確定拠出年金とは?企業型と個人型のメリット・デメリットを紹介

かつて企業における年金は、企業内に退職給付としてプールしておいた資金から支払われていました。

しかし近年、運用利差損が出たときの資金の穴埋めや、退職給付債務が企業の財政を圧迫することが問題視されるようになっています。また、従業員においても雇用の流動化により転職や独立など新たな働き方が可能になったものの、退職給付が引き継がれず離職とともに運用がいったんリセットされてしまう弊害が指摘されています。

加えて、折からの財政難もあり、財務省では年金支給開始時期を段階的に65歳まで引き上げる処置が進められています。そして現在、開始年齢をさらに68歳まで引き上げる議論がすでに始まっているとも言われます。

国民においては、ますます自助努力による老後資産形成の必要性が高まるなか、確定拠出年金が改めて注目されるゆえんになっています。そこで、確定拠出年金とは何か、その仕組みと役割について見てみましょう。

 

確定拠出年金とは

確定拠出年金とは、会社が準備する積立額のほか、月々の積立額や運用する商品を自分で決めて年金を作っていく制度のことです。国民年金や厚生年金に加えて自分で自分の年金を作れるため老後資金に不安がある人には重要です。給付額は運用実績によって変動し、受取方法は年金もしくは一時金、もしくは両方の組み合わせが可能になっています。加入者が死亡した場合は遺族が一時金として受け取ることも可能です。年金として受け取る場合は、税制優遇(公的年金控除)も適用されます。

日本の年金制度は大きく分けて国が管理する「公的年金」、企業が独自に設けている「企業年金」、国民自身が管理する「個人年金」の3種類があります。さらに細かくわけると、公的年金は「国民年金」と「厚生年金」に分けられます。また、企業年金は大きく2つに分けられます。「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「自社年金」と、「中小企業退職金共済」、「特定退職金共済」などの共済制度です。そして、「個人年金」は、「個人型確定拠出年金」「国民年金基金」「農業者年金」「個人年金商品」「財形年金」などがあります。それぞれの概要は次の通りです。

 

・国民年金

公的年金の一種。自営業者、学生、会社員・公務員、専業主婦など、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務がある。国民すべてが対象のため、基礎年金ともいう。支給開始年齢は65歳。納付額は立場によらず定額で、支給額は納付した期間に応じて変化する。

 

・厚生年金保険

公的年金の一種。法人、及び、農林漁業、サービス業を除く常時5人以上の従業員を使用する個人事業所が対象。保険料は給与額によって累進する。実際の納付は勤務先事業主との折半。支給開始年齢は60歳だったが、段階的に65歳からに引き上げられている。

 

・厚生年金基金

企業が設立した厚生年金基金を、国の厚生年金の一部とあわせて運用する形の企業年金制度。国の厚生年金の部分を「代行部分」、企業独自給付の部分を「プラスアルファ部分」という。2013年6月の厚生年金保険法の改正により、厚生年金基金の新設は認められなくなった。

 

・確定給付企業年金(規約型と基金型)

企業の福利厚生制度の一種として始まったもので、退職給付としてプールしておいた資金を退職時に年金として支給する仕組み。企業内の規定により、受け取れる額があらかじめ約束されている「確定給付型」の年金。通称DB。金融機関が資金の管理・運用・給付を代行する「規約型」、企業および企業グループで独自に企業年金基金を設立する「基金型」の2種類がある。将来の受取額を決めて必要な資金を運用していくため、利回りの低下が問題となっています。

 

・企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業が毎月一定額の掛金を拠出し、運用を従業員(加入者)自身が行う企業年金制度。通称企業型DC。拠出額だけが決まっている「確定拠出型」で、加入者自身が運用責任を負担し、成果によって受取額が変わる仕組み。確定拠出年金制度に加入している企業の従業員のみが加入できるため、公務員や自営業者、専業主婦(夫)などは加入不可になっています。毎月の掛金は給与として支払われないため非課税になります。運用中の利益も非課税で確定拠出年金は転職した際には、転職先に移動することも可能です。

 

・自社年金

企業独自の年金制度。企業が独自に積み立てをし、管理を行い、年金給付をしていく制度。法律に基づいていないため、規制にしばられることなく自由に運営や制度設計が可能。その半面、法律に認められた優遇措置は受けられない。

 

・中小企業退職金共済

独自に退職金制度を設けることが難しい中小企業専用の退職金共済制度。会社側の事務負担を軽減するため、定額の掛金を納付すればよく、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運用・給付を一貫して代行する仕組み。

 

・特定退職金共済

中小企業で働く従業員を対象に創設された退職金制度。共済に加入すると退職金の保全措置を講じたことになり、「賃金の支払の確保等に関する法律」の適法事業所となる。事業主が負担する掛金は全額損金または必要経費に計上でき、従業員の給与所得にもならない。中小企業退職金共済制度との重複加入も可能。運用は生命保険会社に委託している。

