MENU

2021.12.23 掲載 2022.07.08 更新

安直な「テレワーク至上主義」に物申す

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務サービス


世間では、2020年をテレワーク元年と呼ぶらしい。
テレワークや在宅勤務そのものは以前からあったものの、新型コロナウイルスの感染拡大によって、少なからぬ数の企業が、半ば強制的にテレワークを開始せざるを得なくなった。
テレワークの拡大に伴い、さまざまな問題も顕在化した。
テレワークを実行する上での就業規則の不備や矛盾。テレワーク下での、組織マネジメント手法の確立。
テレワークの実施によってうつを発症する、テレワークうつは、テレワークが普及した今だから顕在化した課題である。
テレワーク元年から2年が経過しようとする今、あらためてテレワークに関する諸問題を棚卸ししていきたい。

統計調査から診る、テレワークの今

公益財団法人日本生産性本部がまとめた、「第7回 働く人の意識調査」から、テレワークに関する調査を紐解いていこう。
同調査によれば、テレワークの実施率は、22.7%(2021年10月)とある。
2020年5月には、31.5%あったテレワーク実施率だが、2020年7月以降下降し、概ね20%前後で遷移している。
では、テレワークに対する満足度はどうなのか?
「コロナ収束後もテレワークを行いたいか」という設問では、「そう思う」:31.6%、「どちらかと言えばそう思う」:40.0%であり、約7割の方が、テレワーク継続希望の意向を示している。
2020年5月時点では、テレワーク継続希望の意向を示した方が62.7%であったことを考えると、新型コロナウイルスをきっかけに、テレワークは日本社会に徐々に受け入れられつつあるのかもしれない。

テレワークに関する課題については、2020年10月時点では、以下のようになっている。

1.Wi-Fiなど、通信環境の整備:38.4%
2.部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備:37.6%
3.職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化:31.6%
4.仕事のオン・オフを切り分けがしやすい制度や仕組み:25.6%
5.上司・同僚との連絡・意思疎通を適切に行えるうような制度・仕組み:25.2%

ちなみに、2020年5月時点で、「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」を課題として挙げた方は、48.8%いた。ポイントが17.2%も減ったことを考えると、この1年余りの間で企業側も、テレワークの環境整備にチカラを注いでいることが伺える。

また、「特に課題は感じていない」という方も、22.4%いる。2020年5月時点では、8.4%しかいなかったことを考えると、企業側、従業員側双方の努力により、テレワーク環境が整備されてきたことが伺える。

一方で、生産性やメンタリティの観点からは、手放しに喜べない状況も診えてくる。
・「自宅での勤務で効率が上がったか」
「効率が上がった」:15.6%、「やや上がった」:38.1%であり、逆に言えば、5割弱の方が、効率が下がったと答えている。
・「自宅での勤務に満足しているか」
「満足している」:28.9%、「どちらかと言えば満足している」:37.2%であり、逆に言えば、3割強の方が、満足していないと答えている。
 
また、パーソル総合研究所 「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によれば、以下のように、対人感情における不安を抱えている方がいることが分かった。

・非対面のやりとりは、相手の気持ちがわかりにくく不安:37.4%
・上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安:28.4%
・出社する同僚の業務負担が増えていないか不安:26.4%
・相談しにくいと思われていないか不安:23.2%
・上司から公平・公正に評価してもらえるか不安:22.6%

これらの結果も踏まえ、テレワーク元年から2年が経過した今、テレワークに関する諸問題を考えていこう。

すべての仕事が、テレワーク化できるわけではない

例えば、エッセンシャルワーカーと呼ばれる、医療、福祉、物流などに従事する人たちは、テレワークができない。工場勤務者や、研究・開発・品質管理に従事する方など、物理的な施設や装置を扱うことを求められる方も、テレワークを行うことは難しい。
同じ企業内でも、職務によってテレワークを行うことができる人・できない人、もしくは行うことはできるのだが、心情的にテレワークを行いづらく感じる管理部門所属者などがいることは、企業におけるテレワークの制度化を考える際に、留意すべきである。

このあたりの考察は、以下記事で取り上げている。本稿と合わせて参考になれば幸いである。
【注目されるワーケーション 後編】管理部門がワーケーションを行う上での課題とは

テレワークを行えない職務に従事する従業員の中には、テレワークを行っている仲間のことを羨む方もいる。
このあたりのメンタルケアであり、待遇の考慮は、今後、テレワークを社内制度化している企業においては、課題となっていく可能性はあるだろう。

