仕事がルーティンでなくなる時代の仕事術の王道は「プロジェクトマネジメント手法」

 

■手軽で便利なHuck系仕事術も悪くないが・・・

世の中には仕事術の書籍が溢れています。長時間労働が問題になったこともあり、最近では「効率的に仕事をして定時に帰ろう」といった考えが浸透しています。

大企業の社長や役員、外資系のコンサルタント、その他さまざまな人が仕事術の本を書いています。一見便利そうな仕事の“コツ”が溢れていて、手軽で便利な仕事術がたくさん紹介されています。こうした他人の創意工夫を拝借する手法は“Huck(ハック)”するといって、そのものズバリ“○○Huck”といった仕事術も書かれています。

こうすればいい、ああすればいい、といった対症療法的な小手先仕事術ですが、初心者には効果のある手法もたくさんあり、それはそれで役に立つものもあります。

しかし、そのほとんどは、作業レベルの仕事のちょっとした効率化程度といったものではないでしょうか。ちょっとした“コツ”のレベルで仕事が本格的に効率化するとは思えません。悪くはないのですが、手軽で便利な手法だけでは、仕事を本格的に効率化するのは難しいでしょう。

なぜなら、仕事は一人でやるものではなく、チームでやるものだからです。他人とかかわりながらするものであり、作業だけで済む単純な仕事は少なくなってきていています。一人だけ、少しだけ、効率化しても大した効果はありません。今の仕事は複雑で、かつ、長期間かかって仕上げる必要があるのです。

こうした複雑化した仕事に対し、小手先の“コツ”で立ち向かうのは、チョモランマへアタックをする際に、水筒は軽い方が良いとか、下着は複数種類持っていく方が良いとか、本質的ではない小技をかき集めて満足しているようなものだと思います。

繰り返しますが、そうはいっても初心者にはいいでしょうし、気休めにもなるでしょう。しかし、所詮は小手先の仕事術。大きな成果は生み出せないのが現実です。

 

■仕事がルーティンでなくなる時代の王道はプロジェクトマネジメント手法

昨今の仕事は、毎回同じような処理仕事をこなせばいいといった単純な仕事ではなくなっています。ルーティン仕事はどんどん減ってきており、毎回きちんと計画して仕事をしないと、仕事自体が迷走しかねない複雑な様相を呈してきているのです。

仕事の多くが、月間や年間を通じて期限に向かって何かを達成しなければならないものばかりです。期限があって、しかもチームで、手順を追って成果をあげることが求められています。仕事の進め方を練りに練り、人とかかわりながら、先手を打って対応して、予定通り・目標通りに成果を出していくことが必須になっているのです。

にもかかわらず、いまだに日本人の多くは、小手先の“コツ”や個人の努力、創意工夫程度でなんとかなると思っているようですが、それは厳しいでしょう。

なぜなら、仕事がプロジェクト化してきているからです。プロジェクトとはまさに、期限があって、成果目標があって、ある期間にわたって計画的にチームで仕事を仕上げていくことであり、今の仕事のやり方そのものです。そう、プロジェクト化した仕事が大半になっているのですから、我々はプロジェクトマネジメントの手法を知っていないといけないのです。

 

■日本人は勘違いしている!プロジェクトマネジメントは工学手法ではない

仕事がプロジェクト化しているにも関わらず、日本人の多くはプロジェクトマネジメント手法とは疎遠です。プロジェクトマネジメント自体が工学的な手法で、自分には関係ないと思っている人が多いためだと考えられます。

しかし、プロジェクトマネジメントは工学的なものではなく、仕事を進めるための王道のマネジメント手法なのです。

残念なことに、プロジェクトマネジメント手法を学ぶ機会はあまり多くありません。そのため、プロジェクトマネジメント的な仕事をしているのに、その手法がわからないという人が多くなっています。結局、いつまでたっても、場当たり的で、モグラたたきみたいな仕事ばかりが氾濫しているのです。

また問題が起きた後の問題解決のごたごたの処理が仕事だと勘違いしている人も多いようですが、問題解決というのは、まともな仕事ではありません。問題が起きないように先読みして組み立て、手を打ち、滞りなく、粛々と、期限通りに仕上げていくのが仕事なのです。

