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2017.05.09 掲載 2023.11.02 更新

再びブーム!?SCM(サプライチェーンマネジメント)は効率だけを重視するのではない

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■サプライチェーンマネジメントが再び大きな変革の波になっている

現在、多くの企業でサプライチェーンマネジメント(以下、SCM)の新たな構築、あるいは再構築が大きな波になっています。かつて、2000年ごろの一度大きなブームが起き、多くの企業が競ってSCM構築プロジェクトを行いました。数億円、数十億円のシステム投資がされたのです。
このときに多くの企業でSCMが構築されたと勘違いする人がいますが、実際はまったくできていません。高価なシステムが使われた例は少なく、このときに導入されたシステムは、現在ほぼ廃棄されています。日本企業のSCMは、このときのブーム以前の状況と大きく変わっていないのです。厳しく言えば、2000年ごろのSCM改革はほぼ失敗したと言っていいでしょう。
もちろん、一部の業界や企業では成果を生んでいるところもあります。その代表はコンビニ業界です。店舗の単品管理による在庫管理の徹底、多頻度配送による適時補充、売上実績の仕入れ計画・発注への反映などです。
 

■サプライチェーンマネジメントが再び脚光を浴びている理由

2000年代に失敗したSCMですが、最近にわかに改革の波が訪れているのは、企業の多くでSCMプロジェクトが立ち上げられているからです。SCMという言葉ではなく、販売・物流管理改革という名や物流改革という名だったりもしますが、いずれにせよ、改革・再構築の動きが急になっています。
あらためてSCM改革が盛んになってきた理由は3つほどあります。以下、考察してみましょう。
①グローバルでの状況変化(自社の本格的なグローバル化)
今、日本企業は本格的にグローバル化し始めています。世界中に販売拠点や生産拠点があり、世界中に物流のネットワークが張り巡らされています。輸出比率が5割を超え、すでに日本国内での販売がメジャーでなくなっている企業がたくさんあります。
こうした状況下で、グローバルでの販売、生産・調達を視野にモノの流れをマネージしなければならなくなったのですが、その対応がやっと始まったというところです。
②国内の状況変化(物流の担い手の減少、働き手不足)
国内でいえば、物流の担い手の減少、あるいは宅配の増加による人手不足です。少子高齢化による働き手の減少、あるいはきつい仕事を嫌ってのトラックドライバーの不足などによりモノを運ぶこと自体が難しくなってきているのです。
こうした状況下で、物流の在り方を根本的に見直さざるを得ない状況なってきています。
③ビジネスモデル変革の要請(売ることと運ぶことの一体化)
アマゾンの登場により、売ることと運ぶことが一体でデザインされたビジネスモデルの強力さに日本企業は圧倒されています。売ることと、運ぶことを一体でデザインし、企業競争力を強化しなければ競争に打ち勝てないという認識に至ったのです。
また、ネット取引の拡張、ドローン、AI/IoTの登場で、根本的にビジネスモデルを考え直すタイミングに来ています。こうした状況下で、モノを準備し、届けていくSCMの再構築の必要性が生じているのです。
 

