MENU

2016.12.15 掲載 2023.10.31 更新

サプライチェーンマネジメントにおける “水平視野”と“垂直視野”の統合

業務コンサルタントが貴社業務を調査。 結果・改善をレポーティング

業務コンサルティング

グローバル競争激化
 

◆世界は繋がり、市場も生産もグローバルになった時代

今の世の中は、販売も生産もグローバルになりました。世界は繋がり、世界中でモノと情報が行き来するようになりました。私が使うPCは中国で作られ、着る服はバングラディッシュで作られ、飲むコーヒーはブラジルやケニアで作られています。
アジアや北米に行っても日本製の車、家電が売っています。韓国製の方が、勢いがありますが、そのあとを中国勢が追っているような状況です。
市場も生産もグローバルになったため、世界中で需要と供給の情報が行き交うようになりました。サプライチェーンマネジメント(以下SCM)というコンセプトが一般化してすでに20年以上が過ぎています。
世界中の需要情報と供給情報をマッチさせ、「必要なものを、必要な場所に、必要な量だけ、必要なタイミングで届けること」で、売上・利益の最大化と在庫の適正化を狙うことがSCMです。
コンセプトは単純ですが、実際にこの通りにするのは難しいものです。世界中に散らばった自社の販売会社や製造工場、部品や原料の供給業者とモノを運ぶ物流業者を統合的に管理しなければできません。また、売れ方にも季節性があったり、部品や原材料、そして生産数量も自由に増やしたり減らしたりできないような制約があります。ほかにも季節性などの制約条件のなかで、なんとか売り逃しせず、かつ、在庫が余らないようにする工夫がグローバルに行われなければならないのです。
 

◆作業改善レベルの改善が日本の製造業を支配してしまった

かつて、日本の製造業が世界を席巻している時代がありました。その時は、まだグローバル化も緩やかで競争もいまほど激しくありませんでした。モノの供給に少々時間がかかっても、顧客は待ってくれました。日本や中国の工場は、柔軟性が高く、残業をいとわない作業者が多くいたため、急に生産を増やしたりしてもなんとか対応できていました。
こうした環境下で、日本の製造業は優秀な現場作業員の努力と改善でいくらでもモノがきちんと供給できたので、作業レベルの改善を突き詰めれば、うまく行くとの考えに陥ったのです。
 

◆「俊敏性こそ価値」という勘違いが加速

そして、需要がどう変わろうが、需要に追随して生産することが正しいこととされました。注文が来れば作り、来なければ作らない。部品、原材料も、注文が来れば納入させ、来なければ納入させない。受注に追随して、どんな過大な上下運動にも俊敏に対応することに価値があるとされたのです。
 

◆日本の製造業が部分最適全体崩壊に至る過程

「どんな数量でも俊敏に対応することを是とする価値観」からすれば、余計な調整部門を省いて受注と生産を直結させ、途中に人間の判断を挟まないことが是とされてしまいました。
そうなると、全体を見る人は不要で、販売現場と生産現場のスタッフだけがいれば十分と考え、営業と工場を直結させ、迅速な対応をする体制を整えました。
その結果、個別の業務単位の効率化・迅速化が追及され、システムも直結されました。そして、販売、生産、調達、物流の各部門独自の効率化と改善が、全体に寄与するとの前提で個別部門の最適化が追及されたのです。つまり、個別最適の積み上げが全体に貢献するとの前提が検証されずに共有されたのです。
そうこうするうちに、営業は営業の事情、生産は生産の事情、調達は調達の事情、物流は物流の事情で個別の効率化と利益追求が始まり、企業としての全体の連携が失われました。組織間の協力は希薄になり、他責と言い争いが日常化しました。組織間のやり取りに不整合を起こし、全体として効率が悪化していったのです。
そのしわ寄せは顧客にもおよびました。顧客そっちのけで自部門組織の最適化にまい進するようになり、売上も利益も維持できなくなっていくのです。
最終的には部分最適・全体崩壊の時代を迎えたのです。すでに一部の製造業は不振に陥り、倒れ始めていますが、これからも日本の製造業はどんどん倒れていくでしょう。部分最適・全体崩壊が避けようもなく起き始めています。
 

