吉江 宣慶
経営コンサルタント
外資系コンサルティングファームのプロジェクトマネージャーとして、大企業を中心としたビジネスモデルを変革する新規事業立ち上げのハンズオン支援、大企業×ベンチャーのコラボレーションを促進するM&A戦略の立案、デジタル業界などのニューエコノミーのビジネスデューディリジェンスを得意としている。
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近年、企業を取り巻く環境は、経済のグローバル化やテクノロジーの進化によって急激に変化しています。そうした中で、自社単独(自力)で変化に対応するこれまでのやり方に固執せず、他社のリソース(他力)を利用する「アライアンス」の活用が広まってきました。
ビジネスプロセスリエンジニアリング(組織や業務の流れを分析・再設計することにより業務を最適化する企業改革手法)が流行した1990年前後には専門業務を外部業者に委託する「アウトソーシング」がはじまり、その後、インターネット環境が整備された2000年前後には海外へ委託するオフショアリングへと発展しました。これと並行して、1990年以降はM&Aも活発化し、業務委託の関係に留まらない企業同士の「資本・業務提携」も日常的になりました。
このようなアライアンスは、限られた経営資源を自社の強みにしたり、急激な環境変化に対応するために欠かせない選択肢です。一方で、当然ながらアライアンスを活用すると自社ではコントロールできないリスクは増加します。そこで今回は、アライアンスに特有のリスクについて考えてみます。
自社単独では不可能なことを可能に変えるアライアンスは、経営者にとって非常に魅力的です。効率の悪い業務をアウトソーシングして収益性を高めたり、自社のみでは不可能な幅広いサービスをパートナー企業と連携して提供できるようになれば、企業にとって大きな武器になります。
しかし、アライアンスには大きなリスクも存在します。例えば、「効率の悪いコールセンターをアウトソーシングしたら、顧客への対応力が低下してしまった」あるいは、「パートナー企業に仕事を紹介していたら、いつの間にか自社抜きで顧客とパートナー企業が仕事をしていた」ということも少なくありません。
こうしたリスクを事前に理解し、アライアンスを上手に使いこなすには、はじめに「本当にアライアンスを活用すべきか?」という“そもそも論”を問い直すことが重要です。
ある業務単体で見るとアライアンスに頼った方が効率的に見える場合でも、企業戦略全体から見れば自社が死守すべきコア業務である可能性はないでしょうか。
例えば、ある広告代理店では手間ばかりかかると思われがちな日々の広告運用業務を敢えて内製化しています。他社が低コストの外注先を活用する中、同社は広告の反応データを直接握ることで、顧客にとって常になくてはならない存在となっているのです。
「本当にアライアンスを活用すべきか?」を考えたうえで、コア業務でなければアウトソーシングの活用は非常に有効です。
その際、注意すべきアウトソーシングのリスクは大きく4つ存在します。①費用対効果におけるリスク、②ベンダー(受託企業)選定におけるリスク、③契約におけるリスク、④実行後の管理におけるリスクです。
①費用対効果におけるリスク
結局は自社で業務を行っていた方が経済的であったという結果になりかねないリスクです。当初の見積もりほどコスト削減ができない場合は、コスト削減額の保守的なシナリオを想定しておくことで予防することができます。
また、ベンダーの管理にかかる間接的なコストを見落としている場合は、ベンダーの見積もりには表れない隠れたコストを意識して洗い出しておくことで事前に予防可能です。
②ベンダー選定におけるリスク
ベンダーを評価する基準やその優先順位が曖昧なために、不適切なベンダーを選んでしまうリスクです。こうしたリスクを予防するには、①を踏まえて費用対効果のある価格の許容範囲を明確にしたうえで、その範囲内であれば価格以上に優先評価すべき基準(品質等)をあらかじめ決めておくことが重要です。
③契約におけるリスク
期待されるサービスレベルや報酬体系、不測の事態が発生した場合の対応等について契約書に定義されていない、あるいは定義が不十分であるリスクです。例えば、ベンダーに求めるサービスレベルの指標は、自社の目的を踏まえて効率性を重視するのか(架電件数等の稼働指標)、品質を重視するのか(クレーム件数等の顧客満足指標)で大きく変わります。
④実行後の管理におけるリスク
ベンダーの品質管理が甘く成果が出ないリスクや、ベンダーに過度に依存して自社のコントロールができなくなるリスクです。ベンダーを直接管理する部門だけでなく、関連する事業部・人事部・経理部・法務部などを巻き込んで、自社内の体制を整えておくことが求められます。
資本・業務提携は、完全に業務を他社に切り出すアウトソーシングとは異なり、様々なパターンがあります。そのため、どのパターンを採るかによってリスクのありかたが変わってくることに注意が必要です。
まず、自社で死守すべきコア業務ではあるものの、効率化が必要な場合には買収を活用する方法があります。
例えば、コア業務をローコストで行っている企業を子会社化することで、グループ内に業務を留めながらコストを下げることができます。
この場合、一旦買収してしまうと取り消しがきかないため、固定費を抱えるリスクについて慎重な検討が必要です。買収する時はローコストであっても、社員の人件費が上昇したり、価格競争が激しくなれば、すぐに損益分岐点を割り込む可能性があります。
そうしたリスクを取ってでもコア業務として維持しておく戦略があるかどうかを冷静に判断する必要があります。
反対に、自社に一定のノウハウを蓄積しておく必要はあるものの、自社で丸抱えするコア業務ではない場合には、ジョイントベンチャーを活用する方法があります。
例えば、コールセンター業務を子会社化し、子会社株式の一部をコールセンターの専門企業に売却することで、両社共同で事業運営するスキームです。この場合、両社の思惑が異なることで事業運営に支障をきたすリスクがあるため、アウトソーシングと同様、予め株主間契約などで運営方法を合意しておくことが重要です。
このようにアライアンスの活用方法には様々なパターンがあり、そのパターンによってリスクマネジメントのコツは変わってきます。アライアンスを活用すべきであるか、またはすべきでない業務であるかを見極め、どのようなアライアンスが適しているかを考えていくことで、注意すべきリスクが見えてきます。
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ライタープロフィール
吉江 宣慶
経営コンサルタント
外資系コンサルティングファームのプロジェクトマネージャーとして、大企業を中心としたビジネスモデルを変革する新規事業立ち上げのハンズオン支援、大企業×ベンチャーのコラボレーションを促進するM&A戦略の立案、デジタル業界などのニューエコノミーのビジネスデューディリジェンスを得意としている。
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