企業会計原則:一般原則から学ぶ、すべての会計処理が守るべき7つの考え方【シリーズ: 経理のはなし21 初心者向け】

会計のコンプライアンス

どんな業務でも「基本」や「原理原則」となる考え方が存在します。経理や会計のように様々な制度や法律の影響を受ける業務であれば、その「基本」や「原理原則」の重要度は大きくなります。

ニュースなどで話題となる“粉飾決算”や“不適切な会計処理”が起きる根本の原因には、本来、遵守しなければならないはずの「基本」や「原理原則」から逸脱した会計処理があるはずです。

その基本原則となるのが「企業会計原則」です。これは、会計や経理の実務処理をする上で、慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約した企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準のことです。

企業会計原則の発生主義に関しては「会計の発生主義と現金主義の違い。発生主義がよく用いられる理由【シリーズ: 経理のはなし19 初心者向け】」で、経過勘定科目については「勘定科目の未払金と未払費用と未収収益、前払費用と前受金の違いは?【シリーズ: 経理のはなし20 初心者向け】」で説明しています。

今回はその企業会計原則の中から、基礎となる考え方でもある「一般原則」をご説明します。

 

■企業会計原則:一般原則

一般原則は7つの原則から構成されています。

1. 真実性の原則
2. 正規の簿記の原則
3. 資本取引・損益取引区分の原則
4. 明瞭性の原則
5. 継続性の原則
6. 保守主義の原則
7. 単一性の原則

それぞれの条文を見ながら内容を解説していきます。

1.真実性の原則
条文:企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

真実性の原則は、企業会計原則や一般原則における最上位概念です。

会計処理について、企業は自社に最適な会計処理を選択することができます。しかし、その自由度は、一般に公正妥当と認められる範囲に限られ、この原則がその自由を制限していると考えられています。

企業はいろいろな利害関係者に囲まれて経営を進めています。売上先、仕入先、金融機関、税務署、そして株主などが利害関係者の代表例です。利害関係者にとって、その企業の経営の成果でもある企業の財政状況や経営成績の報告内容は取引などの重要な判断材料となります。

上場企業の株の値動きなどはその端的な例でしょう。企業からの報告内容が期待以上であれば株式を購入する株主も増えますが、期待以下の業績であれば所有している株式を手放す株主が増えます。

このような利害関係者に対して“真実な報告を提供する”ということは、当然といえば当然ですが、その一方で粉飾決算などの不適切処理が横行している現状をみると、コンプライアンスの観点から改めて「何のためにある原則なのか」、見つめなおす必要があります。

2.正規の簿記の原則
条文:企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

真実性の原則を遵守する上で、正しい会計帳簿を作成するための具体的にどうすればよいのかを指示する原則です。

正規の簿記の原則は次の3つの要件を満たすことを要求しています。

・網羅性→企業の経済活動がすべて記録されていること
・立証性→その会計記録が検証可能な証拠資料にもとづいて作成されていること
・秩序性→それらすべての会計記録が継続的・体系的に作成されていること

一般には、時系列の仕訳帳や網羅的な総勘定元帳、そして決算書等の財務諸表などの会計資料が、複式簿記の原理にもとづいて作成されることにより、正規の簿記の原則を実現できると考えられています。

3.資本取引・損益取引区分の原則
条文:資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

資本取引とは、増資や株式の発行などの資本の増減を伴う取引のことです。一方の損益取引とは、利潤の追求のための経済活動から生ずる収益や費用を発生させる取引のことです。

この原則が要求するものは“財務の健全性”です。不適切な利益隠しや資本の食いつぶしを防ぐことが目的です。

4.明瞭性の原則
条文:企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

真実性の原則の解説でも触れたとおり、企業会計は、さまざまな利害関係者に対して、適切かつ正確な財政状況と経営成績の報告をしなければなりません。正規の簿記の原則にしたがって作成された財務諸表などの会計資料を、正確に開示することが利害関係者に対する責務であることを、明瞭性の原則は指し示しています。

具体的には、財務諸表の表示においては

・総額主義→相殺後の金額を表示する(純額)ではなく、総額での表示
・費用・収益の対応表示→売上総利益や営業利益など、それぞれの区分に対応した表示
・わかりやすい科目とその配列による表示

などが求められ、財務諸表の注記や附属明細書での表示については、重要な会計方針の開示や重要な後発事象の開示などが求められています。

5.継続性の原則
条文:企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

真実性の原則でも述べたとおり、企業はその会計処理を自由に(一般に公正妥当と認められる範囲で)選択することができます。しかし、選択した会計処理を毎期変えているとしたらどうでしょう?

収益や費用の計上基準などを変えてしまえば、各期の利益の金額に一貫性がなく、恣意的に利益操作をすることすら可能となってしまいます。継続性の原則はそのような問題を防ぐ役割を果たしています。

6.保守主義の原則
条文:企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

企業が獲得した利益が財産的な裏付けにもとづいていることが必要です。正規の簿記の原則では、会計処理やその記録の立証性を要求しています。したがって、未実現の利益を計上することは当然排除されます。企業会計上のリスクについても、「最悪の場合どうなるのか?」ということを会計記録として開示することが必要です。

「貸倒引当金」のように、実際は発生していない貸し倒れを一定の割合にもとづいて計上することができることなどは、保守主義の原則の具体例といえるでしょう。

7.単一性の原則
条文:株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

端的に言うと「会社には一つの会計帳簿しか認めない」ということです。

俗にいう二重帳簿やウラ帳簿、銀行の融資を受けるために複数の決算書を作成することなどを排除するための原則です。

一般原則以外にも会計処理をする上での指針や基準はたくさんあります。しかし、会計処理をする上で、一般原則が重要な意義を持つことがお解りいただけたのではないでしょうか?この原則は、経理・会計業務の土台ともいえます。興味を持たれた方は、ぜひ企業会計原則やその他の指針などを読んでみてください。

 

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ライタープロフィール

くもと編集

くもと編集

マーケター兼編集者

NOC 当コンテンツの編集者。 宝飾業界と広告会社を経て2008年 NOC入社。営業や制作ディレクターを経験し、現在はWebマーケティング担当兼当コンテンツの編集を担当。 「NOCのサービスに直接関係のない記事であっても、読んでくれた方の役に立つ情報をお伝えしていきます。」

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