くもと編集
マーケター兼編集者
FOC 当コンテンツの編集者。
宝飾業界と広告会社を経て2008年 FOC入社。営業や制作ディレクターを経験し、現在はWebマーケティング担当兼当コンテンツの編集を担当。
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中小零細企業や個人事業主との取引の際、親事業者側の企業は下請法に注意しましょう。知らないうちであっても違反した場合は損失が大きく、リスクを回避するためにもしっかりと理解しておくべき法律です。
今回はその下請法について、概要や親事業者側が守るべき項目、違反時の罰則などについて、わかりやすく解説していきます。
この記事の目次
今回のテーマである下請法とは、一体どのような法律なのでしょうか。まずは基本的な概要を以下に解説していきます。
下請法は、資本力が大きく優越的な立場にある親事業者による、下請事業者への不当な減額や支払いの遅延などを禁止し、取引の公正化および下請事業者の利益を保護する目的で作られた法律です。
具体的な内容としては、親事業者側の守る義務と禁止行為、対象となる取引内容と事業者の資本区分などが明記されています。
正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、公正取引委員会と中小企業庁により運用されています。
では下請法の適用対象となるのはどのような取引なのでしょうか。
取引内容、事業者の資本区分の2つに分けて以下で解説していきます。
対象となる取引は以下4つに分類されています。
・製造委託
規格や品質、デザインなどを指定し、物品の製造および加工を委託する取引
例:食料品メーカーが、一部の自社ブランド商品の製造を委託する
・修理委託
物の修理を委託する取引。(再委託する場合も対象)
例:機械メーカーが、自社で使用する工作機械の修理を他社へ委託する
・情報成果物作成委託
映像などのコンテンツ、プログラム、デザインの作成・制作を委託する取引(再委託する場合も対象)
例1:広告会社が、受注したCMの制作を映像制作会社に委託する
例2:ソフトウェアメーカーが、アプリの開発を他社に委託する
・役務提供委託
運送・メンテナンス・倉庫保管・情報処理・その他顧客向けサービスなどを委託する取引(建設業者による建設工事は対象外)
例1:運送会社が、請け負った輸送の一部を他の運送会社に委託する
例2:ビルのメンテナンス会社が、請け負ったメンテナンス業務のうち、清掃業務について他社に委託する
対象となる事業者の資本金区分は、取引内容によって以下の2通りに分かれます。
【パターン1】
■取引内容
■資本金
1. 親事業者:3億円超えの法人 下請事業者:3億円以下の法人・個人
2. 親事業者:1千万円超3億円以下の法人 下請事業者:1千万円以下の法人・個人
【パターン2】
■取引内容
■資本金
1.親事業者:3億円超えの法人 下請事業者:3億円以下の法人・個人
2.親事業者:1千万円超3億円以下の法人 下請事業者:1千万円以下の法人・個人
■資本金
1.親事業者:5千万円超えの法人 下請事業者:5千万円以下の法人・個人
2.親事業者:1千万円超5千万円以下の法人 下請事業者:1千万円以下の法人・個人
特に情報成果物作成委託、役務提供委託の取引については、その内容によって資本金区分が変化しますので正しく理解しましょう。
下請法に違反しないために、親事業者は何を守るべきなのでしょうか。具体的には義務と禁止行為に分かれており、意図せずとも違反した場合は罰則の対象となりますので、事前に正しく理解しましょう。
それぞれ以下で解説していきます。
下請法で定められている親事業者側の義務は以下4つです。
下請法第3条に基づき、発注時に必要事項を記載した書面(3条書面)の発行が義務付けられています。3条書面に盛り込むべき内容は、取引内容・取引額・受領日・支払期日など、全12項目あります。
納品物の検査の有無にかかわらず、納品物の受領日から起算して60日以内のできるだけ短い期間で、代金の支払期日を決定する義務があります。支払いが遅れると違反になるだけでなく、下請事業者の経営にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、十分注意しましょう。
下請法第5条に基づき、取引記録を記載した書面(5条書面)の作成、2年間の保存が義務付けられています。取引におけるトラブルの防止、行政期間による検査の円滑な遂行を目的としたものであり、記載内容は、取引内容・受領日・取引額・支払方法など全17項目あります。
代金を支払期日までに支払わなかった場合、下請事業者に遅延利息を支払う義務があります。利息は納品物の受領日から60日を経過した日から実際に支払いを行った日までの期間に、年率14.6%を乗じた額と定められています。
下請法で定められた親事業者側の禁止行為は以下の11項目です。
下請事業者に責任がないにもかかわらず納品を拒否すること。
物品の納品日から60日以内に定めた支払期限までに下請代金を支払わないこと。
下請事業者に責任がないにもかかわらず下請代金を減額すること。
下請事業者に責任がないにもかかわらず、受領後に返品を行うこと。納品物に不具合があるなど、下請事業者に責任がある場合の返品は問題ありません。
下請事業者からの納品物に対して、一般的な対価よりも著しく低い代金を不当に定める行為は、「買いたたき」として禁止行為にあたります。
正当な理由がないにもかかわらず、下請事業者に対し物品の購入やサービスの利用などを強制すること。
下請事業者が親事業者の違反行為を中小企業庁や公正取引委員会に知らせたことを理由に、取引の停止や取引量の削減などを行うこと。
親事業者が下請事業者に対し材料や部品を有償で提供している場合、それらの代金を下請代金の支払日よりも早く支払わせたり、下請代金で相殺すること。
下請代金の支払いで、一般の金融機関では割引困難な手形(繊維製品においては90日、その他については120日を超える手形)を交付すること。