 

・個人型確定拠出年金(iDeCo)

平成13年に施行された確定拠出年金法に基づいて実施される私的年金制度で、国民年金基金連合会が運用を行う。自営業者や専業主婦(夫)(第3号被保険者)、定年退職者など企業に勤めていない人はもちろん、会社員・公務員などすでにDB、DCに加入している人でも利用できることもある。企業型確定拠出年金の通称「企業型DC」に対して、「個人型DC」と呼ばれ、愛称を「iDeCo(イデコ)」という。国民年金や厚生年金と組合わせることでより豊かな老後生活をおくるための資産形成のひとつとして始められた制度になります。iDeCo(イデコ)には大きな3つの税制上のメリットがあるため有利に資産運用を行うことができることでも知られています。

 

以上のように、確定拠出年金には、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(個人型DC)があるわけですが、ここからはこの二つの年金制度についてさらに詳しく見ていきましょう。

 

企業型と個人型の違い

企業型は所属する企業が拠出した掛金を、加入者(従業員)が自分の考えで運用できる制度です。拠出額だけが決まっていて運用結果次第で受取額が変動するため「確定拠出型」と言います。拠出限度額は以下の通りです。(単位は月額)

①厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない=55,000円

② ①の場合で規約において個人型年金への加入を認めている=35,000円

③厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している=27,500円

④ ③の場合で規約において個人型年金への加入を認めている=15,500円

 

確定拠出年金の運用は、企業が提携した運営管理機関が提供する金融商品の中から選定します。資産運用や投資先の選定に関するレクチャーを企業から受けることができるなどの点で、個人で運用する場合との違いがあります。2012年1月の法改正により、企業が拠出した掛金に加入者自身の資金を上乗せして一体運用できる「マッチング拠出」が可能になりました。企業が拠出する事業主掛金と同額、かつ、企業と加入者の合計で拠出限度額まで掛金を出すことが認められています。この際、加入者の掛金は全額所得控除の対象になります。

企業型と個人型の確定拠出年金の大きな違いは誰のルールに沿って拠出をするかになります。企業型は企業のルールに則って拠出し、掛金もしくは事務費用を企業が負担してくれます。企業型を導入している会社に勤務している人のみが対象で、掛金は会社の損金として計上されます。一方で個人型は自分で掛金の金額を決めて拠出します。個人型は掛金を確定申告することによって税金の還付が受けられます(会社員の場合は年末調整で対応可能です)。

 

企業型確定拠出年金(DC)のメリット

企業型確定拠出年金のメリットとしては、加入者自身の判断で運用先を決めることができるため、運用成績がよければ受け取る年金額が増えるということです。

加入者にとって、年金の運営管理機関に支払う事務費が会社負担になることもメリットといえます。また、運用状況が加入者ごとに把握できるため、自分自身で資産の状況を管理できます。転職・独立などによって離職する際、DCに掛けた年金資産を持ち出し、転職先の企業型DCや個人型DCで引き続き運用が可能になります。

企業にとっては、企業年金の運用損の穴埋めや、退職給付債務の負担から解放され、財務体質の強化につながります。税制面でも、個人で金融商品を購入する場合と比較して優遇されており、運用益が非課税です。また、年金として受け取る場合は公的年金等控除の対象となり、一時金(いわゆる退職金)として受け取る場合は退職所得控除の対象となります。なお、通算加入者等期間に応じて受給開始年齢が引き上げられます。加入者が死亡した場合は遺族が一時金で受け取ることができます。

 

企業型確定拠出年金(DC)のデメリット

企業型確定拠出年金のデメリットとしては、将来の年金額が確定しないということです。自分で運用しているという意識が薄く、運用をうまくできなかった場合は、元本割れの可能性もあります。

また、原則として途中解約ができません。年金資産は、60歳まで引き出すことができないということもデメリットの一つとして挙げられるでしょう。対象が会社員のみなので扶養している配偶者が加入できません。また自分の会社が確定拠出年金制度を導入していない場合は加入ができないこともデメリットです。

 

■個人型確定拠出年金(個人型DC)

国民年金基金連合会が実施主体となり、自営業者、会社員(公務員含む)、専業主婦など、国民年金保険料を納めている国民は原則全員が利用できる年金制度です。すでに企業型DCを導入している企業の会社員は、規約上、個人型DCの利用が認められている場合は、加入することができます。金融機関(運営管理機関)を自分で選択し、掛金を拠出して運用商品を決定し、60歳になったら運用結果を受け取ることができます。自身で個人的に運用した場合と比較し、税制上の優遇処置が受けられます。また、個人型DC加入者が企業型DCを導入する企業に転職・就職した場合、個人型DCの資産を転職先の企業型DCに移換できます。企業型DC同様、拠出額には以下の通り限度があります。(単位は月額)

