【2020年のDC法改正】企業が知っておくべきこと②

 

前回のブログでは、2020年に行われる確定拠出年金制度の見直しのうち、企業型DCに関連した主な改正点についてご紹介しました。これまで以上に従業員の方が利用しやすい制度になることが予想されますが、企業にとっては給与制度や退職金制度の見直しなど、改正に向けて準備が必要です。

確定拠出年金制度の背景にあるのが、老後の生活設計の多様化です。少子高齢化が進む日本においては、定年退職の年齢の引き上げや年金受給年齢の引き上げなどが段階的に行われてきました。終身雇用制が当たり前だった時代には、定年後は退職金と年金で問題なく生活することができましたが、時代の変化によって終身雇用制が崩壊した今、これまでのような老後の生活設計は通用しなくなっています。

そこで、さらなる高齢者の就業機会などの確保を図ることなどを目的として2021年には雇用保険法等の改正が、さらに2022年には、多様化する老後の生活設計に対応するために国民年金法等の改正が行われます。

今回のブログでは、前回のブログの内容と少し視点を変えつつ、前半では高齢者雇用安定法などの雇用保険法等の改正や国民年金法等の改正について、また、後半では老後の資産形成に重要な要素となる確定拠出年金について解説します。

 

雇用保険法等の改正のポイント

冒頭でもお伝えしたとおり、高齢になっても就業機会が確保されることが雇用保険法等改正の目的のひとつです。高齢者の就業機会の確保及び就業の促進という視点で見た場合、改正の大きなポイントは2つです。

●就業確保措置が70歳に拡大する
●高年齢雇用継続給付の縮小

 

●就業確保措置が70歳に拡大する

現行では、事業主に対して65歳までの定年引き上げか65歳までの継続雇用制度の導入が義務づけられていました。2021年の改正では、下記の5つのいずれかを導入することとされています。

・70歳までの定年引き上げ
・70歳までの継続雇用制度の導入
・定年廃止

労使で同意した上での雇用以外の措置として

・高年齢者が希望をすれば70歳まで継続的に業務委託契約を締結すること
・社会貢献事業に従事できる制度を作ること企業

ただ、平成24年に行われた改正と大きく異なるのは、これらが義務ではなく「努力義務」であるということです。ただ、努力義務とはいえ、雇用保険法等の改正の目的は「高齢者の就業機会などの確保」です。そのため、明確な方向性がなく、単に「努力義務だから対応しない」というスタンスでは、従業員から何らかの不満が出てしまう可能性もあります。

●高年齢雇用継続給付の縮小

一般的に、定年退職した後は現役の頃に比べて受け取る給与の額が減少します。減少分をカバーする制度のひとつが高年齢雇用継続給付となっており、現行では「原則として60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満となっている場合に、60歳以降の各月に支払われた賃金の15%(賃金の低下率によって15%を上限に支給率も変動)」が給付金として支給されています。
しかし2021年の改正により、2025年度以降は15%が10%に引き下げられることが決まりました。そこで高齢期の従業員からは、受け取り額が減ることと関連して企業側の処分や待遇に不満が出ることが予想されます。

このように、雇用保険法等の改正によって従業員から不満が出る可能性があります。トラブルを防ぐためにも、企業側としては、改正を踏まえて賃金制度をどうしていくのかを検討し、事前に従業員に内容を周知しておくことなどが大切です。

 

国民年金法等改正のポイント

次に、2022年に施行される国民年金法等、年金に関わる法改正について解説を進めます。国民年金法等改正の概要としては、次の5つの項目が挙げられています。

●被用者保険の適用拡大
●在職中の年金受給のあり方の見直し
●年金の受給開始時期の選択肢の拡大
●確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げ
●その他、国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替えなど

このうち、大きなポイントとなる被用者保険の適用拡大・年金の受給開始時期の選択肢の拡大・確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げについて取り上げます。

●被用者保険の適用拡大

アルバイトやパートタイマーなどの短時間労働者が被用者保険に加入できる要件として、最初は「従業員数が500人超」という規模要件がありました。ところが法改正によって、2017年4月からは500人以下でも労使の合意があれば加入できるようになりました。さらに今回の法改正で、2022年10月からは規模要件が100人超に、2024年10月からは50人超に段階的に引き下げられます。
これにより、多くの企業でアルバイトやパートタイマーを被用者保険に加入させる動きが出てくることになります。従業員側としては被用者保険に加入できることは大きなメリットですが、企業側の負担が増大することは避けられません。そのため、これからは持続可能な形で就労に関する制度設計を行う必要があります。

