、真摯な気持ちで自社の企業価値の維持・向上策を検討する傍らでも、悲惨な目に遭っている人を思い返し、僅かでも出来ることを、もがきながら探って実践すること。
こうした行動が戦火など、まだ実際には見ることなく生きている、私たちの権利義務でだと筆者は考えます。
私も及ばずながら一歩踏み出したいと思います。