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2016.01.07 掲載 2022.07.15 更新

PSI計画/S&OPは部門を横断した評価と計画が実現可能 |セクショナリズム・縦割り組織の弊害と原因 7

SCM

タコつぼ化した組織をまたぎ、営業部門から生産・調達部門をつないだ月次単位での目標設定と評価の業務ルーチンとしてサプライチェーンマネジメントを行う業務プロセスの導入があります。国内で言われるところの「生販在計画・仕販在計画と言われるPSI(P:Prpduction、S:Sales、I:Inventory)計画」、国外では「S&OP(Sales& Operation Plan)」です。

PSI計画またはS&OP(以降PSI計画/S&OP)では月次で組織横断的に売上から生産・調達までを計画し、活動結果を評価し、再計画を行います。目標値を組織横断的に再検証して、もっともフレキシブルでリスク対応的な計画を練り直してアクションするのです。いわゆるPDCAサイクルを組織横断で回していく手法です。 

PSI計画/S&OPのプロセス

PSI計画/S&OPがどのような手法なのか、解説しましょう。PSI計画/S&OPは「計画」業務です。流通・小売業にせよ、製造業にせよ、業務を営むためには計画立案を行います。通常は以下のような手順です。

① 販売計画を立案する

企業として、何を、いつ、いくつ売るのか、と言う計画です。売上計画と言ってもいいでしょう。たとえば、自動車であれば、車種ごとに今後一年くらいの間、何を、何台、各月で売るのかと言う計画を立てます。

PSI計画の「S」、S&OPの「S」はSalesのSです。Sales Plan、つまり販売計画は、基本的に「売りの目標値」になります。

② 在庫計画と仕入計画を立案する

販売計画が決まれば、いつ、いくつ在庫して、いつ、いくつ仕入れるかが決まります。在庫計画と仕入計画です。在庫計画も仕入計画も販売計画同様に目標値になります。在庫計画は在庫目標になりますし、仕入計画は仕入目標値になります。

流通・小売業であればここで終わりですが、製造業の場合は、工場で生産計画を立案します。PSIの「I」はInventory、在庫です。「P」はPurchase、つまり仕入れです。Inventory PlanとPurchase Planです。

③ 生産計画を立案する

営業や販社、または客先の仕入計画を受けて、製造を行う側では生産計画を立案します。受注生産の場合は、受注を受けて生産計画を立案します。工場などの製造する側であれば、PSI計画の「P」はProductionを意味します。Production Plan、つまり生産計画は計画であるとともに、目標値でもあります。計画通りに生産ができれば、工場予算が達成されるというわけです。

また、工場では生産計画にもとづいて部品や原材料の在庫計画、購入計画が立案されます。部品や原材料の在庫計画、購入計画はMaterial Requirement Planといいます。もちろん、計画ですから、部品や原材料の在庫計画、購入計画はそれぞれが目標値となります。

すべての計画は目標値となります。計画通りに実行がされれば、目標達成となり、評価されます。

ちなみにS&OPのOPはOperation Planの略で操業計画とか業務計画とか訳されます。要は、販売計画を受けた、在庫、仕入、生産計画全般を指しています。

PSI計画/S&OPは販売計画⇒在庫計画⇒仕入計画⇒生産計画⇒部品や原材料の在庫計画、購入計画と連動します。この連動は、いわゆる部門を超えて計画連携をしていることになり、各部門の計画値=目標値が別の部門の計画のインプットとなっているので、相互に関連しているということです。 

計画連動が機能していない企業が、実は多い

計画が連動していれば、部門連係ができていて、組織のタコつぼ化など起きていないと思う方もいるでしょう。

しかし、実態は、この計画連動がうまくいっていないのです。

営業は営業で部門計画を立てたら立てっぱなしで、実際には計画通りに売れないので、予想が外れたと嘆きます。在庫が積み上がり、生産への指示ができなくなります。しかし、生産は生産で、工場予算を達成するために、勝手に製造したりします。逆もしかりで、予想外に製品が売れてしまうと、生産の制約や都合を無視して営業が突然何倍もの生産指示をしてくることもあります。

このような状況が起きる背景は、各部門が勝手に計画を立てて、お互いに計画を連動させていないことです。本来計画は部門間で連携して作るのですが、実態は分断して作っていることが多いのです。

たとえば、販売計画は営業が作るとして、その計画が工場に伝えられても、工場では「営業の計画は信用できないので、工場独自で計画する」ということが良く起きています。逆に、工場の生産計画や部材の購買仕入計画が生産できる上限になるのですが、それが営業に伝えられず、営業はなんでも、どんな数量でも、どんな納期でも、自由に生産指示をする場合があります。

つまり、お互いがお互いの計画を考慮せず、部門利益を中心に行動するのです。私の仕事は、こうした営業と生産間のいさかいを解消し、企業体として組織だって活動できるようにすることなのです。 

PSI計画/S&OPにはマネジメントクラスの参加が必須

先に書いたPSI計画/S&OPは行われてないことがほとんどです。個別に計画が立案されても、連動していないのが実態なのです。

重要なのは、月次や週次でお互いの計画にどれほどの予実差異があって、お互いにどんな影響があり、お互いにどのような対応をするのが企業体として最適なのかを分析・判断をすることなのです。組織を跨いで計画にたいする実績チェックを行い、差異を見て、アクションを決定しますが、通常は組織を横断した判断になるのです。

折衝

組織横断の判断が必要になる例をあげましょう。たとえば、部品が不足して計画どおりにすべての製品が作れない場合があります。結果的に、各営業にできあがる製品を配分しなければならなくなります。こうした場合、配分される数量によって営業間で計画達成できる、できないの、差がでることになります。営業は大揉めです。工場の担当者がこうした調整はできません。

ある営業は目標達成する半面、他の営業は目標未達です。こうした達成度の相違がでることを組織的に承認するにはマネジメント層の判断が必要です。

あるいは別の例ではこうです、営業の売上が好調で、工場に残業を強いることがあります。残業するとは、つまり、経費がかかるわけで、その費用は担当者でOKは出せません。工場の原価が上がるのでマネジメント層の承認が必要ですし、売上は増えるかもしれませんが、原価が悪化しますから利益が伸びません。営業として売上は取れますが、利益を少々犠牲にしても良いかどうかは、営業のマネジメント、あるいは生産と営業を超えたマネジメント層の判断が必要になるかもしれません。

このように企業収益に影響が出るので、PSI計画/S&OPには営業と生産のマネジメントクラスが出席し、あるいは営業と生産を超えたマネジメントが出席し、調整を行うのです。この過程で、組織間のコミュニケーションが促進され、タコつぼ化を避けることができるわけです。PSI計画/S&OPは、現代日本の閉塞化した部門個別最適のタコつぼ化を解消する重要な武器のひとつなのです。

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ライタープロフィール

石川 和幸

経営コンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

石川 和幸

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