湯瀬 良子
DC運用・ブログ担当
金融機関での経験を活かし、2018年にFOCのDC部門に立上げメンバーとして入社。現在は、DCの制度設計・保全運用・投資教育までの一連の流れを担当するとともに、ブログ記事の執筆にも取り組む。「FOCでは少し異色なサービスですが、DC制度についてわかりやすくお伝えします!」
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従業員が転職や独立、介護あるいは定年などさまざまな理由で会社を退職することがありますが、従業員が退職するときには、社会保険や税金に関する処理などを人事総務の担当者が行うことになります。
また、会社に企業型DC制度があり、退職者が企業型DCに加入していた場合にも手続きや説明が必要です。
今回は、定年前の退職と定年による退職で人事総務の担当者が注意するべき点について、前後編にわけて解説していきます。
この記事の目次
まずは、従業員が退職するときに必要となる手続き全般をおさらいしておきましょう。
手続きは大きく分けて、【社会保険関係】【税金関係】【社内の手続き】に分けることができます。
従業員が退職するときには、雇用保険や健康保険、厚生年金保険の資格喪失の手続きを行う必要があります。
・雇用保険:退職日の翌々日から10日以内に管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を準備して提出します。
ハローワークから離職票(離職票-1と離職票-2)が届いたら、速やかに退職者に送付しましょう。
・健康保険・厚生年金保険:退職日から5日以内に管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。
退職者からは健康保険被保険者証(扶養者がいる場合は不要者の人数分)を回収しておきましょう。
また、退職者から「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」を請求された場合は、写しを送付するようにしましょう。
住民税が給料から天引きになっている(特別徴収)ため、退職にあわせて普通徴収に変更することになります。
退職日を含む月の翌月 10 日までに、住所がある市区町村に「給与支払報告に係る給与所得異動届」を提出します。
なお、転職先でも特別徴収で住民税を支払う場合には、転職するタイミングによっては特別徴収を継続することができることもあります。
もうひとつ税金関係で必要なのが、源泉徴収票の発行です。
12月31日より前に退職する従業員については、会社で年末調整を行うことができません。
転職先の会社で年末調整を行うか、個人で確定申告をすることになりますが、その際に必要になるのが源泉徴収票です。
源泉徴収票は、所得税法によって「退職日から1ヵ月以内に源泉徴収票を交付しなければならない 」と決められています。手続きの漏れのないように作成しておくようにしましょう。
ちなみに、退職金制度がある場合には、給与所得の源泉徴収票だけでなく、退職所得の源泉徴収票の発行も必要です。
あわせて退職者からは「退職所得の受給に関する申告書」の提出が必要ですので留意しておきましょう。
会社によっては、制服や社員証の返還、従業員が使用していたパソコンやスマートフォンなど貸与品の返却や、個人ID・パスワードのリセットなど、いろいろな事務が発生します。
あらかじめ貸与品(回収品)のリストを作成しておくと、もれなく対応できます。
なお、会社の資産となる情報を持ち出されないためにも、以下のようなものも回収しておきましょう。
・退職者本人と取引先等の名刺
・作成・収集した各種資料など
まずは、例月の事務〆切日までに忘れずに「資格喪失」の手続きを行いましょう。
企業型DCに加入している従業員の退職後の状況によって、企業型DCから資産をどこに移換するかが変わりますので、従業員には次の内容について説明しておきましょう。
転職先に企業型DCがあって加入対象であれば、転職先の企業型DCに加入できます。このとき、退職者がこれまで積み立てた企業型DCの資産を移換する手続きが必要です。
退職してから6ヶ月以内に移換手続きを行うよう、きちんと説明しておきましょう。
転職先に企業型DCがないときや、退職後に自営業・専業主婦(夫)になるときなどには、企業型DCに加入することはできません。このようなときには、iDeCoに移換手続きをおこなうことになります。こちらも6ヶ月以内に手続きが必要です。
