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2018.04.19 掲載 2025.04.14 更新

業務改善に繋がる業務棚卸とは?効率的な進め方と円滑に進める2つのポイント

業務コンサルタントが貴社業務を調査。 結果・改善をレポーティング

業務コンサルティング

業務棚卸は、業務改善の第一歩として多くの企業で実施されています。しかし、具体的な手順が分からない、効果的な実施方法が見えないという声も少なくありません。本記事では、業務棚卸の基本的な考え方から、実践的な進め方、さらには業務改善につなげるためのポイントまでを詳しく解説します。

業務棚卸とは

業務棚卸とは、組織内で行われている業務を詳細に洗い出し、可視化・整理する活動です。

具体的には、各部署や個人が担当している業務内容、業務にかかる時間、業務の頻度、優先度などを明確にし、その結果を分析して業務改善につなげていく取り組みを指します。

業務棚卸は、単なる業務の一覧作成ではなく、業務全体を体系的に見直すことで、無駄な作業の削減や効率化、リソースの最適配分を実現するための重要なステップとなります。

業務棚卸の主な対象具体例
定常業務日次報告書作成、在庫管理、経費精算、月次決算
不定期業務プロジェクト対応、クレーム処理、緊急対応

特に近年では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や働き方改革の一環として、多くの企業が業務棚卸を実施し、業務プロセスの見直しやシステム化の検討を行っています。

業務棚卸の実施時期については、以下のようなタイミングが一般的です。

  • 組織改編や人事異動の前後
  • 新システム導入の検討時
  • 業務効率化プロジェクトの開始時
  • 部門統合やM&A実施時
業務棚卸で確認すべき項目確認のポイント
業務内容具体的な作業内容、目的、成果物
業務量所要時間、作業頻度、工数
業務の優先度重要度、緊急度、影響範囲
業務の依存関係前工程、後工程、関連部署
必要なスキル必要な知識、経験、資格

また、業務の粒度も重要な観点です。個人なのかチーム、部門、企業全体なのかを意識しながら棚卸します。

業務棚卸をする3つのメリット

業務棚卸を実施することで、組織にとって以下の3つの重要なメリットを得ることができます。それぞれのメリットについて詳しく見ていきます。

業務改善につながるポイントを洗い出し見つけることができる

業務棚卸により、日常的に行われている業務プロセスを可視化することで、重複している作業や非効率な業務フローを特定することができます。

例えば以下のような改善ポイントを発見することができます。

改善対象発見できる課題例
重複業務複数部署での同じような資料作成
非効率な作業手作業による定型データ入力
無駄な承認プロセス形骸化した複数回の決裁

慣習や前任者からの引継ぎ等、不便だと思っていても業務として行っていることは多々あります。まずは認識することが業務改善への一歩です。

社内リソースが有効活用できる

業務内容と工数を明確化することで、人員配置の最適化や業務の再分配が可能になります。

具体的には、以下のような活用が期待できます。

  • 業務量に応じた適切な人員配置の実現
  • 部署間での業務負荷の平準化
  • スキルセットに合わせた業務アサイン
  • 繁閑期に応じた柔軟な人材シフト

業務棚卸をすると意外に気づくことで、重要ではない業務に人員を割いていたりします。適切に人員を配置することで職場環境の改善にもつながりますし、明確な採用計画も立てやすくなります。

属人化した業務を見つけ改善することができる

特定の個人にしか実施できない業務を特定し、ナレッジの共有やマニュアル化を進めることで、組織の運営リスクを低減できます。

属人化解消により得られる具体的なメリットは以下になります。

  • 急な離職や病欠への対応力向上
  • 新入社員の教育時間短縮
  • 部署間の相互支援体制の確立
  • 業務知識・ノウハウの組織的蓄積

業務を組織全体のプロセスという視点で最初から組み立てていないがゆえに、現場担当者に“丸投げ”し、それが慣習となると往々にして発生するのが属人化です。
担当者が長く働いていてくれると看過しやすいですが、人の流動性が高まり、人材不足が言われる昨今では業務に支障が出るリスクとなります。

業務改善につながる業務棚卸の進め方

業務棚卸を効果的に実施するためには、手順を明確にして進めることが重要です。ここでは具体的な5つのステップで解説します。

1.業務棚卸を行う範囲を決める

まず初めに、業務棚卸の対象範囲を明確に定める必要があります。以下のような観点で範囲を決定します。

観点検討内容
部門全社、部門・部署など
対象期間日、月、四半期、半期、通年など
業務種別定型業務、非定型業務、または業務の種類やプロセスなど
その他業績へのインパクト、難度など

優先度の決定が重要です。最終的な目標があることが前提ですが、まずは小さな範囲から実施することをおすすめします。

2.業務棚卸の作業時に利用するフォーマットとルールを作成・共有

業務棚卸の精度を高めるために、統一されたフォーマットとルールが必要です。各部門で異なるフォーマットを使用すると、後の分析や改善策の検討が困難になります。

業務棚卸では以下の項目を含むフォーマットを推奨します。

記載項目記入内容
業務名具体的な業務内容
実施頻度日次/週次/月次など
所要時間1回あたりの作業時間
コスト作業ごとの想定コスト
優先度重要度・緊急度の評価
担当者主担当と副担当