◆S&OP・グローバルPSIと連結経営を整合させるべし

私の仕事はSCMの再構築です。個別部門最適で全体が崩壊している企業の立て直しです。営業の最前線の販売計画や商談はどうなっていて、設計・開発や生産・調達とどう準備すれば、低コストで確実にモノを製造し、供給できるかを検討しています。組織間の抱える制約条件を考慮した最適な意思決定に至る分析手法、意思決定手法を設計し、業務プロセスとシステム要件に落とし込み、再構築するのです。
SCMとしては、S&OP(Sales and Operation Planning (販売・事業計画))というコンセプト、もしくは、もう少し馴染みのある場合はPSI(Purchase/Sales/Inventoryの頭文字をとった略語)というコンセプトで業務・システムを再構築します。
いずれも、販売から生産・調達まで連動させ、かつ、数量と金額による財務計画まで取り込んだ計画業務を再構築するのです。
営業は売りたいと考えているが製造に制約がある場合どうすべきか。あるいは販売が落ちて工場稼働が落ちたが、原価を回収するために生産を継続すべきかどうかといった、ヒト・モノ・カネに関わる計画を顧客接点の営業の先端から生産・調達の末端まで全体をつないで、もっとも最適化した意思決定をするための仕組みをつくるのです。
このコラムで何度も触れていますが、企業を横断的に可視化し、全体を把握し、制約条件を考慮したうえで、企業として売上・利益を連結単位で判断できる枠組みが必要なのです。
 

◆企業の統合度を再び取り戻すための“水平視野”と“垂直視野”

こうしたことを実現するためには、企業マネジメントの仕組みとして、全体を可視化し、統制・管理する機能が必要になります。営業と生産の末端を直結させ、あとは自動化して人間の判断を入れないといった誤った業務モデルではいけないのです。
世界はグローバルに連結されました。企業マネジメントもそれに対応し、グローバルに連結し、全体を統合してマネージする“水平視野”各拠点・部門が抱える特性や制約条件、利益目標を把握して対応方針を個別に深掘りする“垂直視野”の両立が必要です。
そのうえで、再度全体での影響とコスト・リスクを踏まえ、全体の売上・利益が最大化する意思決定をしなければいけません。
変化が激しく、世界中の競合と戦わなければならない時に、個別部門に閉じこもった判断で、仕事がうまく行くはずはないのです。再び企業の統合度を取り戻すための“水平視野”と“垂直視野”をとり戻し、グローバルSCMを企業の武器にして、戦い抜いていくことが重要です。

業務コンサルタントが貴社業務を調査。 結果・改善をレポーティング

働き方改革や業務改善のため、「今の業務」を把握し見える化するサービスです。御社のご要望に合わせて3つのプランをご用意しており、上位プランでは改善提案もご提供します。30年1,000社の実績をもとにリーズナブルでかつ精緻な見える化サービスです。

サービスの特徴

  • 現状業務から課題を抽出し、一覧表をご提示
  • 短期間で現状を把握
  • 他社同様サービスよりもリーズナブル

FOCは、30年/1,000社以上のノウハウを活かし、御社のコア業務の生産性向上、バックオフィス部門のコスト削減に貢献します。

業務コンサルティングに関する

ご相談・お問い合わせはこちら

03-5275-7137(平日9:00〜17:30)

ライタープロフィール

石川 和幸

経営コンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『図解 よくわかるこれからのSCM』(同文舘出版)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

石川 和幸

人事・総務・経理部門の
根本的な解決課題なら

芙蓉アウトソーシング&
コンサルティングへ

03-5275-7137(平日9:00〜17:30)

MAIL MAGAZINE

メールマガジンで
役立つ情報をお届けしています

人事・総務・経理の課題解決メールマガジンを定期的に配信しています。
お気軽にご登録ください。

SERVICE

私たちは、お客様の
問題・課題を解決するための
アウトソーシングサービスを
提供しています

30年にわたり1,000社の人事・総務・経理など管理部門に対してコスト削減、業務効率化の支援をしてきたFOCだからこそできる、ソリューションをご提供します。
アウトソーシング・BPOの枠を超え、クライアントの本質的な課題解決のために、最適なサービスを提供します。