業務量の多さに苦しむ運送会社を救ったRPAの導入事例

 

「運送業界は、典型的な労働集約型産業のひとつである」

このように述べると、「ああ、トラックドライバーのことね」と思う人も多いことだろう。確かにそうなのだが、「人間の労働力が業務で必要とされる割合が大きい」という観点からすれば、ほとんどの運送会社におけるバックオフィス業務も、労働集約型産業であろう。

そんな運送業界において、SBS即配サポート株式会社は、RPAを用い、手間のかかるバックオフィス業務にフォーカスし自動化を成し遂げた。

「運送会社において、RPAを導入し、成功させるためには、どうすればよいのか?」を論じつつ、本事例をご紹介したい。

 

サプライチェーンの下流にあるがゆえに、属人化がはびこる運送会社の事情

筆者は、NOCの「BPOブログ」において、RPAとシステム開発の裏側をテーマに執筆している。そのため、物流業界とは無縁に見えるかもしれない。
しかし実は、筆者の主戦場は物流業界であり、他メディアでは物流関係記事の連載を行いつつ、物流企業を対象とした営業コンサルティング、ITコンサルティングを生業としている。筆者自身、元トラックドライバーである。

物流業界こそ、システム化/IT化の恩恵をこうむるべき業界の筆頭だと、私は、私自身の経験も踏まえ、心底思う。
しかし、物流業界の中でも、とりわけ運送会社のバックオフィス業務は、手作業を必要とする業務が多く残っている。

 

最たるものは、荷物の配送依頼と受付業務であろう。

「**に荷物を運んで欲しい」という配送依頼は、運送業務における要である。
しかし、荷主ごとに異なる方法や形式でやりとりされる配送依頼は、その煩雑さ故に、結局人の手を介さなければ、仕事を請け負うことが難しいとされてきた。

私自身、運送会社に勤めていた時に、その煩雑さには辟易した経験がある。
当時、私は、ヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸などに代表される路線便に対する出荷依頼業務のマニュアル化に携わっていた。私の所属していた会社が取引している路線便は、7~8社だったが、伝票番号の規則性と、出荷問い合わせのルールを記すだけで、マニュアルは結構なボリュームになってしまった。

だがそれでも、業務の標準化に取り組んだだけ、まだマシであったろうと思う。
多くの運送会社におけるバックオフィス業務では、そんなマニュアルなど存在せず、すべて担当者の脳内に、属人化して収納されているのだから。

 

運送業務とRPAの相性を考える。

注目されているRPAであるから、当然、導入したいと思う企業は増えているのだろう。
あくまで私の肌感覚ではあるが、物流業界においても、RPAの導入意欲を抱いている企業は増えてきたように思う。

運送業務と、RPAの相性は、どうなのだろうか。考えてみよう。

 

メリット1. スモールスタートが可能である。

運送会社の多くは、中小企業である。
国内には、約6万2千社の運送会社(2017年3月末現在)があるが、うち96.9%は、従業員が100名以下である。世間でも名が知られている、従業員が1,000名を超える大手運送会社は、割合にして0.1%しかないのだ。

会社の規模は、システム投資が可能な予算にも影響する。
確かに、大手システムハウスからは、運送業に特化した各種システムが提供されているが、資金力に乏しい中小運送会社では、そういったシステムを逐一採用することは、価格の面から難しい。

その点、小さな予算で、業務のごく一部から自動化を実現できるRPAは、運送業務と相性が良いであろう。

 

メリット2. 業務内容の変更に伴い、システム修正が比較的容易である。

得意先である荷主の業務に合わせて、基幹システムを改修したら、肝心の荷主における業務プロセスに変更があり、せっかく改修した基幹システムも無駄になってしまった…

残念ながら、仕事を請ける側の運送会社において、このようなことはよくあることだ。
だから、あえてシステム化せず、手作業を残すのだとうそぶく運送会社経営者もいるが。

だが、RPAは業務の変化に強い。
業務処理のプロセスや仕様変更は、少なくとも一般的なシステムよりも、はるかに柔軟に対応可能だ。

荷主の業務変更に、都度追随することが求められる運送業務において、RPAが持つ柔軟性は、武器となるであろう。

 

しかし当然のことながら、一方で、デメリットもある。

 

デメリット1. ITリテラシーが求められる。

RPAをしっかりと使おうとすれば、相応のITリテラシーは必要だ。
さらに、ロボットの内制まで行いたければ、平均以上のITリテラシーを備えた人材は絶対に必要である。

だが、(一般論ではあるが)運送会社にはITリテラシーを備えた人材は少ない。もっと言えば、ITリテラシーを備えた社員を育成できていれば、システム化/IT化が遅れることもないはずだ。

これは、運送会社とRPAの関係性を考える時、大きなジレンマであろう。

 