FOCでもエクセルのフォーマットをご用意しております。

【無料】業務棚卸に役立つフォーマット
※資料ダウンロードページへリンク

3.業務棚卸作業を実施

業務棚卸作業では、日常的に行っている業務を可能な限り先述したフォーマットに詳細に書き出すことが重要です。以下の点に注意して実施します。

  • 作業手順書やマニュアルの確認
  • 関連システムの利用状況の確認
  • コミュニケーションツールでのやり取りの確認
  • 抜け漏れがないか確認

チームや他部門に協力を仰ぐこともあります。その場合は、目的をしっかり伝えて納得してもらうこと、締切は余裕を持って依頼することがポイントです。
また、同じ業務であっても部署が違うと業務名が違うことがあります。必ず業務名を統一していくことが重要です。
例えば、営業部では「取引先のシステムへの登録」を管理部では「販売管理システムへの企業情報の登録」と表現しているなどです。調べてみると同じ業務だった、ということはよくあります。

4.業務一覧をまとめて業務改善を実施

収集した情報を分析し、以下の視点で業務改善のポイントを特定します。

改善の観点チェックポイント
重複業務の有無類似した業務の統合可能性
自動化の可能性システムやRPA導入の検討
業務の必要性廃止可能な業務の特定
工数の適正化作業時間の見直し

5.定期的に業務棚卸内容を確認・実施してアップデートする

業務棚卸は一度きりではなく、定期的な実施が効果的です。四半期ごとや半期ごとなど、組織に適した間隔で見直しを行います。

定期的な見直しでは以下の点を確認します。

  • 新規追加された業務の有無
  • 廃止された業務の整理
  • 業務量や担当者の変更
  • 改善施策の効果測定

定期的な見直しは業務棚卸の粒度によりますが、最初は半年でサイクルを回しつつ年単位で実施することをおすすめします。

業務棚卸後に確認したい業務改善方法

業務棚卸を実施した後は、具体的な業務改善に着手する必要があります。ここでは、効果的な業務改善の方法について解説します。

不要な業務の廃止と統合

棚卸によって明らかになった業務の中から、以下の観点で整理を行います。

確認項目具体的な対応
重複業務部署間で重複している業務を一本化
廃止可能業務目的が不明確な業務や成果が見えない業務の廃止
統合可能業務類似した業務のまとめ上げ

基本は「ムリ、ムダ、ムラ」があるか否かです。人は今までやってきたことを変えることに抵抗があります。
業務棚卸担当「この業務いらないですよね」
業務担当「いや、この業務がなくなると部長への報告ができなくなります」
業務棚卸担当「でも、この情報はシステムから見られますよね」
業務担当「部長が別でほしいと指示するので・・・」
以上のようなやり取りが必ず発生します。
繰り返しますが、業務改善のためには優先度はともかく、細かいことであっても「ムリ、ムダ、ムラ」の観点で潰していくことです。
また、同じ業務なのに部門ごとに違う表現をしているような場合は注意が必要です。どちらかの部門に寄せる判断や部門間の効率化に影響がでます。

業務のデジタル化推進

紙ベースの作業や手作業による処理をシステムやRPA(Robotic Process Automation)、ビジネスチャットツールなどに移行することで、大幅な効率化が期待できます。

例えば以下のような業務効率化ツールが挙げられます。

  • ワークフロー
  • コミュニケーション
  • 文書管理
  • タスク管理
  • RPA
  • 生成AI
  • ERP

自社でサーバを構築したり、パソコン端末でしか動作しないツールもありますが、可能な限りクラウド型をおすすめします。標準化が進めやすく、メンテナンスや働き方を問わない活用ができるからです。

業務の標準化とマニュアル化

属人化している業務を誰でも実施できるよう、業務手順を標準化しマニュアルを整備することで、業務の質を均一化し、引継ぎやトレーニングを効率化できます。

マニュアル作成のポイントは以下になります。

  • 手順を細分化し、具体的に記述
  • 図表やスクリーンショットを活用
  • 定期的な更新スケジュールの設定
  • 関係者による内容のレビュー実施

アウトソーシング検討

社内リソースを本来注力すべき業務に集中させるため、外部委託を検討することも手段のひとつです。

業務分類アウトソーシング例
定型業務データ入力、経理処理、給与計算
専門業務システム開発・メンテナンス、デザイン制作、法務相談
間接業務施設管理、備品管理、社員教育