すべての人が、テレワークに適合できるわけではない

テレワークの普及によって、「テレワークうつ」も顕在化した。
通常のうつは、社会性、自立性がともに低い人に発症する傾向が高いことが知られているが、テレワークうつは、社会性が高く、自立性が低い人に発症する傾向があることが分かってきた。
社会性が高い人は、他者とコミュニケーションを取ることで、自身のストレスを解消することがある。これが災いし、テレワークによって、同僚たちとのコミュニケーション機会が減ることでストレスが高まり、テレワークうつを発症するのだ。

テレワークうつは一例に過ぎない。
統計調査からご紹介したように、テレワーク下で仕事効率が下がった、もしくは自宅勤務に貫属していないと答えた方々は、そもそもテレワークに向いていない可能性がある。

テレワークを推進することは大切である。
だが、パーソナリティ適正によって、テレワークに向かない方々は一定数存在する。セーフティネットを確保する意味でも、リアルオフィスの存在と、そこでの勤務を認めることは、企業として必要であろう。

すべての企業が、テレワークに適合できるわけではない

社風、社内文化、もしくはその企業におけるマネジメント方法によっては、テレワークに向かないケースもある。こういった企業では、テレワーク実施へのボトルネックとなった社風、社内文化、マネジメント方法などを改善しなければ、テレワークを健全に施行、社内制度化することは難しい。

以下、三つのポイントに分けて考えよう。

・「サボり」の定義変更を、受け入れることができるか?

ある企業では、テレワークを行う社員は、常にZoomをつなぎ続けることを義務付けられているという。
在宅勤務中、トイレに行くときには、上司への報告を強いられているという投稿を、SNSで見たこともある。
企業は、従業員がサボることを看過することはできない。だが、これはやりすぎだ。

そもそも、サボるとは、どういった行為を指すのであろうか。職務に関係ない勤務中の行動をすべてサボりというのであれば、オフィスに出社中でも発生していたはずだ。
勤務中に、昨夜のドラマやスポーツの試合結果について、雑談を交わすのはサボりではないのか?
喫煙者のタバコ休憩は?

先日、ある方が自虐的に、「在宅勤務中に、Youtubeを見ながら仕事をして…」とおっしゃっていた。当人は、サボってしまったという自戒の気持ちをお持ちのようだったが、私にはサボりとは思えない。
在宅勤務中に、宅配便の受け取りを行うことや、学校から帰宅した子どものケアをすることをサボりと感じる人もいるようだが、そうなのだろうか?

本来、サボるとは、やるべきことや、与えられた職務を怠り、業務遂行に悪影響を及ぼすことを指す。そのレベルに達しない行為を、サボりと糾弾するのは、やりすぎではないか。
とは言え、オフィスで顔を突き合わせて勤務するケースと、お互いに見えない状況で働くテレワークとでは、余計な心配や想像をしてしまうことも事実であろう。
同僚や部下、もしくは上司のことを信頼しつつ、過干渉にならない新たなサボりの価値観を築くことができない企業、もしくは人には、テレワークを実践することは難しい。

・新たなモラハラ・パワハラの可能性

前述の「テレワーク中は常にZoomをつなぎ続ける」「トイレに行くときは報告する」といった行為は、モラルハラスメントやパワーハラスメントに抵触する可能性がある。
SNSでは、「部長が1時間おきにTVチャットを要求し、仕事の進捗を確認してくる」という書き込みを見たが、これもモラハラであろう。

テレワーク下においては、新たなモラハラ・パワハラを誘発する危惧が拭えない。
それでなくとも、多くの人が経験がない(もしくは「経験が少ない」)状況で、テレワークを行うのだ。テレワーク下におけるマネジメントについて、誰もが経験が少ない今、中には、個人の価値観・倫理観を暴走させ、部下や同僚を困惑させる方も出てくるだろう。
こういった、新たなモラハラ・パワハラ発生のリスクを理解し、特にライン職の行動や言動に注意のアンテナを張ることができない企業は、テレワークには向かないであろう。

・テレワーク実施下でも有効な、人事評価手法の確立

前述の調査でも、人事評価の公正性・公平性に対する不安が挙げられていた。
多くの企業では、仮に表向きは成果主義を掲げていたとしても、成果に加え、日頃の勤務態度や職務にのぞむ姿勢・心持ちなどを評価に反映させていると思う。
テレワークでは、物理的に目の前に部下がいないわけだから、勤務態度等を評価に反映させることは難しいと考えているライン職の方も多いと聞く。
だが、テレワークになったからと言って、部下に対する接触機会がゼロになるわけではない。メール、チャット、オンラインミーティングなど、コミュニケーションの方法が変わるだけである。
誤解を恐れずに言えば、目で見たものしか評価できないライン職は、テレワーク下では無能の烙印を押されるだろうし、押されるべきである。
ただし、テレワーク下での評価手法であり、ノウハウは、評価する立場にあるライン職の方々が個人で開発するものではなく、企業が確立し、対象となるライン職の方々に教育をしていかなければならない。
これまでと同じ方法で、テレワーク下での部下への評価が成立すると考えている企業がいれば、今すぐ再考すべきだし、こういった企業はテレワークには向かないであろう。