デメリット2. 業務改善ができない。

運送会社に限った話ではなく、中小企業全般に言えることではあるのだが。
中小企業では、業務改善に携わった経験のある人材は少ない。

「RPAに業務改善は必要なのか?」

確かに、RPAは人が行っている手順をそのまま自動化できる。だが、それは単純作業や反復作業に限ってのことであり、複雑な判断などを必要とする業務は、原則としてRPA化できない。

業務改善を伴わず、RPAを導入したところで効果は限定的である。
もっと言えば、素人が業務改善の真似事をしながら、RPA導入から運用を行っても、そもそも効果のほどは定かではない。

 

そこで、RPA導入を考えている運送会社の皆さんには、次に紹介する、「スモールBPR」をキーワードに、RPAを導入し、成果を上げた、SBS即配サポート社の事例を、ぜひ知って欲しい。

 

24時間365日配送依頼受付を維持しつつ、年間3,000時間相当の工数削減を実現。

SBS即配サポート株式会社は、一都三県を対象に、軽貨物車による共同配送などを行っている運送会社である。

同社における、RPA導入事例の詳細は、こちらの記事を確認して欲しい。

同社は、複数の会社からRPA導入の提案を受けた。NOCに決定した理由は、以下の言葉だと言う。

「スモールBPRを行いましょう」

 

BPRとは、「Business Process Re-engineering」の頭文字を取ったもの。
一般的な「業務改革」とは、組織や制度の見直しも含めて、業務プロセスの最適化を図る点で異なる。

では、スモールBPRとは何か、SBS即配サポート社の事例を交えて考えよう。

 

同社では、「配送依頼の形式については、どんなものでも受け入れる」ことを、モットーとしている。
一日あたり、4万5千件の配送を行っている同社のビジネス規模から考えれば、これは驚異的なことである。だが、代償はあった。同社では、24時間365日体制で、コールセンターなどの他部署も巻き込みながら、マンパワーに頼って、配送依頼の受付を行っていたのだ。

配送依頼の中で、特に厄介なのは、メールである。

ある会社は、Excelで送ってくる。
ある会社は、CSVで送ってくる。

添付ファイルを圧縮してくる会社もあれば、その添付ファイルにパスワードを掛け、パスワードは別メールで送信してくる会社もある。
パスワードに関して言えば、圧縮ファイルではなく、Excelファイルそのものにパスワードを掛けてくる会社もある。

SBS即配サポート社では、種別ごとに指定されたフォルダに、配送依頼の内容が記されたファイルを収納すると、基幹システムに取りこむ仕組みを備えている。
ただし、メールを一通づつ目視で確認し、指定フォルダに収納するプロセスは、24時間365日、手作業で仕分けしていたのだ。

NOCは、この自動化できないと思われていた仕分けプロセスをRPAによって自動化した。仕分けルールを標準化した結果、複数の分岐プロセスと、50以上の仕分けフォルダが必要になったという。
結果、年間3,000時間相当の工数削減につながった。

 

先ほど、私は、「複雑な判断などを必要とする業務は、原則としてRPA化できない」と述べた。しかし、特にビジネスプロセスにおいてくだされる判断の多くは、何かしらの判断基準が存在するものである。先例もなく、ゼロベースから思考をスタートし、判断を下すようなシーンは、そうそうあるものではない。

ただ、その判断基準が複雑すぎるがゆえに、標準化できず、結果として「RPAではお手上げです」となるのだ。
しかし、NOCは、わずか2ヶ月で、メールの仕分け業務を標準化し、RPAロボットを制作、自動化を開始したという。

これには、同社担当者も、「想像以上によくできていました」と感心したそうだ。

 

運送会社におけるバックオフィス業務には、このように業務工程の数そのものはそれほど多くないものの、膨大な数の分岐処理パターンが存在し、結果、標準化が難しいプロセスが無数にある。
こういった、言わば「すき間業務」を、丁寧かつ繊細に標準化した上で、RPAによって自動化する。
これこそが、スモールBPRの真骨頂ではないかと、私は思うのだ。

 

業務量の多さに苦しむ運送会社にこそ、RPAとスモールBPRを検討して欲しい。

「お客様の要望することには、四の五の言わずに従い、実現するのが、優れた運送会社の条件である」

表現は違えど、このようなことを未だに言って恥じない運送会社の経営者は存在する。

だが、その結果、運送会社には、例外処理だらけ、属人化直結の業務ばかりが山積し、システム化/IT化を阻む一因ともなってきた。

 

「業務の存在価値を問うべき」

これは、今回の取材時、NOCのコンサルタントが発した言葉である。

総体的に評価すれば、RPAは運送会社にとって、とても有用なツールであろう。

しかし、ただ導入するだけではダメだ。
NOCの言葉通り、各業務の存在価値、あり方を見つめ直しつつ、ともに切磋琢磨してくれるパートナーがいないと、運送会社におけるRPAが、真の意味で、投資対効果を発揮するのは難しいからだ。

業務量の多さに苦しんでいる運送会社は、ぜひRPA導入を検討して欲しい。

 

 

ライタープロフィール

坂田 良平

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。