企業変革をするために一番必要なこととは?企業内のコミュニケーションの本質①
■1+1=2ではない
人間とは、不可解な生き物です。だからこそ、古今東西の幾多の哲学者や作家、画家などが、その不可解さの深淵を覗こうと、心血を注いできたのです。
たとえば、哲学者パスカルは「人間には二種類しかない。一つは自分を罪人だと思っている善人であり、他の一つは自分を善人だと思っている罪人である。」と語っています。
まったく、人間とは一筋縄にはいかないもののようです。見た目や経歴だけではわかりません。
皆さんも心当たりがあることでしょう。精神という得体のしれない器を抱えた人間の情動および行動は、「1+1=2」という必ず同じ結果が出るものではありません。Aという公式を当てはめれば、必ずBという解答が得られるわけではないのです。
■コミュニケーションは幻想?
まして、組織という人の集団ともなると、さらに複雑怪奇な様相を呈することになります。
皆さんも実感として、身体にしみついていることでしょう。情報伝達の不備から、トップの意思が反映されなかったり、わずかな言葉の行き違いが人事に影響を及ぼしたりします。
どの企業のWebサイトにある会社紹介や採用情報を見てみると、コミュニケーションという言葉がよく出てきます。
「当社はお客様とコミュニケーションを密にして満足度の高いサービスを提供します」「社員同士コミュニケーションをとって協力して仕事に取り組んでいます」などという表現を読んだことがあると思います。
しかし、逆に言えば、コミュニケーションという言葉が出てくれば出てくるほど、そうは簡単に人と人とは、コミュニケーションがとれないことを証明しているともいえるのです。
■仕組みの整備だけでは解決しない
昨今、働き方改革という名のもとに、業務の効率化や、生産性の向上など、仕事のやり方について、見直しが進んでいます。企業には、大きな変革の波が押し寄せているのです。
しかし、何度も言いますが、人間はそう単純ではありません。組織として、一つの目標に向かうメッセージを掲げたところで、四苦八苦しているのが、現状です。
経営トップの確固たる意志のもと、効率化を推進し、成功している企業もあります。しかし、多くの企業は、テレワークやチャットツールなど、効果が見込める仕組みを導入するも目に見える成果を出しているとは、言えません。
それは、なぜか。
働く人々の目線が、欠けているというのは、言いすぎでしょうか。
■これが企業のリアル
アウトソーシングという領域で、さまざまな企業のパートナーとして活動している当社の経験として、企業の改善、改革がスムーズに進まない理由について、いくつかのポイントが浮かび上がってきます。
・さまざまな改善策が、そもそも、その企業にマッチしていない
・現場の従業員たちが、改善の必要性を感じていない
・実際に改善を進める従業員たちが反発している
・改善を進めても、従業員にメリットが生まれない
・従業員に、現状を変えること、変革への拒否感がある
少々似ている点もありますが、これからのことから、業務の効率化や生産性の向上が目標どおりには進まない企業のリアルな姿が見えてきます。
■「人は理解しえない」がスタートライン
まさに、どの組織、集団にも当てはまる現実です。人と人は理解し合えない。そんな視点から、企業の改善を進めるのも、一理といえます。
かのガンジーは、「世界の不幸や誤解の四分の三は、敵の懐に入り、彼らの立場を理解したら消え去るであろう。」と言っています。
売上を上げる、コストを削減するといったことを実現したいがために従業員とのコミュニケーションをとることを怠り、自社に合っていない仕組みを導入してしまう。他社が成功しているから自社でも成功すると考えてしまう。報酬を上げれば従業員のモチベーションが上がると考えている。終身雇用に固執して従業員の生活を無視して配置転換を行う。
ひと昔前でしたら成功していかもしれません。しかし、今は現場の従業員に寄り添い、把握し、そこから改善策を模索することがとても重要です。常に、解答は現場にあるのです。しかし、言うは易く行うは難し、です。
人はモノでもなく、一定のアルゴリズムをもとに行動しているわけでもありません。冒頭でも述べたように不可解極まる不確定要素の塊的な存在なのです。それをしっかり理解することから本質的なコミュニケーションが始まるのです。