いわゆるノンコア業務にあたるもの、自社にノウハウがないもの、著しく工数が取られるものはアウトソーシング検討のポイントです。

KPIの設定と進捗管理

業務改善の効果を定量的に測定するため、具体的なKPIを設定し、定期的なモニタリングを実施することが重要です。

  • 工数削減率
  • 業務処理時間
  • エラー発生率
  • 顧客満足度
  • 従業員満足度

業務棚卸後、業務プロセスを再構築したことに満足せず、業務棚卸の目的を達成しているのかをしっかり追いましょう。

業務の棚卸を円滑に進める2つポイント

業務棚卸を効率的に進めるためには、以下の2つのポイントを押さえることが重要です。

業務内容を整理する時は粒度を揃える

業務棚卸を行う際、業務の区分や分類を適切な粒度で揃えることが、正確な分析につながります。粒度が大きすぎると詳細な分析ができず、小さすぎると作業が煩雑になってしまいます。

業務の粒度例:営業活動

粒度のレベル
具体例
適切な用途
大分類
営業活動全般
部門単位での業務把握
中分類
新規開拓営業
チーム単位での業務分析
小分類
見込み客へのアプローチ
個人単位での業務整理

一般的な目安として、1つの業務単位が30分から2時間程度で完結する粒度に揃えることで、適切な分析が可能になります。

また、業務プロセスにおいて他部門が前後の工程に関わる際に、「データ入力」と同じ業務名であっても、自部門は企業情報をSFAにデータ入力することを示し10分で済む業務である一方、前の工程を担う他部門では、問い合わせしてきた経路やその内容のSFAへの登録および基幹システムへの登録、約30分かかる業務を意味することもあります。
同じ業務名でもかかる工数が10分と30分では粒度が合っていません。

業務棚卸に有効なフレームワークを活用する

業務棚卸の効率を高めるために、以下のようなフレームワークの活用もありでしょう。ただ、理解に時間がかかる場合は先に示したエクセルフォーマットを埋めることで十分です。


ECRS(イクスル)

日本能率協会コンサルティングによると、
ECRSとは、業務改善を実視する上での、順番と視点を示したものである。ECRSは、Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)の英語の頭文字を選択したものである。業務の改善においてECRSを適用すると、改善の効果が大きく、過剰や過小な改善も避けられ、さらに不要なトラブルも最小になることが期待できます。

出所:日本能率協会コンサルティング
https://www.jmac.co.jp/glossary/a-m/ecrs.html


BPMN(ビジネスプロセス・モデリング)

出所:一般社団法人 BPMコンソーシアムによると、
BPMS(ビジネスプロセス・マネジメント・システムまたはスイート)は、国際標準であるBPMNで描かれた業務フローを実装しBPMを実現するために必要なITツールです。
BPMNには大きく4つの特長があります。

  • 実務担当者が理解しやすいものであり、かつ、システム・アプリケーション開発者にも必要な意味を伝えることができます。
  • BPMNで正しく書かれた業務フローは「誰が読んでも同じ意味として伝わる」ため、共通言語的に使用できます。
  • 対象プロセスを階層化させて描くことができます。(上位階層は網羅的に、下位の階層は詳細に描くことができます。)
  • 実務担当者が考えた業務プロセスがBPMS上で、そのまま動き「見える化」された管理ができます。

出所:一般社団法人 BPMコンソーシアム
https://bpm-consortium.or.jp/bpms/

どちらも活用できれば業務棚卸や業務改善につながります。

企業として、人を資源から資本に変えていく

業務棚卸は、業務の見える化と効率化を実現する重要な取り組みです。業務の属人化を防ぎ、社内リソースの有効活用にも繋がります。

効果的な業務棚卸を実施するためには、まず範囲を明確にし、エクセルなどの標準化されたフォーマットを用意することが重要です。また、業務の粒度を揃えることで、部署間での比較や分析が容易になります。さらに、MECE(ミーシー)やECRS、BPMNといったフレームワークを活用することで、漏れのない業務の洗い出しが可能です。

業務棚卸は一度きりではなく、定期的な実施とアップデートが必要です。最低でも1年に1回は見直しを行い、常に最新の業務状況を反映させることで、継続的な業務改善に繋げることができます。
特に昨今のDX推進の流れの中で、業務棚卸の重要性は一層高まっています。

最後に人材不足がますます加速するなかで、業務負荷による残業や休日出勤、業務を引き継げない状況の蔓延は、退職リスクが高まっていきます。
一昔まえであれば、「辞めても次がいる」という、人をある意味使い捨ての資源としてみていてもなんとか会社はまわっていました。これからは人は資本、つまり投資して、長く働いてもらい生産性を高めてもらうことが求められてきます。

現場任せではなく、会社として少しずつでもよいので業務改善のため業務棚卸を実施していきましょう。

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ライタープロフィール

くもと編集

マーケター兼編集者
FOC 当コンテンツの編集者。 宝飾業界と広告会社を経て2008年 FOC入社。営業や制作ディレクターを経験し、現在はWebマーケティング担当兼当コンテンツの編集を担当。 「FOCのサービスに直接関係のない記事であっても、読んでくれた方の役に立つ情報をお伝えしていきます。」

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