テレワークが求められるのは、働き方の多様化を実現するため

2020年がテレワーク元年と呼ばれるようになったことは、長期的な目線で考えるとマイナスであったと、私は考えている。
新型コロナウイルスによるパンデミックの発生と、緊急事態宣言の発令が、テレワークありきの風潮を、結果として作り上げてしまった。
緊急事態宣言の発令による、テレワークの推奨は、パンデミックを収束させるための非常手段であったことを忘れてはならない。

本来、テレワークとは、働き方の多様化を実現するための手段の一つだ。したがって、テレワークのみを推進することは、働き方の多様化につながらない。
それは、オフィス勤務ありきという、単一の働き方が、テレワークのみという単一の働き方に置き換わっただけである。

例えば、私には夏に生まれたばかりの幼子がいる。私は企業に属しているわけではなく、自宅が仕事場である。だから、自分の裁量で、育児と仕事のバランスをコントロールすることができるが、私がもしサラリーマンで、男性の育児休暇も、在宅勤務も許されていなかったら、妻と私自身のストレスは、今の数十倍に跳ね上がっていたであろうと、恐ろしく感じている。

働き方の多様化とは、働く人が、個々の事情に合わせた最適な働き方を実現するために必要な仕組みである。
繰り返すが、テレワークOnlyの発想は、働き方の多様化に逆行する。これを忘れている方々も多いのではないかと、テレワーク元年から2年が経過しようとする今、私は危惧している。

テレワークは発展途上であることを理解すべき

私が懸念していることは他にもある。世間は、テレワークに関する評価を急ぎすぎてはいないだろうか?

既に述べたとおり、2020年から本稿執筆時点(2021年10月)までのテレワークは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急手段としてのニーズが高い。
本来の目的である、働き方の多様化を実現するための手法としてのテレワークは、これから本格的に世間に普及していく段階にある。
したがって、テレワークに求められる制度や企業文化、従業員同士の価値観や、人事マネジメント手法などが創り上げられていくのは、実はこれからなのだ。

テレワークは、今まさに発展途上にある。日本社会に、テレワークが本当の意味で根付いていくのはこれからである。
したがって、今現時点でのテレワークに関する諸データをもとに、テレワークの評価を確定するのは大間違いであると、強く警鐘を鳴らしたい。

テレワークを推進する上での課題は、本稿で述べたように診えてきた。
だが、テレワークが日本社会に定着するかどうかは、これからの振る舞い次第である。その意味では、2020年がテレワーク元年と呼ばれるようになったことを、私は残念に思う。
新型コロナウイルスがインフルエンザ同様の季節性の感染症になり、多くの企業が、テレワークに対し、働き方多様化を実現するための手段として向き合い始めたときこそが、本当のテレワーク元年として、ふさわしいはずだからだ。
 
 

個人のスキルに影響されがちな庶務業務を平準化

庶務業務は、オフィスにおけるあらゆる業務が該当し、備品の管理、郵送物の受け取り、受付対応など、その仕事内容は多岐にわたっています。それゆえに属人的になりやすく効率化する事が難しい業務とも言えます。FOCがそういった煩雑な業務を整理し、一括でサービスをご提供します。

サービスの特徴

  • 実績に基づくノウハウ
  • 柔軟な体制構築
  • ホスピタリティ
  • サービス領域の広さ
  • コミュニケーションの柔軟さやスピーディーな対応

FOCは、30年/1,000社以上のノウハウを活かし、御社のコア業務の生産性向上、バックオフィス部門のコスト削減に貢献します。

庶務業務サービスに関する

ご相談・お問い合わせはこちら

03-5275-7137(平日9:00〜17:30)

ライタープロフィール

坂田 良平

Pavism代表。 一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事、JAPIC国土・未来プロジェクト幹事。 「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。 筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、ITまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

坂田 良平

人事・総務・経理部門の
根本的な解決課題なら

芙蓉アウトソーシング&
コンサルティングへ

03-5275-7137(平日9:00〜17:30)

MAIL MAGAZINE

メールマガジンで
役立つ情報をお届けしています

人事・総務・経理の課題解決メールマガジンを定期的に配信しています。
お気軽にご登録ください。

SERVICE

私たちは、お客様の
問題・課題を解決するための
アウトソーシングサービスを
提供しています

30年にわたり1,000社の人事・総務・経理など管理部門に対してコスト削減、業務効率化の支援をしてきたFOCだからこそできる、ソリューションをご提供します。
アウトソーシング・BPOの枠を超え、クライアントの本質的な課題解決のために、最適なサービスを提供します。