下請事業者に対して、自社の利益のために金銭や役務、その他経済上の利益を提供させること。イベント開催のために協賛金を募集することなどが例として挙げられます。
下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注の取消や内容の変更、また受領後にやり直しを行わせること。
では前述の義務・禁止行為などに違反した場合、親事業者はどのような罰則を受けるのでしょうか。実際の事例も含めて解説していきます。
以下の行為が見られた場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
また禁止行為の違反があった場合には、公正取引委員会からの指導・勧告を受けます。勧告を受けた場合は、改善報告書の提出が求められ、インターネット上に企業名が公表されます。自社の社会的信用を落とすことになりかねないため、違反には十分注意しましょう。
こちらのサイトで実際に勧告を受けた企業名と内容が公表されているため、一度確認してみることをおすすめします。
〈下請法 勧告一覧〉
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukekankoku/index.html
実際に下請法違反により罰則を受けた事例について、3つご紹介します。
食料品の製造・販売業者であるA社は、一部の商品の製造を下請事業者B社に委託していました。ある日A社は単価の引き下げ改定を行い、B社の合意を得ましたが、合意日前に発注していた分の代金に対して、引き下げ後の単価を適用した代金との差分を不当に減額していたことが発覚しました。
このように、下請事業者に責任がない場合に下請代金の減額を行うことは違反行為です。
スポーツ用品の小売業者C社は、販売する商品の製造をD社に委託していました。しかしC社は、売れ行きが不調だったこと、また顧客から不具合のクレームがあったことを理由に、受領後6ヶ月以上経った当該商品の返品をD社に求め、引き取らせていました。(下請事業者に責任がある場合でも、返品可能期間は6ヶ月以内)
このように、下請事業者に責任がない場合に返品を行うことは違反行為です。
日用品の小売業者であるE社は、F社に商品の製造を委託していました。しかし、ある商品の発注の際、売れ行き不調を理由に、事前に協議していた単価から数十パーセント引き下げた単価を定めて発注していたことが発覚しました。
このように、十分な協議を行わず、通常支払われるべき対価よりも著しく低い代金を設定した場合は買いたたきに該当し、違反行為となります。
実際の取引現場で親事業者側からよくある質問と、その回答をご紹介します。
A.手形での取引においても支払いサイトは存在し、公正取引委員会及び中小企業は現在、繊維業では90日、その他の業種では120日を妥当な期間としています。しかし、2021年3月末に出された通達では、業種にかかわらず、概ね3年以内に支払いサイトを60日以内とすることを要請しています。したがって、手形での取引を行う場合は、2024年3月までに支払いサイトを60日以内にする必要があるでしょう。
〈公正取引委員会による通達〉
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/mar/210331_shitaukeshudan.html
A.原則として納品された時点が受領日となります。しかし、下請事業者からの要請により、あらかじめ定めた納期より前に納品した場合、これを仮受領として受け取れば、定めていた納期を受領日として問題ありません。また、納期より前に検査を実施した場合、検査終了日を受領日として問題ありませんが、検査中に納期が到来した場合には、納期が受領日となります。
A.個別の発注内容の違いを考慮することなく、全ての発注内容について一律に一定比率で引き下げた単価で発注を行うことは、買いたたきに該当するおそれがあります。
最低賃金の引上げによる労務費の上昇や原材料の高騰などによりコストが上昇した場合、下請事業者からの価格の引き上げ要請を無視したり(正当な理由を回答しない)、十分な協議を行わず下請代金の額を定めることは,買いたたきに該当するおそれがあります。
また、反対に原材料などの価格下落により下請事業者側のコストが減少したからといって、あらかじめ定められた下請代金を減額して支払いしてしまうと、下請代金の減額に該当するおそれがあります。
今回は下請法の基本的な概要から守るべき項目、実際の違反事例などについて解説してきました。違反した場合は罰金や勧告などの罰則を受けることとなり、企業にとっては大きな損失となる可能性が高いです。特に親事業者として日常的に取引を行う場合は、本記事を参考に下請法の内容を理解し、日々の業務において法律違反とならないよう心がけていきましょう。
庶務業務は、オフィスにおけるあらゆる業務が該当し、備品の管理、郵送物の受け取り、受付対応など、その仕事内容は多岐にわたっています。それゆえに属人的になりやすく効率化する事が難しい業務とも言えます。FOCがそういった煩雑な業務を整理し、一括でサービスをご提供します。
サービスの特徴
FOCは、30年/1,000社以上のノウハウを活かし、御社のコア業務の生産性向上、バックオフィス部門のコスト削減に貢献します。
ライタープロフィール
くもと編集
マーケター兼編集者
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宝飾業界と広告会社を経て2008年 FOC入社。営業や制作ディレクターを経験し、現在はWebマーケティング担当兼当コンテンツの編集を担当。
「FOCのサービスに直接関係のない記事であっても、読んでくれた方の役に立つ情報をお伝えしていきます。」
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