投資教育とは!企業型確定拠出年金における重要性

確定拠出年金制度が2001年にスタートしてから、企業型確定拠出年金(企業型DC)の実施事業主数は3万社を超え、加入者は700万人近くに達します。いまやすっかり年金制度の一翼を担う存在として浸透してきた確定拠出年金制度。確定拠出年金は導入して終わりというものではなく、本来のゴールは、加入者(従業員)の手で確実に運用され、安定的に資産形成されることにあります。導入後、いかに制度を社内に定着させ、従業員に理解させていくかがより重要になります。そこで、加入者の間に制度の趣旨が理解され、自身の手で運用できるように導く投資教育の重要性と実施手順について解説します。

 

■投資教育とは

投資教育とは、事業主企業型確定拠出年金に加入する従業員などに運用の知識や情報を提供するために行う投資に関する教育のことです。

日本における投資教育
日本では投資教育が努力義務とされていて、確定拠出年金や金融商品の仕組み、資産運用の基礎知識や確定拠出年金制度を含めた老後の生活設計などが主な教育の内容になります。

アメリカにおける投資教育
アメリカでは投資教育は義務ではなく、ほとんど行われていません。ただ、就学期間から投資に触れる機会が日常的に多く、個人の投資に関する感度が高い社会背景があるため、単純に日本の状況と比較はできないでしょう。

 

■確定拠出年金は「投資教育」が重要

確定拠出年金の目的は、国や企業が「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援する」ことで、加入者が自身の運用に基づいた給付を受けることができるように、国、企業、加入者が一体となって取り組んでいくことにあります。つまり、年金の運用にかかわる事務やリスクを加入者本人に押し付けるのではなく、企業と加入者が協力して、健全な資産形成を図っていくことが本来の趣旨です。そこで重要になるのが、加入者への投資教育です。

・従業員への投資教育

加入者への投資教育は、制度導入時に行う最初の「投資教育(導入時投資教育)」と、制度導入後に繰り返し行う「投資教育(継続投資教育)」の2種類があります。このうち、継続投資教育は従来「配慮義務」とされていたのが、確定拠出年金法の改正(平成30年5月施行)によって「努力義務」へと変更になりました。

背景にあるのが、投資に関する知識や経験の個人間格差です。もともと日本では、個人が投資によって積極的に資産運用を図る文化が希薄で、企業任せ、国任せという時代が長くありました。それが、国による制度改革、民間業者によるPRなどの努力もあって、独自に資産運用の知識を吸収して投資経験を積極的に獲得しようとする人が増加しました。しかし、関心がない人はあくまで無頓着なまま、結果として、個人間で投資に関する知識や経験に大きな開きがでているのが現状です。確定拠出年金は加入者がどの商品で運用するかによって将来受け取る金額に違いが出るため投資教育は非常に重要です。

・投資教育を行わないリスク

一般的な資産運用は、あくまで個人の自由意志によって行われるものです。しかし、確定拠出年金は、資産運用の知識や経験、関心にかかわらず、導入と同時に全加入者一律に掛金の自主的な運用がスタートします。個人的に投資の知識や経験を積んできた加入者は積極的に運用できますが、投資に不慣れで苦手感を持っている人は、貯蓄型の金融商品に預けっぱなしにする傾向があります。あるいは、よくわからないまま投資判断して、原本割れしてしまうケースさえあります。

仮に、新入社員として入社してから60歳で定年するまでのおおよそ40年間に積み立てた掛金1000万円を原資に、国内経済の平均的な成長率とほぼ同じ年率約2%で運用した場合、退職時に受け取れる給付額はざっと2000万円になる計算です。

これに対して、貯蓄型の金融商品に預けっぱなしにしている場合、40年間につく利息は数万円程度。つまり、積極的に運用した人とそうでない人では、退職時に受け取れる年金額に少なくとも総額で1000万円程度の差が出てしまうことになります。企業として確定拠出年金を導入したなら、一定レベルの投資の知識や経験を積むための機会を、すべての加入者に対して均等に提供することが重要となります。特に退職金が出ない、もしくは少ない会社は積極的に投資教育を行う必要があります。

 

■導入時投資教育では初心者にも基礎をわかりやすく

具体的に投資教育はどのような形で行えばいいのでしょうか。確定拠出年金の導入時、最初に行う「導入時投資教育」は、制度の概要についての理解をしてもらうことが主眼となります。制度の詳しい内容について理解を促進するとともに、退職後の人生設計や資産計画に対する関心を喚起し、少しでも豊かで明るい老後に導くためのきっかけとして、積極的に啓もうを図りましょう。

導入時投資教育の説明内容

・確定拠出年金制度の概要

・金融商品の種類と特徴

・確定拠出年金の事実上の投資対象となる投資信託の基本的な仕組み

・リスクとリターンの考え方

・運用スタイルの種類と考え方、資産配分のやり方

・資産運用のシミュレーション

・個別の運用商品の解説

などになります。

これに加えて、購入の仕方、商品の指定方法、手続きの説明、租税や事務手数料など事務的な内容が主体になります。

 

■継続教育は関心の薄い加入者のために

導入時投資教育実施後に、改めて、投資に対する基礎知識や具体的な運用商品の変更方法、運用のコツなどを習得するための「継続投資教育」を行います。「継続投資教育」は、法令上実施時期の定めはありませんが、毎年実施することが望ましいものです。ここで重要なポイントは、導入直後の初期段階は投資初心者のレベルに合わせて教育プログラムを作成することです。