■そもそもサプライチェーンマネジメントとは何か

それでは、そもそもSCMとは何なのでしょうか。ここで定義しましょう。
SCMとは、「必要なものを必要なタイミングで必要な場所に必要な量だけ準備し、届けるための構想、計画、実行・統制、検証のマネジメントサイクル」です。
多くの人はSCMを物流と勘違いしていますが、実際はもっと広い概念です。モノに関わるあらゆる業務がSCMなのです。SCMで考え、構築される業務機能は、大きく分類して、ロジスティクスネットワークデザイン、計画業務、実行業務、検証業務です。
ロジスティクスネットワークデザインは、販売拠点や製造拠点、倉庫拠点の配置を考え、拠点間の物流のネットワークを考え、構築することです。
先のコンビニの例でいえば、センター倉庫を持って、納入とセンター倉庫内在庫の管理は仕入先に任せて補充し、センターから店舗には多頻度配送をするというデザインです。
計画業務は、どのモノがどれほど売れるかといった予測・販売計画をし、必要な在庫を計算し、仕入や生産の計画を立案する業務です。この計画業務が欠品をせず、在庫過剰にならず、「必要なものを必要なタイミングで必要な場所に必要な量だけ準備し、届けるための」業務の根幹になります。
コンビニの例では、販売実績から適正は商品補充数を計算したり、センター倉庫で持つべき在庫を計算したりするといった業務です。
実行業務は、指示に従い効率的にモノを動かす仕事です。
コンビニの例では、発注にもとづき、センター倉庫から迅速にモノを運ぶ仕事です。
検証は、計画と実行から結果を評価する仕事です。販売計画通りに売れたか、在庫は過剰にも過小にもならずにうまく運用できたか、というチェックです。
SCMとは効率的なロジスティクスネットワークを構築し、そのうえで計画・実行・検証といったPDCAサイクルを回すマネジメント業務なのです。
 

■効率ばかり追求するのは間違ったサプライチェーンマネジメント

SCM構築は売上・利益の最大化と在庫適正化、コスト最小化を狙って構築されます。こうした目的のなかで過度に効率化を目指して行われる改革があります。「不要な在庫を持たずに売り上げを上げるためには、売れないモノは持たずに、最も売れるものだけを品揃えする」といった考えです。
こうしたことは間違いではありませんが、過度に行うと悪い影響を生みかねません。
例えば、地域に密着したコンビニがあったとします。その地域は老人が多く、お年寄りが好みの商品を買いに来て、「ついで買い」でほかの商品を買っていくとしましょう。しかし、全国規模で見ると、お年寄りが買いに来る好みの商品が売れ筋商品でない場合、効率化を考えると商品リストから外した方が良いという結論になります。売れないモノを置いておくより、売れるもので少ない棚を埋め尽くした方が良いからです。
一方で、こうした一部の人たちが欲しいものを買いに来て、ついで買いが起きているのに、単品管理のみに頼って効率化を追求することで、結果的に買いたいものがなくなってしまうとそのコンビニにくるお客が減ってしまいます。本当に自分の欲しいものがなければ、そのコンビニに行く意味がないからです。
茨城にあるわが実家では、あるコンビニグループのたらこおにぎりが人気でしたが、最近無くなってしまったため、別なコンビニグループでばかり買うようになりました。
もちろん、あまりにマイナーな顧客の需要を考慮するのは非効率ですが、単品管理でマスに売れるモノにばかり目を奪われた効率化が、かえって売上減を招くこともありますので、注意が必要です。
こうした例はコンビニのような小売業に限ったことではありません。製造業でも一緒です。
売れ筋ではないが、一部重要な顧客が買ってくれている製品を効率の視点で廃番にしてしまうことで取引がなくなったり、物流都合で在庫を極端に減らしたために欠品が重なり顧客離れが起きたりする企業は数えるときりがありません。
SCMとは単なる自社都合による効率化ではなく、顧客ありきの効率化なのです。日本企業のコアバリューは顧客志向です。SCMで売り上げを最大化するとは、顧客の欲しがるモノをタイムリーに届けることです。顧客最優先で、そのうえで最小コスト・最短時間で、リスクを最小化して供給を行うことがSCMなのです。
 

■今度こそ、本質的なサプライチェーンマネジメントを構築しよう

SCMは単なる目先の効率化、コストダウンや在庫削減を行う改善レベルの話ではありません。企業の売上・利益を最大化するための準備を低コスト・低リスクで行うための「マネジメント業務」なのです。
2000年ごろ失敗したSCMは単に自動化、効率化だけを目指してとん挫しました。SCMは自社のビジネスの永続性を担保するためのマネジメント業務なのです。今度こそ、本質的なSCM構築を行って、永続的な売上・利益を確保し、在庫をコントロールしてキャッシュフローを確保し、予測が外れて売れない・売れすぎたといったリスク対応を行っていく業務の実現を目指していきましょう。

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ライタープロフィール

石川 和幸

経営コンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

石川 和幸

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