●年金の受給開始時期の選択肢の拡大

現行では60歳〜70歳の間に受け取りを開始することができますが、法改正により、60歳〜75歳に受け取り時期が拡大します。
65歳になるまでに受け取りを開始した場合は受取額が1ヶ月あたり0.5%減額されますが、65歳を越えて受け取るときには、受取額が1ヵ月あたり0.7%増額する仕組みになっています。受け取り開始時期が遅ければ遅いほど受取額は増額していきますので、仮に公的年金をしばらく使わなくてよいほど貯蓄ができているのであれば、開始時期を遅らせることで資産を増やし、年金だけで生活できる水準に受取額を調整できる可能性も高まります。
このように、長生きに合わせて年金を増やすという選択肢がさらに広がりました。

●確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げ

確定拠出年金については、企業型DCは65歳未満から最大70歳未満に、iDeCoは60歳未満から65歳未満にそれぞれ加入可能年齢が拡大。また、受給開始時期の上限が70歳から75歳に延長されるほか、従業員が自由にiDeCoに加入できることが決まっています。
公的な年金と上手く組み合わせることで、ライフスタイルに合った老後の資産形成はさらにしやすくなると予想されます。

 

制度を見直すときに重要な視点とは

こうした流れに加えて、2020年にはコロナウイルス感染症の影響により、テレワークが急速に普及しました。おそらく今後数年は大きな変化の時期になるでしょう。実際に、給与制度や評価制度の見直しに取りかかっている企業も増えています。
では、企業としては、どのような視点でこれからの高齢者雇用や給与制度、福利厚生について考えていけばいいのでしょうか。

●努力義務をどう捉え、就業規則に反映させるか

今回の雇用保険法等の改正では、就業機会の確保措置は努力義務とされています。そこで、そもそも法改正に対して企業がどう捉えるか、そのスタンスを決めることが重要です。
例えば定年の時期を見直して70歳まで伸ばすとするならば、今以上に高齢期の方にお金がかかることになります。その影響で現役世代が不利益を被らないようにすることも、とても大切です。
定年を引き延ばしたり確定拠出年金制度を変えたりするときには、退職金規程との兼ね合いも考えなければなりません。例えば定年まで積み立てる規程にしているのであれば、定年が伸びれば積立額も伸びていきます。
退職金規程を変更して「60歳まで積み立て」などとすることもできますが、その場合は退職時まで一時金の支給を据え置きするのか、据え置きしないのであれば何歳から支給するのかなども検討する必要があります。

●制度の改正をスムーズに行うためには、誤解や不満を未然に防ぐことが重要

法改正に伴い、企業としては社会保険料負担の増大など、不安なことも多いかもしれません。企業経営に無理がない体制を保つためにも、給与制度や退職金制度など、さまざまな制度の見直しが求められます。
また従業員にとっても、老後の資産形成の選択肢が増える反面、高年齢雇用継続給付の縮小など、老後の資産形成において課題となる改正も行われます。そこで、従業員の不満が企業に向かないようにするためにも、制度の改正を行うときには、企業側と従業員側で誤解が生じないように改訂をしていくことがとても大切です。
人件費も限られている反面、従業員としては納得感を得て働きたいもの。お互いにとってメリットのある形で制度を作っていくためには、これまでのような、一律の制度を全員に当てはめる方法では対応できません。
今後は、従業員一人ひとりが柔軟に選び活用できる制度を企業が導入し、その上で従業員のライフプランに合った資産形成の方法を企業がナビゲートするような体制を整えていくことが求められるでしょう。

こうした課題のひとつの解決策が確定拠出年金という制度です。
後半では、確定拠出年金がなぜ解決策のひとつとして挙げられるのか、企業に合った制度をどのように選んでいけばよいかについてご紹介します。

 

 

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ライタープロフィール

ななこ

ななこ

DC運用・ブログ担当

NOCのDC担当者。金融機関での経験を活かし、2018年にNOCのDC部門に立上げメンバーとして入社。現在は、DCの制度設計・保全運用・企業問い合わせ窓口を担当するとともに、ブログ記事の執筆にも取り組む。「NOCでは少し異色なサービスですが、DC制度についてわかりやすくお伝えします!」

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