①自営業者等=68,000円(国民年金基金との合算)

②厚生年金保険の被保険者で厚生年金基金等の他の企業年金を実施している=12,000円

③生年金保険の被保険者で他の企業年金を実施していない企業型DCの加入者=20,000円

④厚生年金保険の被保険者で他の企業年金を実施している企業型DCの加入者=12,000円

⑤厚生年金保険の被保険者で企業型DCや他の企業年金を実施していない=23,000円

⑥公務員=12,000円

⑦専業主婦(夫)等=23,000円

 

個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット

個人型DCの最大のメリットは、税制優遇です。企業型DC同様、掛金は全額所得控除の対象(ただし、課税所得がない場合、所得控除対象外)で運用益も20.315%(復興特別税含む)の税金が非課税、年金として受け取る際は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象になります。受け取る際は、退職金のように、一時金として一括で受け取る方法、年金として5年以上から20年かけて受け取る方法、一時金と年金の組み合わせで受け取る方法から選択可能です。また、自分の判断で拠出を停止し、運用だを行う「運用指図者」に変更することもできます。月々5,000円から1,000円単位で掛金が設定できるため資金に余裕がない人でも気軽に始めることができます。証券会社や銀行などによって商品の品揃えに差がありますがiDeCoのメリットは元本確保型の定期預金もあるため絶対に元本割れしたくない人でも安心です。

 

個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリット

企業型DC同様、資産の運用は加入者自身の責任で行われ、受け取る額は運用成績により変動します。企業型DCと違うのは、自分自身で投資の知識や経験を獲得する必要があるところです。老後の資産形成を目的とした年金制度であるため、原則60歳になるまで資産を引き出せません。また、企業型DC同様、通算加入者等期間に応じて受給できる年齢が変動します。専業主婦(夫)の人はもともと所得がないためiDeCo(イデコ)の所得控除が適用されないのもデメリットです。

運営管理機関には、事務委託先金融機関に支払わなければなりません。その他にはiDeCo(イデコ)を開設する銀行や証券会社などの運営管理機関と事務委託先金融機関でも手数料が発生します。運用商品に投資信託を選んだ場合は、更に年間の手数料として信託報酬を間接的に支払わなければなりません。

手数料は金融機関によって異なりますが、平均すると年額3,000円~4,000円です。このように税制優遇制度はありますが、手数料が高く、将来的に運用がうまくいかなかった場合は受け取る金額が少なくなるリスクもあります。

 

■退職金との違い

 退職金と確定拠出年金の大きな違いは、資金を誰が準備するかどうかになります。退職金は会社で確定拠出年金は個人もしくは会社と共同で積み立てていきます。

 

■個人型確定拠出年金のおすすめの金融機関

ニッセイ(日本生命)
専用のコールセンターや専用のWEBサイトなどサービスが充実しています。運用商品は投資信託は手数料を低めに設定している投資信託が中心です。

みずほ銀行
iDeCoの運用管理費が0円で、資産運用ロボアドバイザーが商品選びをサポートしてくれます。

野村證券
大手証券会社の安心感があり、コールセンターとWEBサービスには定評があります。商品のラインナップも充実しています。

その他、イオン銀行、ソニー生命、SBI証券はサービスラインナップ、サポートなどバランスが良いと言われています。

以下、サイトで取引金融機関の比較ができますので参考してください。

iDeCoナビ 運営:特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会
https://www.dcnenkin.jp/search/

 

■まとめ

確定拠出年金は大きく分けて企業型確定拠出年金(企業型DC)と、個人型確定拠出年金(個人型DC)があります。それぞれ、加入できる人、条件、また、メリットとデメリットがあります。それぞれの特性をよく把握した上で賢く利用し、自身及び従業員の資産形成に役立てましょう。

 

 

記事の参考URL

厚生労働省 公的年金制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei01/

厚生労働省  公的年金制度の仕組み
https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/structure/index.html

日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
http://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/shurui-seido/20140710.html

厚生労働省 確定拠出年金制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html

労働金庫連合会「企業年金」
http://www.rokinren.com/kigyonenkin-support/outline/index.html

iDeCo公式サイト
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/

労働金庫連合会「厚生年金基金」
http://www.rokinren.com/kigyonenkin-support/outline/epf.html

全国中小企業共済財団
https://www.zenkyosai.or.jp/

 

 

ライタープロフィール

ななこ

ななこ

DC運用・ブログ担当

NOCのDC担当者。金融機関での経験を活かし、2018年にNOCのDC部門に立上げメンバーとして入社。現在は、DCの制度設計・保全運用・企業問い合わせ窓口を担当するとともに、ブログ記事の執筆にも取り組む。「NOCでは少し異色なサービスですが、DC制度についてわかりやすくお伝えします!」