退職して数週間から2ヶ月くらいの間に、加入していた企業型DCの記録関連運営管理機関から「確定拠出年金 加入者資格喪失手続完了通知書」や「確定拠出年金 加入者資格喪失のお知らせ」などの書類が届きます。
この書類が届いたら、忘れずにiDeCoの金融機関(運営管理機関)に申し出を行うように説明しておきましょう。
(資格喪失の通知が届く前に手続きを開始しても全く問題ありません。)
企業型DCやiDeCoへの資産移換の手続きは、退職日の翌日(資格喪失日)が属する月の翌月から6ヶ月以内に完了していなければなりません。もし期限を過ぎてしまうと、資産は国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。自動移換されると次のような不利益が生じます。
1.資産は現金として保管されており、運用されていない
企業型DCにあった退職者の資産は自動的に売却され(現金化され)移換されている状態です。そのため、資産の運用はできない状態になっています。これは、老後の資産形成のための制度でありながら、将来十分な年金額を確保できなくなることに繋がってしまいます。
2.管理手数料の負担が発生する
さらに、国民年金基金連合会に自動移換されてしまうと管理手数料の負担が発生します。
例えば、「特定運営管理期間への移換手数料:3,300円」「企業型DCやiDeCoに移換するときの手数料:1,100円」などです。
このように、自動移換されたときだけでなく、iDeCoや企業型DCに資産を移換するときにも手数料が発生します。資産は運用されないため、手数料の分だけ退職前の企業型DCで運用していた資産が目減りしていってしまいます。
3.60歳時点で老齢給付金を受け取れない可能性もある
企業型DCやiDeCoは60歳を超えると老齢給付金として受け取りできるようになります。受け取りのためには10年以上の通算加入者等期間が要件として必要ですが、自動移換されている間は、通算加入者等期間には算入されません。
そのため、老齢給付金の受け取り時期が遅れてしまうおそれがあります。
せっかく企業型DC制度を導入しているのであれば、退職したあとも老後の資産形成に役立ててほしいですよね。
企業型DCにおいては、会社に従業員に対する継続した投資教育の努力義務が課せられていますが、従業員が退職するときにも、次のような内容について説明義務が課せられています。
・他の企業型DCやiDeCoなどへの移換を行う申出は、企業型DCの資格喪失日の属する月の翌月から起算して6月以内に行うこと
・資産の移換の申出を行わないときの取り扱いについて
・自動移換されても申出を行えばいつでも資産の移換を行うことができること
・確定給付企業年金の加入者の資格を取得した場合で要件を満たした場合には、資産移換できることがあること
・企業型DCから確定給付企業年金や退職金共済などへ資産の移換を行う場合、加入期間が移換先の制度設計に合わせた期間に調整される可能性があること
年金は従業員の老後の資産形成に大きく関わる重要な部分です。
企業型DCやiDeCoなどの私的年金については、積極的な運用で資産を増やしていきたいと考えている人も少なくありません。
退職(転職)時の資産移換について、情報を知らないことで従業員の資産運用計画に不利益が生じないよう、人事総務の担当者は手続きについてしっかりと理解しておくとともに、従業員に対しても説明義務を果たし、手続きが漏れてしまわないようにサポートしましょう。
ちなみに、60歳以上で退職した場合、2021年時点では転職先の企業型DCには移換することができません。
受給権を取得していて企業型DCの「運用指図者」になっている場合は、老齢給付金を請求することができますが、受給権を取得していない場合にはiDeCoに資産を移換する必要があります。
このほか、60歳前の退職とは留意点が異なる定年退職について、後半のブログでご説明したいと思います。
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ライタープロフィール
湯瀬 良子
DC運用・ブログ担当
金融機関での経験を活かし、2018年にFOCのDC部門に立上げメンバーとして入社。現在は、DCの制度設計・保全運用・投資教育までの一連の流れを担当するとともに、ブログ記事の執筆にも取り組む。「FOCでは少し異色なサービスですが、DC制度についてわかりやすくお伝えします!」
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