つまり仕事とは、リアクションの集積ではなく、プロアクション(先手先手の対応)の集積なのです。

 

■プロジェクトマネジメントの目的は予測可能性とコントロール

 プロジェクトマネジメントとは、工学的な計画手法に限定されるものではなく、その応用範囲は広いものとなっています。

たとえば、会社主催でセミナーを開催するとします。これは、プロジェクトなのです。あるいは、大口商談もプロジェクトということができます。チームで商談のウィンを目指して、「顧客の購買が決まるまでにどういうステップがあって、そのステップごとにどのような対応をしていけばいいか考える」という点で、まさにプロジェクトなのです。

決算処理も株主総会準備も新入社員採用も、すべてプロジェクトということができるでしょう。

今のほとんどの仕事は、期限と目標に向かって仕事を組み立て、「この後起きることを予測可能な状態にして、事前対応できるようにすること」「期限とコストの制約の下で、狙った成果を手にするコントロール力を構築すること」などが必要となります。こうしたことを実現するためには、プロジェクトマネジメント手法が必須なのです。

 

■プロジェクトマネジメントの8つの手法

 プロジェクト化した仕事をプロアクティブにこなしていくための方法は以下の8つです。

①目標定義

目的を明確に定義することです。目標達成の進捗が測れるように、できれば数値化しておきましょう。

 

②スコープマネジメント

仕事の範囲を明確化することです。あれもこれもと“とっつかない”ように、仕事の対象を限定します。例えば、加工現場の改善なら、加工現場以外のことに首を突っ込まないといった、厳密な範囲の限定(スコーピング)が必要です。

このスコープマネジメントは、日本人にとっては、特に重要です。最初にスコープが不明確なため、どんどんスコープが広がって、破たんすることがとても多いのです。

忙しくしないためには、「何をやらないか」が重要であるいうことに「目から鱗」のようなことをいう人がいますが、スコーピングはまさにそのことなのです。きちんと仕事をこなすためにも、当たり前のことなのです。

もちろん、お役所仕事をしろと言うわけではありません。そこはチームで仕事をしているということもよく考えましょう。ただ、なんでも受けてしまうと、スコープが広がって対処が適当になったり、遅延したり、過負荷になったりするので、「最初からスコープコントロールしていこう」ということです。

 

③タスク定義とスケジューリング

タスク定義とは、仕事を分解して、着手可能な大きさにすることです。タスクは作業順序を決め、スケジュールに並べて、時間軸を持って納期管理できるようにします。

④チーム構築と仕事の割り付け

タスクがわかれば、誰がチームに必要かわかりますし、チームメンバーに仕事を割り付けることができます。「タスクの難易度が高く、ベテランじゃないとだめ」とか「簡単なので新人でも良い」とか「サポートは要る」などの判断をして、品質・コスト・納期が守れるようなチーム陣容と仕事の割り付けをしていきます。

 

⑤コミュニケーションマネジメント

仕事を推進するにあたり、いつ・だれと・何を話すか、あるいは同意・承認を得るかということは、すこぶる重要です。必要なコミュニケーションを洗い出し、スケジュール化していきます。

 

⑥リスクマネジメント

仕事を阻害しかねないリスクは、仕事を開始する前に洗い出し、対策をしておきます。

 

⑦予算マネジメント

当然、仕事をするには予算があるので、予算内で収まるようなコントロールもしなければなりません。ある地位に就くまでは必要ないこともあるでしょうが、コストをコントロールする知識は持っておきましょう。

 

⑧課題管理と対応

プラン通り、スケジュール通りに仕事が進んでいるかを定期的にチェックし、課題をあげて、対策をしたり、計画を変えたりします。

 

■プロジェクトマネジメントはPDCAサイクルの王道

 ①から⑧の流れは、まさに仕事のPDCAなのです。プロジェクトマネジメントの考え方は、PDCAサイクルの王道です。もし、身につける機会があれば、貪欲に学んで、実行し、習得していきましょう。

 

ライタープロフィール

石川 和幸

石川 和幸

経営コンサルタント

早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。