・継続投資教育の内容は年代で区別する

投資に対する知識や経験には大きな個人差があります。放っておいても自分で積極的に知識を習得しようとする人より、知識も経験もなく、投資に対する苦手意識を持っている人にこそ教育の必要があります。

一方、継続投資教育によって投資に慣れてきた加入者には、さらにレベルアップした教育をするとよいでしょう。制度導入後、運営管理機関から年1回、運用実績などの報告が加入者一人ひとりに対して行われますので、この機会に1年間の投資実績の振り返り、およびポートフォリオの組み換えを兼ねて、継続投資教育を開催するとよいでしょう。

その際の具体的な教育プログラムは、従業員のニーズによって変わりますが、大きく年代で区別すると、若年層と中高年層に分けましょう。退職までまだ期間的に余裕がある若年層は、より積極的な投資で資産を増やしていくフェーズにあります。これに対して中高年層は、定年退職に向けて徐々に安全資産へとシフトし、確実な資産形成を図るステージにあります。いずれにしても、運用方法や資産形成に関するニーズは、最終的には個々の加入者の置かれた立場や人生観などによって異なるため、個別セミナーに近い形がとれるようになることが理想です。その人の年代や投資の知識の深さによって投資教育の内容を区別することが大切です。

 

確定拠出年金の投資対象

確定拠出年金における投資対象は、提携する「運用関連運営管理機関」(以下運営管理機関)が用意する投資対象リストの中から選択することになります。投資対象は運営管理機関それぞれの考え方や選択基準にしたがって、リスク・リターン特製の異なる3本以上、35本以下の商品を提供し、その中から加入者本人の判断により投資先を決定します。

・確定拠出年金の商品の種類

確定拠出年金における投資対象となる商品は運営管理機関によっても異なり、また、同じ運営管理機関でも適宜入れ替えが行われます。一般的には、預貯金・保険商品、内外株式、内外債券、不動産投資信託(リート)を組み合わせたファンド(投資信託)からなります。

また、年金資金の運用という観点から、極端に高リスク・高配当なもの、低リスク・低配当のものに偏らないのが基本で、その中から、相対的に安全性の高いタイプの商品、やや積極的な商品などタイプごとのラインアップがチョイスされているのが一般的です。たとえば、預金・保険タイプの「元本確保型」、代表的な経済指標に近い変動率を示す「インデックス型」、相対的に積極的なリターンを狙う「アクティブ型」の3タイプに分類し、それらを数本ずつ組み合わせてラインアップするのが一般的です。確定拠出年金の運用では中長期の資産形成を考え、自分にあった商品を見つけることが重要です。

 

■転職・退職による確定拠出年金の扱い

確定拠出年金は支給開始年齢(原則60歳)を迎えるまで運用され、退職後、一時金(いわゆる退職金)、もしくは年金として本人に支給されます。確定拠出年金の場合、支給年齢を原則60歳から70歳までの間で任意で選択可能です。また、資格喪失年齢(原則60歳)到達後は、会社が契約する運営管理機関のプランで運用を継続でき、新たに運用商品を組み替えることも可能です。

一方、転職によって離職した場合、転職先でも確定拠出年金制度を採用していれば、運用している資産をそのまま持ち越すことができます。転職先で確定拠出年金制度がない場合、いったん個人型確定拠出年金に加入する必要ありますが、再転職した会社に確定拠出年金制度があれば、改めて個人型確定拠出年金から再転職した会社の企業型確定拠出年金に切り替えることができます。

 

■リタイアメント教育

確定拠出年金の大きな目的は、加入者の退職後に向けた資産形成を会社と加入者が協力して行うことにあります。加入者自身が、退職後の第二の人生を安心して送るためには、いったいいくらの資金を用意しておけばいいのか、そのためにはどのように資産形成を図っていけばいいのか。あるいは、介護や疾病などのリスクにどのように準備しておけばいいのかなどを考えなければなりませんが、一般的に現役層の関心は希薄です。これらのことを考えないまま退職を迎える、あるいは、リスクに直面すると加入者自身のその後の人生に深刻な局面が訪れかねません。

そうならないために、確定拠出年金の導入を一つの機会として捉え、確定拠出年金以外の退職金や年金、さらに、加入者自身による資産形成を含めたうえでの退職後の生活設計を描く「リタイアメント教育」にまで踏み込んで考えることが理想です。

 

■まとめ

確定拠出年金の導入にともない加入者には、基本的な投資教育(導入時投資教育)と、制度導入後に繰り返し行う投資教育(継続投資教育)の2種類を行う必要があります。継続教育は年1回行うとした場合には、1年間の投資実績の振り返り、および、ポートフォリオの組み換えを兼ねて、継続投資教育を開催しましょう。そして最終的には、年齢や立場、本人の考え方によって個別に投資教育を実施することが理想です。

 

 

記事の参考URL

厚生労働省 確定拠出年金の施行状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/sekou.html

企業年金連合
https://www.pfa.or.jp/yogoshu/au/au09.html

厚生労働省 確定拠出年金制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html

 

ライタープロフィール

ななこ

ななこ

DC運用・ブログ担当

NOCのDC担当者。金融機関での経験を活かし、2018年にNOCのDC部門に立上げメンバーとして入社。現在は、DCの制度設計・保全運用・企業問い合わせ窓口を担当するとともに、ブログ記事の執筆にも取り組む。「NOCでは少し異色なサービスですが、DC制度についてわかりやすくお伝えします!」